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並列世界大戦――陽炎記――
mission 03 mercy 1
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さやけき星々が降る荒野は人の営みの残骸に朽ち果てていたが、少年の言葉がわたしに灯火をもたらした。
――アデライト・ラーゲルクヴィスト著・並列世界大戦回顧録「陽炎記」より抜粋――
その日は、何ごともなく始まった。が、それは街に鳴り響く警報で終わりを告げた。
教室で授業を受けていた悠希は、突然のことに戸惑った。周囲の子供たちも怯えを顔に浮かべ、囁き交わしていた。
突然、破壊の音が響き渡り窓を震わせた。誰かが呟く。
「あれ、何?」
女の子が指さす窓の外には、巨人が飛び交っていた。男の子が叫ぶ。
「電脳世界の機械兵だ!」
その一言で、教室内はパニックに陥った。近くで破壊の音。校舎が攻撃を受けたのだ。眼鏡を掛けた四〇歳ほどの男の先生が、顔を青ざめさせそれでも精一杯平静に呼びかける。
「皆さん、落ち着いて外へ」
皆、こぞって教室の出口へ向かい外へ。悠希も、その中に混じり廊下へ出た。短い悲鳴を悠希は漏らす。
「ひっ――!」
先程の攻撃で、血を流し倒れ児童たちが折り重なっていた。見知った顔をその生々しい子供たちの残骸の中に見つけ、悠希は駆け寄る。
「前嶋君」
が、虚ろに目を開く男の子は、ぐたりとし何一つ反応を返さなかった。悠希が初めて目にした、人の死。悠希は震えた。知らず、涙が零れた。
学校から外へ出て、戦時に決められた避難場所である近くのショッピングモールの地下施設へ向かった。禍々しく映る機械兵が街の空を我が物顔で飛び交い、電磁投射砲やミサイルランチャーといった都市防衛システムを破壊し、要塞都市横浜に災禍をもたらしていた。
逃げるように街中を走れば走るほど、悠希の目に入るのは凄惨な光景。無残な人の死。幸いなことは、別クラスの陸も無事で合流できたこと。
ゴゥっと音が鳴り、頭上近くを機械兵が通り過ぎた。胸部のガトリングガンが火を噴き、着弾した周囲を吹き飛ばした。抜け目ない敵は、榴弾を使用したのだ。その破片を浴びた児童たちは、無残な肉塊と化した。離れた場所で発せられる苦しげな声が、悠希の耳に忍び入る。
「陸!」
不運にも、陸は榴弾による破片を食らってしまった。命はあったが、その全身はズタズタで欠けていた。悠希は、声を限りに叫ぶ。
「嫌だぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
己の絶叫が、悠希の耳朶を震わせた。ベッドに上半身を起こし、荒い呼吸で戦慄いていた。異常を検知し接続したコノカのアルトが、大声で呼びかける。
〈悠希、どうしたの? 何があったの?〉
「夢……そうか、昨日、澪と会ったから……くっ」
頬を濡らす涙を、パジャマの袖で拭った。静けさを宿す瞳に、決意を浮かべる。
「だから僕は、アデライトを、電脳世界を許すわけにはいかない。裏切り者の、澪のことも」
――アデライト・ラーゲルクヴィスト著・並列世界大戦回顧録「陽炎記」より抜粋――
その日は、何ごともなく始まった。が、それは街に鳴り響く警報で終わりを告げた。
教室で授業を受けていた悠希は、突然のことに戸惑った。周囲の子供たちも怯えを顔に浮かべ、囁き交わしていた。
突然、破壊の音が響き渡り窓を震わせた。誰かが呟く。
「あれ、何?」
女の子が指さす窓の外には、巨人が飛び交っていた。男の子が叫ぶ。
「電脳世界の機械兵だ!」
その一言で、教室内はパニックに陥った。近くで破壊の音。校舎が攻撃を受けたのだ。眼鏡を掛けた四〇歳ほどの男の先生が、顔を青ざめさせそれでも精一杯平静に呼びかける。
「皆さん、落ち着いて外へ」
皆、こぞって教室の出口へ向かい外へ。悠希も、その中に混じり廊下へ出た。短い悲鳴を悠希は漏らす。
「ひっ――!」
先程の攻撃で、血を流し倒れ児童たちが折り重なっていた。見知った顔をその生々しい子供たちの残骸の中に見つけ、悠希は駆け寄る。
「前嶋君」
が、虚ろに目を開く男の子は、ぐたりとし何一つ反応を返さなかった。悠希が初めて目にした、人の死。悠希は震えた。知らず、涙が零れた。
学校から外へ出て、戦時に決められた避難場所である近くのショッピングモールの地下施設へ向かった。禍々しく映る機械兵が街の空を我が物顔で飛び交い、電磁投射砲やミサイルランチャーといった都市防衛システムを破壊し、要塞都市横浜に災禍をもたらしていた。
逃げるように街中を走れば走るほど、悠希の目に入るのは凄惨な光景。無残な人の死。幸いなことは、別クラスの陸も無事で合流できたこと。
ゴゥっと音が鳴り、頭上近くを機械兵が通り過ぎた。胸部のガトリングガンが火を噴き、着弾した周囲を吹き飛ばした。抜け目ない敵は、榴弾を使用したのだ。その破片を浴びた児童たちは、無残な肉塊と化した。離れた場所で発せられる苦しげな声が、悠希の耳に忍び入る。
「陸!」
不運にも、陸は榴弾による破片を食らってしまった。命はあったが、その全身はズタズタで欠けていた。悠希は、声を限りに叫ぶ。
「嫌だぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
己の絶叫が、悠希の耳朶を震わせた。ベッドに上半身を起こし、荒い呼吸で戦慄いていた。異常を検知し接続したコノカのアルトが、大声で呼びかける。
〈悠希、どうしたの? 何があったの?〉
「夢……そうか、昨日、澪と会ったから……くっ」
頬を濡らす涙を、パジャマの袖で拭った。静けさを宿す瞳に、決意を浮かべる。
「だから僕は、アデライトを、電脳世界を許すわけにはいかない。裏切り者の、澪のことも」
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