小さなベイビー、大きな野望

春子

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閑話(2)

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「え?甘えん坊さんが甘えなかったこと?そんなこと、生まれてからないわ。ねえ?」
「ないわ。あの子は、息をするように、甘えるんだから。甘えないって言うのは、酷よ?人に息をするなと言ってるのと、同じよ?」
婦人会メンバーは笑う。

「甘えん坊さんはしょうがないんだよ?」
「小さい子は、誰でも甘えたい時があるだろうから。」
紳士会メンバーは優雅に微笑む。


「見てわかると思うけど、うちのリーサが、父さんや母さんに、甘えなかったことは、生まれてこの方、ない!」
「父さんたちだけじゃなく、周囲全体。」
「しょうがないって。だって、リーサは、ツェリおば様にそっくりなんだから。」
従兄弟たちは苦笑い。


「ベイビーが?そうね。確かにちょっと甘えん坊さんね。」
「甘えるのが大好きな子だからね。」
フィルもマルクスも、うなずく。


「リーサは、相手の感情に敏感だから。」

「誰に似たのか、甘えるのは当然みたいな所があるから。」
両親は、しょうがないことだという。



「ままのわがまま。」
「リーサ、ダメだっていってるじゃないの。」
店の中で、駄々を捏ねる娘と対抗する母親の姿は、よく見られる姿で、普通にある光景だ。
「わがままはリーサじゃないの。」
「ままは、リーサの言うことをもっと聞いたら、いいよ!」
「おかしい話だわ。なんで、私がリーサの言うことを聞かないといけないの?」
周囲にいるギャラリーは、各々、ショッピングを楽しんでいる。
「リーサが聞けばいいじゃないの?母の言うことを素直に聞いたらいいんだわ。そして、もっと、この私を優先したらいいのよ!」
「べえー。」
親子喧嘩が縺れてるようだ。
「次はぜったーい、オモチャ屋にいくの!!」
「嫌よ!次は、ままの宝石を見に行くんだから!!」
えっ?
「まま、いっぱい、持ってるからいいじゃん。」
「なら、あなたもオモチャたくさん、あるじゃないの。なら要らないわね?」
「違うもん。オモチャと宝石とじゃあ。違うもん。」
「宝石の方が、いいに決まってるじゃないの!」
にらみ合う両者。
譲らない。
「ままのばかあ。」
「私にそんなひどいことを言ったら、ダメなのよ!お兄様に言うわよ!」
「おじちゃんは、リーサの味方だもん。」
「お兄様は私の味方よ!」
「リーサはおじちゃんの唯一の姪だもん。」
「なら、私は、お兄様の唯一の妹よ!」
引かない。
「あなたたち、何をやっているの!!やめなさい!!!」
突如、現れた女性。
リーサと呼ばれた女の子は、その女性に近寄る。
「往来で喧嘩をするなんて、どういうことなの。少し目を離した隙に…!次…?何処にも寄らないわよ?帰るの!」
『えっ。』
「用事は終わらせたのだから。帰るのよ?…オモチャ屋に行かないの。ベイビー。ツェリも宝石店には行かないわ。ほら。帰るわよ!」
争っていた二人は、その女性に連れていかれた。

家で叱られ、二人はぶすくれた。
「もう、二人はわがままばっかり、いうじゃないの。」
「わがままはままだもん。」
「リーサじゃないの!」
「やめなさい!」
フィルの説教を受けてる二人を尻目に、従兄弟たちは、自由に振る舞う。


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