幼馴染のリスナーに媚びて人気者になりたい

久羽しん

文字の大きさ
226 / 265
第4章

148 ごちゃまぜ復活


「ん……!? と、というか、待ってな!? しゅーちゃんが、なおちゃんを好き……──っていうことは俺、今まで散々余計なことしちゃってたってこと……!?!」

 夕陽さんがハッとし、急に顔色を悪くして自分の口を押さえた。

「俺……ごめん!! ささ最低だったね!? なおちゃんに女の子を紹介しようとしたり、春川さんと二人きりにしようとしたり……っ」
「!! あっ……! い、いやでも、それは夕陽さんが知らなかったから……! 俺も秋風の気持ち、知らなかったから……。あの……同じです……」

 確かに、夕陽さんはめちゃくちゃ俺の恋愛をサポートしようとしてくれていた。俺が彼女欲しいといつも言っていたからだ。

 ──『なおちゃん、俺ら先に行ってるね。ファンということだから、積もる話もあるだろうし、ごゆっくり!』

 ──『いや、なおちゃん! 自信持っていこう! 少しでも気になるのなら、頑張ってみたら良いと思うよ。なおちゃんは魅力的だから大丈夫だ!』

 あの時も、あの時も……。俺はありがたいと思ったけど、夕陽さんにしてみれば秋風に余計なことしちゃったって思って焦ってしまうのかもしれない。

「こ、今後はお兄さん、間違った方向の後押ししないように気をつけるね……!! えっと、これからはなおちゃんとしゅーちゃんの仲が上手くいくように──」
「いやだから、アンタさっきの話聞いてた? そういうのが嫌なんだろ、アキくんは。お節介するなよ」
「……! あ……ッ」
「まあ……クソガキと同意見なのは癪だけど。僕も、無理にくっつけようとするのは良くないと思うよ。お試しということなら、今はまだなおの気持ちは分からないわけだからね。当人同士の問題で、僕らにできることはないし……。ユウ兄は、あれもこれもやってあげようとしてくれるタイプだけど、今回のことはあくまで相談されたら乗るスタンスで待ってた方がいいよ?」
「……! ……そ、そうか……。ごめん……そうだね、せいちゃん。俺は何もせず、静かに見守ります……!」

 珀斗と桃星に諌められ、夕陽さんが首をすくめて小声になっている。ガッツポーズも控えめだ。
 そこに、秋風が微笑んでお礼を言った。

「見守っていただけるのは、ありがたいです。この間も、夕陽くんが俺をごちゃハウスに呼び出してくれたおかげで波青と二人きりで話し合いができたので、感謝しています。先日は本当にありがとうございました」
「! あ……。あれは、黒さんとなおちゃんに頼まれてね……。しゅーちゃんに悪いかなと迷ったんだけど、少しでも二人の力になれたのなら良かったよ~!」

 縮こまっていた夕陽さんが途端に笑顔になり、元気を取り戻している。
 秋風のフォローはいつも適切なタイミングでさらっと嫌味もなくて、すごい。尊敬だ。

「そうだ! てか、お試し交際ってどのくらいの期間やるのっ?」

 桃星が興味津々に聞いてきたから、俺が答えた。

「三ヶ月間やろうってことになったぞ。秋風は忙しいし、あんまり会えることもないだろうから」
「そうなんだ~」
「三ヶ月が過ぎたら、俺と波青は元通りただの友達に戻ると思うけど、その後もみんなには気を遣わずに話してもらえると嬉しいかな。今まで通り、普通に接してくれたら……」
「オッケー! しゅーかとなおがどんなことになっても、変に腫れ物扱いなんてしないし、冷やかしもしないよ~! 大丈夫、任せて!」
「うんうん……! お兄さんも、どうなったかは絶対気になっちゃうんだけど、でも、そこは大人として聞かないように気をつける! 二人に気まずい思いさせないようにするよ!! そこら辺は心配しないでね、しゅーちゃん」
「桃星、夕陽くんありがとう」
「ありがとうございます!」

 秋風の普通に接してというお願いを快く受け入れてくれた桃星と夕陽さん。
 俺も一緒にお礼をしながら、……ん? と思った。

「……」

 (てか秋風、今、『俺と波青は元通りただの友達に戻ると思うけど』って……言ったな。……やっぱ、三ヶ月が過ぎた後、俺と本物の恋人になるって道は考えてないんだな……)

 どんなにお試しをやってみても、俺の気持ちは変わらないと悟っているからだろう。やっぱり秋風はこの期間、渋々俺の気持ちの整理に付き合ってくれるだけみたいだ。
 はなから期待されてないのは悲しいけど、でも俺もこれから自分の気持ちがどうなるかなんて分からないし、無責任に今『そんなことない! 三ヶ月経ったら絶対好きになってる! 友達には絶対戻らない!!』なんて否定することはできやしないのは確かだ。

「しゅーちゃん。その三ヶ月の期間、ごちゃまぜとしての活動はお休みしたい? 二人の関係がはっきりするまで、その方がいいかな??」
「あ……、……いえ。念のためご報告させていただきましたが、今回の件は活動とは全く関係のないことなので、できるだけグループへの影響が出ないようにしたいです。これ以上ごちゃまぜのファンのみなさんにもご心配をおかけしないよう、配信はこれまで通り続けさせていただきたいなと……」

 夕陽さんに聞かれて、秋風が返している。それに俺も賛同した。

「俺も秋風と同意見です! 動画のストックも心配だし、そろそろ活動再開しないとごちゃまぜが……」
「ううん。そういうのは、どうにかしようと思えばこっちでどうにかできるから気にしないでもらって大丈夫だよ。それより、俺は二人の精神面が心配だな。プライベートとの切り替えは、できそうかな……? まだ関係がはっきりと定まっていない状態で一緒にグループでの活動に戻るのは、気まずかったり、やりにくかったりしない……?」
「……! あ……、……お、俺は……たぶん、大丈夫です……」

