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第1章 親から幸せを…
第4話 似てるね
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燦々と照らす太陽に、青い空、そして入道雲がもくもくと存在している。いかにも夏が来ることを感じさせるような景色だ。
「ついたー!どーぶつえん!どーぶつえん!」
そんな休日、私たちは多摩にある動物園にやってきていた。進吾は行きたかった動物園に着いて、絶賛大はしゃぎ中だ。
「1人でどっか行かないでよー」
「はーい!わかってるよ~」
そう言いつつも、ゲートの方へ走っていく。
「おい待て待てー、進吾ー」
それを見て旦那も追いかける。
そんな私はカメラで2人を追いかける。
「はい、いってらっしゃ~い」
係のお姉さんに明るく挨拶をされ、ゲートをくぐり抜ける。その先には木々に囲まれた道、その間を走る列車、そしてツルやガンなどの鳥類の住みかが広がっていた。
「わー!でんしゃだー!」
「危ないから走らないでー…」
子供の無邪気さには驚きと疲労、尊敬すら感じる。大人になるとそこまで元気にはしゃぐことはなくなってきた。
「父さんから離れちゃダメだぞー?迷子になるだろー?」
「はーい!」
「返事だけは良いんだけどなぁ…」
そう思った数時間後…
「あっ、ゾウさんいるよー!進吾ー!」
旦那は私たちよりも先に進んでおり、笑顔でこちらに手を振っている。
「なんで息子よりはしゃいでるのよあの人…」
「わーい!」
旦那のもとへ喜んで駆け寄る。旦那は進吾を肩車し、良く見えるようにしていた。
「流石親子だよね。似てるなー」
先ほど大人ははしゃぐ体力がないと思っていたがすぐに覆された。むしろ息子より楽しんでる気さえしてくるほどだ。私にはそんな体力なく、ゆっくりと2人の元へ歩いていった。
その後もペリカン、ライオン、キリンを見て回った。すると進吾が突然立ち止まった。
「つかれたー」
進吾は病気の影響により、前よりも疲れやすくなっていた。そのため何度か休憩を取ったり、園内を走る列車に乗ったりしながら回ってきたのだ。
「ここは電車ないからしょうがないよねー」
「じゃあ近くの休憩所で休もうか」
私たちは近くにあった休憩所に行き、イスに座った。そこで旦那はとある看板が目に入り、進吾に問いかけた。
「アイス、食べるか?」
「たべる!」
進吾は普段よりも元気良く返事をした。それもそのはず、アイスクリームは進吾の大好物だからだ。
旦那は返事を聞くや否や、すぐに買いに行った。数分経ち、バニラアイスを3つ持って戻ってきた。
「はい、進吾!」
「ありがとー」
受け取り、パクパクと食べ始める。
「ほい、愛美」
旦那は私にアイスを差し出す。
「私には聞かなかったのに…ありがと」
「どうせ食べるだろ」
「良くわかってるじゃん」
進吾のアイス好きも恐らく私の影響だろう。私が大のアイス好きだということを理解していて聞かなかったのだと察した。
「つめたーい!おいしー!」
「今日は暑いしちょうどいいかもね」
食べ終わると、私たちは列車に乗って他の動物を見に行った。途中旦那がオランウータンにガン見され威嚇されたり、レッサーパンダに癒されたりしていた。気づけばもう夕暮れ。閉園が近くなると、私たちはお土産を選び始めた。
「このゾウさんほしいー!」
進吾が手に取ったのはアフリカゾウのぬいぐるみ。触ってみるともふもふしていてとても癒されるものだった。
「進吾はゾウさん好きだなー。いいぞー買っちゃおうか」
「やったー!ありがとお!」
旦那もノリノリで承諾していた。
すると進吾が私にニヤニヤと笑い、話しかけてきた。
「これ、パパ」
「え?パパ、ハシビロコウ?」
息子曰く似ているらしく、2人でクスクスと笑っていた。それを聞いて気に入ったのか、こっそりハシビロコウのグッズを買っていたことは秘密にしておこう。
