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4章 おまじないがもたらすモノ
20 居場所
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あれからニルヴァーナ公爵夫妻はお帰りになり、その数時間後ニルヴァーナ公爵邸からベアトリック様の専属の侍女の方お二人がお越しになりました。
お二人はベアトリック様が産まれて間もない頃から仕えている大ベテランのようで、屋敷にお越しになるとすぐさま必要な物を運び、整理し、あっと言う間に支度を整えました。
ニルヴァーナ公爵邸から運ばれたそれらは、ポーンドット家の屋敷には一つもないような絢爛豪華な調度品で、それらが詰め込まれた現在の私の部屋は何だか私の部屋ではなくなってしまったかのよな錯覚を覚えてしまいます。
「ローレライ嬢、この部屋の手狭さはもう少しどうにかなりませんか?」
「どうにかと言われましても……見ての通りの小さな部屋ですし、どうにも……申し訳ありません」
「屋敷から運んだ調度品の半分も運び込めなかったのですよ?」
「ーーナリス、階級が違うのだからあまり無理を言うものではないわ」
「ナーシャ、ですが……これではあまりにも……」
「そうねぇ……」
ナーシャと呼ばれた侍女の方は右手を自身の顎に当て部屋中を見渡します。
そして、
「ーーうん。あの小さな机と椅子、それから古い姿見を外に運び出して下さい、ローレライ嬢」
「えっ……?」
「? 聞こえませんでしたか? 机と椅子、それに姿見です。早急に部屋の外へと運び出して下さい」
「はい……」
私はナーシャさんに言われるがまま椅子と姿見を部屋の外へと運び出し、最後に机を運ぼうとしましたが私一人の力ではビクともしなかったので、悪いとは思いましたが侍女の方お二人に協力を要請することにしました。
すると、
「ローレライ嬢、あなた何か勘違いをされてはいませんか? ここは貴方の屋敷でしょうが、私達はあくまでもベアトリックお嬢様に仕える身であって、あなたに仕えているわけではありませんわ」
「人手が必要ならこの屋敷の使用人を呼べば宜しいのではないですか?」
「…………」
「違いますかっ⁉︎」
「はい……」
お二人に圧倒されてしまい、唯々諾々とするしかない私でした。
「お嬢様ーーっと……へっ?」
険悪な空気感が漂う私の部屋に突如アンナが現れ、呆気にとられています。
「ええっと……。何で廊下に家具が出されていて……何だかお嬢様の部屋の雰囲気もずいぶん変わってしまって……これはいったい……?」
「ーーちょっ、ちょうどいい所に来てくれた! アンナ、この机を部屋の外に運ぶので手伝ってくださる?」
「えっ? えぇ、はい、もちろん」
「それではそっちを持ち上げてね? いい? せーのっ!」
私とアンナで机を廊下の隅の方に運び終えひと息ついていると、アンナは心配そうな表情を浮かべこんな事を聞いてきました。
「お嬢様……もしかして部屋を追い出された訳では……」
「まさか! でも……そんな風に見えても仕方ないわよね、これじゃ。でも、本当に追い出された訳ではないから心配しないで。それよりも今は大変な時期なんだから協力しないと、ね?」
「えぇ……それはそうなんですけど……分かってはいるんですけど……なんか……嫌な感じです」
アンナは可愛らしく口先を尖らせそう言います。
「それにあの二人、絶対に性格悪いーー」
と、私は咄嗟にアンナの口元を押さえ自室の開いたままになっているドアを見つめます。
「んー! むぅー!」
アンナの息遣いが手のひらに感じられて温かいです。
私は空いた方の手の人差し指を自身の口元に当て、静かにするよう合図を送ります。
「…………」
幸運な事に侍女の方お二人には何も聞こえていなかったようで、私の部屋のドアは変わらず静かに空いたままになっています。
