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4章 おまじないがもたらすモノ
24 豹変の理由
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「ーーと、いう訳なんです……」
「ああ……それでお姉ちゃんって……」
私はアンナが用意してくれた紅茶に口を付けながら、先ほどの騒ぎの詳細を聞いていました。
大声を出した事については特に説明は必要なかったのですが『お姉ちゃん』については詳しく聞いておきたかったので。
アンナの話を要約するとニルヴァーナ公爵邸からお見えになっている侍女お二人と話していると、そのあまりの理不尽さにまるで御実家にいる小さな弟さんと話しているような気になってしまい、ついいつもの癖でお説教をしてしまったのだとか。
だからこそ、あの場面で『私はあんた達のお姉ちゃんーー』なんて場違いな発言をしたという訳なのですね。
「ーーふっ、ふふふ」
「笑わないでくださいよお嬢様……次、あのお二人にお会いしたら私はいったいどんな顔すればいいか……」
「ごめんなさい。でも……ふふふっ」
「はうぅ……酷いですぅ……」
アンナはキッチンの一角で大きくうなだれ、もともと小さなその身体を今は限界近くまでさらに小さくしています。
していると、
「おやぁ? お嬢様、アンナがまーた何かやらかしたんですか?」
と、大きな麻袋を両手で抱えたパティが満面の笑みを浮かべながら揶揄するように言います。
「うるさいわね! 何でもないわよ! あんたは早くあっちに行きなさい!」
「おー! 怖い、怖い!」
パティはそそくさとキッチンの奥へと逃げていき、アンナはその背中を見ながら『あと、アンナ先輩!』と声を掛けましたが、残念ながらパティからの返答はありませんでした。
「ふふっ、パティはいつも元気ね」
「あいつは元気だけが取り柄のまだ子供なんですよ。悩みなんてこれっぽっちも無いんだから羨ましい限りです」
「けれど、アンナとしては少し嬉しくもあるんじゃない?」
「ーーえっ?」
「さっきの侍女の方々とはまた違った意味ではあるけれど、パティの事をまるで弟さんのように見ているんじゃない? 違う?」
「そっ、そんな事はっ……ないと……思います……」
「ふふふっ、けれどパティの話をする時ってアンナいつも嬉しそうな顔するのよ?」
「ーーっふぇ⁉︎」
「それにパティが屋敷で働いてくれるようになってからというもの、アンナが私に話してくれる事と言えばそのほとんどがパティ関連の話よ?」
「ーーそっ、そうでした⁉︎ 何かの間違いでは……」
「残念ながら間違いではないみたいね。今日は何を話すのかなっていつも気にしているから、私」
「なっ……なななっ……」
「それでももし私に間違いがあるのだとしたら……そうね……パティの事を弟ではなく、もっと別な存在として見ている、とか……?」
「あっ……あああっ……」
「例えば親友……あるいは幼馴染みとか……いえ、違うわね……どうもしっくりこない。あっ! アンナ、あなたもしかしてパティの事をーー」
「あぁー! お嬢様っ! Gです! Gの奴めが現れましたっ! ほらそこっ! 戸棚の陰に隠れましたっ!」
「いやぁぁぁー! どこ⁉︎ どこなの⁉︎ どこにいるのっ⁉︎ 嘘! 知りたくない! 何も見たくない!」
「はっ⁉︎ お嬢様! 足元に!」
「いやぁぁぁー! やだやだ! いやぁぁぁ!」
「お嬢様早く! 今のうちに客間へとお逃げください! ここは私、アンナが何としても死守してご覧に入れます!」
「ーーーーやぁぁぁ……」
「そうです! お嬢様! 少しでも遠くの方へお逃げください! Gの奴めが追ってこられないほど遠くへ!」
「何? 何? 何の騒ぎ? また、アンナ先輩何かやったの?」
「うっ……うるさいわね。何でもないわよ。あんたはいいから早く仕事に戻りなさい。ランドさんが怒ってるわよ、きっと」
「なんだぁ、つまんねーのっ。じゃあ戻ろ。にしても芋の皮剥きすぎて、手の皮まで剥けちゃったよ。ヒリヒリして痛ってぇー!」
「あっ……パティ!」
「ーーなんすか? アンナ先輩」
「手当てしてあげるから、ちょっとこっちに来なさいよ」
「おぉ? たまには優しいところもあるじゃん! アンナ!」
「せ、ん、ぱ、い!」
「いつもそれくらい優しかったら可愛いんだけどなー!」
「ーーっな⁉︎ なにをバカな事言って……と、特大の注射お見舞いするわよ⁉︎」
「俺、注射大っ嫌いー!」
「だったら、早くしなさい! まだ仕事残ってるんでしょう?」
「はーい、はーい!」
「返事は短く一回だけ!」
「まーた、怒る……」
「うるさいわね……。はぁっ……ごめんなさい、お嬢様」
「えー? 何? 何か言った? アンナちゃん?」
