君と地獄におちたい

埴輪

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不実

2.焦燥

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 普段は人気のない離れの客室への続き廊下に人が大勢密集している。
 その光景を見たとき、エアハルトは何も考えずに走り出した。
 あまりにもロゼの帰りが遅いため、彼は嫌な予感を覚え、警備の者を迎えに行かせたのだ。
 それでも消えない焦りに似た警鐘に、気づけばエアハルトは駆け出していた。

 そうして彼の目に飛び込んだのが、この混沌とした場である。

「どけ」
「だ、旦那様!」

 迎えに出した警備の者達をどかして、エアハルトは侍女達に抱え込まれる、瞼を閉じたロゼの姿を見つけた。
 その光景にエアハルトは息を呑み、鈍器で頭をぶん殴られたような衝撃を受けたという。
 一瞬で、ロゼが気を失っていることにエアハルトは気づいた。
 なのに一瞬、エアハルトは目の前が暗くなり、ロゼを永遠に失ったかのような錯覚を感じたのだ。
 必死に介護しようと支える侍女達は今まで見たことがないほどに慌てている。
 その場は混乱し、更に場違いなまでの無邪気な笑い声が当たりに響いていた。
 エアハルトがその場にいることを知らず、ルナは実に楽しそうに笑っていたのだ。
 エアハルトはルナの姿を見つけ、怒りのあまりその細い顎を掴んで自分の方へ振り向かせた。

「何故お前がここにいるッ!」

 辺りに冷たい怒号が響いた。
 エアハルトの怒りに満ちた声と鋭い眼光を向けられたルナは息を呑むことすらできず、腰を抜かしそうになった。
 彼女はエアハルトから無関心な視線を向けられたことはあるが、こんな殺意に満ちたような視線を向けられるのは初めてだ。
 ルナが勇気を出して告白したときも、嵐の夜に決死の覚悟でエアハルトの前に飛び出したときも、こんなにも感情的で暗く冷たい視線をルナには向けなかったのに。
 いつだってエアハルトはルナに甘かった。
 ルナが欲しがるものも全て用意してくれて、自分がこの世で一番愛されていると錯覚するほど丁寧に抱いてくれた。
 名前すらなかった孤児のルナを。

「何故だ、俺はお前に直接言ったはずだ。ロゼの前には決して姿を見せるなと、明日までは一歩も部屋を出るなと、言ったはずだ!」
「ぁ……」

 嵐にも負けない雷のような怒号に、ルナは身体を震わせるほかなかった。
 見開いた大きな目。
 黒い瞳に涙が浮かび、ぽろぽろ零れた。
 その黒い瞳を見て、エアハルトは少し冷静を取り戻した。
 いくら自分の命令に逆らったとしてもルナは自分の使用人ではないのだ。
 怒りのあまりに乱暴するわけにはいかなかった。
 そうと分かっても倒れたロゼの姿とその側にいるルナの光景はどうしてもエアハルトの心臓に悪く、焦りが募る。
 倒れ伏したロゼの姿にエアハルトは今だかつてないほどの焦燥を募らせたまま、その側へ駆けよった。
 ルナを突き放さなかったのは、彼の最低限の気遣いだった。

「ロゼっ!」

 手を放されたルナはもうこちらを振り向こうともしないエアハルトの後ろ姿を呆然と見つめた。
 エアハルトが怒っている姿も、焦っている姿も、ルナはこのとき初めてまともに見たのだ。
 首の痛みがひりひりする。
 先ほどまで興奮で痛みなど感じなかったというのに。
 エアハルトは一度もルナの首の傷を気にかけてはくれなかった。

「ロゼ……」

 エアハルトはロゼを支える侍女達を無理やり引き離し、その身を引き寄せた。
 顔色の悪さに眉をひそめ、呼吸や脈の確認をした。

「一体何があったんだ」
「私どもがついておりながら、大変申し訳ございません。……おそらくですが、疲労と精神的なショックで、倒れたのではないかと思います」
「精神的な……」

