女子に追いかけられて死んで転生した:ヌルゲーで異世界生活:

涼雪 涼

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貿易都市グリゴレオ編

20 ルシファーの贈り物

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 前回のあらすじ。

「城が家だった」

'言ってないで早く入ってください'

 入りたくないというか、見たくもない。え?可哀想にも限度ってやつがあるだろ?なにこれ、国民からのいじめですか?

「私も最初来た時はびっくりしたわ。だって魔王が住んでるのって大きなお城とかじゃない?なのにルシファー様ったら皆に迷惑がかかるからって言ってこんな質素な小屋に住んでるの」

 これ、魔王の尊厳失われてると思われるのですがどうですか?マグさんの意見を聞きたいところです。

'あの魔王バカには尊厳もクソもないのでいいんではないですか?'

 hooooo!辛辣ぅ!マグさん辛辣ぅ!尊厳あったじゃん、最初登場シーンかっこよかったじゃん!平気でひとを殺してたじゃん!

'あら?気付いてなかったのですか?'

 え、ちょっとちょっと待って待って!もしかしてアレ?第3話くらいの時のあれ!?あれのパターン!?

'あの男、ドッペルゲンガーですよ?'

「ここの街、魔物潜んでる確率高すぎだろぉ!!」

 その突っ込みにリヴィアンが小さく肩を震わせる。

「きゃっ!?な、何よいきなり!びっくりするじゃない!」

 ぷくっと頬を膨らまして俺を睨む。

「全く、まぁいいわ。早く入って。ルシファー様がお呼びよ」

「なぁ、そのルシファー様ってのずっと言ってんの?」

 その質問は地雷だったらしく、リヴィアンは顔を真っ赤にして

「ーーーーーーッ!!次言ったら殴ってやるんだからーーー!!」

と叫び小屋の中に入っていった。

'デリカシーの欠片もないですね'

 何か俺悪い事言った?よくよく考えてみるもやはり理由が分からない。

 小首を傾げつつ小屋兼お城に入っていくのだった。



   ○   ○   ○



「お、お邪魔しマース」

 扉のむこうに誰か人影がある。

「よく来たな、馬鹿な転生者よ」

 ルシファーがテーブルの椅子に鎮座していた。腕を組み、魔王の尊厳を保とうと試みているのが丸わかりな顔で。

 ってか、脂汗ダラダラじゃん!火をつけたら発火するくらいテカテカじゃん!びびってるよな、こいつ。

「おい、見栄を張るな」

 突っ込んでみる。

 途端、ルシファーの顔がみるみる青くなっている。これぞ顔面蒼白ってやつだろうか。

 な、情ねぇ…。

'言ってあげないでください。可哀想でしょう?生まれたての仔鹿が見栄を張っているのですし'

 お前は容赦の欠片もねぇな。まぁともかくちゃっちゃと用を済ませるか。

「で、用事ってのは?」

「ふ、ふっふっふ。き、き貴様になな名前をさずけてややろう…。さすれば貴様は今以上の力を持てる…」

 うわぁ、見ていて痛々しい。痛々しいよ。や、やめてっ!め、目の前が霞んで…。

「ルシファー様、失礼ながら汗だくでございます」

 リヴィアンに指摘され言葉を詰める。が、もう一つ

「名前ならあるんだけど」

 この質問を好機と見たのか、ベラベラと口を動かし始める。

「よく言った。その質問を待っていたのだよ。君の今持っている名前は前世のものだ。即ち、君は前世という鎖で縛られているということになる。だからブエルと闘った時、魔力が押さえ込まれてて全力を出せなかったという事だ。なので、その名前を捨て、この僕魔王ルシファーの贈り物名前を受取れば君は力を最大限に引き出せると言いたいのだ。名前には魔力が宿っている。そのおかげでこの世界の人類や魔物、魔王達は魔力を使えている。今、ここに誓え。名前を捨てる、と」

 名前を捨てる。それは最川を泣かせた、濡れ衣を着せさせてしまったと思わせてしまった罪を俺、妻突氷軒を捨てるということになる。罪を背負いつつこの異世界を生きるそれが現世の今の俺の罪滅しなのではないのか?

「大丈夫」

 ふと、声がかけられる。前を見据えるとリヴィアンとルシファーが優しく俺を見ていた。

「貴様が負うのは罪か?それとも罪名か?違うだろう。貴様は今、リヴィアンと言う少女の命を預かることになる。そして、その命は強く芯の強いものではない。脆く柔らかい。触れるだけでも傷がついてしまうのかもしれない。貴様は過去に囚われている場合ではない。静かに平穏を求めて闘うのだろう?なら」

 そこでにこやかな顔から、魔王の威厳を込めた顔つきになる。そこには確かな尊厳が宿っていた。

「迷うのは筋違いだ」

 やはり、歳が違いすぎる。数千年以上この異世界を見てきた奴の意見は説得力があり過ぎる。

 息を整え、頷く。
 
「誓おう。俺は今の名前を捨てる!」

 ガタッと勢いよくルシファーは立ち上がる。そして叫ぶ。

「よくぞ言った!七天大魔王のルシファーが貴様に名を与える!トリスト!貴様は今からそう名乗れ!」

 瞬間、目の前が闇に包まれる。またか、と思いつつ重力に任せて倒れたのだった。
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