138 / 151
恋人編
第17話「未熟な大人は真っ当な親にもなれない」①
しおりを挟む
――あれからしばらくが経って。真白のお母さんは少しだけ謝罪を述べた後、それ以上は何も言わずに部屋を出て行ってしまった。
私たちは嵐が過ぎ去ったかのような静寂を感じつつ、それからは、雑にアニメでも見ようと言う空気にもなれずに、互いに好き勝手にスマホをいじって時間を潰していた。
そうして、そろそろ晩御飯か、と言う頃合になり。床に寝転がった私は、「あ、もう7時だ」と何の気なしに呟いた。
「どうする? 泊まっていく?」
ベッドで寝転がっている真白が私に話しかけてくる。私は「めんどくさいからそうするわ~」と返事をすると、真白は「うん。待ってて、ご飯作るから」と端的に受け答え、ベッドから下りた。
「あ~、今日アンタ疲れてるでしょ? 別にいいよ。たまには私がやったげるから」
私はそう言いながら、スマホを閉じて「ヨイショ」と立ち上がる。真白は少しだけ迷ってから、「ごめん、ありがとう」と再びベッドに座り直した。
冷蔵庫の取っ手に手を掛け、「開けるね~」と声を掛ける。真白が「うん」と呟いたのを確認すると、私はガバっと冷蔵庫を開け、中を物色する。
……卵が何個かと、切った鶏肉があるな。袋入りのキャベツの千切りともやしもあるし、これでなんか雑に見繕うか。
私は鶏肉のパックとキャベツ、そしてもやしを取り出しキッチンに置いてから、卵を3つほど手に取る。それからキッチン収納からボウルやフライパンを取り出し、蚊取り線香みたいな形のクッキングヒーターの電源を付ける。
ボウルに卵を3つ割入れ、ガチャガチャと菜箸でかき混ぜる。黄身と白身が混ざってからキャベツの千切りをぶち込み、あとはフライパンの温度が上がるのを待つ。
ふと、私はキッチンに掛けられているカレンダーへと目をやった。
水着イベントを過ぎ去り、月日はもう8月だ。夏の終わりがじわりじわりと近づき、そう言えばセミの鳴き声が変わってきたなとどうでもいいことに思いをふける。
もう少しでお盆になる。大学生的にはまだまだ夏休みだが、夏の節目と言えばやはりこの日付けだろう。実家を飛び出した面々は家へと帰り、数日の惰眠を貪った後にまた各々のアパートへとトンボ帰りをする。
――私も、そろそろ実家に帰る準備をしないと。フライパンに卵とキャベツを流し込みながら、そう思った時。
「真白、私の両親に会わない?」
私が何の気なしにそう提案すると、こたつテーブルにコップを並べていた真白が「えっ、」と動きを止めた。
「あっ、いや。お盆の時期だし、帰省するしちょうどいいかなぁって。……私はもう、アンタの両親に会ってるわけだし」
真白はこちらへと向かいながら「うん……」と気のない返事をする。そして収納棚から2枚の皿を取り出し、それをテーブルへと運ぶとコトリ、コトリと並べた。
「……ん~、うん……まあ。……唐突だけど、いいよ」
「おっ、良いんだ。……私から言っておいてなんだけど、怖くないの?」
「いや……。……心の準備が出来ていないのは、そうだけど。いつか必要になることだし、君が言うのなら、うん」
真白は皿を並べ終えると、私を見つめながら頷いた。
……コイツ、ナチュラルに「いつか必要」って言ったな。私は少しだけ頬を赤らめながら、「そっか」と生返事をした。
「まあ、ウチの親、結構ノリイイし。別にそう構えなくたって大丈夫だと思うよ」
「……僕みたいな線の細い陰キャオタクが行って、不安にさせないかな……」
「そこは安心しろ。なんて言ったって、私の親は2人ともオタクだ。その辺は理解してくれる」
「それなら……よかったけど……」
真白はそうは言いながらも、表情からは緊張が抜け切っていないようだった。私は肩を竦めると、真白の元へとトコトコと寄り、そして、彼の背中を軽く叩いて笑いかける。
「ま、心配すんな! 私の選んだ男だ! 私の両親もきっとアンタを気に入ってくれるって!」
真白は少し私を見つめると、やや気恥しそうに「……うん」と頷いた。私は少し不安が紛れた様子の真白に一層、ケラケラと笑いかけた。
――と。じゅう、じゅうとフライパンから焼け焦げるような音がした。私はハッとキッチンへと振り返ると、結構な白煙を吐き出す黒い卵の塊が目に映った。
「ギャー! こ、焦げてる!」