 ロゼの周りには常に穏やかで平和な空気が満ちていた。
 彼女の周りには彼女を慕い、守ろうとする者が大勢いた。
 幼い頃からきっと人の悪意とは無縁で生きて来た甘い砂糖菓子のような存在なのだ。
 ロゼは誰よりも繊細で、強く抱きしめれば砕けてしまいそうなほど儚い存在だとエアハルトは半ば本気で思っていた。
 そんなロゼが、倒れたのだ。
 エアハルトはこのままロゼが目覚めなくなるのではないかと絶望した。
 挫折など味わったことのない彼の初めての絶望は恐ろしいほどの変化をその内面に齎すことになる。

「……」

 エアハルトは強張った表情で自分とロゼを囲む者達の顔を順に見つめた。
 睨んだと言っていい。
 侍女達はその視線を受け止めた。
 逆に彼女達の意思の強い視線にはエアハルトを責めるような、懐疑と不審が満ちていた。
 それを上手く隠すことができないほどに。

 エアハルトは自分に対して彼女達が忠義深いことを知っている。
 中の内何人かは元部下でもあるのだ。
 元来頭の悪くない、状況判断能力の高いエアハルトは苦々しく口を開いた。

「ルナ」

 沈黙に支配される中で、外の嵐だけが不吉なほど静かなエアハルトの心情を現していた。
 感情の見えない声で呼びかけられたルナは怯えたように後ずさりした。
 小動物のように怯え、涙をひたすら流す姿は弱弱しい。
 先ほどの興奮した様子とのあまりの差に全てを見ていた侍女達は顔をしかめた。

「あ、旦那様…… 違うの、ルナは、ルナはね、ただ」
「ロゼに何をした」

 エアハルトがルナの方を見ることはなかった。
 ルナに問いかけながらもエアハルトはロゼから目を離すことなく、冷たい頬や少し乱れた髪を整える。
 眠るように意識を失ったロゼから一瞬でも目を離したら消えてしまうのではないかとエアハルトは恐怖していたのだ。
 そして恐怖はそのまま怒りとなり、エアハルトから冷静さを奪うことになる。

「ロゼに…… 何を言った」

 ロゼの身体を横抱き、エアハルトはルナに視線を向けた。
 冷たく凍った青い瞳に燃えるような炎が見えた。
 ルナは、何も答えることができなかった。
 自分は何も悪いことをしていない。
 ただ、真実を伝えただけだと声を大にして叫びたいのに、喉に何かはりついたように声が出ないのだ。
 口を開いては閉じるルナの姿に、エアハルトはもう何か問いかける真似はしなかった。
 隣りで待機している侍女長に聞いた方がずっと早い。

「……ルナはロゼに何か言っていたか」
「……私の口からはとてもこの場では申し上げれないようなことを、奥様に向けておりました」

 侍女長はうっすら目に涙を滲ませた。
 ロゼがどれだけ衝撃を受けたか、側で聞いていただけの自分が情けなかったからだ。
 エアハルトはある程度予想がつく答えに怒りを抑えるのに必死だった。
 だが、曖昧なままの答えでは実際にルナがどの程度まで話したのか判断できない。
 そんなエアハルトの考えを察したのか、侍女長は一言断りを入れて耳打ちすることで主の名誉を守ろうとした。
 エアハルトの命でこの場に留まっている警備の者達の目もあるからだ。
 彼らが無暗に噂を流すとは思えないが、今は慎重に行動するべきである。

 侍女長が耳打ちする内容はエアハルトの予想通りであり、何故ルナが命令を破ったのかと苛立った。
 しかし話はそこで終わらない。
 ルナはエアハルトの予想を超えたことをロゼに言ったのだ。
 不愉快とは別の訝し気な主人の表情に侍女長は更に言葉を重ねる。
 どうやらルナをこちらに差し向けたのはライナスの仕業だと。
 エアハルトがそれを聞いたとき、一瞬だけ目を見開いた。
 飼い犬に手を咬まれたような、なんとも呆れた裏切り行為だ。
 ライナスとルナの二人が結託し、エアハルトの命令を破った。
 それだけではない、自分の妻であるロゼを倒れさす遠因を作ったのだ。

