上 下
2 / 24

2話 

しおりを挟む
 眩しい。そう感じゆっくり目を開くと巨大な木の下に俺は寝ていた。
 仕事に疲れ果てて遂に頭がどうかしちまったかと自分に呆れていると、急に冷静になり今の状況を分析しだす。
 まず、お決まりの頬を摘まんで夢ではないことを確認。
 よし、痛い!よしじゃないか。
 次に周りを見渡してみる。
 どうやらこの巨大な木は高台にあるようで、そこを中心にドーナツ状に石造りの建物が一面に広がっている。
 景色を眺めていると、後ろでカサッと何かが落ちた音がした。
 木の実でも落ちてきたのかと振り向くと、フードを深く被った人が逃げるように去っていくのが見えた。
 一目見ただけ逃げちゃうなんてそんなに俺、不審かな?と考えて視線を自分の服に向けてみると、不審も不審で服がボロボロになっていて所々破けている。
 そりゃ逃げるか。俺だってこんな人見たら近づきたくない。完全ヤバイ人だよそんな人!不審な人に会ったら逃げるのが常識なんだよな~。
 そうこうしてるとさっき走り去って行った人が立っていたところに何かが落ちてることに気づいた。
 近寄って見てみると、銀色の懐中時計だった。
 時間は11時で止まっている。ちょうど俺がバスで寝ていた時間くらいだな。
 まあ、午前と午後のどっちかも分からない11時だから深くは考えないでおこう。
 この時計、持ち主に返せる機会があるかもしれないし一応持っておこう。
 しかし、どうしたものか。これが男の子のロマンと夢の極地!異世界転生ってやつなんだろうか。きっとそうだよ。うん。
 でも、いざ転生ってなると考えものだなあ。
 持ち物ひっぺがされてるうえに異世界を案内してくれるヒロインも見当たらない。
 むむ、もしやさっきのフードの人がマイヒロイン、略してマイヒロなのかも!
 そうだとすれば、そのマイヒロに会わない手はないな。
 ここが本当に異世界だとしたら、魔法とか使えるかもしれないぞ。そして前とは違う第二の人生を歩める機会かも。
 期待に胸を高鳴らせ、マイヒロがおそらく向かったであろう方向へ行ってみる。
しおりを挟む

処理中です...