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第2章 子から幸せを…
第39話 クラゲとイルミネーション
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「進吾、窓見てみな?海が見えるぞ」
車で移動してる途中、広々とした海が一面に広がっていた。
「あっ!進吾、あれが江ノ島だよ」
私は指を指して進吾に教える。島が見え、展望台が立っている。
「あそこがイルミネーションされる場所らしいよ」
「そうなんだ。たのしみだなー」
車から降り、特に気にすることもなく、進吾は車イスに乗った。道を進んでいくと、水族館に着いた。チケットを買ってすぐに入場する。中に入れば水槽が各所に設置されていて、その周りは子供や大人たちがジッと眺めていた。
「この子シマウマみたい」
「ほんとだ」
身体には白と黒がストライプ状に描かれている。旦那が近くにあった看板で名前を見てみる。
「イシダイって言うみたいだぞ」
「へー、イシダイっていうんだ」
そのまま道なりに行くと、大きな水槽に出会った。エイなどの魚たちが優雅に泳いでいた。その中でも特に私が惹かれたのはイワシの群れだった。銀色に輝いたイワシの大群がうねり泳ぎ、小魚の渦を形成していた。
「うみのなかみたい!」
「そうだね。本当に綺麗」
進吾を水槽の近くに移動させると、目の前にエイが寄ってきた。
「あっ!エイがわらってる」
エイは私たちの目の前で、お腹を見せながら上に昇っていく。そのお腹にはこちらを見て優しく笑う顔のようなものがあった。
「こんな近くで見れるなんてラッキーだね」
「あのかおすき」
そう言ってこちらを振り返り、エイの笑顔を真似てみる進吾。
「似てる似てる」
とても愛くるしい瞬間だった。水槽の前で、さっき私に見せた表情をして写真を撮った後、ここを去り先に進んだ。
通路を進んでいくと開けたエリアを見つけた。全体的に青暗く、宇宙のような空間だ。一番最初に目に入ったのが球体型の水槽だ。その中ではクラゲがゆるりふわりと漂っている。水槽の明かりはどこか青く、幻想的に感傷的に感じてくる。
「ここがいちばんすきかも」
「そうなの?進吾が好きなの、あのエイがいるところかと思ってたよ」
落ち着いていて、ちょっぴり大人びたところが好きなのだろうか、私としては意外だった。進吾はボーッとクラゲを見つめていた。
「好きなのか?クラゲ?」
旦那が進吾と同じ目線にしゃがんで、同じクラゲを見つめる。
「なんかすきかも」
「へぇー、進吾はゆっくりした動物が好きなのかもな。ゾウとかもさ」
他にも展示されているクラゲをゆったりと見て回りながら、進吾とクラゲのツーショット写真を撮る。今まで撮った明るいものとは違い、どこか儚さを感じる1枚となった。
回っている道中にいたクマノミとにらめっこした後、進吾が次に会ったのはペンギンとアザラシだ。
「可愛いー」
私たちはペンギンのいる水槽に駆け寄り、進吾が見えるように抱えて見る。陸にいるペンギンはよちよちとぎこちない動きで歩いていて、とても可愛らしかった。
「あっ、こっちみた!」
すると一匹のペンギンがこちらを見たが、すぐに視線を逸らしてしまった。
「こっち見た瞬間に写真を撮りたいね」
「こっち見てくれるかな?」
何枚か写真を撮ってみたがなかなかこちらを向かず断念した。その後は丸い体にくりっとした目が特徴的なアザラシのいるところに移動した。水槽の中をぐるぐると泳ぐアザラシに進吾は追いかけようとタイヤを回す。
「はいはい、押すから大丈夫だよ」
車イスを押してアザラシと同じ方向に進む。壁が近くなるとくるりと華麗なターンをして来た道を戻っていった。アザラシを見てそのまま進むと、大きなプールとスタジアムを見つけた。
「ここなに?」
「ここはイルカショーのところだね」
「えっ!みたいみたい!」
旦那がショーの予定を確認して言う。
「今からちょうど昼食食べ終わった頃ぐらいに始まるみたいだね」
「じゃあ先にご飯食べてその後にイルカショー見よっか」
「うん。ぜったいみたい」
そこでは海の生物をモチーフにしたご飯や飲み物、絵などがたくさんあるフードコートで食事を済ませることにした。昼食を終えた私たちはイルカショーを見ることにした。大きく深い水槽の中にイルカたちが入場してくる。入場してきた時には、大きな拍手と歓声があがっていた。