 ロゼの顔を良く見れば白い頬に涙の跡があった。
 ロゼは泣いたのだ。
 ルナの言葉に。
 エアハルトが伝えなかった疚しい出来事の全てに。
 エアハルトはあまりにも簡単に考えすぎていたのだ。
 嵐がやむ間だけルナを置いとけばいい、部屋は離れているのだから接触することはないだろうと。
 それだけではない。
 もっと言えばエアハルトがルナと契約さえしなければ、安易にルナを買わなければこんなことにはならなかったのだ。
 結局、エアハルトは無様にライナスの掌の上で踊っていたにすぎない。
 ルナを見つけたのはエアハルトだ。
 しかし、事を進め、今日というこの日の元凶を招いたのはライナスなのだから。
 ライナスが何故こんなことをするのか、エアハルトには心当たりがあった。
 なのに、この様だ。

 殺したいとエアハルトは思った。
 自分を殺したいとそのとき思ったのだ。
 いくらライナスのせいにした所で、選択したのはエアハルト自身なのだ。
 誰かに責任を問うとしたら、それはエアハルト本人しかいない。

 そして、ロゼには何の罪もない。
 エアハルトとライナス、そしてルナというこの奇妙な関係に彼女は巻き込まれた被害者なのだ。
 エアハルトが一番に守らなければならない、そして一番守りたいと思う妻に申し訳ないと思いながらも、何故か愛おしいとこのときエアハルトは感じた。

 ルナの言葉に、エアハルトとルナの関係に倒れるほどの衝撃を受けたロゼが、愛おしいと自然に思えたのだ。
 それはまさに劇的な変化であった。





 エアハルトは無言でロゼを侍女長に預けた。

 そして、少しだけ離れた位置で見守る警備の兵の腰に差してあった剣を抜いた。
 流れるような動きで、一度もエアハルトは兵の方を向くことなく彼の武器を奪ったのだ。
 その場にいた誰一人として気づかないほど自然な動作でエアハルトはそのまま抜き身の剣の切っ先をルナに向けた。
 首のちょうど真ん中に。
 偶然にもそれは侍女が傷つけた赤い線のある位置だった。
 まるでエアハルトがそれをなぞったように見えるが、もちろんエアハルトはその傷のことを知らない。

「ライナスから何を言われた」

 冷たい声だ。
 ルナは涙が止まるほど驚いた。
 小柄なルナと大柄なエアハルトの身長差は大きい。
 しかしルナは常にエアハルトに見下ろされながら、怖いと思うことはなかった。
 初めて出会ったときは確かに怯えたが、その後のエアハルトの対応は紳士的で、ルナは破格の扱いを受けていたのだ。
 愛されていると錯覚するほどに。

 愛するエアハルトのただ冷たく無機質な瞳が怖い。
 自分の命令に逆らう者を決して許さない暴君が目の前にいた。

「言え」

 逆らうことなどできない、本能的な恐怖に突き動かされたルナは喉が猛烈に乾くのを感じながら答えた。
 自分が何を言っているのかも曖昧なまま。

「ら、ライナスが…… こ、ここで待ってれば、お、奥様にあえ、るって……」
「俺はライナスとお前に言ったはずだ。ロゼの前には姿を現すな。口をきくことも許さないと」

 ルナが答えるたびにどんどんエアハルトの機嫌は悪くなる。
 エアハルトは、敵や同じ軍人に容赦をしない反面、意外なほど女子供には寛容だ。
 軍人として王族を守ることを第一とし、第二に税を納める民を守ること。
 それは彼にとって当たり前の常識であり、義務でしかない。
 自分よりも弱い者を脅すことに嫌悪感すら抱く。
 弱き者を救え、というミュラー家の家訓を幼少の頃から叩き込まれたせいだ。
 貴族の女性に誘われれば相手の顔に泥を塗らないように付き合うし、とんでもない悪餓鬼でなければ子供のやることなすことは大目にみる。
 自分の敵と同格の者以外には驚くほど優しい面を見せる男なのだ。

