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第5章★月読教典★
第3話☆菫VSカルラ☆※
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「こんばんは」
ニコニコと笑いながら菫はカルラが入って行った扉を開ける。寝室のようだ。
綺麗な装飾品が沢山積まれていて、鏡面台には色とりどりの化粧品がある。
一目で女性の部屋だとわかるが、カルラ1人がソファに腰掛けて冷たい目を菫に向けた。
「勝手に入るな。ここは実月姫の寝室だ。無礼者」
カルラは敵意むき出しにして菫を睨みつけていた。
出逢った頃のようで、菫は武者震いをした。
「予想して入ってきたのよ、実月姫の騎士様」
カルラは害虫を見るような目で菫を見る。警戒心の塊のようだった。
「姫様はいらっしゃらないの?」
「……警備を呼ぶぞ、この害虫が」
カルラが豪奢な天蓋付きのベッドの側に行き、ボタンを押そうとした。菫は慌ててカルラを後ろから抱きしめ、それを阻止した。
「待って、騎士様。あなたと話したいの」
「や……やめろ、あばずれ!」
カルラが慌てたように菫の腕を掴み、剥がれさせた。
「実月姫は?」
「風呂だ。今出ていけば黙っていてやる。早く行け」
あまり時間がなさそうだった。ただ、記憶を戻すにしても、今、カルラやリョウマが記憶喪失の間は邪神国の情報がどんどん頭に入っているはず。
少し踊らせて、最終的に解毒薬を飲ませ、天界国に情報がいくのも効果的かもしれない。
でも、記憶操作の間の記憶が、記憶を取り戻したらないかもしれない。
色々考えるが、感情としてそれに従うのは難しかった。
色々考えているうちに、時間が経ってしまった。
「早く出ていけ……」
頭を押さえながらカルラが言う。
「頭、痛いの? 大丈夫?」
菫がカルラのこめかみを触ろうとしたが、手を払いのけられた。
「やめろ。汚い手で俺に触るな、あばずれ」
菫は肩を竦めると、失礼を承知で実月姫のベッドに座った。
「神聖なベッドに座るな……」
カルラが菫の肩を掴んだが、菫はスッとカルラの背中に手を回して抱きしめながらベッドに倒れ込んだ。
上になっているカルラは、慌てて手を付いた。
「な、なにをする、あばずれ」
「ふふ、あばずれか……」
「や、やめろ……酔狂な女め……」
菫は笑うと、カルラを抱きしめる。下にいて菫が重いと思ったのだろう、カルラが横にずれた。
その瞬間、菫は起き上がると仰向けのカルラに跨り、馬乗りになって、懐に手を入れサッと薬を口に含む。
「な……」
カルラは慌てて乗り掛かられた菫から逃れようと身をよじるが、無駄な抵抗だった。
菫がカルラにキスをしたからである。
驚いたのか、カルラが硬直して動けなくなるのがわかった。
さらに菫はカルラの唇をこじ開け、舌を絡めながら解毒薬を入れる。
口に含んだ解毒薬を一気に放出すると、カルラの喉がゴクゴクと音を鳴らし、解毒薬を飲み込む音が響いた。
「な……にを飲ませた?」
顔を真っ赤にしながらカルラが尋ねる。菫は肩を竦めるとニヤリと笑った。
「さあ? 媚薬かもね」
死の監獄でのやり取りを再現するように、菫はカルラに上目遣いをした。
「媚薬だと?」
「そろそろ効果が現れました? わたしを抱きたくなりません?」
菫はそう言って笑うと、胸元を広げてわざとカルラに見せつけた。
白皙の肌が露わになり、カルラが反射的に顔を背けるようにした。
「や、やめろ。自ら肌を晒すな」
真っ赤になりながらカルラが言い、菫の服をきちんと着させようとしたが、菫はさらに胸を晒した状態でカルラに抱き着いた。
「ヒッ……」
カルラは怯えたように悲鳴を上げると、挙動不審に視線を揺らす。
「そろそろ実月姫が帰ってきますよ。わたしとこんなところ見られたら、誤解されちゃいますね」
菫がフフッと笑うと、カルラは起き上がり、菫をベッドからどかして2人で立ち上がってお互いを見つめた。
