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威嚇猫
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初めて、あいつを見たとき、恐ろしく、綺麗な顔立ちだなと思った反面、これ直ぐに死ぬなと思った。
ほぼほぼ、無法地帯の街で、よくもまあ、擬態出来ていると。
獅子のように逆立てた髪と人を見定めるその目は、何時ぞやの自分みたいだった。
推し量るのは、最早、生存本能。
悪かったなあと後悔したのは、突然、横から湧いて出てきた喧嘩男を蹴り飛ばした瞬間を見られたこと。
「ごめん。友達だった?」
吹っ飛んできたそれが、ぶつかりそうだったから、無意識に、蹴ってしまった。
「いや…お前、何者?」
今より、ちょっと甘めの声がした少年声だった。
「そう?ならよかった?子どもがタバコ吸ってていいの?未成年でしょう。」
エディは、タバコを吸っていた。気だるげに。妙に雰囲気がある。
「ここが何処が知らないのか?失せな。」
「治安が悪いってるのは、見てりゃあ、わかるよ。だって、明らかに、建物自体、雑多だし。こんなに倒れてても、サツも来ないし。ここ、ストリート・ギャングの根城でしょ。」
「なんだ。知ってんなら、帰れよ。ガキ。」
ニヤッとバカにするような笑みを浮かべた彼に、眉をひそめた。
そこに、後に、やってきた彼の友人が、止めなきゃ、お互い、ボコボコだったかもしれない。若気の至りである。
彼がストリート・ギャングのトワイライトのボスだと説明を受けた。なるほどなあと思った。
しばらく、身を寄せているとわかった。 事情が。
ウォルス・ミードと言うギャングの名もニコラス・リッチの名前もようやく、思い出した。
たまに、視察に来るあの構成員の顔も覚えた。
中には、彼をおもちゃのように扱い、下卑た欲求を見せることも、彼が凄まじい力に抗おうとしたことも。
だから、事情を説明した。
協力すると。どんなに押しつぶされそうになろうとも、逃げない姿勢に感動した。
ギャングのトワイライトに女が入ることがどれだけ目立つかもわかる。ボスの女だと狙われたが、返り討ちにしてる間に、あれよと実質ナンバー2になった。いやいや、考えろ。何も持たない奴がのこのこといるか。アホか。
「ねえ。ガーター、いい加減、突っかかってくんの、やめてくんない。」
「うるせっ。」
当時からガーターは、エディと争っていた。縄張りを奪われていた彼は、実質、配下に下ったわけだが、納得出来てない。
まともに戦えば、大人と子どもレベルで余裕に勝つ。
女に負けたなど、侮辱だろうし、彼は、エディを引きずり下ろすことに、執念深い。
エディに負けることも私に負けることもプライドが許さなかったのだろう。目が物を言ってる。
「人を殺したとき、何思った?」
タバコを吸いながら、言う彼が、灰皿に灰を落としながら、呟いた。
「初めて、人を殺したとき。どうだった?」
コーラの瓶をゆらりと揺らしながら考える。
「いくつだったかは、覚えてないけど、顔は覚えてる。相手は、敵対組織に通じるとある男だった。見た目は、何処にでもいるようなサラリーマンみたいな感じ。まだ慣れてなくて、多分、苦しんで死なせた。今でも思い出す。血飛沫が舞った。泣けなかった。怖いとか気持ち悪いとか多分、麻痺してた。心を守るために。そうやって、何度か、繰り返して、ある日、何も感じなくなった。私は喧嘩をしたことはない。やりすぎたら、喧嘩でも、人は死ぬけど、私がやっていたのは、人を殺すことが当たり前。それ以外、何もやらせて貰えなかった。」
殺しのために、ベッドに入ることもあったし、油断させるために、ハニートラップもしたことが、あるが、ただの手段の一つ。レイプされた場合と違う。