「おぉーイルカさんきた!」
進吾も大興奮の様子だ。飼育員さんがイルカにエサをあげると、すいすいと水槽を泳いでいった。そしてイルカが高くジャンプすると、水しぶきが水槽を越えて飛んでくる。
「うぉー危ね!かかるところだったよ」
旦那の真横の人に思いっきり水がかかった。それを見て進吾がニヤニヤしながら旦那を見て言う。
「おしかったね」
その言葉に私と旦那で笑う。ショーは10分程続き、その間私たちは大きく盛り上がった。イルカたちが退場し、ショーが終わると、進吾は満足そうな表情をしていた。
「たのしかった!イルカすごかった!」
「そうだね。ジャンプすごい高かったね」
感想を言い合いながら他の展示場所も回った後、水族館を出て、私たち3人は海の方へ移動した。
目の前にはこれから行く予定の江ノ島とそれに続く橋があった。進吾も多少なら歩けるため、車イスから降りて海の水を触りに行った。
「気をつけてね?」
「うん。だいじょうぶ」
私の手を握ってゆっくりと海まで歩いていく。しゃがんで浜辺まで来た波に触れる。
「うわぁ!つめたーい!」
「そりゃ冬の海だもんな」
旦那が冷静にツッコむ。私も試しに触れてみたが、かなり冷えていた。風も冷たかったため、その場を離れて、いよいよ江ノ島に向かうことにした。
長い長い橋を渡って江ノ島へと向かった。時間帯はもうすっかり夕暮れだ。その道中では疲れてしまい、進吾は車いすに座って静かに眠っていた。
私たちは頂上まで登り、メインとなる会場に到着した。その頃には進吾も起きていて、とても上機嫌だった。入場するとまだイルミネーションはまだ始まっておらず、一面暗い状態だった。私たちは入口から少し歩いて、イスと照明の置かれた小さなテーブルに腰をかけて点灯されるまで待つことにした。
「あー疲れたね。どうだった水族館は?」
「ちょうたのしかった!」
満面の笑みで答える。私たちもその答えにホッとし、笑みをこぼす。
「そろそろ時間じゃないか?」
旦那は腕時計で時間を確認し、点灯時間になったことを知らせてくれる。
「いぇーい!たのしみにしてたー」
進吾もワクワクしていて、目が輝いていた。その時、暗く周りが見えなかった、ここら一帯を一斉に照らし始めた。カラフルに光り輝く建物や植物。先ほどまでは暗くて見えなかったが、光り輝くオブジェクトが至るところに配置されていた。そして展望台から黄色い光の線が四方八方に繋がれている。
「よし、ちょっと歩いて見に行くか」
旦那がそう言って立ち上がり、会場をぐるぐると歩き始める。最初に目に入ったのは、キラキラと紫色に光るアーチだ。
「うわーきれい!はいってみたい」
大勢の人とともに前へとゆっくりとくぐって進んでいく。どこを向いても明るい紫の光が入り込んでくる。目をぱちぱちしながら私は言う。
「なんか目がおかしくなりそうだよ」
心なしか頭が少しボーッとするような気がした。だが私とは対照的に進吾と旦那はその照明の綺麗さに、テンションが上がっていた。アーチをくぐり抜け、他のところへ移動する。
根元が青や紫に光っている森に行った。良く見てみると、木には明かりの珠が実っていた。そんな木々に囲まれると幻想的で不思議な気持ちになってくる。
「なんかファンタジーの世界にいるみたい」
「ね!おまつりみたい」
綺麗な景色に癒されながらその会場を1周ほどする。写真をたくさん撮ってゆっくりとした後、進吾が私たちに言った。
「きょうはありがとね」
「良いんだよ。楽しかった?」
「うん。さいこうだった!」
「良かった。連れてきた甲斐があったよ」
私たちはなかなか会場を出ず、この綺麗な景色を眺めていた。そんな時に旦那がためらいながら切り出す。
「一旦ここから出るか?」
ここから出た後は特に予定がなく、帰る予定だ。旦那も帰るのが惜しそうだったが、時間を見て渋々話し出した。
「んー……そうする」
進吾はまだ帰りたくなさそうだったが、それよりも疲れがきていたのだろう。考え込んだ末に帰ることを決意した。
会場を離れてもイルミネーションは島全体でされていた。明るく照らされた道を進みながら島を離れた。そして車に到着する。車に乗り込んで、旦那はため息をする。
「よし……出発するぞ」
「はーい……」
