アヒルタイガー

ブルッキ

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エピソードファイナル

天罰

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アヒルタイガー
エピソードファイナル
天罰


「ここがジャック・オズワイルドのいる所か・・・。」
リュウキは道彦から教えられた住所の場所にきていた。
ちょうど近くに海があるらしく屋敷の向こう側は崖になっているようだ。
「こんにちはー、なんてしないよな、普通。」とか言いながらそっと敷地へ入っていき裏側へ回った。裏口へ回ると海が開けて見えてきた。ガラス戸が大きく開け放たれて屋敷内にすんなり入ることができた。
中に忍び込むと誰もいないようだった。簡単に屋敷の中を探したが誰もいない。
書斎の机の上にファイルがある。どこかで見たようなファイル・・・。あ、ヤギバラスに盗られたファイルだ・・・。周りを気にしながらそっとファイルから調査結果の書類を引っ張り出した。

―ジャック・オズワイルド アメリカ出身 父親はアメリカ人、母親は・・・

その時、リュウキの後ろに手が伸びてきた。リュウキの肩をつかむ。
「ひっ!」驚いて振り向きざまにその手を振り払う。
「いててて・・・。」
「は、博士。」
そこには辻チャノフ博士が手を押さえながら顔をしかめていた。
「あ、すいません。博士もオズワイルドの居場所を突き止めたんですか?」
リュウキが申し訳なさそうに謝った。
「そうじゃよ!いててて・・・。昔の研究仲間から連絡が入ってな。」
まだ、痛そうに手を押さえている。
「しかし、いないようだな。もう逃げてしまったのかもしれんな。」
「くそーッ。なんでわかったんだ。やっと決着がつくと思ったのに。」
リュウキが悔しがる。
「とにかく、辺りを見てくる。君は屋敷の中を見てくれ。十分に気をつけてな。」
「はい。了解しました。」
リュウキはファイルをとりあえず机の上に戻し、屋敷の中を丹念に調べ始めた。すると地下に行けるような階段を見つけた。
「ここから地下に行くのか・・・。」
リュウキは静かに階段を降りた。

地下に降りると実験室のような部屋があった。しかしそこにも誰もいない。
「やはり、すでにここにはいないのか・・・。」
リュウキは屋敷へと階段を昇った。
「博士の方はどうだったんだろ?」
リュウキは窓から外を見た。リュウキの背後から静かに人影が忍び寄る。スタンガンを持った手がリュウキに襲いかかったその時―
バシッ!
スタンガンと拳くらいの大きさの石がゴロゴロと転がる。
「ふーっ、オレのコントロール。衰えてないねー。」明が肩を回している。
「ま、間に合った・・・。」道彦が肩で息をしている。
リュウキが振り向いたその先には辻チャノフ博士が手を押さえて立っている。
「・・・?」事態が理解できないリュウキ。
「リュウキ!辻チャノフがオズワイルドなんだよ!」叫ぶ道彦。
「・・・?!」
後ずさり、振り向きざま逃げる辻チャノフ。


1時間前―
「お前なー、説明しろよ。なんでオレがわざわざ店閉めてお前の運転手しなきゃいけないんだよ!」
道彦を乗せたミニ・クーパーのハンドルを握りながら明が尋ねた。
「さっき先輩から電話があっただろ・・・・。」
先輩の電話―
「あ、わりぃ、ひとつ言い忘れたんだけどさ、お前、辻チャノフ博士ってのがオズワイルドのことを遺伝子工学学会で責めて行方不明になったって言ってたよな。MITの卒業名簿やら調べたけどさ、辻チャノフってのはどこにも出てこないぜ。それだけだ。じゃーまたな。」

「ということはさ・・・。どういうことだよ。」考えたふりをする明。
「よくわからないけど、そんな嘘の話をするなんて辻チャノフが怪しいよ。リュウキが危ないよ。急いで!」
明はアクセルを踏みしめた。
「オレの出番だな。肩がうなるぜ!」