 俺は夕陽さんに答えた後、秋風の顔をうかがって確認した。

 (いや、俺が大丈夫でも、秋風はキツいかも……。秋風に無理はさせたくないな)

 そう心配したが、しかし秋風は頼もしい表情で頷いていた。

「俺も問題ありません。アキとプライベートの自分自身は切り離して振る舞うので。……でも……万が一配信上でボロが出て妙な空気にしてしまったら申し訳ないですし、しばらくはあまり絡まないようにします。配信上で、アオとは」
「! うん、そうね。それが安全でいいと思うな」
「はい。波青も良いかな? それで」
「……! おう! そうしよう」

 秋風も大丈夫そうで良かった。元々配信上でアオとアキの絡みは少ないし、俺たちが絡まないように気をつけるのはきっとそう難しくない。
 最近は俺がBL営業とかいう申し訳ないことを一人でやっていたせいで、ややこしいことにしてしまっていたが……。

「せいちゃんも、体調はもう平気そう??」
「うんっ!! 僕はとっくのとうに回復してるよー! 大事な時にダウンしちゃってて、ごめんね?」
「いえいえ! 元気になったのなら安心だよ!! じゃあ、そうだな……今週の日曜からさっそく活動再開ってことでみんな大丈夫かなっ?」
「大丈夫です!!」
「おけ~い!」
「はい。大変ご迷惑をおかけしてしまいましたが、今後もどうかよろしくお願いいたします」
「!! うう……よろしくねっ、しゅーちゃん。本当にありがとうね」
「……なんか勝手に休止して勝手に始まってんだけど。ふざけた学芸会かよ」
「お前はうるさい! 黙ってなさい!!」

 しみじみと目を潤ませていた夕陽さんだが、珀斗の呟きには勢いよく叱っている。

「──よーし……!!」

 それから夕陽さんは、大きく一度手を叩いて号令をかけた。

「それじゃあ、今からしゅーちゃん残留祝いのパーティを開催します!! 定期配信も再開ーーー!! これにて、ごちゃまぜ大復活~~~!!!」
「いぇーい!!! しゅーか、やったぁー!!!」
「わー……!?」

 バンザイする桃星のテンションに合わせ、俺もパチパチ拍手をして盛り上げた。

「そうだっ! 記念にお兄さんが何か美味しいもの作ろう! なおちゃん、しゅーちゃん、今食べたいものはあるー!?」
「……!」
「え!! えーと……!」
「あっせいちゃん、グラスとつまみも出してくれる!? 乾杯しよう!!」
「ユウ兄オッケー! 僕たちのしゅーかに乾杯だー!!」
「……なは」

 はしゃぎ出した二人を見て、俺は思わず笑ってしまった。

 あまりにいつも通りだ。俺たちの日常が戻ってきた気がする。

「…………」

 秋風を見れば、びっくりしたのか目をぱちぱちと瞬かせている。こんなにもみんなにすんなり受け入れてもらえたことが驚きなのかもしれない。

「……秋風、俺たちも料理手伝おうぜ!!」
「……! あっ、うん……!」

 俺は戸惑う秋風の手を取り、立ち上がって夕陽さんたちを追いかけた。
感想 33

あなたにおすすめの小説

愛を感じないのに絶対に別れたくないイケメン俳優VS釣り合わないので絶対に別れたい平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
 平凡顔・ヒモ・家事能力無しの黒は、恋人であるイケメン俳優の九条迅と別れたがっている。それは周りから釣り合ってないと言われたり、お前の事を愛してない人間なんて止めておけと忠告されたからだ。だが何度黒が別れようとしても、迅は首を縦に振らない。  迅の弟である疾風は、兄は黒の事を特別扱いしてると言うが――。黒は果たして迅と別れることが出来るのか!?

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

過疎配信者の俺の声だけが大人気配信者を眠らせてあげれるらしい

スノウマン(ユッキー)
BL
 過疎配信者の白石 透(しらいし とおる)のリスナーには、透の声でないと寝れないというリスナー、太陽が居た。彼の為に毎日配信してあげたいが、病弱な透には週一程度が限度だった。  だが、それすら叶わなくなる。両親が金と手間のかかる透の事を追い出すことにしたのだ。そんな時に手を差し伸べてくれたのが太陽で、一緒に暮らすことになる。だが彼の正体は大人気配信者で!?

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

正義の味方にストーカーされてます。〜俺はただの雑魚モブです〜

ゆず
BL
俺は、敵組織ディヴァイアンに所属する、ただの雑魚モブ。 毎回出撃しては正義の戦隊ゼットレンジャーに吹き飛ばされる、ただのバイト戦闘員。 ……の、はずだった。 「こんにちは。今日もお元気そうで安心しました」 「そのマスク、新しくされましたね。とてもお似合いです」 ……なぜか、ヒーロー側の“グリーン”だけが、俺のことを毎回即座に識別してくる。 どんなマスクをかぶっても。 どんな戦場でも。 俺がいると、あいつは絶対に見つけ出して、にこやかに近づいてくる。 ――なんでわかんの? バイト辞めたい。え、なんで辞めさせてもらえないの? ―――――――――――――――――― 執着溺愛系ヒーロー × モブ ただのバイトでゆるーく働くつもりだったモブがヒーローに執着され敵幹部にも何故か愛されてるお話。 ※他サイトでも掲載しています。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。