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第3章 精霊王
魔道竜(第3章、27)
しおりを挟む「この船、腐っているぞ。これでは中を調べられん」
浜辺に打ち上げられた難破船。
朽ちて傾いた船体の周りには木片が散乱していた。
かろうじて船体の形は保ちつつも甲板は抜け落ち、その下の船室と思われる一室がのぞける。
「そうでしょうね、地をはう以外に脳ミソを使えない人には」
「ねぇ~ティアヌ。浮遊術(ケラルプ)をつかえば船内をくまなく探れそうじゃなぃ?」
「そうね。面倒だからセルティガ、あなたはここで見張っていてちょうだい」
「まさかとは思うが、俺を連れていくのが面倒、とか言わないよな?」
「そのまさかよ」キッパリと言いきる。
けど、とティアヌは口ごもる。
「嫌な胸騒ぎがするのよ」
「胸騒ぎ?」
「私たちが乗ってきたあの船よ。何だか嫌な感じがしたから」
ぅーんと唸るとセルティガも察したようだ。
「そういうことなら仕方がない」
セルティガもそれなりに経験を積み、船乗りがどういったものかも理解していた。
だから渋々ながらセルティガは見張り役として浜辺に立つことになった。
「そっち、何かある?」
「ぃぃぇ、何も」
くまなく探ってはみたが手がかりとなり得る重要な発見にはいたらなかった。
だが一つだけわかったことがある。
それはこの船が約千年以上前に造船されたということだ。
「これを見て」
根本からぽっきりと折れたマスト。
そこには【キャプテン、エウローB.C192】
これまで発表されてきた冒険書には一切記載されていない年号。
B.C192年頃には虚海へと旅立った冒険者はいないはずだ。
というのも当時の記録では虚海への立ち入り禁止令がだされていたからだ。
当時、天候不良、度重なる天災、飢饉などが多く、ご時世ならではの一攫千金をねらう冒険者が虚海へとかりたてられたのだという。
多くの犠牲者があとをたたなかったことは語るまでもない。
ーーーーキャプテン、エウロー? はて。
どこかで耳にしたような?
どの船にも虚海のへと旅立つ船のマストには船長の名前と旅立った年の年号を刻むことが義務づけられている。
というのも船は朽ちやすいがマストだけは水中であろうがすぐに朽ち果てることもない。
仮に沈没したとしても魔法文字で刻まれてあるため後々の追跡、或いは探索するための目印にもなるためだ。
「キャプテン、エウロー…………」
そう呟いたその時だった。
「うーぅギャァァァーーーー!!」
島の中心部から男の絶叫が。
「何事?」
ティアヌとセイラは顔をみあわせた。
すると地上からセルティガが顔を青ざめ見上げる。
「まずいことになった」
「それってーーーーまさか?」
船に待機しているはずの船員の声だろうか。
次々にあがる恐怖に身をふるわせる絶叫。
阿鼻叫喚。
ふと脳裏にうかんだのは邪神が告げた科白。
『船にその身が有る限り』
その意図するもの。すなわち船上にある者の命だけは保証するということ。
三人はきた道をもどるでもなく、絶叫のする森へとわけいった。
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