女子に追いかけられて死んで転生した:ヌルゲーで異世界生活:

涼雪 涼

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鉱山都市ロイハイゲン編

64 幽霊の鬼ごっこ

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「うふふ!待なさぁい!あたしとぉあなたとの速さではあたしの方がぁ上なのよぉ!うふ、うふふ!」

 笑いながら追いかけてくるバンシー幽霊というより鬼だった。

「お化け怖いよぉー!」

「しっかりして下さい!」

 トリストが餓者髑髏と戦っている最中、リヴィアンとマグは追いかけてくるバンシーから逃げていた。元より幽霊やアンデット系の魔物が大の苦手で、今も泣きじゃくりながら逃げている。それにマグが激を飛ばす。

「うふふ。愉しいわぁ、もっともっと遊びましょぉ?うふふふふ!」

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

 もはや泣きじゃくるなど生温く、それは悲鳴だった。

「全く、治癒魔法ヒール!」

 アンデット系の魔物には有効のはずなのだが、

「うふふふふ!」

 バンシーには効いていない。ふと、バンシーの言っていたことがマグの脳裏を横切る。

「バンシーであってバンシーではない…。どういうことか少しわかった気がします」

「うふ、うふふ。まぁてぇ!うふふ!」

 何がそんなに楽しいのか、バンシーは四六時中笑っている。

「何がおかしいのよ!」

 涙目で振り返りバンシーに怒鳴り込む。が、そんなリヴィアンを無視してバンシーは笑っている。

「…」

「あんたもなんで黙ってんの!?」

 とうとう矛先はマグに向けられた。しかし、マグは何かを考えている。

 バンシーであってバンシーではない。だが物理攻撃はおろか魔法すら当たらない。マグは脳内の文献を手当り次第に探す。

「人間でも幽霊でもない。それはまして魔物とはいえない。…あれ??」

 マグには覚えがある。トリストがかつて暴走したルシファーと戦ったあのとき。彼の状態は、。あの時こそは精神の問題だったが、今はその逆、精神ではなく身体だとしたら?虚像は実像となっても所詮は虚像。攻撃など当たるはずはない。

「成程」

「何がなるほどなの!?追いつかれちゃうじゃない!」

「丑三つ時の合わせ鏡」

 この知識はトリストから受け継いだもので、東洋にはこんな話がある。真夜中、丑三つ時に二枚の鏡をそれぞれ映るように合わせ、その間に対象者が入ることにより未来の自分や過去の自分そして心の奥底に眠る自分の本性が映るという。いわゆる怪奇譚である。

「合わせ鏡?なにそれ?そんなことよりこの状態なんとかしてくれない?」

 もう目が死んでいるリヴィアンだが、マグもそれに賛成のよう。ゆっくりと頷く。

「そうですね。いい加減気持ちの悪い笑い声は聞き飽きました」

「だぁれのぉ、笑い声がぁ、気持ち悪いですってぇ?」

 走るペースが落ちていたのかいつの間にか真後ろにバンシーが浮いていた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 劈くような悲鳴にさしものバンシーも少し後ずさる。

「今日は東洋ものが多いですね」

"同感だ"

 マグの頭からトリストの声が聞こえる。先程からずっと黙っていたのはトリストと話していたからだ。そして合わせ鏡の対処法もトリストから聞いた。

「合わせ鏡を解くには対象者の姿を見せればいいだけ。ここに鏡はありませんが幸い、濁って水ならありますがね」

 マグはマナを水の元素の中に混ぜ、その水を盾にするように、その水をバンシーに見せつけるように、濁った水をマグ自身の前に四角に張った水をおく。

「ひ、や、やめっ」

「鬼ごっこはおしまいです」

 刹那、甲高くそれでいて低い声が下水道に響き渡る。静かになるとマグは張った水をどける。先程バンシーがいた場所には一つの汚れた市松人形が落ちていた。

「所詮は虚像。本当の姿は醜くて小汚い人形。ですが、その方が可愛いじゃないですか」

 マグはその人形を慈しみの目で暫く見つめ、そして焼き払う。人形は叫ぶことも暴れることもなく、只々炎のなされるがままだった。
 
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