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6章★閑話★

2☆無能な王女☆

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リョウマ「菫様、これが鉱山から発掘された鉱石です。2種類出たうちの1つです」

菫「綺麗……実物を触るのは初めてだわ。深紅ですね。わたしが1番好きな色です」

リョウマ「俺も……赤が1番好きです」

菫「そうなの?」

リョウマ「はい。赤騎士ですから」

菫「ふふ、好きな色とはあまり関係ない気もしますけど」

リョウマ「アコヤがアクセサリー作り趣味だと言っていましたね」

菫「そうなの! リョウマ様の発掘した鉱石を、アコヤ様の作ったアクセサリーに付けて、お店を出したの。大好評ですよ!」

リョウマ「……は?」

菫「ん? 何か問題ありますか?」

リョウマ「店を出した?」

菫「まあ……会社立ち上げて……一応わたしが代表になりますけど、アコヤ様のセンスがとても良くて、倭国の女性に大人気なんです」

リョウマ(いつの間に……菫、アコヤと文通しているようだし……人たらしなんだろうな……)

菫「このまま経営が軌道に乗れば、月読教被害者の方に補償金出せますし、彼らの病院代も全て出せそうです。軌道に乗ったらアコヤ様に代表を譲渡する予定です。月読教被害者の補償が終われば御剣様とサギリ様の結婚資金も貯まるはず」

リョウマ(……すごいな。王女の立場よりも経営者に向いてるんだろうな……)

菫「ああそれと、リョウマ様が発掘して下さった鉱物の原石ですが、新種だったのと、その鉱物に非常に希少な物質の成分が検出されたとかで、高値で取り引きされそうです」

リョウマ「は?」

菫「なので、発見者であるリョウマ様に権益を移しました。権利料や所有権はあなたにありますので、リョウマ様のご実家を立て直すだけの潤沢な資金を提供できそうです」

リョウマ「……えっ……なぜだ? 俺は何もしていない。菫が全て采配を……」

菫「いえ。あなたのお陰で発見できました。もちろん、鉱山で働いて下さっている方たちにも配当金を用意しています。雇用するときに、株式を買うことを条件としていたのよ。うふふ、利益が出て良かった」

リョウマ(さすがだ……俺だけでなく株を買わせて全ての労働者に配当か)

菫「これでルージュ様が政略結婚しなくても、大丈夫じゃない? リョウマ様の勘当も解いて下さるわ、きっと」

リョウマ「菫様……ありがとうございます! どう恩を返せばよいか……」

菫「うふふ、恩はわたしこそ。いつも支えて下さっているから、少しでもあなたの役に立てて良かった。リョウマ様の通帳に入れるよう伝えておきました。定期的に権利料が振り込まれるはずですから、そろそろ初めのお金が振り込まれる頃じゃないかな」

リョウマ(……これで倭国では無能扱い……俺なら菫を1番に引き抜くがな……恐らくどの国もこの頭脳と決断力、全体を俯瞰して見る目は欲しがるぞ……馬鹿なのか、倭国は?)

リョウマ「……アコヤにもらったブレスレット、まだ着けているのか」

菫「はい、これはカジュアルだから普段使いです。こちらは若い子たちにも使えるように装飾を華やかに、反比例して価格を抑えています。それから、高級志向の華族女性にも使えるように、デザインや価格を変えて別店舗を隣に作って販売しているんです」

リョウマ「……すごいな、菫様は」

菫「わたし? なんで? すごいのはアコヤ様ですよ。天性のデザインセンスがあるわ。今まで埋もれていたのがもったいないくらい」

リョウマ「そうか……」

菫「……元気、ないですね。離婚したの、後悔してるの?」

リョウマ「は? まさか! 御剣と不倫するようなやつ、こっちからお断りだ! ただ……アコヤがアクセサリー作り趣味だとか、結婚していたときはそういうことを知ろうともしなかったな……と」

菫「政略結婚でしたからね。もしアコヤ様にお会いしたければ、とりもちますよ」

リョウマ「は?」

菫(あ、怒ったかな……無神経なことを言っちゃった)