私はホッと胸を撫で下ろし視線をアンナへと戻してみると、アンナはなぜか慈愛顔で私を見つめていて再びドキリとしてしまいました。
本当にもう……色々と大変で仕方ありません。
お二人はベアトリック様が産まれて間もない頃から仕えている大ベテランのようで、屋敷にお越しになるとすぐさま必要な物を運び、整理し、あっと言う間に支度を整えました。
ニルヴァーナ公爵邸から運ばれたそれらは、ポーンドット家の屋敷には一つもないような絢爛豪華な調度品で、それらが詰め込まれた現在の私の部屋は何だか私の部屋ではなくなってしまったかのよな錯覚を覚えてしまいます。
「ローレライ嬢、この部屋の手狭さはもう少しどうにかなりませんか?」
「どうにかと言われましても……見ての通りの小さな部屋ですし、どうにも……申し訳ありません」
「屋敷から運んだ調度品の半分も運び込めなかったのですよ?」
「ーーナリス、階級が違うのだからあまり無理を言うものではないわ」
「ナーシャ、ですが……これではあまりにも……」
「そうねぇ……」
ナーシャと呼ばれた侍女の方は右手を自身の顎に当て部屋中を見渡します。
そして、
「ーーうん。あの小さな机と椅子、それから古い姿見を外に運び出して下さい、ローレライ嬢」
「えっ……?」
「? 聞こえませんでしたか? 机と椅子、それに姿見です。早急に部屋の外へと運び出して下さい」
「はい……」
私はナーシャさんに言われるがまま椅子と姿見を部屋の外へと運び出し、最後に机を運ぼうとしましたが私一人の力ではビクともしなかったので、悪いとは思いましたが侍女の方お二人に協力を要請することにしました。
すると、
「ローレライ嬢、あなた何か勘違いをされてはいませんか? ここは貴方の屋敷でしょうが、私達はあくまでもベアトリックお嬢様に仕える身であって、あなたに仕えているわけではありませんわ」
「人手が必要ならこの屋敷の使用人を呼べば宜しいのではないですか?」
「…………」
「違いますかっ⁉︎」
「はい……」
お二人に圧倒されてしまい、唯々諾々とするしかない私でした。
「お嬢様ーーっと……へっ?」
険悪な空気感が漂う私の部屋に突如アンナが現れ、呆気にとられています。
「ええっと……。何で廊下に家具が出されていて……何だかお嬢様の部屋の雰囲気もずいぶん変わってしまって……これはいったい……?」
「ーーちょっ、ちょうどいい所に来てくれた! アンナ、この机を部屋の外に運ぶので手伝ってくださる?」
「えっ? えぇ、はい、もちろん」
「それではそっちを持ち上げてね? いい? せーのっ!」
私とアンナで机を廊下の隅の方に運び終えひと息ついていると、アンナは心配そうな表情を浮かべこんな事を聞いてきました。
「お嬢様……もしかして部屋を追い出された訳では……」
「まさか! でも……そんな風に見えても仕方ないわよね、これじゃ。でも、本当に追い出された訳ではないから心配しないで。それよりも今は大変な時期なんだから協力しないと、ね?」
「えぇ……それはそうなんですけど……分かってはいるんですけど……なんか……嫌な感じです」
アンナは可愛らしく口先を尖らせそう言います。
「それにあの二人、絶対に性格悪いーー」
と、私は咄嗟にアンナの口元を押さえ自室の開いたままになっているドアを見つめます。
「んー! むぅー!」
アンナの息遣いが手のひらに感じられて温かいです。
私は空いた方の手の人差し指を自身の口元に当て、静かにするよう合図を送ります。
「…………」
幸運な事に侍女の方お二人には何も聞こえていなかったようで、私の部屋のドアは変わらず静かに空いたままになっています。
私はホッと胸を撫で下ろし視線をアンナへと戻してみると、アンナはなぜか慈愛顔で私を見つめていて再びドキリとしてしまいました。
本当にもう……色々と大変で仕方ありません。
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