スマホ片手に異世界ライフ! ~神様のアプリで無敵冒険者~

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第1章

仮想戦闘モードスケルトン戦

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ガアラはスマホを手に取り、深く息を吸った。

画面には過去の戦闘データ一覧。
その中でひときわ異彩を放っている名が、目を引いた。

> 【記録戦闘データ No.013】
対象:黒鉄の騎士スケルトン
備考:洞窟内遭遇。攻撃意図不明。殺傷未遂。
難易度:非常に高い(実力差あり)
※システムより注意喚起:精神負荷に留意してください。



「……分かってるさ。あいつにもう一度、向き合いたかった」

【仮想戦闘モードを起動しますか?】
【YES】

選択とともに、視界がスッと暗転する。

体が浮いたような無音の浮遊感。
そして――

 



世界は“白”に包まれていた。

空も地も、影すらない真っ白な仮想空間。
だが、その中央にだけ、黒が存在する。

――あの姿。

全身を黒鉄の甲冑に包み、骨の奥から滲むような重圧をまとった騎士。
眼孔に淡い赤い光を宿し、静かに剣を構えるその姿は――

「あのときと、まったく同じだ……」

一歩踏み出す。
仮想剣を握る感触が、手に馴染む。

ガアラは言葉なく、構えを取った。

> 【準備完了】 開始まで――3、2、1……開始。


動いたのは、スケルトンだった。

静かな踏み込み、滑るような剣の引き――
初手は右からの中段斬り。

ガアラは反応し、剣を立てて防ぐ――

ギィンッ!

重い衝撃が肩に抜ける。

(……っくそ、やっぱり速いし、重い!)

次の瞬間、下段へと繋がる二撃目。
咄嗟に足を跳ね上げて避けるが、バランスを崩し後退。

スケルトンは追わない。
その場に剣を下ろし、次の一撃に備えるように構え直す。

(――まるで“本物”だ。いや、もしかすると……)

 

ガアラは深く踏み込み、剣を振るう。
が、全てを読み切ったように受けられ、いなされる。

ライトジャベリン? 試してみた。
だが、撃った瞬間に回避される。反応速度が異常だ。

(これは……スピードじゃない。動きの“意味”を知ってる)

記録された“騎士スケルトン”の戦いは、攻撃のひとつひとつに“意志”があった。
ただの仮想データじゃない。

(この剣筋、この間合いの調整、俺の“本能”に訴えてくる)



5分が経過。
ガアラは既に10回以上、肩や腹を斬られている。

剣を構えながら息を荒くし、目を細めた。

「……参った。まだ、全然だな……」

そう呟いた瞬間――

スケルトンの剣先が、ピタリと首筋に止まった。

寸止め。
まるで「それでいい」と言われた気がして、ガアラは剣を下ろした。

 

> 【仮想戦闘 終了】
評価:Dランク
回避成功:3/18
被弾:軽傷多数
評価コメント:「敵を“見切る訓練”が必要です」




視界が戻ると、自室の静けさが戻っていた。
ガアラは額の汗を拭いながら、スマホをじっと見つめる。

「やっぱり、こいつ……“ただの記録”じゃねぇ」

その背後から、声がした。

「それが、あたしに教えてくれた“恐怖”ってやつ?」

振り返ると、リィナが壁にもたれてこちらを見ていた。

「見てたのか?」

「見ないわけないでしょ。あんたが黙って立ち向かってるの、気になるに決まってる」

リィナはガアラのスマホを覗き込み、無言で再生ボタンを押した。

画面には、スケルトンとの一連の戦いが映し出されていた。

「……怖い、けど。あたしも、こいつと戦ってみたい」

ガアラは目を細めた。

「そのときは、俺も隣に立つ。絶対にな」

 

そしてガアラは、再びスマホを手に取った。

「もう一度、やる。今度は、一本取ってみせる」

白い仮想空間の中で、“黒の亡霊”との戦いが、再び始まろうとしていた。


部屋の灯りを落とし、ふたり並んでスマホの画面を見下ろす。
仮想戦闘モードには、新たな項目が追加されていた。

> 【共闘モード:騎士スケルトン】
対象:黒鉄の亡霊・記録データ
難易度:高
備考:2名による連携戦闘。パーティー設定完了済み。



「共闘モード、起動します」

ガアラがタップし、リィナが静かに頷く。
視界が暗転し、身体がふわりと軽くなる――

 
目を開けた瞬間、そこはやはり“真っ白な世界”だった。

天も地も、果てのない空間。
そこに、二つの影――ガアラとリィナ。

そして。

中央に、再び現れる“それ”。
黒鉄の騎士。 剣を構え、ただ、じっとふたりを見つめている。

リィナが静かに呟く。

「こっちは2人。……あんた、いつまでも“ひとり”じゃ通らせないよ」

ガアラは肩を軽く回し、剣を構えた。

「――今回は、一本、取る」

> 【共闘モード開始】



 

スケルトンが動いた。

滑るような動きで、間合いを一瞬で詰めてくる。
その軌道はまさに、完璧な“戦術”。動きに無駄がない。

「リィナ、右から!」

「分かってる!」

ガアラが正面から迎撃。
スケルトンの一撃を受け止めると同時に、リィナが死角から回り込む。

短剣が一閃――!

だが、スケルトンは体をひねって剣を引き戻し、リィナの刃を弾いた。

「っ……読みが深い!」

「まだだっ!」

ガアラが踏み込み、スケルトンの体勢を崩す。
リィナはその隙を狙って背後から突き上げる。

カンッ!

わずかに鎧をかすめた。

> 【ヒット:軽傷】



「入った……!」

「でも気を抜くな!」

次の瞬間、スケルトンが跳躍する。

空中から放たれる斜めの斬撃――
ふたりとも咄嗟に横へ跳び、交差するように陣形を変える。

「いける、今の連携、悪くない!」

「じゃあ次は、あんたが囮になって」

「おう、俺が先に喰らう!」

 

再び交差する剣。

スケルトンの剣筋をガアラが正面から捉え、受ける――
重い衝撃。腕がしびれ、膝が沈む。

だがその隙に、リィナが懐に飛び込んだ。

「決める!」

短剣が、鎧の隙間を狙って突き込まれる――

> 【ヒット:中傷】



 

スケルトンが後退する。

ガアラとリィナ、肩で息をしながら並んで構えを取る。

騎士は……一歩、引いた。

そして、剣を――納めた。

> 【敵行動停止】 【仮想戦闘 終了】



真っ白な世界が溶けていく。

視界が戻り、ふたりは自室の床に並んで座っていた。
額には汗。呼吸は荒い。だが、胸には確かな手応え。

「……やったな」

「うん。やっと、“届いた”」

スマホには、戦闘結果の画面が表示されていた。

> 【戦闘評価:A-】
命中回数:2(中傷×1、軽傷×1)
被弾数:0(連携回避成功)
コメント:「連携行動が極めて有効です。共闘による戦術レベル向上が確認されました」



 

ガアラはスマホを閉じ、リィナに目を向ける。

「ありがとな、リィナ。お前がいなきゃ無理だった」

「……ふふ。ちょっとは頼りにされてる?」

「すげぇ頼りにしてる」

「よろしい」

リィナは目を細め、小さく笑った。

仮想の戦場で、ふたりは確かに“本物”を超える一歩を踏み出した。
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