薬が効いてきたかな、と思ったがそうではなかったようで、菫の手を掴むと扉へ向かった。カルラが扉を開けようとした瞬間、外から声が聞こえてきた。
「気持ちよかったわ」
「良かったです、実月様。今日は薔薇風呂でしたものね」
声に加え、足音も近づいてくる。
「あ、実月姫帰ってきましたね」
ニコニコと笑いながら菫が言うと、カルラは慌てたように菫を見下ろし、ドレッサーに押し込んだ。押し込まれる直前、カルラの腕を引っ張る。
「あ、おい……」
倒れ込むようにドレッサーに入り込んだカルラを見て、菫はドレッサーのドアを内側から閉めた。
「ただいま、カルラ。カルラ? いないのかな」
実月姫の残念そうな声が聞こえる。隣で侍女らしき女性の声が聞こえてきた。
「お風呂かもしれませんよ。今夜こそ、カルラ様と一夜を共にできると良いですね」
「ええ。カルラ……実月のこと嫌いなのかな。全然抱こうとしないで、夜中も立って警備しているのよ」
ドレッサーの中では、菫とカルラが密着するように倒れ込んでいた。体勢を整えたかったが、変に音が出たら怪しまれてしまう。
「大声を出すぞ」
低い声でカルラが耳元で囁いた。菫は少し動くと、カルラの首に抱き着いた。
「これでも大声出せます?」
菫はカルラに深く口づけをする。息を呑んだカルラは、硬直しながらも静かに息を荒くした。
「やめろ……」
「声に抵抗力がないですよ」
クスッと笑うと、菫はカルラの手を取って、自分の胸に押し付けた。
実月姫と侍女の声が聞こえる中、カルラはフッと一瞬止まると、自分から舌を絡めながら菫の唇を貪った。
「抱いて。媚薬のせいですから」
「……静かに俺に股がってお前が腰を振れ」
菫は静かにカルラの上に跨ると、カルラと自分の下半身を露わにする。そして自分から深く密着して静かに腰を動かしながら、カルラの耳元で囁いた。
「実月姫は抱かなかったの?」
「当たり前だ……」
「どうしてわたしのことは抱いてくれるの?」
お互い息を殺し、静かに腰を動かす。1つになりながらカルラは菫を抱きしめた。
「こんなの……抱くなんて言えない。ただの行為だ……慣れているな、この腰の動き。実月姫は無垢で純真だから……俺が抱けるわけないだろう」
「妬けちゃうな。大切にしているのね、実月姫のこと」
「……お前なんかその辺にいる娼婦だろ……」
同じような体験をさせて、記憶が戻らないかと思ったが、解毒薬を飲んでもこの調子なら戻っていなさそうだ。
「あら、娼婦には娼婦の事情があるのよ。体1つで必死に大切なものを守るために働いている彼女たちの方が、みんなに大切に守られているお姫様より、わたしは守ってあげたくなるわね」
「う……」
小さく声を出すと、果てたのかカルラは体を小さく痙攣させ、やがて菫の中がじんわりと温かくなった。
「あーあ。だしちゃった」
クスクスと笑うと、カルラが暗いドレッサーの中鈍い光を湛えて菫を見ていることに気が付いた。
「とんでもない……娼婦だな……」
「そう? あなたも大概だと思うけど。見ず知らずのあばずれ女の誘惑に負けちゃうなんて」
「俺は……今までこんなことしたことがなかったんだぞ……」
自分を信じられないような口調でカルラが小さく呟いた。
思い出していない。
もしかしたら演技かもしれないが、そんなメリットはカルラにはないはずだ。
薬が効かないのかもしれない。人の心を操る薬開発は、途中で頓挫しているし、そもそもカルラたちの飲んだ記憶喪失になる薬に、この解毒薬が効く保証はない。
ふと、カルラがドレッサーのドアに手をかけた。
「ん? この状態で外に出ます? 実月姫、寝る前に侍女の方に髪を梳いてもらっているみた……」
最後まで言えなかったのは、カルラが菫の唇を塞いだからだった。
「ん……」
甘い声が漏れ出ないよう、カルラが角度を変えて菫の唇を貪る。
「もう黙れ……」
カルラはそう言うと再び菫を静かに抱いた。
ワタルがどうなったか気になったが、実月姫が寝る前にトイレに立つまでカルラは菫を離そうとはしなかった。
☆続く☆
ニコニコと笑いながら菫はカルラが入って行った扉を開ける。寝室のようだ。
綺麗な装飾品が沢山積まれていて、鏡面台には色とりどりの化粧品がある。
一目で女性の部屋だとわかるが、カルラ1人がソファに腰掛けて冷たい目を菫に向けた。
「勝手に入るな。ここは実月姫の寝室だ。無礼者」
カルラは敵意むき出しにして菫を睨みつけていた。
出逢った頃のようで、菫は武者震いをした。
「予想して入ってきたのよ、実月姫の騎士様」
カルラは害虫を見るような目で菫を見る。警戒心の塊のようだった。
「姫様はいらっしゃらないの?」
「……警備を呼ぶぞ、この害虫が」
カルラが豪奢な天蓋付きのベッドの側に行き、ボタンを押そうとした。菫は慌ててカルラを後ろから抱きしめ、それを阻止した。
「待って、騎士様。あなたと話したいの」
「や……やめろ、あばずれ!」
カルラが慌てたように菫の腕を掴み、剥がれさせた。
「実月姫は?」
「風呂だ。今出ていけば黙っていてやる。早く行け」
あまり時間がなさそうだった。ただ、記憶を戻すにしても、今、カルラやリョウマが記憶喪失の間は邪神国の情報がどんどん頭に入っているはず。
少し踊らせて、最終的に解毒薬を飲ませ、天界国に情報がいくのも効果的かもしれない。
でも、記憶操作の間の記憶が、記憶を取り戻したらないかもしれない。
色々考えるが、感情としてそれに従うのは難しかった。
色々考えているうちに、時間が経ってしまった。
「早く出ていけ……」
頭を押さえながらカルラが言う。
「頭、痛いの? 大丈夫?」
菫がカルラのこめかみを触ろうとしたが、手を払いのけられた。
「やめろ。汚い手で俺に触るな、あばずれ」
菫は肩を竦めると、失礼を承知で実月姫のベッドに座った。
「神聖なベッドに座るな……」
カルラが菫の肩を掴んだが、菫はスッとカルラの背中に手を回して抱きしめながらベッドに倒れ込んだ。
上になっているカルラは、慌てて手を付いた。
「な、なにをする、あばずれ」
「ふふ、あばずれか……」
「や、やめろ……酔狂な女め……」
菫は笑うと、カルラを抱きしめる。下にいて菫が重いと思ったのだろう、カルラが横にずれた。
その瞬間、菫は起き上がると仰向けのカルラに跨り、馬乗りになって、懐に手を入れサッと薬を口に含む。
「な……」
カルラは慌てて乗り掛かられた菫から逃れようと身をよじるが、無駄な抵抗だった。
菫がカルラにキスをしたからである。
驚いたのか、カルラが硬直して動けなくなるのがわかった。
さらに菫はカルラの唇をこじ開け、舌を絡めながら解毒薬を入れる。
口に含んだ解毒薬を一気に放出すると、カルラの喉がゴクゴクと音を鳴らし、解毒薬を飲み込む音が響いた。
「な……にを飲ませた?」
顔を真っ赤にしながらカルラが尋ねる。菫は肩を竦めるとニヤリと笑った。
「さあ? 媚薬かもね」
死の監獄でのやり取りを再現するように、菫はカルラに上目遣いをした。
「媚薬だと?」
「そろそろ効果が現れました? わたしを抱きたくなりません?」
菫はそう言って笑うと、胸元を広げてわざとカルラに見せつけた。
白皙の肌が露わになり、カルラが反射的に顔を背けるようにした。
「や、やめろ。自ら肌を晒すな」
真っ赤になりながらカルラが言い、菫の服をきちんと着させようとしたが、菫はさらに胸を晒した状態でカルラに抱き着いた。
「ヒッ……」
カルラは怯えたように悲鳴を上げると、挙動不審に視線を揺らす。
「そろそろ実月姫が帰ってきますよ。わたしとこんなところ見られたら、誤解されちゃいますね」
菫がフフッと笑うと、カルラは起き上がり、菫をベッドからどかして2人で立ち上がってお互いを見つめた。
薬が効いてきたかな、と思ったがそうではなかったようで、菫の手を掴むと扉へ向かった。カルラが扉を開けようとした瞬間、外から声が聞こえてきた。
「気持ちよかったわ」
