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本編
2 ツッコミ
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呆気に取られた二人をよそにセエレは落ちたハリセンを拾った。そして物憂げな様子でため息をついた。
「こうじゃありませんね……」
本気で何かに悩んでいるようだった。
そして何かの本を片手に持ちながら、再びハリセンを構えるとしばらく佇んでいた。
「セエレさん、どうしたの?」
リーゼが不思議そうに尋ねても彼女は何も答えない。
頭にはてなマークを浮かべながらウヴァルは若干困り顔になっていた。思わず、隣にいたリーゼと顔を見合わせる。
さっきまで追いかけっこしていた件は一旦横に置くことにして、今は目の前の女性の奇妙な行動が気になっていた。
「あのーアナタ……。さっきから何やっているんデスか?」
「わたしにはまだ力がないんです……」
「セエレさん、アナタは十分あるのでは……」
ウヴァルがそう言いかけたとき、背中に強い衝撃があった。
「いいえ…」
彼女はものすごく真剣な目で一点を見つめていた。
「まだツッコミが……」
隣にいたリーゼが驚いた表情になっている。
「足りませんっ…!!」
ハリセンを持った手が、勢いよくウヴァルの背中めがけて振りかぶられた。その衝撃でウヴァルは回転しながら吹っ飛んだ。
「ちょォォ……っとォ!!」
とっさに両腕で頭をかばい、コロコロと転がりながら、受け身を取って着地した。
「ワタシのスーツがしょうもないことで汚れるところデシタ!セエレさんッ!いきなり何やるんデス!」
どこからかパチパチと音が聞こえてきた。後ろを振り返るとリーゼが拍手をしている。
「いえーい、さすが魔界!」
「やりますね……ウヴァルさん!」
セエレは目をキラリと光らせ、親指を立てながらウヴァルの周りをぐるぐるしだした。
「すごいですよ!流石ツッコミの達人です!」
「え……?あのーセエレさん?」
ウヴァルが困り顔になっていると、セエレはピタリと立ち止まり二人を見つめた。
「ツッコミです」
「はい?」
「私には……足りないのです……!ツッコミ力が…!!」
セエレはそう言うと急に遠い目になった。するとさっきまでの喧騒が嘘のように静まり返り、周りの空気がシリアスになっていった。
これから何か重大な話が始まる……。そう考えたウヴァルとリーゼは再び顔を見合わせ、彼女が語りだすのを静かに待った。
「いえ、そんな大した話ではないので……」
手に持っていたハリセンを自身の頭に乗せながら、慌てたように手を振りだした。そして、そのまま後ろ歩きで部屋から出て行こうとする彼女をリーゼは見逃さなかった。
「セエレさん、何か悩んでるなら話聞くよ?」
隣にいたウヴァルは、ものすごく真剣な表情でそう言葉をかける少女を何も言えずに見ていた。何しろ、ツッコミする気が起きなかったからだ。
それから三人はテラスに移動すると、使用人が用意した紅茶とクッキーをほおばっていた。
今日の魔界の空は、ワイバーンやコウモリが元気に飛び回っていた。リーゼはおいしそうにクッキーをほおばり、紅茶にミルクと砂糖を足していた。
ウヴァルは紅茶を飲みながらワイバーンたちが飛んでいる空を眺めていると、セエレが話を切り出した。
「実は私、ツッコミを極めたいのです」
「ツッコミって何デスか?」
「人間界にある文化です」
セエレは、手に持っていた本をウヴァルの前に差し出した。
「とても心揺さぶられる文化なのです!」
少女のように目をキラキラとさせながら、彼女はツッコミのすばらしさについて熱く語りだしたのだった。
「こうじゃありませんね……」
本気で何かに悩んでいるようだった。
そして何かの本を片手に持ちながら、再びハリセンを構えるとしばらく佇んでいた。
「セエレさん、どうしたの?」
リーゼが不思議そうに尋ねても彼女は何も答えない。
頭にはてなマークを浮かべながらウヴァルは若干困り顔になっていた。思わず、隣にいたリーゼと顔を見合わせる。
さっきまで追いかけっこしていた件は一旦横に置くことにして、今は目の前の女性の奇妙な行動が気になっていた。
「あのーアナタ……。さっきから何やっているんデスか?」
「わたしにはまだ力がないんです……」
「セエレさん、アナタは十分あるのでは……」
ウヴァルがそう言いかけたとき、背中に強い衝撃があった。
「いいえ…」
彼女はものすごく真剣な目で一点を見つめていた。
「まだツッコミが……」
隣にいたリーゼが驚いた表情になっている。
「足りませんっ…!!」
ハリセンを持った手が、勢いよくウヴァルの背中めがけて振りかぶられた。その衝撃でウヴァルは回転しながら吹っ飛んだ。
「ちょォォ……っとォ!!」
とっさに両腕で頭をかばい、コロコロと転がりながら、受け身を取って着地した。
「ワタシのスーツがしょうもないことで汚れるところデシタ!セエレさんッ!いきなり何やるんデス!」
どこからかパチパチと音が聞こえてきた。後ろを振り返るとリーゼが拍手をしている。
「いえーい、さすが魔界!」
「やりますね……ウヴァルさん!」
セエレは目をキラリと光らせ、親指を立てながらウヴァルの周りをぐるぐるしだした。
「すごいですよ!流石ツッコミの達人です!」
「え……?あのーセエレさん?」
ウヴァルが困り顔になっていると、セエレはピタリと立ち止まり二人を見つめた。
「ツッコミです」
「はい?」
「私には……足りないのです……!ツッコミ力が…!!」
セエレはそう言うと急に遠い目になった。するとさっきまでの喧騒が嘘のように静まり返り、周りの空気がシリアスになっていった。
これから何か重大な話が始まる……。そう考えたウヴァルとリーゼは再び顔を見合わせ、彼女が語りだすのを静かに待った。
「いえ、そんな大した話ではないので……」
手に持っていたハリセンを自身の頭に乗せながら、慌てたように手を振りだした。そして、そのまま後ろ歩きで部屋から出て行こうとする彼女をリーゼは見逃さなかった。
「セエレさん、何か悩んでるなら話聞くよ?」
隣にいたウヴァルは、ものすごく真剣な表情でそう言葉をかける少女を何も言えずに見ていた。何しろ、ツッコミする気が起きなかったからだ。
それから三人はテラスに移動すると、使用人が用意した紅茶とクッキーをほおばっていた。
今日の魔界の空は、ワイバーンやコウモリが元気に飛び回っていた。リーゼはおいしそうにクッキーをほおばり、紅茶にミルクと砂糖を足していた。
ウヴァルは紅茶を飲みながらワイバーンたちが飛んでいる空を眺めていると、セエレが話を切り出した。
「実は私、ツッコミを極めたいのです」
「ツッコミって何デスか?」
「人間界にある文化です」
セエレは、手に持っていた本をウヴァルの前に差し出した。
「とても心揺さぶられる文化なのです!」
少女のように目をキラキラとさせながら、彼女はツッコミのすばらしさについて熱く語りだしたのだった。
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