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4章 おまじないがもたらすモノ
14 私の趣味
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「ーー読書、ですか?」
「はい。お父様からたくさん本を頂くので、それで……」
「へぇ……すごいな。僕なんかは本を開くと途端に眠くなってしまって、まともに本を読めない体質なんです」
「ふふっ、私もそうですよ。本を開くと途端にあくびが出てしまいますから」
「そうなんですかっ⁉︎」
「ええ。だから私の本当の趣味はお昼寝かもしれません」
「へぇ……何だか意外だな。僕もよく晴れた日なんかは木陰に寝そべって空に浮かぶ白い雲を眺めながら昼寝するんです。あっ! だからさっきローレライ嬢が僕の事をまるで空に浮かぶ雲のようだと言ってくれた時はすごく嬉しかったんです。ありがとうございます!」
ナイトハルト様はまるで幼い子供のように白い歯を惜しげもなく見せつけ、にっこりと笑います。
その笑顔を見ているだけでなんだか心が癒されます。
以前、お会いした時も思ったのですが、やはり不思議な感じがするお方ですね。ナイトハルト様は。
こうして話していると、自然と身体の力が抜けてしまいます。ありのままの自然体でいられると言えばいいのでしょうか。
ぐんぐんナイトハルト様のペースに引っ張られてしまいます。
「ーーあ、それにアップルパイを焼くのも好きですよ」
「美味しいですよねー! アップルパイ。酸味と甘味が絶妙でアップルパイだけでお腹いっぱいにしたいくらいです!」
「それすっごく分かります。今度、もし機会があればご馳走しますよ!」
「本当ですかっ⁉︎ やったあ!」
「でも、あまり期待しないでくださいね? ナイトハルト様のお口に合うかどうか分かりませんし……」
「ローレライ嬢が作ってくれた物なら絶対、美味しいに決まっているじゃないですか!」
「ふふっ、なぜです?」
「えっ? なぜって、それは……その……えっと……僕の勘です」
「ふふっ、勘ですか。当たるといいですね」
「はい。きっと当たります。必ず」
それから私達はしばらくの間、益体もない話しに花を咲かせました。
その途中、
「あっ! シンクロバードですよ!」
興奮したご様子のナイトハルト様が声をあげます。
私は窓を覗くナイトハルト様のすぐ隣へと顔を近づけ、ナイトハルト様と同じように空を仰ぎます。
そこには確かに二十羽ほどの群れで空を行くシンクロバードが気持ちよさそうに飛んでいました。
私のほんの数センチ隣、わずかに動けば触れてしまうそんな距離に男性の顔が迫ります。
ですが、不思議と嫌な気持ちにはなりませんでした。
抵抗……というか、恥ずかしいと思う気持ちはありはしましたが。
「見ていてくださいよ。せーのっ!」
そんな私の気持ちなど知りもしないナイトハルト様は、膝の辺りで構えていた指をパチンと弾きました。
馬車内に乾いた音が響きます。
男性の力強い迫力のある良い音が鳴り響いたのですが、空を行くシンクロバードの群れは特に何のアクションを見せるでもなく空の彼方へと飛び去っていきました。
「ああ……失敗しちゃった」
そう、ポツリと呟いて残念そうにナイトハルト様は肩を落とします。
私は自然とそんなナイトハルト様を元気付けてあげたいと思っていまい、こんな提案をしました。
「いつか、とてもよく晴れた日にアップルパイをたくさん持ってピクニックに行きましょう。大きな木の下で白い雲を眺めながら食べたらきっとすごく楽しいですよ」
「…………」
「どうかしました? ナイトハルト様?」
「ーーっあ、ごめんなさい。ローレライ嬢が言った事を想像していたら夢中になってしまって……晴れた日に木陰でアップルパイだなんて、絶対楽しいだろうなって」
「ええ、きっと楽しいですよ」
「楽しみだなー!」
両手をぐっと握り肩を揺らしながらナイトハルト様は笑います。
とても幼い子供のように。
その時、馬車の扉が開かれお父様が顔を覗かせます。
