愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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サブストーリー2【私は弁えない】

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 ――昔からそうだった。友達も、彼氏も、みんな、最初は私に寄り添ってくれて、好意的に接してくれるのだけれど、少し経つと、みんな、私から離れて行った。

 いなくなった人は、大概みんな、同じことを言った。『お前はウザい』『お前はキモイ』と。

 頭がおかしいとか、常識を弁えろとか、みんなの事を考えろとか。私はその度に、そうした声にカッと反論をしてきた。


 お前が私の一体何を知っているんだよ。どうして大して理解もしていない奴のことを、そうも易々とバカにできるんだよ。

 何が常識を弁えろ、だよ。思考停止のバカ人間は、いつだって常識って言葉で他人を縛り付ける。
 私は、常識と言う言葉に縛られたお前らとは違うんだよ。ちゃんと考えて、必死に毎日生きてるんだ。お前らみたいなバカに、私の事なんざ理解できないだろうけど。

 何がみんなの事を考えろ、だよ。そうやって、空気読めって周りに強要するの、日本人の悪い癖だと思うのだけど。
 どうして私が空気を読んで、損をしなくちゃならないんだよ。私はお前らみたいなバカとは違う。空気ばかりを読んで、自分の頭で考えられない思考停止人間なんかには、こういうの、わかんないだろ。


 身を悶えさせるくらいの不快感が全身を支配して、周りの言葉に、私は常に反論をしてきた。そうやって生きて来た私には、いつしか『友達』と呼べる存在は、いなくなっていた。

 楽しく話せる奴はいたが、そいつらは何か、「友達」とは別種の人間だった。何か、話していて裏に奇妙な思惑のようなものを感じて、どことなく信頼できなかった。

 誰も信頼できず、誰も近寄って来なくなった私は、当然のように独りになった。それならそれでと、私は孤高を目指そうと思った。

 群れるのではなく、一匹狼として、自立して生きよう。私が悪いわけじゃなくて、周りが私について来れなかっただけなんだ。独りを自覚した時は、何度も、何度も、何度も、そう呟いて、自分がどういう人間なのかを思い出すようにしていた。

 だけど、ある日気が付いた。本当に孤高な人間と言うのは、なんだかんだで友達に恵まれている、と。

 それに気が付いた私は、だからこそ、余計に『孤高』という概念にしがみついた。自分がただただ醜くて、だからこそ一人ぼっちになってしまったんだと、それを理解するのが嫌だったのだ。

 信頼できない人間を『友人』と偽って、みんなが羨むような男を彼氏にして。そうやって、自分は恵まれているのだと思い込むことでしか、自分と言う人間を保てなかった。

 私はこんなにも凄い人と過ごしている。凄い人間の周りには、凄い人が集まって来る。つまり、こんなにも凄い人たちと一緒にいる私は、凄い人なんだ。お前らなんかとは、ランクの違う世界にいる、素晴らしい人なんだ。

 そうやって、自分を肯定すればするほど、心の中に虚しさが残った。だけど私は、それに気が付かないフリをした。

 そうやって、色々な物を、ずっとずっと無視し続けて来た顛末が、きっとコレなのだろう。みんなから見下されて、みんなから嫌われて、結局、独りで、このしょうもない人生を生き続ける事になる。

 ――どうすればいいんだ、一体。もう、こんなしょうもない思いをするのは嫌だ。

 どうしよう。どうすれば私は、幸せになれるのだろう。私は狂うように、何度も何度も、その言葉を紡ぎ続けた。


◇ ◇ ◇ ◇


 優花里や玲菜からも見限られた次の日。私は机の上に置いたスマートフォンと睨み合っていた。

 迷いに迷った挙句、私はどうすれば良いのかを2人に相談しようと考えた。だけど、あれだけのことをした後に、2人に相談を持ち掛けると言うのは、あまりに気まずくて出来る気がしなかった。

 こうやってスマホと睨めっこをし始めてから、結構な時間が経っている気がする。私はカチコチと時を刻む時計の音を聞きながら、やがて、意を決してスマートフォンを手に取った。

 手が震える。呼吸がにわかに荒くなる。ブルブルと音を立てるスマホに耳を当てて、息を潜めるように、相手が応対してくれるのを待つ。

 ブロックされていたらどうしようとか、そんなことは当然考えていた。でも、そんなことを言っていたら始まらないから、わずかな可能性に縋る他なかった。しばらくそうして時間を置くと、一瞬だけプツリと音が途切れた後、『真紀?』と、優花里の声が聞こえてきた。