私は進吾用にパンダのフォークとスプーン、旦那と私でネコとハシビロコウのコップをそれぞれ買った。きっとこれは1番幸せだった頃の形見になるだろう。
「ついたー!どーぶつえん!どーぶつえん!」
そんな休日、私たちは多摩にある動物園にやってきていた。進吾は行きたかった動物園に着いて、絶賛大はしゃぎ中だ。
「1人でどっか行かないでよー」
「はーい!わかってるよ~」
そう言いつつも、ゲートの方へ走っていく。
「おい待て待てー、進吾ー」
それを見て旦那も追いかける。
そんな私はカメラで2人を追いかける。
「はい、いってらっしゃ~い」
係のお姉さんに明るく挨拶をされ、ゲートをくぐり抜ける。その先には木々に囲まれた道、その間を走る列車、そしてツルやガンなどの鳥類の住みかが広がっていた。
「わー!でんしゃだー!」
「危ないから走らないでー…」
子供の無邪気さには驚きと疲労、尊敬すら感じる。大人になるとそこまで元気にはしゃぐことはなくなってきた。
「父さんから離れちゃダメだぞー?迷子になるだろー?」
「はーい!」
「返事だけは良いんだけどなぁ…」
そう思った数時間後…
「あっ、ゾウさんいるよー!進吾ー!」
旦那は私たちよりも先に進んでおり、笑顔でこちらに手を振っている。
「なんで息子よりはしゃいでるのよあの人…」
「わーい!」
旦那のもとへ喜んで駆け寄る。旦那は進吾を肩車し、良く見えるようにしていた。
「流石親子だよね。似てるなー」
先ほど大人ははしゃぐ体力がないと思っていたがすぐに覆された。むしろ息子より楽しんでる気さえしてくるほどだ。私にはそんな体力なく、ゆっくりと2人の元へ歩いていった。
その後もペリカン、ライオン、キリンを見て回った。すると進吾が突然立ち止まった。
「つかれたー」
進吾は病気の影響により、前よりも疲れやすくなっていた。そのため何度か休憩を取ったり、園内を走る列車に乗ったりしながら回ってきたのだ。
「ここは電車ないからしょうがないよねー」
「じゃあ近くの休憩所で休もうか」
私たちは近くにあった休憩所に行き、イスに座った。そこで旦那はとある看板が目に入り、進吾に問いかけた。
「アイス、食べるか?」
「たべる!」
進吾は普段よりも元気良く返事をした。それもそのはず、アイスクリームは進吾の大好物だからだ。
旦那は返事を聞くや否や、すぐに買いに行った。数分経ち、バニラアイスを3つ持って戻ってきた。
「はい、進吾!」
「ありがとー」
受け取り、パクパクと食べ始める。
「ほい、愛美」
旦那は私にアイスを差し出す。
「私には聞かなかったのに…ありがと」
「どうせ食べるだろ」
「良くわかってるじゃん」
進吾のアイス好きも恐らく私の影響だろう。私が大のアイス好きだということを理解していて聞かなかったのだと察した。
「つめたーい!おいしー!」
「今日は暑いしちょうどいいかもね」
食べ終わると、私たちは列車に乗って他の動物を見に行った。途中旦那がオランウータンにガン見され威嚇されたり、レッサーパンダに癒されたりしていた。気づけばもう夕暮れ。閉園が近くなると、私たちはお土産を選び始めた。
「このゾウさんほしいー!」
進吾が手に取ったのはアフリカゾウのぬいぐるみ。触ってみるともふもふしていてとても癒されるものだった。
「進吾はゾウさん好きだなー。いいぞー買っちゃおうか」
「やったー!ありがとお!」
旦那もノリノリで承諾していた。
すると進吾が私にニヤニヤと笑い、話しかけてきた。
「これ、パパ」
「え?パパ、ハシビロコウ?」
息子曰く似ているらしく、2人でクスクスと笑っていた。それを聞いて気に入ったのか、こっそりハシビロコウのグッズを買っていたことは秘密にしておこう。
私は進吾用にパンダのフォークとスプーン、旦那と私でネコとハシビロコウのコップをそれぞれ買った。きっとこれは1番幸せだった頃の形見になるだろう。
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