岸壁にリュウキが辻チャノフ―オズワイルド―を追い詰める。
「どういうことだ!博士。あんたがオズワイルドなんて!」
リュウキが言い寄る。
バンッ!
足を押さえうずくまるリュウキ。足から血が流れている。
「残念だよ、リュウキ。私の実験対象に傷をつけることになってしまったじゃないか。」
オズワイルドの手には銃口から煙の上がったピストルが握られている。
「ま、しかし君がいなくなっても私はまた第2、第3のアヒルタイガーを作り出すことができるがね。クックックッ。」
オズワイルドを睨み付けるリュウキ。
「大丈夫か!」
そこに駆けつける明たち。オズワイルドの手にピストルがあることに気がつき後ずさる。
「リュウキ・・・。冥土の土産に話してあげよう。あの日―君が私の家に郵便を届けに来た日―私は君を待っていたのだよ。最強の人間を作り出すためにね・・・。そして私の教え子のボーノに怪物を作らせ君と戦わせたのだよ。さまざまなデータを集めるためにね。」
淡々と話すオズワイルドの顔は人相がまったく変わっている。
「君が戦ったあと何故私がすぐに駆けつけられたのか・・・。それは私が戦わせていたからだよ・・クックックッ。近くにいて当たり前じゃないか。」目を大きく見開くオズワイルド。
「怪我をしている君にわざわざ電話をしたのは君に戦わせるためだったのだよ。正義感の強い君は無理をしてでもやってくると思ったからね・・・。」
ピストルをリュウキに向けるオズワイルド。
「さよならだ。リュウキ君。いや、アヒルタイガー。」
ゴゴゴゴゴ・・・!
突然地鳴りが響いた。
「じ、地震だ!」明が叫ぶ。
ドン!下から突き上げるような揺れ。地面がひび割れる。
「うわ、うわーっ!」叫ぶオズワイルド。
突き出た岸壁の先にいたオズワイルドの足元が崩れ落ちる。オズワイルドの身体が海へと落ちて小さくなっていく。
地面に四つん這いになりただ眺めるだけのリュウキたち。
地震が収まったあと、リュウキたちは海に消えたオズワイルドの姿を探したが、二度と浮き上がってくることはなかった。


ジャック・オズワイルドここに眠る―
墓石にそう刻みこまれている。結局、オズワイルドの遺体が近くの海岸に漂着し、死亡が確認され埋葬された。ヤギバラスが奪っていったファイルの調査内容には、ジャック・オズワイルド アメリカ出身 父親はアメリカ人、母親はロシア系日本人、とあった。母親の旧姓は辻でその縁で日本に滞在していた。優秀な頭脳を持つ一方、野心家でプライドが高く、孤立していったらしい。
リュウキとレイナが墓の前に立っている。
「辻チャノフ博士がジャック・オズワイルドだったなんて・・・。」レイナがつぶやいた。
「実験のために利用されていたなんて・・・信じられないよ。」リュウキが天を仰ぐ。
「いくら優秀な人間でもその才能を何に使うのか。彼はその使い方を間違ったんだよ。世界中にそんな人間がたくさんいるんじゃないかな。」リュウキは振り向き歩きだした。
道端には色とりどりの花が咲き乱れている。
「私ね、野獣系の人がけっこう好きなんだ。」レイナがその後についてくる。
「野獣系?」リュウキが聞き返す。
「そう。アヒルタイガーみたいな。」そう言いながらレイナが腕を組んでくる。
「美女と野獣っていうじゃない?あ!ベッカムの奥さんのヴィクトリアって野獣系って言われてるのよ!」
「あの・・・何の話かわかんない・・・。」肩をすぼめてあきれるリュウキ。
二人の後姿が遠ざかっていく。
道端の小さな黄色いタンポポが陽だまりの中で春風にいつまでも揺れていた。


ジャック・オズワイルドの墓―
ガタッ、ガタッ。土の中で音がした。




アヒルタイガー 完
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