江ノ島を背に私たちは家に向かって走り出した。窓からは明るい江ノ島と海が見える。進吾はそれを静かに眺めていた。
車で移動してる途中、広々とした海が一面に広がっていた。
「あっ!進吾、あれが江ノ島だよ」
私は指を指して進吾に教える。島が見え、展望台が立っている。
「あそこがイルミネーションされる場所らしいよ」
「そうなんだ。たのしみだなー」
車から降り、特に気にすることもなく、進吾は車イスに乗った。道を進んでいくと、水族館に着いた。チケットを買ってすぐに入場する。中に入れば水槽が各所に設置されていて、その周りは子供や大人たちがジッと眺めていた。
「この子シマウマみたい」
「ほんとだ」
身体には白と黒がストライプ状に描かれている。旦那が近くにあった看板で名前を見てみる。
「イシダイって言うみたいだぞ」
「へー、イシダイっていうんだ」
そのまま道なりに行くと、大きな水槽に出会った。エイなどの魚たちが優雅に泳いでいた。その中でも特に私が惹かれたのはイワシの群れだった。銀色に輝いたイワシの大群がうねり泳ぎ、小魚の渦を形成していた。
「うみのなかみたい!」
「そうだね。本当に綺麗」
進吾を水槽の近くに移動させると、目の前にエイが寄ってきた。
「あっ!エイがわらってる」
エイは私たちの目の前で、お腹を見せながら上に昇っていく。そのお腹にはこちらを見て優しく笑う顔のようなものがあった。
「こんな近くで見れるなんてラッキーだね」
「あのかおすき」
そう言ってこちらを振り返り、エイの笑顔を真似てみる進吾。
「似てる似てる」
とても愛くるしい瞬間だった。水槽の前で、さっき私に見せた表情をして写真を撮った後、ここを去り先に進んだ。
通路を進んでいくと開けたエリアを見つけた。全体的に青暗く、宇宙のような空間だ。一番最初に目に入ったのが球体型の水槽だ。その中ではクラゲがゆるりふわりと漂っている。水槽の明かりはどこか青く、幻想的に感傷的に感じてくる。
「ここがいちばんすきかも」
「そうなの?進吾が好きなの、あのエイがいるところかと思ってたよ」
落ち着いていて、ちょっぴり大人びたところが好きなのだろうか、私としては意外だった。進吾はボーッとクラゲを見つめていた。
「好きなのか?クラゲ?」
旦那が進吾と同じ目線にしゃがんで、同じクラゲを見つめる。
「なんかすきかも」
「へぇー、進吾はゆっくりした動物が好きなのかもな。ゾウとかもさ」
他にも展示されているクラゲをゆったりと見て回りながら、進吾とクラゲのツーショット写真を撮る。今まで撮った明るいものとは違い、どこか儚さを感じる1枚となった。
回っている道中にいたクマノミとにらめっこした後、進吾が次に会ったのはペンギンとアザラシだ。
「可愛いー」
私たちはペンギンのいる水槽に駆け寄り、進吾が見えるように抱えて見る。陸にいるペンギンはよちよちとぎこちない動きで歩いていて、とても可愛らしかった。
「あっ、こっちみた!」
すると一匹のペンギンがこちらを見たが、すぐに視線を逸らしてしまった。
「こっち見た瞬間に写真を撮りたいね」
「こっち見てくれるかな?」
何枚か写真を撮ってみたがなかなかこちらを向かず断念した。その後は丸い体にくりっとした目が特徴的なアザラシのいるところに移動した。水槽の中をぐるぐると泳ぐアザラシに進吾は追いかけようとタイヤを回す。
「はいはい、押すから大丈夫だよ」
車イスを押してアザラシと同じ方向に進む。壁が近くなるとくるりと華麗なターンをして来た道を戻っていった。アザラシを見てそのまま進むと、大きなプールとスタジアムを見つけた。
「ここなに?」
「ここはイルカショーのところだね」
「えっ!みたいみたい!」
旦那がショーの予定を確認して言う。
「今からちょうど昼食食べ終わった頃ぐらいに始まるみたいだね」
「じゃあ先にご飯食べてその後にイルカショー見よっか」
「うん。ぜったいみたい」
そこでは海の生物をモチーフにしたご飯や飲み物、絵などがたくさんあるフードコートで食事を済ませることにした。昼食を終えた私たちはイルカショーを見ることにした。大きく深い水槽の中にイルカたちが入場してくる。入場してきた時には、大きな拍手と歓声があがっていた。
「おぉーイルカさんきた!」