「ちゃん……。はぁっ、もう何でもいいわよ」
「じゃあ、アンナ!」
「それは絶対ダメ!」
「ケチー!」
「ああ……それでお姉ちゃんって……」
私はアンナが用意してくれた紅茶に口を付けながら、先ほどの騒ぎの詳細を聞いていました。
大声を出した事については特に説明は必要なかったのですが『お姉ちゃん』については詳しく聞いておきたかったので。
アンナの話を要約するとニルヴァーナ公爵邸からお見えになっている侍女お二人と話していると、そのあまりの理不尽さにまるで御実家にいる小さな弟さんと話しているような気になってしまい、ついいつもの癖でお説教をしてしまったのだとか。
だからこそ、あの場面で『私はあんた達のお姉ちゃんーー』なんて場違いな発言をしたという訳なのですね。
「ーーふっ、ふふふ」
「笑わないでくださいよお嬢様……次、あのお二人にお会いしたら私はいったいどんな顔すればいいか……」
「ごめんなさい。でも……ふふふっ」
「はうぅ……酷いですぅ……」
アンナはキッチンの一角で大きくうなだれ、もともと小さなその身体を今は限界近くまでさらに小さくしています。
していると、
「おやぁ? お嬢様、アンナがまーた何かやらかしたんですか?」
と、大きな麻袋を両手で抱えたパティが満面の笑みを浮かべながら揶揄するように言います。
「うるさいわね! 何でもないわよ! あんたは早くあっちに行きなさい!」
「おー! 怖い、怖い!」
パティはそそくさとキッチンの奥へと逃げていき、アンナはその背中を見ながら『あと、アンナ先輩!』と声を掛けましたが、残念ながらパティからの返答はありませんでした。
「ふふっ、パティはいつも元気ね」
「あいつは元気だけが取り柄のまだ子供なんですよ。悩みなんてこれっぽっちも無いんだから羨ましい限りです」
「けれど、アンナとしては少し嬉しくもあるんじゃない?」
「ーーえっ?」
「さっきの侍女の方々とはまた違った意味ではあるけれど、パティの事をまるで弟さんのように見ているんじゃない? 違う?」
「そっ、そんな事はっ……ないと……思います……」
「ふふふっ、けれどパティの話をする時ってアンナいつも嬉しそうな顔するのよ?」
「ーーっふぇ⁉︎」
「それにパティが屋敷で働いてくれるようになってからというもの、アンナが私に話してくれる事と言えばそのほとんどがパティ関連の話よ?」
「ーーそっ、そうでした⁉︎ 何かの間違いでは……」
「残念ながら間違いではないみたいね。今日は何を話すのかなっていつも気にしているから、私」
「なっ……なななっ……」
「それでももし私に間違いがあるのだとしたら……そうね……パティの事を弟ではなく、もっと別な存在として見ている、とか……?」
「あっ……あああっ……」
「例えば親友……あるいは幼馴染みとか……いえ、違うわね……どうもしっくりこない。あっ! アンナ、あなたもしかしてパティの事をーー」
「あぁー! お嬢様っ! Gです! Gの奴めが現れましたっ! ほらそこっ! 戸棚の陰に隠れましたっ!」
「いやぁぁぁー! どこ⁉︎ どこなの⁉︎ どこにいるのっ⁉︎ 嘘! 知りたくない! 何も見たくない!」
「はっ⁉︎ お嬢様! 足元に!」
「いやぁぁぁー! やだやだ! いやぁぁぁ!」
「お嬢様早く! 今のうちに客間へとお逃げください! ここは私、アンナが何としても死守してご覧に入れます!」
「ーーーーやぁぁぁ……」
「そうです! お嬢様! 少しでも遠くの方へお逃げください! Gの奴めが追ってこられないほど遠くへ!」
「何? 何? 何の騒ぎ? また、アンナ先輩何かやったの?」
「うっ……うるさいわね。何でもないわよ。あんたはいいから早く仕事に戻りなさい。ランドさんが怒ってるわよ、きっと」
「なんだぁ、つまんねーのっ。じゃあ戻ろ。にしても芋の皮剥きすぎて、手の皮まで剥けちゃったよ。ヒリヒリして痛ってぇー!」
「あっ……パティ!」
「ーーなんすか? アンナ先輩」
「手当てしてあげるから、ちょっとこっちに来なさいよ」
「おぉ? たまには優しいところもあるじゃん! アンナ!」
「せ、ん、ぱ、い!」
「いつもそれくらい優しかったら可愛いんだけどなー!」
「ーーっな⁉︎ なにをバカな事言って……と、特大の注射お見舞いするわよ⁉︎」
「俺、注射大っ嫌いー!」
「だったら、早くしなさい! まだ仕事残ってるんでしょう?」
「はーい、はーい!」
「返事は短く一回だけ!」
「まーた、怒る……」
「うるさいわね……。はぁっ……ごめんなさい、お嬢様」
「えー? 何? 何か言った? アンナちゃん?」
「ちゃん……。はぁっ、もう何でもいいわよ」
「じゃあ、アンナ!」
「それは絶対ダメ!」
「ケチー!」
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