魔道竜 ーマドウドラゴンー

冰響カイチ

文字の大きさ
68 / 132
第2章 精霊条約書

魔道竜(第2章、17)

しおりを挟む


「ぅわ!   ちょっ、めちゃくちゃ揺るぅーーッ!」



激しく上下左右にゆさぶられる釣り橋。



ティアヌは釣り橋のロープにしがみつき、渡るに渡れず立ち往生の真っただ中だった。



命綱を巨木に結び付け、綱渡りでもするようにして釣り橋を渡りはじめたまではよかった。


しかし一つ間違えば真っ逆様に溶岩の大河に落下するかもしれない、そう不安がよぎりだすと嫌でも視界にはいる足もとは不吉な想像をかきたてる。



まだ死にたくない。成仏するには到底無理、この世に未練タラタラだ。



初彼もまだ。


デートだって未経験。


あぁ、あれも、これも、やり残したことばかりだ。



ここで私の人生が終わりました、なんて人生の終焉の地にするにはあまりにも我ながら哀れすぎる。



せめて彼なりともと目線をあげれば、ふと先陣をきるセルティガの背中に目がとまった。



「…………」



ダメよティアヌ、アレは男であって男じゃないの。アレは人の皮をかぶった獣よ。



「何をしているんだ?  早く来いよ。置いて行くぞ」



ね? いたいけな乙女を平然と放置するような獣よ。


男なら、ここで手を貸すとしたもんじゃない?



格下げよ格下げ。ヤツは男でもなければ女でもない。両性爬虫類よ。いやそれ以下。



「うるさいわね、いま行くわよ!」



仕方なしに、距離にしておよそ五百メートルほどの釣り橋にソロリと五歩目の足をかける。



ギシ…ッ……、不吉な軋みがティアヌの鼓動をはねあげさせた。



し、心臓に悪いわ、ついでに美容と健康にも。



ティアヌはうっすらと湿り気のおびた額の冷ややかな汗を手の甲でぬぐう。



危ない危ない。道を誤るところだったわ。ヤツに漢気をもとめるなんて。



そう言えば……十四歳にして最近めっきりお肌にハリとツヤが。


もしやこれがお肌の曲がり角ってやつかしら?



「おぃ、さっきから何をブツブツと。孤独な老人じゃあるまいし。口より足を動かせ、足を」



「わかっているわよ!ブツブツと悪かったわね!」



もはやティアヌにはぼやく以外、はけ口は残されてはいない。



「ぉ!   逆ギレか?  まだまだ元気が有り余っているな」



「ぅ、うるさい!   これは空元気ってやつよ。上から目線はやめて」



まさかセルティガと立場が逆転する日がこようとは……不覚。



「絶対この釣り橋を攻略してやる!」



ティアヌは気をとりなおし、両手を垂直に上げバランスをとる。



グラグラと揺れる足もとも、こうすれば多少の安定感は保たれる。



「なんだお前、それじゃまるっきり弥次郎兵衛(やじろべい)じゃないか」


と告げてから、



ぶっ…ププッと顔の原形もへったくれもなく崩れさせ、腹をかかえる。



「お前…俺を殺す気か?」



まことに不愉快きわまりない。



セルティガはティアヌを指をさし、腹痛ってぇ…死ぬ…マジで俺は死ぬぞ、と、もだえ苦しむ。



「……………。」



勝手に笑い死ね!


乙女を笑いのネタの食い物にする悪食め。



いつかコイツを泣かす!



泣いてティアヌさま、どうかお助け下さい、と泣きの涙で懇願されても絶対に助けてなんかやらない。




よし!覚悟も固まった。



もしも転落しそうになったなら、決死の覚悟をもって魔法をもちいるのも已むなし。



しかしどうも、こう激しく揺れる地に足のつかない高所は苦手である。



覚悟を胸に刻んだ直後、突然釣り橋が大揺れにみまわれた。



「きゃっ!?」



ティアヌは咄嗟にロープにしがみつく。



「面白れぇーー!  この釣り橋、すっげぇ揺れるな」



面白がって釣り橋をわざわざご丁寧にも揺らすセルティガ。



その嫌がらせの仕方ときたら無邪気なお子ちゃま。まだ子供の方が幼いというだけで可愛げがあるというもの。



いつかコイツをシメてやる!!



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...