愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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友情編

第6話「人間というのは全体的に面倒臭い」②

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 その後私はサークルへと顔を出した。「みんな、おはよう!」などと気持ちの悪い愛想を振りまきながら部室へと入り、なぜかよそよそしい吉田からの返答を受けてから荷物を置いた。

 その後は漫研内でいつも通りの活動をしていた。と言っても、今日は漫画を描いたりするんじゃなく、部長が持ってきたTRPGルールブックを使ってTRPGをすることになったのだが。

 そんなこんなで、私はスマホの画面に表示されたダイスをタップしダイスロールを始めた。カタンカタンと音が鳴って、画面上にその結果が表示される。
 出た数字は99。私はその瞬間に「あ~!」と声を出した。


「やっちゃった……ファンブルだ……」

「うわ、ちょっと待って。えっと、んじゃあ姫川はタンスの中を調べようと勢い良く引き出しを開けて、勢い余って引き出しを足の上に落としたってことで。1D4でダイス振って」

「うえ~ん、ひどいよ~」


 私は言われるがままに再度画面をタップしサイコロを振る。またしても音が鳴り、そして画面に1という数字が表示される。

 よっしゃ。大した値にならなくてよかった。私は「よかった~!」と言ってほっと胸をなでおろした。

 その後ゲームマスターの部長が「他になにかしたい人いる?」とみんなに声をかける。それに受け答えるように前髪で片目の隠れた男の田中が「別に」と淡々と言い、眉間にしわを寄せた由希が「特に……今はない、かな?」と首を傾げた。


「吉田君は、何かあるかい?」


 と、部長が吉田の方を見て尋ねる。しばらくすると、吉田はゆっくりと顔を上げて、そして私の方へと視線を寄越した。


「……うっちー、ちょっと、き、きき、聞きたいことがある、んだけど……」

「ん? どうしたの?」

「その、河野と寝たって、本当?」


 ……。
 …………ん? 私は吉田の発言に疑問符を浮かべてしまった。

「……河野ってキャラ、いたっけ、部長」

「いや、このシナリオにはそんな人出てこないけど……」

「そ、そうじゃなくて、ほ、ほら、いるじゃん。河野って奴。アイツと、そ、その、ヤったって噂が、あ、ある、んだけど……その、それって、本当?」


 ――は? 私は吉田の言葉にますます理解が追い付かなくなった。

 ちょっと待て。話を整理するぞ。今私はTRPGをやっていて、今回のシナリオには河野というキャラクターは出てきていない。となると私に関係がある河野ってなると、必然、アイツしかいなくなる。

 待て。待て、待て、まて。いやなんだその話。

 意味わからんぞ。アイツと? 寝る? ヤるって、つまりはセ〇クスってことだよな? え、なに? いつの間に私アイツとパコったことになってるの?

 与えられた情報量が莫大過ぎて私の脳がショートしてしまった。アイツと寝る? いやいやいや、ない。そんなこと身に覚えがないし、それ以上に気持ち悪い。想像したくない。


「……え、あ、は? ちょっと待って、マジで意味わかんないんだけど」

「いや、えっと、き、聞いただけなんだ。そういう噂が流れててね……」

「は、え? ちょっと待って。どゆことよそれ? なんでそんな噂流れてるの? だ、誰から聞いたのそれ?」

「え……そ、その、じ、女子が話してて――」

「吉田」


 と、その時、突然由希が声を出した。眉間にしわが寄っていて、机に掌を強く押し当て吉田を睨みつけている。どう見てもアレは“キレた”モードだ。


「お前突然なに言い出すかと思ったら、いくらなんでもそりゃないだろ」

「いや! 僕じゃなくて! そういう噂が流れてて! 女子らが!」

「質問したのはお前だろうが。仮にな、仮に噂が事実でも、普通は他人にそういうことを聞いたりしないんだよ」

「で、でも気になるじゃないか!」

「だから気になったところで言わないんだって。お前それマジでやめろ、キモイってマジで。どう見てもセクハラじゃねぇか」

「ぼ、僕はそんなつもりはなくて……!」


 吉田と由希が激しく罵り合う。しばらくして声はギャンギャンと大きなものになり、私は思わず「やめて!」と2人に叫んでしまった。


「2人とも、落ち着いてよ! ケンカしないで! 由希、大丈夫だよ! 私、気にしてないから!」

「けどお前……」

「いいから! ね? 吉田くんも、悪気があったわけじゃないんだよね? 私、わかってるから!」


 私がそう言うと、吉田は少ししゅんとした顔をして小さく頷いた。
 しかし、ほんの少し間が空いた後、吉田は聞こえるか聞こえないかという声で「でも、」と続けた。


「その……うっちーは、河野とはなにもないんだよね?」


 しまった、選択を誤った。私は吉田の擁護をしてしまったことをこの瞬間に後悔した。
 今まで一緒にサークル室で話してたら気付くだろ。コイツは『大丈夫』って判断すると、平気で失礼をかましてくるタイプだって。


「……な、ないよ。なにも……」


 私は無理に笑顔を作り言った。すると吉田は「そ、そうなんだ……」と安心しきったようにため息をつき、「ごめんね、変なことを聞いて。ただ、う、うっちーが変な男に絡まれてるって考えると心配で……」と言った。今すぐ吐けるものなら吐き出したい。ゲロを。

 私は「し、心配してくれてありがとう……」と言いながら、吉田から目線を逸らした。

 ――本当に、本当に勘弁してくれ。なんで私が河野とそういう関係なんだって言われなきゃいけないんだ。

 やばい。やばい。やばいから。このまま噂が広がり続けたら、心底、面倒臭くなる。私はその時、なぜか地面から灼熱がせり上がってきているかのような焦りを感じた。
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