短編集【令嬢の憂鬱】

モモん

文字の大きさ
上 下
64 / 84
迷宮の令嬢

第8話

しおりを挟む
「村の近くには3匹だけでした。これが討伐の証拠の魔石になります。」
「おお、こんなに早く片づけてくれたのか。」
「ええ。ついでに少し探索の範囲を広げたところ、20匹のオーガを発見しました。」
「20匹も……。」
「全部片づけておきましたが、これだけ発生しているのは魔力の澱みがあると思うのですが、それは発見できませんでした。」
「おお、そんなところまで気にしてくれたのか。」
「こちらが依頼書になります。ご確認のサインをお願いできますか。」
「ああ。うん?討伐数は23匹じゃないのか?」
「ご指定のエリアにいたのは3匹ですからこれで結構ですわ。」
「それは助かるが、いいのか?」
「ええ。上質な魔石が手に入りましたし、エリア以外の場所は私が勝手にやったことですからね。」
「うーむ……、これまでの冒険者は何かと追加の報酬を求めてきおったが、お前さんは違うようじゃな。なにより素早いし、来た時も被害の有無を気にかけてくれた。」
「当然のことですよ。人命が最優先ですからね。」
「ありがたいことじゃ。ノアさんじゃったか……、次に問題が起きたときにもお前さんにお願いしたいんじゃが……。」
「指名依頼だと割高になってしまいますから、ノアに頼めればなとか言ってくれれば大丈夫だと思いますよ。」

 初めてのオーガ討伐を終わらせて町に戻ります。
「ただいまです。」
「はあ、北の外れの村の依頼を日帰りで終わらせるのって、ホントに信じられないわね。」
「いや、依頼を渡した人がそんなこと言わないでくださいよ。これ、依頼書です。」
「うん。ちゃんと村長の確認サインももらってきているわね。オーが3匹だけだったんだ。」
「依頼のエリアにいたのはそれだけでしたから。」
「ということは、ほかにもいたのね。魔石は?」
「全部で23個ありますけど、これってどこで買い取ってもらえるんですか?」
「ここでも買取をやっているわよ。出してみてよ、査定してもらうから。」
「これですけど。」
「結構上質じゃない。ゲンさん、査定お願いします。」
 奥からお爺さんが出てきました。
「魔石か。これなら金貨1枚だな。」
「じゃあ、13個買取をお願いします。」
「そうすると、今回の褒賞をあわせて金貨16枚と銀貨5枚ね。貯めておく?」
「いいえ。ちょっと贅沢をしたいので現金でお願いします。」
「えっ、もしかして今日はご馳走なのかな?」
「明日ですかね。今日は色々と買いたいものがありますから。」

 家に帰って、3人で買い物に出かけます。
「どこにいくんですか?」
「服を買いに行こうと思っているんだ。」
「お洋服ですか?」
「そう。私も、ちょっと女の子らしい服を買っておこうと思って。」
「賛成です。ノアさん、冒険者の服しかないんですもの。」

 私は、前から気になっていたお店に入っていきます。
「こんにちわ。」
「いらっしゃいませ。」
「お城に着ていけるような服を作っていただきたいのですが。あっ、一応女なんです。」
「それくらいは分かりますよ。それで、どのような催しなんですか?」
「Sランク冒険者の認定式とかいわれました。」
「その同伴ということでしょうか?」
「いえ……、私が……。」
「えっ!失礼いたしました。女性で……、そのお若さで……、Sランクなのですね。」
「はい、一応。」
「かしこまりました。ところで、どうして当店をお選びいただけたのでしょうか?」
「表に飾ってある服がかわいくて、いつも見ていたんです。それで、こちらにお願いしたいなって。」
「光栄でございます。」
「それと、この二人も同行するので、同じようなものを二人にもお願いします。」
「まあ、こんな天使みたいなお二人の分もおつくりいただけるのですね。」
 それからサイズを測り、布を選んで店を後にします。
「本当に私たちの分まで……、よかったんですか?」
「もちろんよ。だって、二人はもう私の家族なんだから。」

 双子の目に涙がたまっていました。

【あとがき】
 構想では、田舎の町でひっそりとと思っていたのですが、いきなり表舞台に出てきてしまいました……。
しおりを挟む

処理中です...