【完結】桜色の思い出

竹内 晴

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春の2ページ

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 時を同じくして、もう1つの噂も広がっていた。

 そういえば、4組の井上いのうえくんいるじゃん?天海あまみさんと手繋いでたらしいよ?

 私も見た!

 あの2人中学から一緒なんでしょ?付き合ってるのかな?

 なんか噂によるとふられてるらしいよ?

 え?

 じゃあなんで仲良さげな訳?

 そう、もう1つの噂とは・・・

 かおる春斗はるとのことについての噂である。それと同時に、薫は教室から浮いた存在となった。

 互いに予期よきせぬ形での噂。意図いとして広まった訳では無いが、由紀と玲の噂が引き金となり回ってしまった。

 誰がなんのために広めたか分からない。なんの目的があって広められたのかは分からないが、その2つの噂には共通することがあった。

 それは・・・

 その2つの噂は、独り歩きした真っ赤な嘘であるということである。

 2つの噂は同時に2人の女の子にも影響を与えた。一方はいい広まり方をし、一方は悪い広まり方をしてしまった。

 しかし、その噂を黙って見過ごすことの出来ない人物もいた。

 「おい!誰だよこの噂広めた奴?」

 「マジだりー、女子ってみんな暇?」

 春斗ととおるである。

 2人はそれぞれの教室で個々に立ち上がり怒りをあらわにしていた。

 静まり返る2つの教室。

 「薫がなにかしたのかよ?てか何?その意味わかんねーハブり方?」

 「ふざけてんじゃねーぞ!」

 春斗は自身の椅子イス蹴飛けとばし薫の元に向かった。

 「行くぞ」

 春斗は周りの視線を押し切り薫の腕を掴んだ。同時に、玲のいる教室でも。

 「ったく、俺が由紀みゆきの彼氏なわけないじゃん?同じ中学ってだけで変な噂流さないでくんね?」

 玲が噂を打ち消そうと教卓きょうたくの方で叫んでいた。

 「玲いる?」

 突如として教室に響き渡る声に一同は入口の方を見た。

 「やっぱり、来ると思った」

 玲が全てを理解した上で声の主に近づく。

 「変わってないね、春斗は」

 そう、声の主は春斗だったのである。

 「変わってないじゃねぇーよ。また面倒増やしやがって!」

 そういうと、一緒に来ていた薫の腕を引いた。

 「妙なこと言ったの玲だろ?」

 「あ、バレてた?薫ごめん!」

 玲が深々と頭を下げた。

 その光景に何が起きたのか分からないと言わんばかりの表情で見つめる一同。

 「誰か知らないけど、俺と由紀の会話盗み聞きしてた奴いたみたいだけどさ。あれは、俺の嘘だから!」

 「俺の嘘信じて変な噂流して気は済んだか?ま、出てこなくてもいいからさちゃんと謝っとけよ。」

 玲と春斗の言葉に一同は言葉を失った。2人の行動で噂は初日にして終わった。

 中学の頃から4人は仲が良く、いつも行動を共にしていた。

 薫と由紀は仲が良く、互いに好きな相手を理解した上で好敵手ライバルであり親友ともであった。つまり二人の関係は、親友ライバルである。

 玲は、そんな2人を見て奥手おくてな由紀のためにいつも嘘をついていたのだった。

 幼なじみゆえ確立かくりつされてしまったポジション。そのハンデはあまりにも大きく、埋めることのできない距離であった。

 それすらも玲は理解した上で由紀をいつも励ましていたのだ。

 しかし、そんな玲の姿に春斗は不安があった。その不安が今回の一件である。

 言葉はなくとも互いに理解し合える関係だからこそ迅速じんそくな対応で2人の女の子の高校生活は守られたのだ。

 玲の優しさは時として問題を起こしてしまう。その度に気の荒い春斗がフォローを入れるのだった。

 「今回はやばかったぞ?」

 春斗が呆れたように言った。

 「そうだね。春斗がいてよかったよ!」

 玲は春斗を見てにっこりと笑った。

 「玲~・・・、お前反省って文字頭の辞書にないのか?」

 春斗はその笑顔に呆れたようにため息をついた。

 「何男二人でイチャついてんのよ!」

 由紀が2人を見て少し不貞腐ふてくされた様に話しかける。

 「ほんとどうなるかと思ったよね。高校生活始まって早々に詰んだと思ったよね~。」

 由紀が、悲しそうな表情の中にほっとした顔を見せると、その気持ちを悟ったのか春斗が話しかける。

 「ごめん。由紀との約束守れなかったな。」

 春斗が悔しそうな顔をしながら下を向いた。その表情を隣で見ていた玲は責任を感じているのか、少し悲しそうな表情をしていた。

 玲が春斗を慰めようと口を開いたその時・・・。

 「ねぇ、春斗?約束って何?」

 由紀が不思議そうに言った。

 春斗は思わず「え?」と口に出して、下げていた頭を思わず上げてしまった。その表情はまさにはと豆鉄砲まめでっぽうをくらったような顔だった。

 「春斗ってそんな顔するんだ」

 由紀が普段見ることのできない春斗の表情を見て「ふふっ」とイタズラを思いついた子供のように笑っていた。

 「バカにしてんだろ?」

 春斗が不貞腐れた顔で由紀に問いかけると、それに返事をする由紀。

 「え?なんの事?」

 からかうようにとぼけた顔は、春斗にとってどんなに明るく輝く宝石よりきらびやかに写っていた。
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