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鉱山都市ロイハイゲン編
74 少年オロバス4
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ヒュンッ!ヒュッ!
剣術を磨くためオロバスは毎朝毎晩、魔王城腕っ節の剣豪から訓練を受けていた。ほかの魔物達からは剣豪の特訓はきついともっぱら評判で、訓練を受けることは無かった。しかし、オロバスの決心はそれ以上のもので、剣豪の特訓に文句一つ言わずに励んだ。
「違う!そこは突きだ!いいか、敵に見切られるなよ。見切られるのではなく見切るのだ。目で見るのではない。音で視るんだ」
剣豪の名はカイム。グリモワールの一つゴエティアの序列五十三番の大総裁とされる。グリモワールの中でもカイムの剣術に敵うものは誰ひとりとしていない。そして何より評されるべきは、優れた弁論家ということ。カイムのお陰でこの国が成り立っていると言っても過言ではない。
そのカイムはオロバスを気に入っていた。剣術の飲み込みも早く、且つ魔法付属の習得にも成功している。磨けば磨くほど輝くのだ。そして最もカイムがオロバスを気に入った理由はオロバスの見切り方。
オロバスは何故か音でも視覚でもなく、嗅覚でものを見切っていた。どうやらオロバスの体質らしい。オロバスといえば馬の姿で出てくると言われており、馬の嗅覚の良さを受け継いでいるのだろう。そしてレヴィアタンへの絶対的忠誠心。
カイムはレヴィアタンに一番近い従者で、最近はレヴィアタンの従者を辞退しようかと考えていた。そこで現れた磨けば磨くほど輝く宝石が目の前に現れた。カイムは心中で小躍りしたほど。オロバスが剣術を教えてくれと来た時もすんなりと受け入れたのだ。
「ふむ。そろそろか。オロバス、俺と手合わせ願おう」
とある日。カイムはオロバスに試合を申し込んだ。勿論オロバスは断ったがカイムは半ば強引に魔王城の広い庭に連れていく。
「いや!無理ですよ!師匠に敵うはずないですって!」
「大丈夫だ。お前は十分強い。だから、遠慮なく来い!」
カイムには少し、いやかなり抜けている事があった。それは、協調性。なんでもひとりでやるか、無理やり任務を押し付けるなど縦横無尽に動くいわゆるオールマイティな存在だ。
「ではいざ、参る!」
カイムはいきなり剣を鞘から抜き出しオロバスを切りつける。それを咄嗟に刃を鞘から出していない剣で受ける。ビリビリと腕に重くのしかかる重圧のある一撃。
(重い!…く、刃を抜くしかないのか)
「俺はこんなしょうもない事をこれまでお前に教えてきてはいないぞ!」
振りと見せかけての突き攻撃。剣の長さと目の錯覚を利用した技だ。木刀での試合で何度も同じ手に引っかかり叱られたのを覚えている。
(師匠は、俺を殺す気でいるのか!?)
「反逆などではないぞ。お前が刃を抜かない限り俺はお前を殺しに行く。が、刃を抜いてもお前を半殺しにするのには違いないが」
カイムがまたも動き、突きと見せかけて今度は蹴りを入れる。オロバスの腹に見事ヒットし、ザッとよろめく。
「かっ、は…っ」
「まだまだぁ!」
今度は剣の刃先が光り、弧の軌跡を描く。そして無数の剣が目の前に顕現する。
「剣技、離れる剣!」
顕現した剣はそれぞれ刃先をオロバスに向け、そして次の瞬間には剣は飛び出していた。
「うわあっ!?」
オロバスは自前の嗅覚で無数の剣を避けていく。だが、それにも限度はある。体力の関係上、最も避けるのが体力を消耗するのだ。
ブシッ!
