愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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サブストーリー2【私は弁えない】

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 脱ぎっぱなしの服やコートが散乱している部屋の中。私はベッドに横たわって、何も考えずにT〇ktokを見ていた。

 短い動画と音楽が再生されると、すぐに次のバズっている動画へと移行する。長くても一分程度のそれらを飽き飽きと眺めていると、ピコピコとL〇NEのメッセージが届いた。


『あいたい』

『いまからいってもいい?』


 メッセージの送り主は、私の彼氏である悠司だ。私は体を起こして、「え~」と顔を歪めた。

 いや、いきなり過ぎるだろ。『いってもいい?』って、私の家来るのか。私は面倒臭さに大きくため息を吐いた。

 ていうか、今気分じゃねぇし。部屋汚いから片付けなきゃだし、めんどくさいし。私は頭をガリガリ掻きながら、ぽちぽちと画面をいじる。

『今日はむり』、と。私はメッセージを入力すると、そのまま悠司にそれを送信した。

 すると、しばらくして、また私のスマホがピコピコと鳴った。メッセージを見てみると、『なんで?』と彼からの送信があった。

 なんでって、気分じゃねぇからだよ。私は悠司に思ったことをそのまま伝えると、悠司は更にメッセージを送りつけて来た。


『ウソだろ』

『まさか浮気?』


 ぐはぁ、メンドクセェ。私は舌打ちをして、『そうじゃない』と返信をした。


『じゃあなんでだめなの』

『気分じゃないから』

『予定とかないの?』

『ないけど』

『じゃあいいよね。なんでだめなの』

『だからきぶんじゃない』

『だれかいるからじゃないの?』


 私は何度説明しても納得しようとしない彼に殊更イライラとしてしまった。

 いや、誰もいねぇっつーの。何度も言ってるだろ、そう言う気分じゃねぇって。そう言うの、誰にだってあるだろ。

 なんでそんなことも理解しねぇんだよ、コイツ。私はため息を吐いて、悶々と頭の中をかき回す。

 ……もしかして、私、信頼されてない? ハッと彼の気持ちに気付くと、私はすぐにメッセージを送りつけた。


『もしかして、信頼してない?』


 私がメッセージを送ると、また少し経って、ピコピコとL〇NEが送信された。


『そんなことないよ』


 あ? だったらなんで疑うんだよ。私はまたその旨を彼に伝える。


『じゃあなんで疑うの』

『心配だから』

『それって、信頼してないってことじゃないの』

『そういうわけじゃない』

『じゃあどういうこと』

『だから、心配なだけ』


 いやだから、何をどう心配なんだよって。私は彼からの言葉に「んぎぎぎ」と歯ぎしりをした。

 と、その瞬間。ピンポンと、呼び鈴の音が部屋中に響いた。

 私はギョッとして、玄関の方へと目を遣る。まさか、と思い、唾をごくりと飲み込む。

 ――今日別にAmaz〇nとか頼んでないよな?
 てことは、もしかして。私はベッドから出て、ゆっくりと玄関へと向かう。

 そしてカギを外して、扉をガチャリと開けると、そこには、私の彼氏である悠司がいた。


「来ちゃった」


 私は彼の姿を見て、『うげぇ』と眉間にしわを寄せた。

 いやいやいや。来ちゃった、じゃねぇよ。来んなって言ったのに来るんじゃねぇよ。私はつい反射的に、「え、マジで?」と答えてしまう。


「なに、その反応」


 と、悠司がムッと表情を怒らせた。私は彼が不機嫌になったことにギョッとして、「いや、だってさぁ」と目を逸らす。

 途端、悠司はガッ、と玄関に入り込んできて、私を押し退けて部屋の中へと乗り込んだ。


