女王陛下、誤解です〜ヤリチン王子が一穴主義になったのはアタシのせいじゃありません!!〜

アムロナオ

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【127】責任とって① 〜戒めを破る時〜

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初めてサニーに「責任とって」と迫られた日は、恐怖と怒りと絶望と……ちょびっとだけ。

蟻ん子くらいちょびっと、歓びがあった。

彼が私を選んでくれたという事実が誇らしく嬉しかった。


でもそれ以上に、四方を固められるような、目に見えない檻にいれられたような恐怖があった。

あの時は負の感情の方が大きかったのに。


まさか故郷の、疎遠だった実家で。

エッチした後に、同じ言葉を言われるなんて思いもしなかった。


今は……恐怖は全くない。

物理的な檻、つまりサニーの腕はあるけれど、閉じ込められたり、夢を奪われる心配もない。


好きも、愛してるも、責任とっても。

今なら素直に受け止められる。



ダニエルはサニーの目にかかった髪をすき、彼のこめかみにキスをした。

ダスティンの死を受け入れられず、傷つき荒んでいたダニエルの心を大きな愛と優しさで満たしてくれた。

人を好きになる歓びと幸せを教えてくれた。


いつかは終わる恋だ。

ずっと同じ関係ではいられないだろう。

身分が違うし、ダニエルより美しく高貴なご令嬢と星の数ほど出会うだろう。

浮気は許せない、かといって永遠の愛を誓ってほしいわけではない。

逆にダニエルは誓えるかと聞かれれば、覚悟できてない。


全てが曖昧だから、きっとこの関係も曖昧に終わるのだろう。

いつか来る別れに備えて、自分を戒めてきた。


好きになりすぎてはいけない。

私達に未来はない。

そもそも私には誰かを愛する資格はない。


何度も自分に言い聞かせてきたけれど……今はそんな事どうだっていい。

いや、戒めなんて馬鹿馬鹿しいわ。


生きている限り、いつかは終わりの日がくる。

それならいつか終わる恋に怯えて自分を戒めるよりも、今を大切に、幸せを噛み締めて、楽しむべきよ。

そんな風に考えられるようになったのは、サニーのおかげだ。



ダニエルはサニーの瞳を覗き込んだ。

暖炉の光を浴びた青紫の瞳は、朝焼けのブルーモーメントを思い出させる。

陽の光を浴びて、オレンジ、灰色、薄水色、青、濃紺、紫とグラデーションを描くのが美しい。


いつだってサニーは真っ直ぐダニエルを見つめてくれる。

その強い眼差しが、ダニエルを美しく強くさせる。

彼の瞳は生命力に溢れ、朝焼けの中で最後まで輝く星々のように煌めき、生きる希望を与えてくれるのだ。


「そっちこそ……責任とってよね」

ダニエルは自分に課していた戒めという名の鎖を外し、檻から飛び立とうとしていた。


ダニエルが生まれたこの家で。

愛する人が眠るこの場所で。
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