幼馴染のリスナーに媚びて人気者になりたい

久羽しん

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第4章

148 ごちゃまぜ復活

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「ん……!? と、というか、待ってな!? しゅーちゃんが、なおちゃんを好き……──っていうことは俺、今まで散々余計なことしちゃってたってこと……!?!」

 夕陽さんがハッとし、急に顔色を悪くして自分の口を押さえた。

「俺……ごめん!! ささ最低だったね!? なおちゃんに女の子を紹介しようとしたり、春川さんと二人きりにしようとしたり……っ」
「!! あっ……! い、いやでも、それは夕陽さんが知らなかったから……! 俺も秋風の気持ち、知らなかったから……。あの……同じです……」

 確かに、夕陽さんはめちゃくちゃ俺の恋愛をサポートしようとしてくれていた。俺が彼女欲しいといつも言っていたからだ。

 ──『なおちゃん、俺ら先に行ってるね。ファンということだから、積もる話もあるだろうし、ごゆっくり!』

 ──『いや、なおちゃん! 自信持っていこう! 少しでも気になるのなら、頑張ってみたら良いと思うよ。なおちゃんは魅力的だから大丈夫だ!』

 あの時も、あの時も……。俺はありがたいと思ったけど、夕陽さんにしてみれば秋風に余計なことしちゃったって思って焦ってしまうのかもしれない。

「こ、今後はお兄さん、間違った方向の後押ししないように気をつけるね……!! えっと、これからはなおちゃんとしゅーちゃんの仲が上手くいくように──」
「いやだから、アンタさっきの話聞いてた? そういうのが嫌なんだろ、アキくんは。お節介するなよ」
「……! あ……ッ」
「まあ……クソガキと同意見なのは癪だけど。僕も、無理にくっつけようとするのは良くないと思うよ。お試しということなら、今はまだなおの気持ちは分からないわけだからね。当人同士の問題で、僕らにできることはないし……。ユウ兄は、あれもこれもやってあげようとしてくれるタイプだけど、今回のことはあくまで相談されたら乗るスタンスで待ってた方がいいよ?」
「……! ……そ、そうか……。ごめん……そうだね、せいちゃん。俺は何もせず、静かに見守ります……!」

 珀斗と桃星に諌められ、夕陽さんが首をすくめて小声になっている。ガッツポーズも控えめだ。
 そこに、秋風が微笑んでお礼を言った。

「見守っていただけるのは、ありがたいです。この間も、夕陽くんが俺をごちゃハウスに呼び出してくれたおかげで波青と二人きりで話し合いができたので、感謝しています。先日は本当にありがとうございました」
「! あ……。あれは、黒さんとなおちゃんに頼まれてね……。しゅーちゃんに悪いかなと迷ったんだけど、少しでも二人の力になれたのなら良かったよ~!」

 縮こまっていた夕陽さんが途端に笑顔になり、元気を取り戻している。
 秋風のフォローはいつも適切なタイミングでさらっと嫌味もなくて、すごい。尊敬だ。

「そうだ! てか、お試し交際ってどのくらいの期間やるのっ?」

 桃星が興味津々に聞いてきたから、俺が答えた。

「三ヶ月間やろうってことになったぞ。秋風は忙しいし、あんまり会えることもないだろうから」
「そうなんだ~」
「三ヶ月が過ぎたら、俺と波青は元通りただの友達に戻ると思うけど、その後もみんなには気を遣わずに話してもらえると嬉しいかな。今まで通り、普通に接してくれたら……」
「オッケー! しゅーかとなおがどんなことになっても、変に腫れ物扱いなんてしないし、冷やかしもしないよ~! 大丈夫、任せて!」
「うんうん……! お兄さんも、どうなったかは絶対気になっちゃうんだけど、でも、そこは大人として聞かないように気をつける! 二人に気まずい思いさせないようにするよ!! そこら辺は心配しないでね、しゅーちゃん」
「桃星、夕陽くんありがとう」
「ありがとうございます!」

 秋風の普通に接してというお願いを快く受け入れてくれた桃星と夕陽さん。
 俺も一緒にお礼をしながら、……ん? と思った。

「……」

 (てか秋風、今、『俺と波青は元通りただの友達に戻ると思うけど』って……言ったな。……やっぱ、三ヶ月が過ぎた後、俺と本物の恋人になるって道は考えてないんだな……)