「修理が終わりましたよ」
その一言で、私達の会話にも終わりが訪れたようです。
「はい。お父様からたくさん本を頂くので、それで……」
「へぇ……すごいな。僕なんかは本を開くと途端に眠くなってしまって、まともに本を読めない体質なんです」
「ふふっ、私もそうですよ。本を開くと途端にあくびが出てしまいますから」
「そうなんですかっ⁉︎」
「ええ。だから私の本当の趣味はお昼寝かもしれません」
「へぇ……何だか意外だな。僕もよく晴れた日なんかは木陰に寝そべって空に浮かぶ白い雲を眺めながら昼寝するんです。あっ! だからさっきローレライ嬢が僕の事をまるで空に浮かぶ雲のようだと言ってくれた時はすごく嬉しかったんです。ありがとうございます!」
ナイトハルト様はまるで幼い子供のように白い歯を惜しげもなく見せつけ、にっこりと笑います。
その笑顔を見ているだけでなんだか心が癒されます。
以前、お会いした時も思ったのですが、やはり不思議な感じがするお方ですね。ナイトハルト様は。
こうして話していると、自然と身体の力が抜けてしまいます。ありのままの自然体でいられると言えばいいのでしょうか。
ぐんぐんナイトハルト様のペースに引っ張られてしまいます。
「ーーあ、それにアップルパイを焼くのも好きですよ」
「美味しいですよねー! アップルパイ。酸味と甘味が絶妙でアップルパイだけでお腹いっぱいにしたいくらいです!」
「それすっごく分かります。今度、もし機会があればご馳走しますよ!」
「本当ですかっ⁉︎ やったあ!」
「でも、あまり期待しないでくださいね? ナイトハルト様のお口に合うかどうか分かりませんし……」
「ローレライ嬢が作ってくれた物なら絶対、美味しいに決まっているじゃないですか!」
「ふふっ、なぜです?」
「えっ? なぜって、それは……その……えっと……僕の勘です」
「ふふっ、勘ですか。当たるといいですね」
「はい。きっと当たります。必ず」
それから私達はしばらくの間、益体もない話しに花を咲かせました。
その途中、
「あっ! シンクロバードですよ!」
興奮したご様子のナイトハルト様が声をあげます。
私は窓を覗くナイトハルト様のすぐ隣へと顔を近づけ、ナイトハルト様と同じように空を仰ぎます。
そこには確かに二十羽ほどの群れで空を行くシンクロバードが気持ちよさそうに飛んでいました。
私のほんの数センチ隣、わずかに動けば触れてしまうそんな距離に男性の顔が迫ります。
ですが、不思議と嫌な気持ちにはなりませんでした。
抵抗……というか、恥ずかしいと思う気持ちはありはしましたが。
「見ていてくださいよ。せーのっ!」
そんな私の気持ちなど知りもしないナイトハルト様は、膝の辺りで構えていた指をパチンと弾きました。
馬車内に乾いた音が響きます。
男性の力強い迫力のある良い音が鳴り響いたのですが、空を行くシンクロバードの群れは特に何のアクションを見せるでもなく空の彼方へと飛び去っていきました。
「ああ……失敗しちゃった」
そう、ポツリと呟いて残念そうにナイトハルト様は肩を落とします。
私は自然とそんなナイトハルト様を元気付けてあげたいと思っていまい、こんな提案をしました。
「いつか、とてもよく晴れた日にアップルパイをたくさん持ってピクニックに行きましょう。大きな木の下で白い雲を眺めながら食べたらきっとすごく楽しいですよ」
「…………」
「どうかしました? ナイトハルト様?」
「ーーっあ、ごめんなさい。ローレライ嬢が言った事を想像していたら夢中になってしまって……晴れた日に木陰でアップルパイだなんて、絶対楽しいだろうなって」
「ええ、きっと楽しいですよ」
「楽しみだなー!」
両手をぐっと握り肩を揺らしながらナイトハルト様は笑います。
とても幼い子供のように。
その時、馬車の扉が開かれお父様が顔を覗かせます。
「修理が終わりましたよ」
その一言で、私達の会話にも終わりが訪れたようです。
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