「くっ!」
腕を剣が掠る。それと同時に血潮が飛び散る。まだ完璧な悪魔ではない故か、傷はそう早くは治らない。カイムも知っているはずであり、この攻撃は甘くはないぞとの忠告なのだろう。
「仕方ない…」
刃を鞘から抜き出しオロバスは構える。構えは建前上カイムのものにそっくりだが訓練を終えてからも我流で特訓していたのだ。
「ほう?この俺に我流を使うのか?」
「死ぬ気でしないと僕が死んでしまいますからね」
「そういうことじゃない。俺の教え込んだ剣術は不満かと言っている」
カイムはそう言い放ち瞬時にオロバスとの距離を詰める。だがオロバスはそれを読んでいたかのように一歩間合いをあける。
「抜刀術」
コンマで抜刀の構えをとるオロバスにカイムは思わず感心してしまう。こんな事は教えていないのだ。教えていたのは基礎の基礎。それらを全て我流で変えたとしか言いようがない。
「居合い!」
だがオロバスの口から飛び出した技はどこでもありふれている技だった。カイムは驚きを隠せず、
「馬鹿か?所詮は人間か」
カイムは剣を縦に振り、オロバスを切りつける。しかし、手応えがない。確かに目の前にはオロバスがいる。だが、切れているはずの頭はカイムの剣を飲み込んでいる。
「蜃気楼ですよ」
後ろからオロバスの声が聞こえる。それを聞いたカイムは反射的に体をくねらせ自分の身を守るように剣を立てる。
その判断は正解だったようで、剣の平坦部分、樋をオロバスの剣が火花を散らし滑っていく。そのまま勢いに負けカイムは後ろに飛び退いてしまう。
「お前、いつの間に」
「付属魔法と同じ部類ですよ。さやを芯としてその周りに僕の体の表面を映し出す。蜃気楼と言っても正真正銘のものでありません。それらはすべてマナです」
パンとオロバスが手を鳴らすと同時に、蜃気楼で作り出されたオロバスは消え鞘がバランスを崩し倒れる。
「まだ、やりますか?」
驚愕の学習能力に圧倒されたカイムは、そのあまりの凄まじさに笑ってしまう。
「はっはっはっはぁ!やはり見込んだ通りだ!俺の目に狂いはなかった!お前ならレヴィアタン様をお守りすことが出来る!」
後にカイムは語る。オロバスの才能は本物だと。
剣術を磨くためオロバスは毎朝毎晩、魔王城腕っ節の剣豪から訓練を受けていた。ほかの魔物達からは剣豪の特訓はきついともっぱら評判で、訓練を受けることは無かった。しかし、オロバスの決心はそれ以上のもので、剣豪の特訓に文句一つ言わずに励んだ。
「違う!そこは突きだ!いいか、敵に見切られるなよ。見切られるのではなく見切るのだ。目で見るのではない。音で視るんだ」
剣豪の名はカイム。グリモワールの一つゴエティアの序列五十三番の大総裁とされる。グリモワールの中でもカイムの剣術に敵うものは誰ひとりとしていない。そして何より評されるべきは、優れた弁論家ということ。カイムのお陰でこの国が成り立っていると言っても過言ではない。
そのカイムはオロバスを気に入っていた。剣術の飲み込みも早く、且つ魔法付属の習得にも成功している。磨けば磨くほど輝くのだ。そして最もカイムがオロバスを気に入った理由はオロバスの見切り方。
オロバスは何故か音でも視覚でもなく、嗅覚でものを見切っていた。どうやらオロバスの体質らしい。オロバスといえば馬の姿で出てくると言われており、馬の嗅覚の良さを受け継いでいるのだろう。そしてレヴィアタンへの絶対的忠誠心。
カイムはレヴィアタンに一番近い従者で、最近はレヴィアタンの従者を辞退しようかと考えていた。そこで現れた磨けば磨くほど輝く宝石が目の前に現れた。カイムは心中で小躍りしたほど。オロバスが剣術を教えてくれと来た時もすんなりと受け入れたのだ。
「ふむ。そろそろか。オロバス、俺と手合わせ願おう」
とある日。カイムはオロバスに試合を申し込んだ。勿論オロバスは断ったがカイムは半ば強引に魔王城の広い庭に連れていく。
「いや!無理ですよ!師匠に敵うはずないですって!」
「大丈夫だ。お前は十分強い。だから、遠慮なく来い!」
カイムには少し、いやかなり抜けている事があった。それは、協調性。なんでもひとりでやるか、無理やり任務を押し付けるなど縦横無尽に動くいわゆるオールマイティな存在だ。
「ではいざ、参る!」
カイムはいきなり剣を鞘から抜き出しオロバスを切りつける。それを咄嗟に刃を鞘から出していない剣で受ける。ビリビリと腕に重くのしかかる重圧のある一撃。
(重い!…く、刃を抜くしかないのか)
「俺はこんなしょうもない事をこれまでお前に教えてきてはいないぞ!」
振りと見せかけての突き攻撃。剣の長さと目の錯覚を利用した技だ。木刀での試合で何度も同じ手に引っかかり叱られたのを覚えている。
(師匠は、俺を殺す気でいるのか!?)