 どんなにお試しをやってみても、俺の気持ちは変わらないと悟っているからだろう。やっぱり秋風はこの期間、渋々俺の気持ちの整理に付き合ってくれるだけみたいだ。
 はなから期待されてないのは悲しいけど、でも俺もこれから自分の気持ちがどうなるかなんて分からないし、無責任に今『そんなことない! 三ヶ月経ったら絶対好きになってる! 友達には絶対戻らない!!』なんて否定することはできやしないのは確かだ。

「しゅーちゃん。その三ヶ月の期間、ごちゃまぜとしての活動はお休みしたい? 二人の関係がはっきりするまで、その方がいいかな??」
「あ……、……いえ。念のためご報告させていただきましたが、今回の件は活動とは全く関係のないことなので、できるだけグループへの影響が出ないようにしたいです。これ以上ごちゃまぜのファンのみなさんにもご心配をおかけしないよう、配信はこれまで通り続けさせていただきたいなと……」

 夕陽さんに聞かれて、秋風が返している。それに俺も賛同した。

「俺も秋風と同意見です! 動画のストックも心配だし、そろそろ活動再開しないとごちゃまぜが……」
「ううん。そういうのは、どうにかしようと思えばこっちでどうにかできるから気にしないでもらって大丈夫だよ。それより、俺は二人の精神面が心配だな。プライベートとの切り替えは、できそうかな……? まだ関係がはっきりと定まっていない状態で一緒にグループでの活動に戻るのは、気まずかったり、やりにくかったりしない……?」
「……! あ……、……お、俺は……たぶん、大丈夫です……」

 俺は夕陽さんに答えた後、秋風の顔をうかがって確認した。

 (いや、俺が大丈夫でも、秋風はキツいかも……。秋風に無理はさせたくないな)

 そう心配したが、しかし秋風は頼もしい表情で頷いていた。

「俺も問題ありません。アキとプライベートの自分自身は切り離して振る舞うので。……でも……万が一配信上でボロが出て妙な空気にしてしまったら申し訳ないですし、しばらくはあまり絡まないようにします。配信上で、アオとは」
「! うん、そうね。それが安全でいいと思うな」
「はい。波青も良いかな? それで」
「……! おう! そうしよう」

 秋風も大丈夫そうで良かった。元々配信上でアオとアキの絡みは少ないし、俺たちが絡まないように気をつけるのはきっとそう難しくない。
 最近は俺がBL営業とかいう申し訳ないことを一人でやっていたせいで、ややこしいことにしてしまっていたが……。

「せいちゃんも、体調はもう平気そう??」
「うんっ!! 僕はとっくのとうに回復してるよー! 大事な時にダウンしちゃってて、ごめんね?」
「いえいえ! 元気になったのなら安心だよ!! じゃあ、そうだな……今週の日曜からさっそく活動再開ってことでみんな大丈夫かなっ?」
「大丈夫です!!」
「おけ~い!」
「はい。大変ご迷惑をおかけしてしまいましたが、今後もどうかよろしくお願いいたします」
「!! うう……よろしくねっ、しゅーちゃん。本当にありがとうね」
「……なんか勝手に休止して勝手に始まってんだけど。ふざけた学芸会かよ」
「お前はうるさい! 黙ってなさい!!」

 しみじみと目を潤ませていた夕陽さんだが、珀斗の呟きには勢いよく叱っている。

「──よーし……!!」

 それから夕陽さんは、大きく一度手を叩いて号令をかけた。

「それじゃあ、今からしゅーちゃん残留祝いのパーティを開催します!! 定期配信も再開ーーー!! これにて、ごちゃまぜ大復活~~~!!!」
「いぇーい!!! しゅーか、やったぁー!!!」
「わー……!?」

 バンザイする桃星のテンションに合わせ、俺もパチパチ拍手をして盛り上げた。

「そうだっ! 記念にお兄さんが何か美味しいもの作ろう! なおちゃん、しゅーちゃん、今食べたいものはあるー!?」
「……!」
「え!! えーと……!」
「あっせいちゃん、グラスとつまみも出してくれる!? 乾杯しよう!!」
「ユウ兄オッケー! 僕たちのしゅーかに乾杯だー!!」
「……なは」

 はしゃぎ出した二人を見て、俺は思わず笑ってしまった。

 あまりにいつも通りだ。俺たちの日常が戻ってきた気がする。

「…………」

 秋風を見れば、びっくりしたのか目をぱちぱちと瞬かせている。こんなにもみんなにすんなり受け入れてもらえたことが驚きなのかもしれない。

「……秋風、俺たちも料理手伝おうぜ!!」
「……! あっ、うん……!」

 俺は戸惑う秋風の手を取り、立ち上がって夕陽さんたちを追いかけた。
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