魔道竜 ーマドウドラゴンー

冰響カイチ

文字の大きさ
40 / 132
第1章 禁断の魔道士

魔道竜(第1章、39)

しおりを挟む


「何度いえばわかるの! 苦学生と呼ばないで」



「…んなことより、本当にデスマウンテンの地下に洞窟なんてあるのか? まさか踊らされてないか? 冒険の書っていったって、いつ書かれ誰がそれを書いたのかわかったもんじゃない」



「たしかに根拠もないし今となっては裏付ける証拠もない。でもあながちそうばかにしたもんじゃないわ。先人の知識や言い伝えってまれに根拠の上に裏付けされたこともあるもの」



「そうは言うが……お前は信じているのか?」



「当たり前じゃない。信じてなきゃこんなバカなことできないわよ」



冒険書の原本(オリジナル)は聖書が記されはじめた時期と同年代と考えてまず間違いない。


聖書の初期のものと冒険書の内容がかさなる文献らしきものが発見され、聖書と冒険書の信憑性が立証される形となったからだ。



少なくとも聖書が書かれたのは今よりさかのぼること数千年前、紀元前ということになる。


神々の時代を創世期とするのが一般的な解釈である。


その創世期の記憶をできるだけ正確にとどめておくことが可能なそんな時代に書かれたはずだ。



原本は精霊語で書かれ、その翻訳にたずさわった著者は実のところ一人ではないのだ。



幾多の時代の何人もの学者がてがけ、ようやく完成された。



起源をしることは人類の悲願でもある。その悲願を達成することで人は歴史を手にすることができる。ゆえに聖書と冒険書の翻訳は急務だった。



そこにあらゆる学者の見解などいっさいの介入せぬよう、いかに忠実に翻訳できるかに心血をそそいだとか。



そんな書物がペテンを語るなどありえない。真実は小説よりも奇なりだ。



そう考えると真実は冒険書に記され聖書には記されなかった……またその逆もしかり。



どちらかに何かしらのヒントが隠されている可能性は否定できない。



それに神の島に誰も行き着くことができなかったとは考えようによってはとても不自然きわまりない。


誰かが意図してそれらの事実を抹消し明るみにしなかった、そう考えるべきだ。



大昔、夢をいだいて旅だった冒険者たちはどんな思いでラグーンを目指したのだろう。行き着けたとしても二度と故郷に錦をかざることができないとされる時の神殿を夢みて。



「な…俺って実は、神の島をめざす冒険に旅だつのはこれで二度目だ」



「は?」



「でもこれほど確信にせまった冒険ではなかった。金持ちの道楽っていうか…ヒマつぶしみたいな感じでな。どうせ今回の出資者もそんなもんだろう?」



「……さぁ?」



「さぁ!?」



「どうなんだろう……私もその辺の詳しいことはよく知らないから」



「は? まさかお前、出資者がどんなヤツかろくに調べもせずに引き受けたんじゃないだろうな?」



「ご名答!」



にっこりとティアヌはほほ笑んでみた。



すると、一ついっておく、と前おいたセルティガはあらたまった面持ちで



「その笑い方…可愛く笑ってるつもりかもしれんが、ちっとも可愛くないぞ……キモい?」



グサッ!



「ハ、ハハハ………」



まったくもって有り難くもない助言がはいったところでティアヌは冷笑にかわった。



「余計なお世話をどうもありがとぉ!」



鉄拳つきの返礼は見事セルティガのミゾオチをついた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...