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第35話『アルゴフィリア 2』
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「かはっ……」
エルは口から血を吐きながら声を漏らした。後ろで「エル!」とラザリアが叫ぶ、目前ではアルゴフィリアが愉しそうに笑いながら「はっはー!」と叫んだ。
「どおおおおおでしょおおおおお!!!! このピンチ、この難局!!!! 早く傷を手当てせねばあなたは死んでしまいます!!!! しかし諦めてはなりません、あなたはこの絶望を足掻かなければなりませんっっ!!!!! 私はあなたが立ち上がることを期待している! そして何度でも何度でも、永久に苦悶の表情を浮かべるのですっっ!!!」
直後にラザリアが「離れろ化け物!」と叫び握った剣に炎を灯しながらアルゴフィリアに切りつけた。アルゴフィリアは「おっとお」と言いながら避け、かと思えば直後に邪教徒たちの元へと舞い戻っていた。
「さてさてさてさて皆さん、今です!!! もう一度、『あの水晶でここにいる全てを蹂躙してしまいましょう!!!!』」
エルはアルゴフィリアの言葉を聞き顔を上げた。
口から、腹わたから血が流れる。無数の黒い牙はいつのまにか消えていたが、しかし邪教徒たちの手にある水晶が光り、再度黒い牙たちが襲いかかろうとする。
まずいっ――! エルは焦り地面に文字を書いた。手が震え些か歪な文字になったが、今はそんな細かいことを気にしていられない。エルは途端に地面に書いた文字へ手を触れ。
直後、複数の水晶から、一斉に黒い牙が飛び出した。
幾重にも重なる甲高い金属音、そして吹き飛ばされそうになるほどの衝撃。この場にいる騎士たちは例外なく困惑しているが、エルの目には、複数の黒い牙が、彼らの目前にある結界に何度もぶつかる様が映っていた。
エルはさらに文字を書き、そしてその文章に手を触れ光を放つ。直後に吹き飛ばされた腹わたが塞がっていき、あれほど熱を持っていた傷がなにもなかったかのように治った。
「エル、大丈夫か?」
ラザリアが駆け寄る、エルは「は、はい、大丈夫です」と言いながら立ち上がる。
「いいですねえ。第1テスト合格です。それにしても、周りに結界を張り人々を守りつつ、さらには自らの傷を治すとは。いくらその魔術でもそこまで扱いこなすことは難しい。いやはや恐れ入る才能だ。その魔術を見つけ出すことができたのも実に納得できる」
アルゴフィリアはエルを品定めするかのように言う。エルは彼の言葉を無視し、ペンを握り空中に文字を書いた。
「ラザリアさん、皆さん――僕の話を聞いてください」
エルはアルゴフィリアを見つめながらスラスラと複数の文章を空中に書いていく。騎士たちはこちらを見つめることはなかったが、しかし自分の言葉に耳をすましていることだけは感じ取られた。
「奴らが使っている攻撃は、ハッキリと言えば『僕にしか見えません』。故に避けることは困難です。
だからこそ、僕が守ります。この魔術を使えば、奴らの牙からあなたたちを守り切ることができます」
「――エル・ウィグリー。奴らは、俺たちに何をしてきているのだ?」
「全員に伸びる黒い牙を、複数人で放出しています。この狭い空間内では極めて恐ろしい攻撃です。逃げようにも、逃げるための場所がないのですから」
エルはそして、文章の一つへと手を触れた。
「しかし、恐ろしいのはあの水晶と、そしてアルゴフィリアと名乗ったあの男だけです。あとは全員、大したことはない。
そして一度水晶から牙を放てば、どうやら再装填にタイムラグがあるみたいです。だからこそ現に今、奴らは何もしてこない」
エルは邪教徒たちを睨んだ。