私は大慌てでフライパンの卵をおかず用の皿へと移した。
私たちは嵐が過ぎ去ったかのような静寂を感じつつ、それからは、雑にアニメでも見ようと言う空気にもなれずに、互いに好き勝手にスマホをいじって時間を潰していた。
そうして、そろそろ晩御飯か、と言う頃合になり。床に寝転がった私は、「あ、もう7時だ」と何の気なしに呟いた。
「どうする? 泊まっていく?」
ベッドで寝転がっている真白が私に話しかけてくる。私は「めんどくさいからそうするわ~」と返事をすると、真白は「うん。待ってて、ご飯作るから」と端的に受け答え、ベッドから下りた。
「あ~、今日アンタ疲れてるでしょ? 別にいいよ。たまには私がやったげるから」
私はそう言いながら、スマホを閉じて「ヨイショ」と立ち上がる。真白は少しだけ迷ってから、「ごめん、ありがとう」と再びベッドに座り直した。
冷蔵庫の取っ手に手を掛け、「開けるね~」と声を掛ける。真白が「うん」と呟いたのを確認すると、私はガバっと冷蔵庫を開け、中を物色する。
……卵が何個かと、切った鶏肉があるな。袋入りのキャベツの千切りともやしもあるし、これでなんか雑に見繕うか。
私は鶏肉のパックとキャベツ、そしてもやしを取り出しキッチンに置いてから、卵を3つほど手に取る。それからキッチン収納からボウルやフライパンを取り出し、蚊取り線香みたいな形のクッキングヒーターの電源を付ける。
ボウルに卵を3つ割入れ、ガチャガチャと菜箸でかき混ぜる。黄身と白身が混ざってからキャベツの千切りをぶち込み、あとはフライパンの温度が上がるのを待つ。
ふと、私はキッチンに掛けられているカレンダーへと目をやった。
水着イベントを過ぎ去り、月日はもう8月だ。夏の終わりがじわりじわりと近づき、そう言えばセミの鳴き声が変わってきたなとどうでもいいことに思いをふける。
もう少しでお盆になる。大学生的にはまだまだ夏休みだが、夏の節目と言えばやはりこの日付けだろう。実家を飛び出した面々は家へと帰り、数日の惰眠を貪った後にまた各々のアパートへとトンボ帰りをする。
――私も、そろそろ実家に帰る準備をしないと。フライパンに卵とキャベツを流し込みながら、そう思った時。
「真白、私の両親に会わない?」
私が何の気なしにそう提案すると、こたつテーブルにコップを並べていた真白が「えっ、」と動きを止めた。
「あっ、いや。お盆の時期だし、帰省するしちょうどいいかなぁって。……私はもう、アンタの両親に会ってるわけだし」
真白はこちらへと向かいながら「うん……」と気のない返事をする。そして収納棚から2枚の皿を取り出し、それをテーブルへと運ぶとコトリ、コトリと並べた。
「……ん~、うん……まあ。……唐突だけど、いいよ」
「おっ、良いんだ。……私から言っておいてなんだけど、怖くないの?」
「いや……。……心の準備が出来ていないのは、そうだけど。いつか必要になることだし、君が言うのなら、うん」
真白は皿を並べ終えると、私を見つめながら頷いた。
……コイツ、ナチュラルに「いつか必要」って言ったな。私は少しだけ頬を赤らめながら、「そっか」と生返事をした。
「まあ、ウチの親、結構ノリイイし。別にそう構えなくたって大丈夫だと思うよ」
「……僕みたいな線の細い陰キャオタクが行って、不安にさせないかな……」
「そこは安心しろ。なんて言ったって、私の親は2人ともオタクだ。その辺は理解してくれる」
「それなら……よかったけど……」
真白はそうは言いながらも、表情からは緊張が抜け切っていないようだった。私は肩を竦めると、真白の元へとトコトコと寄り、そして、彼の背中を軽く叩いて笑いかける。
「ま、心配すんな! 私の選んだ男だ! 私の両親もきっとアンタを気に入ってくれるって!」
真白は少し私を見つめると、やや気恥しそうに「……うん」と頷いた。私は少し不安が紛れた様子の真白に一層、ケラケラと笑いかけた。
――と。じゅう、じゅうとフライパンから焼け焦げるような音がした。私はハッとキッチンへと振り返ると、結構な白煙を吐き出す黒い卵の塊が目に映った。
「ギャー! こ、焦げてる!」
私は大慌てでフライパンの卵をおかず用の皿へと移した。
0
あなたにおすすめの小説
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる