愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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恋愛編

第8話「ハーレムエンドのラブコメのような誰も傷つかない都合の良い恋愛は存在しない」

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 私は詩子と共に、コスメショップに来ていた。

 コスメショップとは言うが、ド○キのそういうコーナーと言うだけで、別段特別な所と言うわけではない。だけども、私は詩子と一緒にいられるという、ただそれだけで楽しかった。


「由希。どれ買うか決めた?」

「ん~、まだ。コッチも良さそうなんだけどな~……。どう思う、詩子?」

「口紅? ん~、私はめっちゃピンクな奴の方が好きだけど」

「私に合う?」

「アンタ大体のモノ合うよ。元が良いし」

「お、おう……そっか」


 私は詩子の言葉に少し顔を赤くする。

 理解しているが、こうして突然容姿を褒められると図らずともドキリとする。一瞬だけだが、詩子に私の気持ちが伝わったのではないか、と、都合の良い妄想が頭の中を巡ってしまう。

 そしてその度、詩子の顔を見て『そうではない』と気付かされる。詩子は私を友達だと思っているからこそ、何の気も無しにこうした言葉を言えるのだ、と。


 ……それにしても。ここのところ、詩子の付き合いが良くなった気がする。

 この間の日曜日からか。もう5日くらい経っているが、ほぼ連日一緒に遊ぶようになっている。ファミレスで勉強をするだとか、こうして女の子らしい店に行って品物を見るだとか。

 それ自体は嬉しい。嬉しいのだけれど。私は同時に、詩子の行動に、ひとつの疑念を感じていた。


「……なあ、詩子」


 詩子に話を振る。詩子は「ん?」と呑気な表情で私を見つめ返す。私は一瞬だけ口ごもり、しかしすぐに、彼女にある問いを投げかけた。


「……アンタさ。最近、河野とつるまないよね」


 詩子の表情が、わかりやすく曇った。そうして、私から目を逸らして、なんとも言えない引きつった笑みを浮かべ、わざとらしくとぼけてみせる。


「なんのことかな? べ、別に、たまたまだと思うけど」


 明らかにウソだ。人の感情を見抜くことにはそれなりに自信があるけど、こと詩子に関しては特別だ。

 なにせ、私はずっっと彼女を見てきたのだから。高校生の頃から、クラスで会う度に、ずっと。

 だから自然と勘づく。彼女が河野に対し、何かしら、気まずい感情を抱えているのだということを。

 ――まさか。信じたくない予感が頭をよぎるが、私はそれを否定する。

 だって、河野だぞ、と。詩子が常々言っているその言葉を頼りに、私は私の認識を否定し続けた。


「……まあ、前もこんなことあったけど。なんかあったら、相談に乗るよ?」

「……あはは、ありがとう。でも、別に……いいから」


 詩子は露骨にこの話しを嫌がるように私から顔を背けた。

 私の中に嫌な予感が走る。寒気が胸をキュッと締め付ける。他方で、私はそれ以上の追求もできず、そのまままた、なんのこともない日常を過ごした。


◇ ◇ ◇ ◇


 そんな一日を送った折のこと。私のスマートフォンが鳴り、とある人物からのLI〇Eを映した。


『天音さん、ちょっといいかな?』


 河野からのLI〇Eだった。名前があまりに独特(『いつかハゲるところ』という、なんでそんな名前にしたのかわからないアカウント名だ)なので一瞬誰だかわからなかったが、しばしの間考えてようやっと何者かを思い出した。

 私はスマホを操作して、『どしたん?』と返事をする。途端に既読が付いて、河野からのメッセージが返ってきた。


『ちょっと、相談があるんだけど』


 やけにもったいぶった言い方をするな、と思った。それに、河野が私なんかに相談するなんて、大層珍しいこともあるんだな、とも。私は首を傾げながら、『別にいいけど』『それで、相談って、なに?』と返事をした。

 一分くらい間が空いた。そうして部屋がしんと静まる頃合いに、河野は再びメッセージを返してきた。


『姫川のことでちょっと聞きたいことがあって』


 私は河野がその話題を出した途端、ハッと意識が覚醒するのを感じた。

 恐ろしくタイムリーな話だ。私はすぐに『うん』と返事をした。

 また少し間が空き、河野からメッセージが来る。河野は、『最近、ちょっと、アイツに避けられているような気がしてさ』と心境を語っていた。

 ――ああ、コイツも、やっぱし感じていたのか。私は小さくため息を吐いた。


『その、別に、姫川を責めてるわけじゃなくてさ』
『なんていうか、でも正直、自分でも何かした覚えは無くて』
『もしも、その、僕が悪いことをしていたら、謝りたくてさ。なにか、姫川から聞いていないかな、天音さん』


 河野は焦るように次々とメッセージを送ってきた。

「僕が悪いことをしていたら謝りたい」という辺りに、アイツのらしさと言うものがにじみ出ている。実際、河野が姫川に何かをしたというわけじゃなくて、これは単純に、姫川が河野に何かしら避けようとする意識が生まれたからって言うのが線だと思うが。

 しかし、それが正しかったとして、それがどうしてなのかという理由にまではたどり着けない。このまま『特に何もないよ』と返事をするのも良いが、それだと話がここで終わってしまう。

 ――どうしようか。私はしばし考えてから、「……ん」と呟いて、スマホの画面を操作し始めた。


『河野さ。最近、姫川と会った?』

『6日ほど前に、マ〇クで落ち合ったよ』

『なんか、その時になんかあった?』


 私が質問をすると、既読が付いてから、しばし黙りこくるような間が空いた。私はそれに、なにかあったのだな、という確信をして。

 そして、3分ほどが経ってから、河野は短い一文を送ってきた。


『その、友達に会わせた』


 ――友達? 私はその言葉に、何か引っかかるものを感じた。


『男? 女?』


 そうメッセージを返すと、また1分ほど間が空き、そうして『女の子』と返信が来た。

 私はそのメッセージに、ドキリと、胸がざわつくのを感じた。


『……河野さ』


 私はそうメッセージを送り。そして、一瞬、スマホの画面を呆然と見つめた。

『なに?』と河野から返信が来る。私はゆっくりと鼻息を吐いて、そして、河野にメッセージを送った。


『……その子にさ、私も会わせてくれない?』


 どうしてそう送ったのかと問われれば、「それが、一番答えを出しやすかったから」と返すだろう。

 河野は『ちょっと待って』と送ってから、10分ほどが経過して、私に『良いって』とLI〇Eを返した。

 ――そう。これできっと、答えがわかる。私は一抹の後悔を覚えながらも、『わかった』と河野にメッセージを送り、そして、会える具体的な日にちを彼に伝えた。
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