「ある日ね。自分が酷く、怖いと思ったことがあるよ。まあ内部の争いだったんだけど。あるやつが、こう言ったの。なぜ、お前だけが重宝されるだって。なぜ、私ではないのかとか。寝て取ったんじゃないかとか。考えてみろって話なんだけどさ。当時、十二歳とかだよ?だとしたら、お前の実力不足だよって思ったけど、ムシったのね。したらさ、組織内での身内同士の死闘は許されなかったんだけど、事故に見せかけて、攻撃してきたの。で、身を守るために、正当防衛するじゃない。だけど。気づいたんだよね。監視員がいた事に。ただ、能面のような顔を晒してさ。どっちが死んだら、補充出来るように。それが無性に腹がたってね。逆手にとって、事故に見せかけて、監視員もろ共、殺したの。気づいてた筈なんだよね。でももみ消された。まるでショーみたいに見る連中がいたの。それをさ。気も立っていたから、皆殺しにしちゃってね。あとから頭が冷えたときには遅かった。あえて、ショーを見せてた奴らは、組織の裏切り者連中だったこと。で、ハメられた。組織の殺戮マシーンのように育てるために再度、選ばれた。」
そこから、訓練が更に酷くなった。
そして、そんな訓練が終わると、引き合いに出されたのが、殺しの先生…エリオットとの出会いだった。
「心を壊していく正常な子たちも何人か見てきた。中には自殺をした子もいる。その中でも生き残った。気が狂えたら、楽だったかもと思う時もあったけど。案外、しぶとかったみたい。」
コーラを飲む。
「こんな身体になって、ますます、思うのは、手加減を覚えなきゃって心底思うようになった。人は脆い。か弱い。ナイフを振り下ろすだけで、血飛沫が舞う。少し、指を捻るだけで、首を折ることが出来る。すこし、蹴り飛ばすだけで、アバラが折れる。だから、人間のままでいたいから、弱くなりたい。大切なものを作って護りたい。それは、人を殺すことより、とても難しい。特にクソ重たい事情を抱えてるようなやつにはね。」
奪われる悲しみは、存分に味わった。辛酸を舐める事もよくある。ままならないことばかり。
「だから、エディ。怪物になるな。人を殺すことに疑問を忘れたら、もう人じゃなくなる。…繊細だもんね。頑張んないと。」
ポンッと頭を撫でる。
人混みを掻き分け、やって来たのは、C国系ストリート・ギャングのアジト。異国情緒溢れた建物だ。
すうっと、息を殺し、中に入る。
目的の相手に会いに行くために。
ほぼほぼ、無法地帯の街で、よくもまあ、擬態出来ていると。
獅子のように逆立てた髪と人を見定めるその目は、何時ぞやの自分みたいだった。
推し量るのは、最早、生存本能。
悪かったなあと後悔したのは、突然、横から湧いて出てきた喧嘩男を蹴り飛ばした瞬間を見られたこと。
「ごめん。友達だった?」
吹っ飛んできたそれが、ぶつかりそうだったから、無意識に、蹴ってしまった。
「いや…お前、何者?」
今より、ちょっと甘めの声がした少年声だった。
「そう?ならよかった?子どもがタバコ吸ってていいの?未成年でしょう。」
エディは、タバコを吸っていた。気だるげに。妙に雰囲気がある。
「ここが何処が知らないのか?失せな。」
「治安が悪いってるのは、見てりゃあ、わかるよ。だって、明らかに、建物自体、雑多だし。こんなに倒れてても、サツも来ないし。ここ、ストリート・ギャングの根城でしょ。」
「なんだ。知ってんなら、帰れよ。ガキ。」
ニヤッとバカにするような笑みを浮かべた彼に、眉をひそめた。
そこに、後に、やってきた彼の友人が、止めなきゃ、お互い、ボコボコだったかもしれない。若気の至りである。
彼がストリート・ギャングのトワイライトのボスだと説明を受けた。なるほどなあと思った。
しばらく、身を寄せているとわかった。 事情が。
ウォルス・ミードと言うギャングの名もニコラス・リッチの名前もようやく、思い出した。
たまに、視察に来るあの構成員の顔も覚えた。
中には、彼をおもちゃのように扱い、下卑た欲求を見せることも、彼が凄まじい力に抗おうとしたことも。
だから、事情を説明した。
協力すると。どんなに押しつぶされそうになろうとも、逃げない姿勢に感動した。
ギャングのトワイライトに女が入ることがどれだけ目立つかもわかる。ボスの女だと狙われたが、返り討ちにしてる間に、あれよと実質ナンバー2になった。いやいや、考えろ。何も持たない奴がのこのこといるか。アホか。