「きゃっ……」


 私は玄関でよろめき、男が入り込んでくるのを許してしまう。すぐに体勢を整え部屋へと入ると、悠司は辺りをキョロキョロとして、酷く興奮した様子を醸していた。


「ちょっ、なんだよ、いきなり」


 私が言うと、悠司は答えず、部屋のクローゼットを開けた。そして首を左右に動かした後、ドスドスと足音を立てながら、今度はシンク下の扉を開けた。


「いや、お前、なにしてんだよ!」


 私はたまらず、彼に迫り、声を怒らせる。と、悠司は私の方を見て、小さくため息を吐いた。


「いや。誰か男でもいるのかと思って」

「だから、いねぇっつっただろ」

「そんなんわかんないじゃん。ちゃんと確認するまで」


 は? なんだよ、それ。私は彼の言葉に驚き目を見開いた。

 いやいやいや。普通浮気なんかしねぇから。それを疑うってことは、やっぱお前、私のこと信頼してねぇんじゃん。私はぐっと歯噛みをすると、ドスを効かせた声で彼に迫った。


「それって、やっぱ私のこと信頼してないってことじゃん」

「いやだから、そんなんじゃないって」

「信頼してないからこうやって乗り込んで来たんだろうが! なに、なんで信頼してくれないの? 私こんなにアンタのこと好きなのに、なんで浮気なんか疑うの?」

「だって、もしかしたらって言うのがあるじゃん」

「もしかしたらってなんだよ!」


 私はわっと言い返して、その途端、頭の中にふとある言葉が浮かんだ。

 そう言えば、T〇ktokで見たことがある。浮気を疑ってくる男って言うのは、自分自身が浮気をしている可能性が高いからだって。

 私はその可能性に気付いた途端、肝が冷え、そのまま彼に詰め寄った。


「ねえ、もしかしてだけどさ。アンタ、浮気してたりする?」


 私が聞くと、悠司は「はぁ!?」と怒ったような表情をした。


「なんでそうなるんだよ」

「前動画で見たんだよ。浮気をしている男ほど、浮気を疑ってくるって」

「それネットの情報だろ」

「けど、なんかどっかの大学の研究って言ってたし」

「は、なに? じゃあお前、俺よりそんなD〇igoか何かの言葉を信じるの?」

「そういうわけじゃないって。てかD〇igoじゃないし」

「じゃあなんなんだよ。俺のこと疑ってるからそう言うんだろ?」


 悠司が私を睨みつけ、見下ろしてくる。背の高い男の威圧感に委縮した私は、半歩後ろへ下がって、少しどもりながら言い返した。


「じゃ、じゃあ、証明してよ。浮気なんかしてないって」


 私が言うと、悠司はしばらく間を開けてから、ため息を吐いて、ゆっくりと私に近寄った。

 そして彼は、強い力で私の体をギュッと抱きしめた。


「こんなに好きなのに、浮気なんかするわけねぇだろ」


 彼の香水の匂いが、体から強く香って来る。私は「あっ、」と、その匂いにあてられ、ほんの一瞬、気持ちが緩まるのを感じて。

 ――いや、こんなんでごまかそうとするなよ。私はぐっと彼を押し退けて、はぁはぁと息を荒げた。


「……帰って。今日は気分じゃないって言ったでしょ」


 私は怒りを抑えながら、ゆっくりと言う。悠司はしばらく私を見つめて、「なんだよ」と不機嫌そうに呟くと、そのまま部屋から出て行った。

 慌ただしい時間が過ぎ、静寂がやってくる。しばらく私は立ち尽くしてから、ため息を吐き、悠司に強く当たったことを後悔しながら、部屋の片づけを始めた。


◇ ◇ ◇ ◇


 後日。イライラとしていた私は、ストレス発散のため、例の田中を呼びつけて、買い物へと出かけていた。

 やはりと言うべきか、田中はかなりお金を持っていたようで、例の写真を使って脅してみせると、多少無理のあるおねだりをしてみても、簡単に財布を開いた。大した情も抱いていないので、こちらからも遠慮なく注文ができる。