「良かったです、実月様。今日は薔薇風呂でしたものね」
声に加え、足音も近づいてくる。
「あ、実月姫帰ってきましたね」
ニコニコと笑いながら菫が言うと、カルラは慌てたように菫を見下ろし、ドレッサーに押し込んだ。押し込まれる直前、カルラの腕を引っ張る。
「あ、おい……」
倒れ込むようにドレッサーに入り込んだカルラを見て、菫はドレッサーのドアを内側から閉めた。
「ただいま、カルラ。カルラ? いないのかな」
実月姫の残念そうな声が聞こえる。隣で侍女らしき女性の声が聞こえてきた。
「お風呂かもしれませんよ。今夜こそ、カルラ様と一夜を共にできると良いですね」
「ええ。カルラ……実月のこと嫌いなのかな。全然抱こうとしないで、夜中も立って警備しているのよ」
ドレッサーの中では、菫とカルラが密着するように倒れ込んでいた。体勢を整えたかったが、変に音が出たら怪しまれてしまう。
「大声を出すぞ」
低い声でカルラが耳元で囁いた。菫は少し動くと、カルラの首に抱き着いた。
「これでも大声出せます?」
菫はカルラに深く口づけをする。息を呑んだカルラは、硬直しながらも静かに息を荒くした。
「やめろ……」
「声に抵抗力がないですよ」
クスッと笑うと、菫はカルラの手を取って、自分の胸に押し付けた。
実月姫と侍女の声が聞こえる中、カルラはフッと一瞬止まると、自分から舌を絡めながら菫の唇を貪った。
「抱いて。媚薬のせいですから」
「……静かに俺に股がってお前が腰を振れ」
菫は静かにカルラの上に跨ると、カルラと自分の下半身を露わにする。そして自分から深く密着して静かに腰を動かしながら、カルラの耳元で囁いた。
「実月姫は抱かなかったの?」
「当たり前だ……」
「どうしてわたしのことは抱いてくれるの?」
お互い息を殺し、静かに腰を動かす。1つになりながらカルラは菫を抱きしめた。
「こんなの……抱くなんて言えない。ただの行為だ……慣れているな、この腰の動き。実月姫は無垢で純真だから……俺が抱けるわけないだろう」
「妬けちゃうな。大切にしているのね、実月姫のこと」
「……お前なんかその辺にいる娼婦だろ……」
同じような体験をさせて、記憶が戻らないかと思ったが、解毒薬を飲んでもこの調子なら戻っていなさそうだ。
「あら、娼婦には娼婦の事情があるのよ。体1つで必死に大切なものを守るために働いている彼女たちの方が、みんなに大切に守られているお姫様より、わたしは守ってあげたくなるわね」
「う……」
小さく声を出すと、果てたのかカルラは体を小さく痙攣させ、やがて菫の中がじんわりと温かくなった。
「あーあ。だしちゃった」
クスクスと笑うと、カルラが暗いドレッサーの中鈍い光を湛えて菫を見ていることに気が付いた。
「とんでもない……娼婦だな……」
「そう? あなたも大概だと思うけど。見ず知らずのあばずれ女の誘惑に負けちゃうなんて」
「俺は……今までこんなことしたことがなかったんだぞ……」
自分を信じられないような口調でカルラが小さく呟いた。
思い出していない。
もしかしたら演技かもしれないが、そんなメリットはカルラにはないはずだ。
薬が効かないのかもしれない。人の心を操る薬開発は、途中で頓挫しているし、そもそもカルラたちの飲んだ記憶喪失になる薬に、この解毒薬が効く保証はない。
ふと、カルラがドレッサーのドアに手をかけた。
「ん? この状態で外に出ます? 実月姫、寝る前に侍女の方に髪を梳いてもらっているみた……」
最後まで言えなかったのは、カルラが菫の唇を塞いだからだった。
「ん……」
甘い声が漏れ出ないよう、カルラが角度を変えて菫の唇を貪る。
「もう黙れ……」
カルラはそう言うと再び菫を静かに抱いた。
ワタルがどうなったか気になったが、実月姫が寝る前にトイレに立つまでカルラは菫を離そうとはしなかった。
☆続く☆
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