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刻の唄――ゼロ・クロニクル―― 第一部
第三章 犠牲の軍隊後編 14
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鋼の獣の群は、粛々と決して速くはない進軍を行っていた。
先頭を行く大型の五メートル強はある多脚型の平たい胴体の上に短身のプラズマ砲塔を乗せた機械兵ユニットは、その歩みに威容を乗せる。その後ろには、小ぶりな二メートル強の先行くそれを小型化したような多脚型機械兵ユニットが続き、その後ろには人型機械兵ユニットが部分部分のアーマー以外は剥き出しでさながら死者の軍団のようにひしめく。
空では電磁投射を胴体下部に備えたガンシップ型機械兵ユニットが、胴体の百足さながら幾多のハッチを持ち上げそこから人型機械兵ユニットが姿を覗かせる。その左右に一メートル強の汎用攻撃機械兵ユニットが雲霞のごとく群れなし、それらの後方に大小の輸送型機械兵ユニットがゆったりと追随する。
二個師団、二万の機械兵ユニット群の全容はその数の進軍の割に静かで、生命を宿さぬ多様な機械の兵隊は不気味でどこか現実感が伴わなかった。
その軍勢と距離を置き外骨格スーツで身を包む幾つかの集団に分かれたキャバリアー三千弱が、ホバリングで進む。
そのキャバリアーの右側の少数団にいる零が、口調にやや場違いな陽気さを滲ませる。
「敵さん、ちゃんと付き合ってくれよ」
外骨格スーツのモニタに映し出される自律軽量斥候からの映像に視線を走らせると、幾分口調を改め呼びかけるように零は続ける。
「ガーライル基地の目視圏内に入るまで、約十分。怪しまれぬようセンサはパッシブ、通常の行軍だ。わざと目立たせるような馬鹿げたことはやっていない。こちらを既に捉えている敵にとって、俺たちは取り残されたボルニア帝国軍。只、この行軍速度は意図がある。そう敵は思うだろう。それは、その筈だ。基地の反対側百キロの地点には、グラディアート一万と機械兵ユニット群二個師団と武装したキャバリアー三千。敵の出方を窺いそれに応じてこちらが動くだろうと、小煩く感じている」
「だな。緊急度の高いグラディアートに対処すればストレール連隊がいるといっても、それなりの時間がかかり俺たちに隙を突かれる。基地のグラディアートは、一万の敵グラディアートが存在する現状防衛で動かすことが出来ない。上の母艦から応援を呼ぶことは、ベルジュラック大公麾下の第一エクエス・オキヂデントと第二エクエス・アンゲルスがいる現状で、一機でも対応戦力に欲しいから憚られる。敵はまず俺たちを始末したいだろう。少数精鋭を当ててくる。しかも、グラディアートを少数でも俺たちに敵が動かせばボルニア帝国軍のグラディアート一万が黙っちゃいない」
ブレイズの言葉を引き継ぐように、サブリナの自信を滲ませた律動的な声がデータリンクを通して響く。
「そして、手をこまねいて挟撃も避けたい筈。こちらの二軍が同時に動けば、キャバリアーとグラディアートが出撃し、実質基地の防衛は空になってしまうから。敵は、確実に琥珀色の騎士とストレール連隊でわたしたちを狩りに来る。速やかに確実に排除するために」
「断定は禁物ね。敵は、別の意図を持つかも知れない。グラディアート一万を警戒しているでしょうから、その可能性が高いだけだわ。けれど、グラディアートとわたしたちを同時に対処する可能性も僅かながら在るわ。ストレール連隊という切り札が向こうにはあるのだから。数はこちらが上でも、力は向こうが上。それでも、勝つのはわたしたち。グラディアートの数で勝るこちらは、二手に分けることが出来る。そして時間を稼ぐ間にグラディアート以外の戦力で基地を、というようにリスクが高い愚策だから敵が実行するとは思えないけれど。惑星フォトーでの有利は、殲滅の光弾砲台。その制御を死守しなければ、ミラト側は負けてしまう。けれど、何かの間違いでそれをされればこちらのペテンがばれてしまう。一万のグラディアートなんて、存在しないのだから。在るのは、自律軽量斥候が百.と敵の目を阻止する汎用攻撃型機械兵ユニット五百」
「わ、分かってるわよ。けど、この策の前提条件は敵がこちらの思惑に乗ることよ。揚げ足を取るようなことを言うだなんて、意地が悪いわね」
窘めるようなマーキュリーにサブリナが顔を赤らめムッとなり、可能性を検証し尽くす質の普段通りの彼女にブレイズが頬を引きつらせながら苦労を滲ませ苦笑する。
「ははは。陽動に敵が引っかかったとして、いかにリザーランド卿たちが殲滅の光弾砲台を無力化するかだな」
「極端な話基地の一室を一定時間占拠できればいいだけだから、伝説級位階の実力者がいればそれほど難しくはない筈だわ。ミラト王国軍に擬装しているから、懐までなら楽に入り込める――先行する自律軽量斥候が敵を捉えたわ。琥珀色の騎士よ。ストレールも」
途中、ピタリと声を止め表情と声を鋭くしサブリナが口にする敵発見の声に、零はよく通る声に静けさを宿し、けれどその声は不思議と物騒に響く。
「さて、死神との舞踏の時間だ。マークを抑えられたとしても、第一エクエス連隊がいる。まともにやり合えば、通常の兵団と機械兵ユニットを主力とするこちらの全滅は必至」
この距離からはまだ見えぬ敵を、零は夜空の瞳を鋭くし見据えた。
先頭を行く大型の五メートル強はある多脚型の平たい胴体の上に短身のプラズマ砲塔を乗せた機械兵ユニットは、その歩みに威容を乗せる。その後ろには、小ぶりな二メートル強の先行くそれを小型化したような多脚型機械兵ユニットが続き、その後ろには人型機械兵ユニットが部分部分のアーマー以外は剥き出しでさながら死者の軍団のようにひしめく。
空では電磁投射を胴体下部に備えたガンシップ型機械兵ユニットが、胴体の百足さながら幾多のハッチを持ち上げそこから人型機械兵ユニットが姿を覗かせる。その左右に一メートル強の汎用攻撃機械兵ユニットが雲霞のごとく群れなし、それらの後方に大小の輸送型機械兵ユニットがゆったりと追随する。
二個師団、二万の機械兵ユニット群の全容はその数の進軍の割に静かで、生命を宿さぬ多様な機械の兵隊は不気味でどこか現実感が伴わなかった。
その軍勢と距離を置き外骨格スーツで身を包む幾つかの集団に分かれたキャバリアー三千弱が、ホバリングで進む。
そのキャバリアーの右側の少数団にいる零が、口調にやや場違いな陽気さを滲ませる。
「敵さん、ちゃんと付き合ってくれよ」
外骨格スーツのモニタに映し出される自律軽量斥候からの映像に視線を走らせると、幾分口調を改め呼びかけるように零は続ける。
「ガーライル基地の目視圏内に入るまで、約十分。怪しまれぬようセンサはパッシブ、通常の行軍だ。わざと目立たせるような馬鹿げたことはやっていない。こちらを既に捉えている敵にとって、俺たちは取り残されたボルニア帝国軍。只、この行軍速度は意図がある。そう敵は思うだろう。それは、その筈だ。基地の反対側百キロの地点には、グラディアート一万と機械兵ユニット群二個師団と武装したキャバリアー三千。敵の出方を窺いそれに応じてこちらが動くだろうと、小煩く感じている」
「だな。緊急度の高いグラディアートに対処すればストレール連隊がいるといっても、それなりの時間がかかり俺たちに隙を突かれる。基地のグラディアートは、一万の敵グラディアートが存在する現状防衛で動かすことが出来ない。上の母艦から応援を呼ぶことは、ベルジュラック大公麾下の第一エクエス・オキヂデントと第二エクエス・アンゲルスがいる現状で、一機でも対応戦力に欲しいから憚られる。敵はまず俺たちを始末したいだろう。少数精鋭を当ててくる。しかも、グラディアートを少数でも俺たちに敵が動かせばボルニア帝国軍のグラディアート一万が黙っちゃいない」
ブレイズの言葉を引き継ぐように、サブリナの自信を滲ませた律動的な声がデータリンクを通して響く。
「そして、手をこまねいて挟撃も避けたい筈。こちらの二軍が同時に動けば、キャバリアーとグラディアートが出撃し、実質基地の防衛は空になってしまうから。敵は、確実に琥珀色の騎士とストレール連隊でわたしたちを狩りに来る。速やかに確実に排除するために」
「断定は禁物ね。敵は、別の意図を持つかも知れない。グラディアート一万を警戒しているでしょうから、その可能性が高いだけだわ。けれど、グラディアートとわたしたちを同時に対処する可能性も僅かながら在るわ。ストレール連隊という切り札が向こうにはあるのだから。数はこちらが上でも、力は向こうが上。それでも、勝つのはわたしたち。グラディアートの数で勝るこちらは、二手に分けることが出来る。そして時間を稼ぐ間にグラディアート以外の戦力で基地を、というようにリスクが高い愚策だから敵が実行するとは思えないけれど。惑星フォトーでの有利は、殲滅の光弾砲台。その制御を死守しなければ、ミラト側は負けてしまう。けれど、何かの間違いでそれをされればこちらのペテンがばれてしまう。一万のグラディアートなんて、存在しないのだから。在るのは、自律軽量斥候が百.と敵の目を阻止する汎用攻撃型機械兵ユニット五百」
「わ、分かってるわよ。けど、この策の前提条件は敵がこちらの思惑に乗ることよ。揚げ足を取るようなことを言うだなんて、意地が悪いわね」
窘めるようなマーキュリーにサブリナが顔を赤らめムッとなり、可能性を検証し尽くす質の普段通りの彼女にブレイズが頬を引きつらせながら苦労を滲ませ苦笑する。
「ははは。陽動に敵が引っかかったとして、いかにリザーランド卿たちが殲滅の光弾砲台を無力化するかだな」
「極端な話基地の一室を一定時間占拠できればいいだけだから、伝説級位階の実力者がいればそれほど難しくはない筈だわ。ミラト王国軍に擬装しているから、懐までなら楽に入り込める――先行する自律軽量斥候が敵を捉えたわ。琥珀色の騎士よ。ストレールも」
途中、ピタリと声を止め表情と声を鋭くしサブリナが口にする敵発見の声に、零はよく通る声に静けさを宿し、けれどその声は不思議と物騒に響く。
「さて、死神との舞踏の時間だ。マークを抑えられたとしても、第一エクエス連隊がいる。まともにやり合えば、通常の兵団と機械兵ユニットを主力とするこちらの全滅は必至」
この距離からはまだ見えぬ敵を、零は夜空の瞳を鋭くし見据えた。
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