「いやあ、20万するバッグなんかよく買えたね。彼氏にだってねだれないよ、こんなの」


 公園の階段上のベンチで、私はケラケラと笑う。すると田中は、酷く不満のある表情で私を睨みつけ、「……お前さ、マジで調子に乗んなよ」と私に話しかけて来た。

「このバッグ、PC一個組める値段じゃん。こんなのやべぇだろ、いくらなんでもやっていいことと悪いことが……」

「あ? そんなこと言っていいの? 今すぐ写真、送り付けてもいいけど?」


 文句を言う田中を睨みつけると、彼は「ぐっ、」と嫌悪感に満ち満ちた表情で黙り込んだ。

 けひひ、何も言い返せないでやがんの。私は田中を見下して、口の端をにやりと吊り上げた。

 大体、理由はどうあれ、ほいほいと女について行ったお前が悪いんだ。ハニートラップだのどうだの世間で言われもしているんだから、そう言うのを警戒しないと言うのは脇が甘いと言わざるを得ない。

 それも社長の息子で、金持ってる立場なんだ。それだけで言い寄って来る女だっていただろうに。私は一人のバカを見下し、手に持った高級ブランドのバッグが入った紙袋を見つめ、気分上々になった。

 これでバイト先の奴らに自慢できるぞ。私はうきうきとしながらベンチから立ち上がる。


「ほら、飯行くぞ。もちろんアンタの奢りな」

「……今日だけで28万も使ってる……このままじゃあマジで破産しちまうって……」

「なんだよ、甲斐性ねぇな。まあ、じゃあ安い所にしてやっから、立てよ」


 私が急かすと、田中はため息を吐きながら立ち上がった。私はそれを確認して、ニヤニヤとしながら目の前の階段を降り始める。

 本当、ちょうどいい財布が手に入ってラッキーだわ。この際だから、欲しかった物色々頼んでみよう。

 空を見上げ、これからの展望にニヤニヤとする。かつ、かつとヒールを鳴らして段差を降りると、直後、

 ガッ、と、段差の端がヒールと足先との間に入り込んでしまった。私は途端に「うわっ!」とバランスを崩し、きゅっ、と肝が冷えた瞬間、


「バッ――!」


 田中が、後ろから慌てて私の腕を掴んだ。

 ぐっと力強く腕を引かれ、私はそれでバランスを持ち直す。途端に田中が脇腹の辺りに腕を回し、私の体勢を支える。


「バカ、お前! 危ないだろ!」


 ぎゅっと私は抱き寄せられて、彼と体が密着する。細い体つきなのに、男らしい力の強さを感じて、私は思わずドキリとしてしまう。

 ちょっ――コイツ、意外と……。私は体の動きを止めて、彼の顔を見上げた。

 しかし、途端、田中は気恥ずかしそうに私から手を放して、「ごめん」と後ろを向いて謝った。私はそこでようやく体に触れられていたことを意識し、「あ、ああ」と気まずく目線を逸らした。

 ……触りたいとか、そう言う意識は感じられなかった。本当に、ただ単純に、バランスを崩した私を助けようとしただけに思えた。

 ていうか、オタクっぽい雰囲気の癖に、ちゃんと力は男のそれなんだな。やっぱ男と女じゃパワーが違うんだな。私は頭の中を駆け巡る思考に混乱をせざるを得なくなり。

 ――いや、待て。待て。もしかして私、ドキドキしてる?

 ちょっと、待てよ。こんな奴にこんな気分にさせられるとか、マジか?

 私の中の、女としてのプライドが、なんとかドキドキを否定しようとする。だけど、そうすればするほど、なぜか頭の中であの一瞬の出来事が蘇ってしまい。


「……や、やっぱ、飯、いいわ」

「……」


 私はとりあえずで彼にそう伝える。

 その後、私たちは終始気まずい雰囲気の中、何もせずに別れて家に帰った。
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