魔道竜 ーマドウドラゴンー

冰響カイチ

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第1章 禁断の魔道士

魔道竜(第1章、12)

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マストの先にいるのは確かに水の精霊ザルゴンだ。



水飛沫(みずしぶき)をあげる髪に凍り付きそうなまでに白くすべらかな肌。


見開かれた瞳は青い海のような紺碧(こんぺき)。


ふくよかな胸。


氷のドレスをまとい、長い裾からシャチ顔負けの大きな尾鰭(おひれ)をのぞかせる。



一見して氷彫さながらだ。



その姿からは先ほどまでの禍々しかったかつての姿を想像しがたい。月の光にてらされ神々しい。



水の精霊が再生し終えると役目を終えたセラフィムは月光の一部となり消え去ってしまった。



すると水の精霊ザルゴンは静かに語りかけはじめた。



『……人の子よ……』



それは口から発せられる言葉などではなく頭のなかにダイレクトにひびく今までに体感したことのない感覚だ。



『精霊条約の期限ぎれにより条約を結びなおさなければ、人の子の呼びかけに応じ手を貸す精霊はいないであろう。


人の子よ……よく聞くがよい。


ヘプロスの先に条約書がある。それを手に入れ新たなる条約を取り決めよ。さもなくば世界の均衡がやぶられ、黒き竜は暗黒へと導くであろう』



ザルゴンはその透き通るほど透明な指で丑寅(うしとら)の方角、北をさししめす。



『妾(わらわ)を救ってくれしそなたにこれを授けよう、受け取るがよい』



ザルゴンはキラキラと繊細な光をはなつ小さなかけらを投げ放った。



ティアヌがそれをうまくキャッチして手の中をのぞきこむと燦然(さんぜん)と輝く体温をもってしても溶かすことのできない氷の指輪だった。



それを手の中で転がす。



これこそ道標、精霊の導きなのだと確信した。


それを失くさないよう右手の薬指にはめこんだ。



『急ぐがよい、時の神殿へ』



水の精霊は海へと身をおどらせやがて海の一部となった。



いつの間にか船を取り囲んでいた水怪獣たちも深海の棲家(すみか)にもどったのか辺りは静寂をとりもどした。



セルティガは精霊の言葉をかみしめるようにボソッとつぶやいた。



「時の神殿?」


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