「反逆などではないぞ。お前が刃を抜かない限り俺はお前を殺しに行く。が、刃を抜いてもお前を半殺しにするのには違いないが」
カイムがまたも動き、突きと見せかけて今度は蹴りを入れる。オロバスの腹に見事ヒットし、ザッとよろめく。
「かっ、は…っ」
「まだまだぁ!」
今度は剣の刃先が光り、弧の軌跡を描く。そして無数の剣が目の前に顕現する。
「剣技、離れる剣!」
顕現した剣はそれぞれ刃先をオロバスに向け、そして次の瞬間には剣は飛び出していた。
「うわあっ!?」
オロバスは自前の嗅覚で無数の剣を避けていく。だが、それにも限度はある。体力の関係上、最も避けるのが体力を消耗するのだ。
ブシッ!
「くっ!」
腕を剣が掠る。それと同時に血潮が飛び散る。まだ完璧な悪魔ではない故か、傷はそう早くは治らない。カイムも知っているはずであり、この攻撃は甘くはないぞとの忠告なのだろう。
「仕方ない…」
刃を鞘から抜き出しオロバスは構える。構えは建前上カイムのものにそっくりだが訓練を終えてからも我流で特訓していたのだ。
「ほう?この俺に我流を使うのか?」
「死ぬ気でしないと僕が死んでしまいますからね」
「そういうことじゃない。俺の教え込んだ剣術は不満かと言っている」
カイムはそう言い放ち瞬時にオロバスとの距離を詰める。だがオロバスはそれを読んでいたかのように一歩間合いをあける。
「抜刀術」
コンマで抜刀の構えをとるオロバスにカイムは思わず感心してしまう。こんな事は教えていないのだ。教えていたのは基礎の基礎。それらを全て我流で変えたとしか言いようがない。
「居合い!」
だがオロバスの口から飛び出した技はどこでもありふれている技だった。カイムは驚きを隠せず、
「馬鹿か?所詮は人間か」
カイムは剣を縦に振り、オロバスを切りつける。しかし、手応えがない。確かに目の前にはオロバスがいる。だが、切れているはずの頭はカイムの剣を飲み込んでいる。
「蜃気楼ですよ」
後ろからオロバスの声が聞こえる。それを聞いたカイムは反射的に体をくねらせ自分の身を守るように剣を立てる。
その判断は正解だったようで、剣の平坦部分、樋をオロバスの剣が火花を散らし滑っていく。そのまま勢いに負けカイムは後ろに飛び退いてしまう。
「お前、いつの間に」
「付属魔法と同じ部類ですよ。さやを芯としてその周りに僕の体の表面を映し出す。蜃気楼と言っても正真正銘のものでありません。それらはすべてマナです」
パンとオロバスが手を鳴らすと同時に、蜃気楼で作り出されたオロバスは消え鞘がバランスを崩し倒れる。
「まだ、やりますか?」
驚愕の学習能力に圧倒されたカイムは、そのあまりの凄まじさに笑ってしまう。
「はっはっはっはぁ!やはり見込んだ通りだ!俺の目に狂いはなかった!お前ならレヴィアタン様をお守りすことが出来る!」
後にカイムは語る。オロバスの才能は本物だと。
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