「ねえ。ガーター、いい加減、突っかかってくんの、やめてくんない。」
「うるせっ。」
当時からガーターは、エディと争っていた。縄張りを奪われていた彼は、実質、配下に下ったわけだが、納得出来てない。
まともに戦えば、大人と子どもレベルで余裕に勝つ。
女に負けたなど、侮辱だろうし、彼は、エディを引きずり下ろすことに、執念深い。
エディに負けることも私に負けることもプライドが許さなかったのだろう。目が物を言ってる。
「人を殺したとき、何思った?」
タバコを吸いながら、言う彼が、灰皿に灰を落としながら、呟いた。
「初めて、人を殺したとき。どうだった?」
コーラの瓶をゆらりと揺らしながら考える。
「いくつだったかは、覚えてないけど、顔は覚えてる。相手は、敵対組織に通じるとある男だった。見た目は、何処にでもいるようなサラリーマンみたいな感じ。まだ慣れてなくて、多分、苦しんで死なせた。今でも思い出す。血飛沫が舞った。泣けなかった。怖いとか気持ち悪いとか多分、麻痺してた。心を守るために。そうやって、何度か、繰り返して、ある日、何も感じなくなった。私は喧嘩をしたことはない。やりすぎたら、喧嘩でも、人は死ぬけど、私がやっていたのは、人を殺すことが当たり前。それ以外、何もやらせて貰えなかった。」
殺しのために、ベッドに入ることもあったし、油断させるために、ハニートラップもしたことが、あるが、ただの手段の一つ。レイプされた場合と違う。
「ある日ね。自分が酷く、怖いと思ったことがあるよ。まあ内部の争いだったんだけど。あるやつが、こう言ったの。なぜ、お前だけが重宝されるだって。なぜ、私ではないのかとか。寝て取ったんじゃないかとか。考えてみろって話なんだけどさ。当時、十二歳とかだよ?だとしたら、お前の実力不足だよって思ったけど、ムシったのね。したらさ、組織内での身内同士の死闘は許されなかったんだけど、事故に見せかけて、攻撃してきたの。で、身を守るために、正当防衛するじゃない。だけど。気づいたんだよね。監視員がいた事に。ただ、能面のような顔を晒してさ。どっちが死んだら、補充出来るように。それが無性に腹がたってね。逆手にとって、事故に見せかけて、監視員もろ共、殺したの。気づいてた筈なんだよね。でももみ消された。まるでショーみたいに見る連中がいたの。それをさ。気も立っていたから、皆殺しにしちゃってね。あとから頭が冷えたときには遅かった。あえて、ショーを見せてた奴らは、組織の裏切り者連中だったこと。で、ハメられた。組織の殺戮マシーンのように育てるために再度、選ばれた。」
そこから、訓練が更に酷くなった。
そして、そんな訓練が終わると、引き合いに出されたのが、殺しの先生…エリオットとの出会いだった。
「心を壊していく正常な子たちも何人か見てきた。中には自殺をした子もいる。その中でも生き残った。気が狂えたら、楽だったかもと思う時もあったけど。案外、しぶとかったみたい。」
コーラを飲む。
「こんな身体になって、ますます、思うのは、手加減を覚えなきゃって心底思うようになった。人は脆い。か弱い。ナイフを振り下ろすだけで、血飛沫が舞う。少し、指を捻るだけで、首を折ることが出来る。すこし、蹴り飛ばすだけで、アバラが折れる。だから、人間のままでいたいから、弱くなりたい。大切なものを作って護りたい。それは、人を殺すことより、とても難しい。特にクソ重たい事情を抱えてるようなやつにはね。」
奪われる悲しみは、存分に味わった。辛酸を舐める事もよくある。ままならないことばかり。
「だから、エディ。怪物になるな。人を殺すことに疑問を忘れたら、もう人じゃなくなる。…繊細だもんね。頑張んないと。」
ポンッと頭を撫でる。
人混みを掻き分け、やって来たのは、C国系ストリート・ギャングのアジト。異国情緒溢れた建物だ。
すうっと、息を殺し、中に入る。
目的の相手に会いに行くために。
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