人生は何とか出来るもんである…多分…

第５話

山で採取した山菜たちを背負子から取り出す。
ネバイモと呼ばれる芋を擦ってやると、ネバネバした液体？と小麦を練って、竈で焼く。一般的な作り方で、モチモチとした食感になり、美味しいし、腹持ちがいい。
干し茸は、乾燥をして干す為に、ザルに入れて、外に放置。
水分が、完全に抜けていき、明日には使える。
コリタケは、今日のおかずに使われる。
畑で収穫した野菜の下拵えもやっておく。
アビゲイルが手早く、野菜を向いていく。ポンポンと器に入る。母は、ネバイモをすり鉢で擦っている。
ちなみにマリアは料理が出来ないため、息子たちの世話。
竈の火をつける。ぼうぼうと火が燃え上がる。
ちなみにこの竈は、伝で作って貰ったので、我が家の自慢の竈。
大きめだから、大家族の食事作りに重宝。
そこに帰宅するギルドで薬師として、働いてる兄、スペルス。
アビゲイルに似た容姿で柔和な顔立ちに、繊細そうな雰囲気。スペルスは気にしてる長いまつげはボリュームがあり、バサバサ。シミひとつない、白磁のような白い肌。顔ひとつに汚れがつくようなら回りから非難轟々。
｢おかえりなさい！｣
｢ただいま。いい匂いがする。｣
小さな妹をだっこ。
｢山で採ってきたの！あれは、ネバイモで、あれは…｣
兄に自分が何を採ってきたか、教える。
｢あれは、マーシャルが獲ってきたらしい、猪のお肉。果敢にも、マーシャルを襲ったらしいよ！｣
猪にしては大きな猪である。畑を狙い、山から降りてきたようだ。そんなもの、許す気はなく、返り討ち。
｢マーシャルに怪我は？」
｢ないよ。強いて言うなら、畑がちょっと荒れた位。｣
サヤをだっこしながら、マーシャルと呼ぶ。
マーシャルは、直ぐにやって来た。
スペルスの往診が始まり、無傷だとマーシャルは、笑う。
｢スペルス。マーシャルは、兄弟一、頑丈だし、あのﾞ龍神"の血を引くだから、擦り傷さえ、猪程度なら、問題ない。｣
サラヴェールが苦笑い。
｢スペルスは、心配性だからな。｣
サーシャが肩をすくめる。
｢あんたたち、暇なら、手伝いな！｣
母の声に、集まる。


｢はは。我ら龍神の血は強いのだ。猪程度なら、傷もつかん。｣
マリアは笑う。
いくら、龍神と人の混血児であるマーシャルだが、龍神の血は、そう、薄まるわけない。
龍神とは、神とつくほど、肉体的に優れ、知能的にも高く、他の種族と異なるほどに強い。
個体数は少なく、なかなか、生まれにくいことを除けば、最強種族と言える。
｢ニドラも将来はムキムキ？」
ニドラは、いまは、おねむで寝ている。
こんなに愛らしいニドラがマーシャルのような筋肉質になり、大柄になるのか。
｢まあ、可能性はあるが、それでも、必ず、カッコよくなるだけだ。｣
マリアは笑う。マリアは長身で、龍神の特徴である女性でも大柄で、筋肉質である。
精悍な顔つきをしており、ご近所の女性から、キャーキャーされてる。
｢鶏がやられなくて良かった。｣
アビゲイルは、言う。鶏がやられてしまったら、大変。
｢うちの鶏、元気だから、逃げ回るんじゃないかな？」
サヤは、猪の肉を使ったソテーを口にしながら言う。
だって、うちの鶏、近所で何て呼ばれてるか、知ってる？
暴れ鶏だ。敵対意識を向けてくる動物、若しくは、人間に容赦しない。
頭が良いのか、近所の人々に手を出さないから、放し飼いする事は可能。
うちの鶏の脚は、他の鶏と比べて、太く、筋肉で覆われてる。おかしいな？