「――優花里!」

『……いきなり何?』

「あっ、いや……その…………。…………なんて言うか。まず、昨日のこと、謝りたくて……」


 私が言うと、優花里は電話口の向こうでため息を吐いて、『まあ、その件はもういいから』と、ぶっきらぼうに答えた。


『んで、要件は?』

「あ……。えっ、と…………。…………そ、相談、したくて」


 恐る恐る、私は声を出す。何をどう言えばいいのかわからなかったけど、とにかく、今の状況をどうにかしたくて、頭を真っ白にしながら言葉を繋いだ。


「昨日、アンタらに色々言われて……改めて、考え直して。……そしたら、自分が凄く情けなく思えて……。……でも、どうすればいいのかわかんなくて。ね、ねぇ。私、どうすればいいのかな?」

『………………。…………まあ…………。じゃあ、うん。今からそっち行くわ。待ってて』


 優花里はため息混じりに私にそう言ってくれた。私はそれに心底安堵して、「う、うん。早く、来て」と返した。



 それから30分位経って。部屋の呼び鈴が鳴った後に、優花里はやって来た。


「ウッス。とりま、入れて」


 私が玄関のドアを開けると、優花里はぶっきらぼうにそう言った。私は優花里を部屋に上げてから、机を挟んで、彼女と向かい合った。


「……そんで、相談したいんだって?」

「……う、うん。なんて言うか…………。…………昨日、あれから色々考えて……。このままだと、私、本当にどうしようもないんだって思って。だから、変わらなきゃって……だけど……何をしたらいいのか、何も、浮かばなくて……」


 私がそう言うと、優花里はため息を吐いてから、「ウソだろ。何すればいいかなんて、わかりきってるでしょ」と私に告げた。


「話、整理するけど。アンタ、男脅して金せびったんだよね?」

「え……あ…………えっと…………」

「そこは『うん』って素直に答えるんだよ。実際やったんだから」


 優花里が私に人差し指を指す。私はドキリとして、「う、うん」と反射的に受け答えてしまった。


「んじゃ、やることは単純。まずは、ちゃんと謝ること。んで、むしり取った金はちゃんと返すこと」

「えっ……!? お、お金返すの!?」

「はぁ? そりゃお前、当然に決まってんだろ」

「だ、だって……いくらだったか覚えてないし……それに、10万とか行く位、使ってるし……」

「うん、そうだな。払えって言われたら嫌な額だよな。でも、それお前が払わせたんだからな?」


 優花里の言葉に私は「うっ、」と押し黙る。私が顔を落とすと、こちらを睨み付けていた優花里は大きくため息を吐いて、更に私に言った。


「で、結局いくらだったの?」

「えっ?」

「実際の値段だよ。言っておくけど、正直に言えよ。ここ誤魔化したら何も意味無いからな」


 優花里が呆れた様子で言う。私はしばらく黙り込み、実際いくらかけたのかを頭の中で計算して、それを彼女に伝える。


「……えっと……たぶん、25? くらい」

「やっっば。よくお前知らん男にそんだけたかれたな」

「だ、だって……」

「ハイハイ、御託はいいから。でも、くらいってことは、それも正確な額じゃないんだろ?」

「う、うん……」

「んじゃあ、プラス2万くらい多めに見積もって返しとけ。それなら確実だろ」

「は、ハァ!? 2万も多く払うの!? ちょっと、それはいくらなんでもやり過ぎでしょ!」

「うるせぇ。本来なら、アンタは今頃警察に連れてかれてもおかしくない立場なんだよ。捕まってないだけありがたいと思って、ちょっと多めに払っとけ」

「で、でも、そんなの損じゃん!」

「あのな、こう言う時は自分が損をする選択をしなきゃならないんだよ。元はと言えば、アンタが常識を弁えなかった事が悪い。自業自得だと思って、ちゃんと責任は取っとけ」


 私は優花里の指示に顔を青くした。

 27万……27万って、結構とんでもない額だぞ。

 いや。確かに、無いことはない。でもだからって、ポンと払うにはあまりにも……。私は「うううぅ」と唸って、頭を抱える。


「……あのな、真紀」


 と、優花里がため息を吐いて、肩を落として私に話しかけてきた。


「アンタさ、何で自分が嫌われてるかわかってる?」

「え? ……じ、自分勝手……だから……」

「そうだけど、一番重要なのがココ。あのな、人間たまには、手前が損をする選択ってのをしなきゃならないんだよ。特にこう言う時は。アンタの悪い所は、ずっとそれを避けてきた所。自己中じゃない人間は、多少自分に損があっても、みんなのためにそう言う選択が取れる物なんだよ。そんで、そこに後腐れを出さない。気まずくなっからね。こう言うのは誰も言わないし、言ってくれないけど、大切なことなの。損をし合うから上手く行く所もあるんだからね?」


 私は優花里の言葉に「うっ、」とまた声を詰まらせた。

 確かにそうだ。私は、自分が損をするのを嫌がって、みんなにそれを押し付けていた。
 自分は何も与えないのに、周りには色々と要求する。そんな人間が、好かれるわけがない。私は大きく息を吸って、優花里の目を見つめる。


「…………わかった。お金、おろしてくるから」


 優花里は私の目を見て、ただ一言、「ん」とだけ言った。
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