愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

文字の大きさ
127 / 151
恋人編

第11話「誰にでも変化は訪れ、故に人の未来は不確定である」①

しおりを挟む
 ――真白に一世一代のプロポーズをしてから、しばらくが経った。私は優花里と玲菜と共に、チェーン店の喫茶店にてぐだぐだと話し込んでいた。


「――なるほどねぇ。それで、無事にヨリを戻せたってわけね」


 優花里がニヤニヤと頬杖をつきながら言う。私は顔を赤くしながら、「そうだけど。なんでお前、そんなにニヤニヤしてんのよ」と、手元のストロベリーシェイクを飲み込んだ。


「いやあでも、まっっっっっさかプロポーズまで済ませちゃうなんてねぇ。恋のABCとか言うけど、いくらなんでもステップ飛ばし過ぎでしょ」

「イイじゃんか別に! あ~、マジ恥ずい。いくらテンション上がってたからって、ちょっと、マジで臭すぎんだろ」

「まあ恋愛なんてそんなモンでしょ。みんな好きな人といる時は、そうやってロマンチックな雰囲気に酔っちゃうものよ」


 優花里がへらへらと笑いながら私に言う。フォローしているような口ぶりだが、表情は完全に私をからかっている。

 いや、でも、まさか恋愛嫌いの私がこうも甘酸っぱい経験をするとは。性根が陰キャのクソ女故、ロマンチックとか言うキラキラとしたラッピングで包み込んだ自己満足行為とは縁遠いと思っていたのだが。

 頭の中に、あの日の光景が浮かぶ。アイツの体を抱き寄せて、思いの丈を伝えたあの瞬間を。私は「あ~」と爪を立てて頭を掻き、蒸気のように熱いため息を吐いた。


「……でも、よかったの、詩子?」


 と、玲菜がやや眉尻を下げて私に言う。私は「ん? なにが?」と首を傾げて、彼女へと応答する。


「いや、だってさ。……アンタ、結局河野くんの家族と関わることになるんだよ? だって、それが原因で一旦は別れたんでしょ?」

「……まあ、それはイヤだけど。でも、決めたの。今度はどんだけ嫌なことがあっても、私は真白を大好きでいるって」


 私は顔を上げ、玲菜を見つめて言い返す。すると玲菜はへにゃりと笑い、「そっかぁ。なんて言うか、愛だね。凄いね」と楽しそうに言った。

 な、なんだよ、その表情。私は玲菜の言葉にむずむずとして、「別に、そんな大層なアレじゃないけど……」と口を尖らせた。


「じゃあさ、詩子。せっかくヨリを戻したんだしさ、ね、どうかな?」


 と、優花里が笑いながら私に話しかけて来る。私は困惑しながら、「え? は、え? 何が?」と首を傾げた。

 すると優花里は、更にニヤリと笑い、そして、囁くように私に言い放った。


「……海、行こうよ。河野くん誘って、みんなでさ!」

「は? ……え? 海? なに? 素潜りでもするの? 密漁?」

「ンなわけないでしょ。フツーに遊びに行くの! 水着買って! ビーチに!」


 私はぽかんと口を開けて、彼女の言葉を聞き流す。が、しばらくして、ようやく彼女の言葉を理解して、「え、ええええええ!?」と声を張り上げてしまった。

 玲菜が「ちょっと、詩子、うるさい!」と耳打ちをする。私はハッと頭を下げ、きょろきょろと辺りを見回してから、ギロリと優花里を睨みつけた。


「んな……! 無理、無理! ていうか、なんでいきなり!」

「そりゃあ、だって、もう夏休みだよ? 夏に恋人と行くんなら海一択でしょ! 青春の花形だよ!」

「いやいやいや! 無理だって! だって、そんな、急に言われても……何も準備してないし……わ、私、下っ腹出てるし……これで水着とか、その……」

「なんだよ。アンタ、河野くんと散々ヤりたいって言ってたじゃん。どのみち腹ァ見せるんだから、別に水着でもいいでしょ」

「無理ィ! 水着と裸じゃあ全然違う! だって、だって、乗っかるじゃん! 水着だと!」


 私はぎゃんぎゃんと優花里に抗議をした。

 いやいや。断固拒否だ、こんなの。こちとら小太りのメス豚だぞ。

 夏と言えば海だとか、そんなモンはスタイルの良い一軍女子ビキニウォリアーだけの特権なんだよ。私みたいな微オークが水着なんぞ晒したら、良い所紐で巻いたハムだ。


「でも、詩子さ。河野くんに水着晒せば、ワンチャン悩殺して、もっと良いことできるかもしれないでしょ? 念願じゃん、アンタの」

「……いや、でも……私でそんなの、ちょっと……」

「できる。……詩子。アンタのそのムカつく乳は一体なんの為に付いているの? 乳が前についているのはね、前に前に進むためでしょ?」

「のび太の先生か! 言ってることわけわかんないし!」

「とにかく! デカい乳に絆されない男はいない! 私が断言する! お前の乳はそのだらしない腹なんかには負けない! 絶対に!」


 優花里がぐっと私に身を乗り出して来る。私は体を少し逸らしながら、「なんでお前今日そんなに必死なんだよ」と突っ込むと、悩ましくため息を吐き、姿勢を整えた。

 ……まあ。そりゃあ、乳には自信があるけどさ。最近ちょい育ったし。

 私はむにゅりと、自分の胸を軽く揉んで、口を尖らせる。と、優花里が「どう?」とダメ押しで私に迫り、私はぐっと奥歯を噛み締めた。


「……まあ、いいよ。……行くよ、海」

「おっしゃあ! これで四郎と海行く口実が出来た!」

「アンタ、元々グループデートするつもりで誘ってたの?」

「そりゃあ、どうせなら人数多い方が楽しいじゃん」


 優花里はそう言ってケラケラと笑った。言いたいことはわかるけど、陰キャの私にはいささか合わない感性だ。

 私は『まあ、仕方ないか』と内心で呟き、ため息を吐いた。すると、傍らの玲菜が優花里に縋り、「優花里~~! 私をハブんないでよ~~!」と泣きつくように言った。


「わーってるって。今度こそいい彼氏見つけような」

「頑張って、カッコイイ彼氏作るんだから!」


 玲菜は『頑張るぞい』とでも声が聞こえて来そうな感じで胸の前で拳を握り締めた。そう言う出会いの仕方をしているから、イイ男と巡り合えないんじゃないのか?

 ……まあ。でも、正直、少し楽しそうだって思っている自分がいるのも、確かだ。私は海へ赴く自分と真白の姿を思い浮かべ、ほんのりと顔を赤くする。

 ……なんか、かわいい感じの水着があればいいけど。私はもう一度ため息を吐き、今後の動向について頭を悩ませた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...