 だが、その甘さが全ての原因だったとエアハルトは後悔していた。

「俺は、どうやらお前達を甘やかしすぎていたようだ……」

 自分自身の甘さが、巡りに巡って妻を傷つけたのだとエアハルトは思った。
 ライナスに対する信頼も、ルナに対する庇護も。
 そして自分自身を過信すぎたことも。

 息を呑み、目を見開くルナに構わずエアハルトは剣を下げた。

「油断しすぎだ、お前達」
「も、申し訳ございません!」

 武器を奪われた警備の兵は返された剣を慌てて鞘に戻した。
 あっさり自分の腰のものを奪われた兵の目には畏怖の念が浮かんでいる。
 そして今更ながらエアハルトが少し老けて見える外見とは裏腹にまだ若いことに気づいた。
 この武人はまだこれから成長するのだという恐ろしい予感に身を震わすのだった。
 次いでエアハルトは兵達にルナを元いた部屋に連れて行くよう命じた。
 事情を知らない警備の二人は、少しの戸惑いを浮かべながら主の言葉に従う。

「侍女達に言っておけ。部屋に入れたら窓も扉も全て施錠しろと。二度とこの屋敷内を勝手に歩き回らないように常に見張っているように、とな」

 厳しくも淡々と紡がれるエアハルトの言葉にルナは呆然と聞いていた。
 ルナはふらふらと覚束ない動きで二人の兵に促されるままにその場を立ち去った。
 エアハルトは一度もルナの傷について聞いてはくれなかった。

 お腹の赤ん坊のことも。



* *


 エアハルトはライナスをどうするか一瞬考えた。
 何せ今いる場所を少し移動すればライナスの客室に行けるのだ。
 しかし、やはりそんなことよりも気絶しているロゼの方が大事だった。

「俺はロゼを部屋に連れて行く。後で医者を連れて来い」
「お、お待ちください! この嵐の中ではお医者様をお連れするのは大変危険です。早馬で駆けだしたとしても、視界が非常に悪く……」
「なら俺が連れてくる」

 ざわつく人々を背にして、エアハルトはロゼを横抱きにした。
 その際の侍女長の縋るような視線に無言で答えた。

「もしもロゼが目覚めたときはよく宥めてくれ。ルナの話は全て虚言であり、何も心配することはないと」
「…………」
「嵐がやむ頃には、全てが終わり、また平和な生活に戻ると伝えてくれ」
「……差し出がましいようですが、奥様は旦那様が思うほど子供ではありません」

 そのまま急いでロゼを寝室へ連れて行こうとしたエアハルトは足を止めた。

「奥様は、大変聡明な方です。年寄りの私よりもずっと冷静で、心優しいお方です。そして、虚実の中から一粒の真実を見つけることができる類稀な才をお持ちです」
「何が言いたい」
「……言って、よろしいのでしょうか」

 エアハルトと侍女長の視線が交差する。
 口を挟むことができない他の侍女達はただその様子を見守っていた。

「言ってみろ」
「奥様には全て真実を話すべきです」

 複数の息を呑む音がした。
 当のエアハルトと侍女長は驚くほど落ち着いている。

「旦那様…… お願いです。今、真実を旦那様の口からお話ししなければ、奥様の心は永遠に傷ついたままです」
「真実だと? 俺を疑っているということか、侍女長」

 二人の視線は合わさったままであり、侍女長は幼い頃のエアハルトの姿を思い浮かべながら、いつから彼がここまで非情に物事を強引に片付けるようになったのか、今まで気づかなかった自分に後悔した。
 亡くなったミュラー夫人から息子を見守ってくれと頼まれたというのに、今ではその視線に恐怖して必死に逸らさないようにするのが精いっぱいなのだ。