菫「怒らないでね。わたしリョウマ様に幸せになって欲しいだけなんです」

リョウマ「ほう?」

菫「……本当は、ミラー様がいたら良いんでしょうけど、ミラー様結婚してらっしゃいますもんね。こればっかりはどうにもできませんからね……」

リョウマ「……は?」

菫「なんかリョウマ様、さっきから『は?』が多いですよ」

リョウマ「なぜミラーが出てくる?」

菫「えっ。泣く泣く別れた2人が、また再会したら、そういう感情を抱くのかなって……」

菫(焼けぼっくいに火がつく……は2人に言うのは失礼ですね……黙っておこう)

リョウマ「確かにミラーには幸せになってもらいたいが、もう俺は自分の手で幸せにしようとは考えていない。俺が忠誠を誓ったのはただ1人の女神のみ」

菫「……わたし女神じゃない……」

リョウマ「あなたですよ!」

菫「なんでリョウマ様みたいな素敵な方がわたしを好きなの? ミラー様ならわかりますけど……わたしが体中穢れているのを知っているのに。沢山の男を咥えてきたし、女神とは対極にいるような存在です」

リョウマ「フン、好きで咥えてきたわけではないだろう。悪いのは命令していた吸血王だ。それに菫は穢れてなどいない」

菫「ふふ、それはないわ。13歳から天倭戦争が始まった15歳までの2年間、毎日裸を晒して数名の男を相手に咥えてきました。生理のとき以外ね」

リョウマ(当時生理はきちんときていたのか?)

菫「カルラ様は……ラウンジのことを知らないでわたしを抱いているんです。騙しているようで……罪悪感があります」

リョウマ「フン、カルラは初め同意なしで菫を抱いただろう。罪悪感を覚える必要などない」

菫「そうかな……」

リョウマ「カルラはお前にどんな過去があっても受け入れるだろう、大丈夫だ」

菫「そう……でしょうか」

リョウマ「不安なのか? だったら正直に話すんだな。それで受け入れられなかったら俺に鞍替えすればいい」

菫「……えっ?」

リョウマ「カルラは他の奴にバラすことはないぞ。それは保証する」

菫「ふふ。でもこんな過去を知っても好きだと言って下さるリョウマ様がすごいんですよ」

リョウマ「俺は菫が穢れているとは思っていないし、過去を含めて愛しているぞ」

菫(う……淀みなく……ほんとカッコいいわね……)

菫「ありがとう、わたしの心を救って下さって」

リョウマ「俺は救っているという感覚はありません。ただ菫様のことが好きで、一緒にいたいしあなたの力になりたいだけです」

菫「ありがとう……」

リョウマ「ラウンジの件で男をなかなか信頼出来ないのはわかる。だがカルラは信用してやれ」

菫「わかっています。というか、わたしリョウマ様のことは絶対的に信頼しているんですよ」

リョウマ「は? 俺ですか?」

菫「はい。夢見術にかかっていたとき、わたしを護って下さったときや、ラウンジでの過去を知ってからの真摯な態度は、こんな素敵な男の人いるんだって思いました。わたしにはもったいない人です」

リョウマ「まさか……俺は権力者に媚びるような小さな男だ。女癖も……悪い。清廉潔白なカルラとはほど遠い」

菫「あら、わたしだってリョウマ様が女性の裸を見た数以上に、きっと男性の裸を見ているわ。清廉潔白なんて、わたしこそほど遠い言葉ですよ」

リョウマ「ククッ、そうか。なら脛に傷を持つ者同士、一緒に生きるのもありかもな」

菫(リョウマ様と一緒に……?)

リョウマ「はは、冗談だ。そんな不安そうな顔をするな。カルラに受け入れられなかったときには、俺がいるから。安心してカルラに打ち明けろ」

菫「はい……ありがとう、わたしの可愛いワンちゃん」

リョウマ「ああ」

リョウマ「……っと。間違えた。わん!」

菫「……ふふ、パブロフの犬が過ぎるわ、リョウマ様」

リョウマ「……あなたのためなら喜んで犬になりますよ」

リョウマ(セージには負けん。絶対に!)

☆終わり☆
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