進吾も大興奮の様子だ。飼育員さんがイルカにエサをあげると、すいすいと水槽を泳いでいった。そしてイルカが高くジャンプすると、水しぶきが水槽を越えて飛んでくる。
「うぉー危ね!かかるところだったよ」
旦那の真横の人に思いっきり水がかかった。それを見て進吾がニヤニヤしながら旦那を見て言う。
「おしかったね」
その言葉に私と旦那で笑う。ショーは10分程続き、その間私たちは大きく盛り上がった。イルカたちが退場し、ショーが終わると、進吾は満足そうな表情をしていた。
「たのしかった!イルカすごかった!」
「そうだね。ジャンプすごい高かったね」
感想を言い合いながら他の展示場所も回った後、水族館を出て、私たち3人は海の方へ移動した。
目の前にはこれから行く予定の江ノ島とそれに続く橋があった。進吾も多少なら歩けるため、車イスから降りて海の水を触りに行った。
「気をつけてね?」
「うん。だいじょうぶ」
私の手を握ってゆっくりと海まで歩いていく。しゃがんで浜辺まで来た波に触れる。
「うわぁ!つめたーい!」
「そりゃ冬の海だもんな」
旦那が冷静にツッコむ。私も試しに触れてみたが、かなり冷えていた。風も冷たかったため、その場を離れて、いよいよ江ノ島に向かうことにした。
長い長い橋を渡って江ノ島へと向かった。時間帯はもうすっかり夕暮れだ。その道中では疲れてしまい、進吾は車いすに座って静かに眠っていた。
私たちは頂上まで登り、メインとなる会場に到着した。その頃には進吾も起きていて、とても上機嫌だった。入場するとまだイルミネーションはまだ始まっておらず、一面暗い状態だった。私たちは入口から少し歩いて、イスと照明の置かれた小さなテーブルに腰をかけて点灯されるまで待つことにした。
「あー疲れたね。どうだった水族館は?」
「ちょうたのしかった!」
満面の笑みで答える。私たちもその答えにホッとし、笑みをこぼす。
「そろそろ時間じゃないか?」
旦那は腕時計で時間を確認し、点灯時間になったことを知らせてくれる。
「いぇーい!たのしみにしてたー」
進吾もワクワクしていて、目が輝いていた。その時、暗く周りが見えなかった、ここら一帯を一斉に照らし始めた。カラフルに光り輝く建物や植物。先ほどまでは暗くて見えなかったが、光り輝くオブジェクトが至るところに配置されていた。そして展望台から黄色い光の線が四方八方に繋がれている。
「よし、ちょっと歩いて見に行くか」
旦那がそう言って立ち上がり、会場をぐるぐると歩き始める。最初に目に入ったのは、キラキラと紫色に光るアーチだ。
「うわーきれい!はいってみたい」
大勢の人とともに前へとゆっくりとくぐって進んでいく。どこを向いても明るい紫の光が入り込んでくる。目をぱちぱちしながら私は言う。
「なんか目がおかしくなりそうだよ」
心なしか頭が少しボーッとするような気がした。だが私とは対照的に進吾と旦那はその照明の綺麗さに、テンションが上がっていた。アーチをくぐり抜け、他のところへ移動する。
根元が青や紫に光っている森に行った。良く見てみると、木には明かりの珠が実っていた。そんな木々に囲まれると幻想的で不思議な気持ちになってくる。
「なんかファンタジーの世界にいるみたい」
「ね!おまつりみたい」
綺麗な景色に癒されながらその会場を1周ほどする。写真をたくさん撮ってゆっくりとした後、進吾が私たちに言った。
「きょうはありがとね」
「良いんだよ。楽しかった?」
「うん。さいこうだった!」
「良かった。連れてきた甲斐があったよ」
私たちはなかなか会場を出ず、この綺麗な景色を眺めていた。そんな時に旦那がためらいながら切り出す。
「一旦ここから出るか?」
ここから出た後は特に予定がなく、帰る予定だ。旦那も帰るのが惜しそうだったが、時間を見て渋々話し出した。
「んー……そうする」
進吾はまだ帰りたくなさそうだったが、それよりも疲れがきていたのだろう。考え込んだ末に帰ることを決意した。
会場を離れてもイルミネーションは島全体でされていた。明るく照らされた道を進みながら島を離れた。そして車に到着する。車に乗り込んで、旦那はため息をする。
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「はーい……」
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