魔道竜 ーマドウドラゴンー

冰響カイチ

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第1章 禁断の魔道士

魔道竜(第1章、24)

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「船の針路を北よりに……こう海流の流れにそわせて……」



オーバンと今後の航路について打ち合わせの最中、



「船長~つきましたぜ~」



船員のなかでも一目おかれる通称とっつぁんが下船の合図を送った。



「オッケー!」



手をヒラヒラとふってかえす。



「それでね、エンタプルグの海岸ぞいに船を南下させたのち、コボル諸島を目指そうとおもうの。そのあと北緯三十二度をたもつようたえず羅針盤で確認してほしいの。こまかいようでこれは大事なポイントだから。


まぁ、ここまでは伝説どおりに事はすすんでいるから、かならずこの地点にあるはずよ」



「ですがこの海域はすでに何人もの冒険者や海賊が目星をつけ念入りにさらったとか。痕跡らしい痕跡も発見できず、すでに海賊すら鼻もひっかけない。そんな地点で大丈夫なんでしょうか」



「それはまぁ、腕のみせどころとでもいまは言っておきましょうか。ただ行っただけではダメなのよ、行っただけではね」



「なにかやらなければならないんですか?」



「それはナイショ。船乗りのおおくは海賊あがりだと聞いているから、信頼がおけないわけじゃないけど心底信頼できるとは言いがたい。それだからといって、べつにオーバンのことを信頼してないわけじゃないから。いい?」


「……は、はぁ」


「着いてからのお楽しみよ!」



「お楽しみ……ですか?」



オーバンの表情に一瞬翳(かげ)りをおびた。


信頼がおけないわけじゃない。


でも帰ってきたら船さらなかった、というのは本当によくあるらしい。
冒険にたつまえ、契約者によくよく注意されたほどだ。

信頼しあえるほど、長い付き合いがあるわけでもないから致し方ない。



「それじゃあ楽しみにしてますよ」



すぐにオーバンはいつもの顔色にもどった。



ティアヌとしては軽く釘をさしておいた、ぐらいのことでも、相手にしてみれば信頼してくれない上司のもとで働くのは考えもの、そう思われたかもしれない。


いやいや、言いたいことの趣旨さえ伝わっていれば誤解だとわかるだろう。


難しい。年上ばかりだから。学校の同級生相手だって難しいものを。



もし仮に手のひらを返す変事が起こるとしてもそれはいまではない。利害が一致しているそのときまでは。



「くれぐれも気をつけて下さい。この頃この街のいい噂を耳にしないもんですから」



「それ、どういうこと?」



「船乗り仲間では有名ですよ、近ごろこの街はおかしいって。なんでも何十人もの人がさらわれて人身御供か異国に売り払われているとか、とにかく行方不明者が続出で、神隠しだ!ってちまたの新聞が騒いでいるそうです」



「それ本当?」



「なんでも、さらわれた女が難をのがれ今もこの街に暮らしているとか。もし興味がおありでしたら一度たずねてみては」



「なんだか裏がありそう。ナイスな情報をありがとう」



女、ねぇ……。



オーバンの話からしてその女はかなり怪しい。



普通の神経の持ち主なら恐怖心にかられ、怖いおもいをしたその場所になど住みつづけたくないものである。


しかも犯人がつかまっておらず一件落着しているわけでもない。


ましてやまた人さらいに目をつけられたらどうしよう、と考えるのが人並みの神経というもの。



図太いのか、はたまたなにかしらの理由があってのことか。



どちらにしろ、たずねてみればわかることだ。



しかもこちらには女相手が苦にならないヤツがいる。



「ふふふっ」



ティアヌの不気味な微笑と目線の不協和音にセルティガは悪寒を感じ震え上がった。

その証拠にセルティガは肩をだきブルブルとしてその様子は遠目にも確認できたからだ。



さすが動物的な勘の持ち主。



「じゃあ行ってくるわ、あとを頼むわね」



「了解」



大きく手をふりながら船員をともないティアヌ一行は船を下船したのだった。









「つッ…くづく期待を裏切らない男」



当初はのりきでなかったセルティガは誰よりもカーニバルを満喫していた。



「ちょっとぉ、あの魔剣士……まるで飢えたハイエナみたいじゃなぁい?」



日が昇ると同時にはじまったカーニバルは今まさに絶好調の賑わいをみせる。


街じたいは島の規模をかんがえると比較的大きな街として五本の指にはいる。


だが普段の街の様子はといえば、さほど活気のあふれる街ではなかった。



人口・およそ約五百人、隔離された小さなサンゴ礁の浮き島に人がひしめきあうようにして暮らしている。



団塊世代が定年退職後に暮らしてみたい場所、第一位にあげられるほどのどかで、どこか懐かしいレトロ調の雰囲気がただようありふれた漁村の街並みだ。



「おぉぉぉ!」



セルティガは目の前を横切っていく踊り子の姿に歓喜の雄叫びをあげる。



その踊り子の姿はあられもない淫らな姿。おしげもなく露出する素肌に奇声をあげているのはセルティガだけではなかった。



あさりにホタテ?



いかにも色めき立つ男どもの喜びそうな趣向だ。



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