愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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友情編

第16話 「純粋な奴の大半は自分の悪性に気がついていないだけ」②

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「思ったよ。ぶっちゃけ、ハッキリ言うと。
 そりゃあ、そうだろ。私にだって好き嫌いはある。その中には理不尽極まりない奴だって、当然あるわよ。大体好き嫌いってそういうもんだし」


 私はゆっくりと言葉を繋ぐ。松田がすかさず、「ほら! お前も同じじゃん!」と割り込んでくる、だけど私は、それを無理矢理「けど!」と大声を上げて押さえつけた。


「確かに私は、アイツの性癖をキモいって思ったけど。だからって、私がアイツを嫌いになったって訳じゃあ無いわよ」

「はぁ? でもお前、友達のことキモいって……」

「思って何が悪いんだよ!」


 私はギャンと、ヒステリックでも起こしたように大声で更に叫んだ。


「わかってんわよ。生憎こちとら聖人君子じゃない。そりゃあ綺麗な方が当然良いに決まってるけど、私は性根の腐ったゴミ野郎だからなんでもかんでも愛おしい博愛主義なんかなれやしない。
 もうこの際倫理観とかなんもかも全部投げ捨てて言ってやるわよ。私はアイツが同性愛だってことに『キモい』って思ったわよ。けど、じゃあ逆にアンタに聞いてやるわよ。アンタ、友達の何もかもを好きだって思ったことどんだけあんだよ!」

「はぁ? そんなん、普通じゃね? 当たり前だろ……」

「当たり前? アンタがそう言えるのは、本当に誰かと向き合ったことが無いからよ!」


 私はそして、松田の後ろにいる2人の女子に同じ事を問いかけた。


「アンタらはどうなんだよ。アンタらは、突然私に喧嘩ふっかけてきたこのクソ女の、こういう所も全部好きでコイツと友達やってんの?」

「えっ……あっ、なんで突然私らに……」

「いいから答えろ!」


 私が更に叫ぶと、2人は完全にたじろいでしまって、もう何も言わなくなってしまった。


「ほら。アンタの方がおかしいんだって。ていうか、熱くなるなよ。叫び散らして。ヒステリックだとモテないよ?」

「だったらもっとヒスになってやるよ。いいか、この世界に、完璧な人間なんてどこにもいやしないんだよ。私たちはきっっったねぇうんこをずっと胸の中に抱えて生きてんだよ。自分が綺麗なんだって思ってる奴ってのは、とどのつまり、手前の中のクソをずっと無視し続けてきたうんこ垂らしでしかねぇんだよ!」

「な、なに突然意味わかんないこと言ってんだよ、アンタ……」

「私はアイツの性癖をキモいって思ったよ。けど、それ以上に、私はアイツのことが大好きなんだよ。アイツがどんなもん抱えて生きてっかは知ったこっちゃあねぇけど、それ以上に私は、アイツって言う人間性その物が大好きで大好きで仕方ねぇんだよ!」

「はぁ? 結局アンタもレズなんじゃ……」

「だァーもうなんでそういう話になるんだてめぇ! 私はレズでも無ければホモでもねぇよ!
 いいか、私の性癖は二次元のイケイケチャラ男がねっとり地味眼鏡野郎にハメハメされてメス堕ちするって言う奴なんだよ! オスの権化がヘナチョコオス眼鏡に籠絡されるっていうギャップに性の喜びを感じるんだよ!
 なにも理解しろなんて言いやしねーよ! キモいのはわかってんだから! けどなぁ、わざわざ私の見える所でバカにしたりすんじゃねーよ! 嫌だったら近寄ってくんな! 私はそう思ってるし、きっと由希だって同じだよ! てめーらのお高い物の見方で、私たちを勝手に裁断するんじゃあねーよ!」


 私は松田の言葉にキレてわけもわからずとにかく喚き散らした。そうして気が付けば、辺りはしんと静まっていて、私はハッと自分が何を喚き散らしたのかを理解した。

 ……しまった。いくらなんでも性癖全開で叫びまくるのは違ったか。私は途端に恥ずかしくなって、冷や汗をダラダラと流し始めた。

 しかし。静寂した空気の中で、突然部長が、目の前にいる松田に話しかけた。


「松田さん」


 少しばかり声が震えていた。けど彼は、明確な意志を込めて、責める訳でもない態度で淡々と声を出した。


「細かいところはともかく、姫川さんの言っていることはもっともだと思う。
 天音さんの性的趣向とかは、もうこの際いいよ。ただね、他人の気持ち悪いところを取り上げて、それをわざわざ本人がいる目の前でからかうのは、いくらなんでも子供過ぎると僕は思う。
 もう僕らは大学生で、あと少ししたら社会人になるんだ。こういうのは、弁えるべきだって僕は思うよ」


 部長がそう言い切ると、松田は些か怒るように目を見開いて、「はァ?」とまた声を上げた。


「なんだよお前ら、私が悪いみたいに。ちょっと冗談で仲良くしようとしただけなのにさ。オタクってさ、そういう所空気読めないよね本当。
 弁えろって、おかしいのはお前らだろ。もういいよ、話してもどうせ、わかんないでしょ?」


 松田はそう言うと、「行こ、みんな」と私らに背を向け、「う、うん……」と言う取り巻き2人を連れてその場を後にした。

 ……なんだよあいつら、本当。私ははぁとため息を吐いて、イライラしたまま椅子に座り込んだ。


「クソ、本当ムカつくなあいつら」

「……なんか、ツイ○ターのクソリプみたいな奴らだったな」


 と、これまで何も意見を言わなかった田中が、ふとしたようにそう呟いた。私は適格な言葉に「それな!」と同意した。


「ああいうの、マジで現実にいるってやべーでしょ。最後の最後まで自分が悪いって思ってなかったし」

「ネットでクソリプしてるのは生身の人間だからな。
 ……でも、なんていうか、姫川、凄いな」


 田中が感心したように私に言う。私は、「え、なにが?」と田中に問いかけた。


「……ああまで自分の意見まくし立てられるってさ、中々できないよ。部長も、だけど。
 だって、怖いじゃないか。特にああいう奴って」

「……まあ、アンタの言いたいこともわかるよ。けど、友達バカにされて、我慢する方が私には難しかった。
 ……あんだけキレ散らかして、私もまだまだ子供ね」

「……いや。アレでいいと思う。何かを言えば炎上する社会だけど、火の手を怖がって何も言えなくなったんじゃ、ああいう奴らに呑まれちゃうから」


 田中は妙にしみじみといった感じで私にそう言った。


「……なんか、今日のアンタどうなってんの?」

「……言わなきゃ良かった」

「いやだって、なんかいつもと違うんだもん」

「俺だって思うことあるし。……別に、いいじゃんか」

「いやいいけどさ。
 ……まあ、そっか。ま、あんがと。とりあえず、好意的に受け取っておくわ」


 私がそう言うと、田中は「……うん」と小さく呟いた。

 そうしてこの昼休みの騒動は、なんとも燃えカスが残るようなモヤモヤした感じで幕を閉じた。
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