 永遠に続くのではないかと思うほどの重い沈黙の中で、ロゼがかすかに身じろぎした。
 抱きしめていたエアハルトは慌ててロゼの顔を覗き込む。
 先ほどまでの誰も寄せ付けず、逆らった者は決して許さないエアハルトの威圧的なオーラは一気に消え、ロゼが穏やかな寝息をたてるのを確認し、安心したとばかりに小さく微笑んだ。
 早く部屋で寝かせてやりたいとエアハルトは思った。
 ここは寒いからと少し強めにぎゅっと抱きしめ、冷たい頬に自分の頬を摺り寄せた。
 愛しくて堪らないと、初恋に浮かれた青年のようだ。

 なんとも見事な変わりっぷりである。

 見てはいけないものを見てしまった周囲の反応などお構いなしにエアハルトはそのままロゼを抱いて足早に進んだ。
 大股で歩きながらもエアハルトのロゼに対する愛撫は止まらない。
 ロゼを横抱きにして歩いている状態だというのに、こつんっと鼻と鼻をくっつけたと思えば唇から始まって瞼や頬、おでこや耳たぶに軽くキスをする。
 最後に頬をまた摺り寄せるエアハルトの器用さに周りの者は多少引いた。
 彼が凄いのはその愛撫の合間に追いかけてくる侍女達に次々と命令を出すことである。

「ライナスを地下牢に連れて行け。抵抗するなら無理やりでもいい。多少手荒く扱っても構わん。口さえ無事ならばな。ついでに動けないように縛っとけ。……馬の用意をしろ! すぐ出かける」

 反射的に返事をしながら侍女達は命じられるがままに次々とその場を去って行った。
 残ったのは侍女長のみであり、エアハルトが寝室の前に着いたときにもまだ後ろで控えていた。
 責めるような侍女長の視線に呆れながらエアハルトは答える。

「お前はもういい。下がっていろ」
「旦那様が外へ行く間、私が奥様の面倒を看ます」
「いや、今のお前は冷静さを欠いているようだ。少し、部屋に戻って休んでいろ。お前の無礼もそれで不問だ」
「……旦那様!」

 エアハルトに侍女長の言葉はまったく伝わっていない。
 無情にもエアハルトは寝室に入り、拒絶するように扉を目の前で固く閉ざした。
 こうなっては無理やり押し掛けることもできない。
 ため息が出そうになるのをなんとか耐えて、侍女長はその場を去った。

 ……エアハルトはロゼ奥様に嘘をついている。
 今までは真実を話さないだけで嘘はつかなかったエアハルトが、今は意思を持ってロゼに嘘をつこうとする。
 そもそもが仕事や任務以外では面倒で嘘や煽ての類は口にしないエアハルトだ。
 一体どういう心境の変化なのか。
 そしてこのままルナの言っていること全てをただの虚実とし、様々な波乱を齎した出来事を有耶無耶にするつもりのエアハルト。
 不器用だがロゼに決して嘘をつかないエアハルトと今の人目も憚らず可愛がって嘘をついて無理やり問題を片付けようとするエアハルト。
 ロゼには正直に全て話してほしいとエアハルトに願いながら、侍女長自身が何が正しく何が悪いのか分からなかった。
 これも全て情報不足が原因である。
 エアハルトとルナの間には男女特有の何かがあることは確かだろう。
 そしてライナスという存在が思いのほか重要であること。
 ルナは悪意はあるが嘘はつかない。
 嘘をつくにはあまりにも考えが浅く、物事を知らなすぎる。
 だがそんなルナはある意味では絶好の操り人形であり、誰でも簡単に操作できそうだ。
 ルナの言葉のどこまでが本当でどこからが嘘なのか。
 あるいは全て真実で、全てが嘘なのか。

 答えの鍵どころか、その全てを知っているのはライナスのみであろう。

 考え込むように廊下を足早で進みながら侍女長は覚悟した。
 姿勢良く歩き、老婆とは思えぬほど精気に満ちたその顔は歴戦の戦士に他ならなかった。

(誰か、協力者が必要ね……)

 少しでもロゼの心に報いるために。

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