前回の戦いでは、人攫い――イアンが短時間で何度もあの牙を放出していた。しかし今回は、それが起きていない。加えて、水晶から発生した黒い牙たちが徐々に崩壊している。
よくよく見ると、牙の大きさも以前より細い。さらに言えば、一つ一つ大きさが細かに違っている。おそらく、自分たちの魔術にもある種の『適性』があるように、あの水晶を扱うレベルにも個人差があるのだ。
イアンはおそらく、特に適性が高かった者なのだろう。エルはそこまで推測すると、一度大きく息を吸い。
「――僕が全力で支援します。皆さんは、恐れずに攻撃を続けてください!」
エルが叫んだ途端、リガロが「ああ、わかった!」と返答し、そして邪教徒たちへと駆けた。
「いくぞっ! 砲撃《ホーミング》部隊は後方でエル・ウィグリーを守れ! 他は俺と共に邪教徒たちを叩け!」
リガロの指示に騎士たちは剣を取り、彼と同じく邪教徒たちへ迫る。何名かの騎士はエルの前に立ち、手の平から炎や氷柱を放ち接近した騎士たちの支援をする。
「ラザリアさん、あなたは下がっていてください! もしもあの植物に捕まったら……」
「バカを言うなエル! その程度のこと覚悟の上だ!」
ラザリアはエルに言うと剣を構え邪教徒たちへと走り出した。エルが「あっ!」と叫ぶと同時、黒い植物の蔓がラザリアへと伸びた。
「ラザリアさんっ!」
「邪魔だ!」
エルが叫び思わず文字を書き魔術を発動させると同時、ラザリアは炎を灯した剣を振る。ザン、という音がした瞬間、彼女に伸びた2つの蔓が切れ落ちていた。
「すまない、エル!」
ラザリアはエルに声をかけ、止まらず疾走する。やがて邪教徒が目の前に立ち塞がる、黒いローブを身に纏った男が咄嗟に剣を取る。ラザリアは彼の動きを見極めると、「はああっ!」と叫びながら男の体を切りつけた。
炎の残滓が空気を焼く、邪教徒の服や皮膚が黒く焦げる。ラザリアは瞬間に後ろを振り向き、剣に雷をまとわせそれを大きく横薙ぎに振った。
横一直線の雷が剣から飛び、複数の邪教徒が感電する。バチバチと音がした後、邪教徒たちは体から煙と焼け焦げた匂いを醸しながら倒れ込んだ。
「エルの言う通りだな、こいつら、警戒するほど怖くは――」
「危ないっ!」
エルが叫ぶ、同時にラザリアは後ろを振り向き、そこに立つ邪教徒を視界に入れた。
邪教徒が黒い水晶を持ち、ラザリアはとっさに身構える。同時にエルが空中に浮かばせたインクに手を触れ、障壁の魔術を発動させた。
「さて……『やってしまいなさい』」
アルゴフィリアが笑う、黒い牙が水晶から飛び出す。ラザリアは警戒を解けぬまま立ち尽くすが、直後にエルが作り出した障壁に牙が激突し、歪な金属音を立てて牙が食い止まる。
「大丈夫ですか、皆さん!」
エルが全員に声をかける、それを聞きリガロやラザリアは「ああ、大丈夫だ!」と言い攻撃を再開する。
と、直後。ラザリアの目の前に、アルゴフィリアが現れた。
「あなた、やけにあの男から気にかけられてますねえ……!」
アルゴフィリアは言いながら、ラザリアの顔を掴み、そしてそのまま首を引っこ抜くかのような勢いで彼女を持ち上げた。
「んがっ……あっ――!」
「さて。第2テストです。あなたの大切なお仲間さんが、今こうして圧倒的なピンチを前にしています。あなたはこの状況、どのように対処するのでしょうか……!」
「き……さま、なに、を……!」
「ええいうるさい!」
アルゴフィリアはそしてラザリアを地面に叩きつけた。ラザリアが「あがっ……!」と声を漏らす、アルゴフィリアはラザリアの頭部を左足で踏みつけ、顔が歪むのではないかと見紛うほどの力で地面に押し付ける。
「あなた、先程の様子を見ていると『自分』よりも『他人』を優先する性格と見える。となると、自分の痛みには冷静になれるが、一方で他人の痛みとなると途端に取り乱すのではないでしょうか……!」
「ラザリアさんっっ!!」
エルは直後に地面に文字を書き、そして魔術を発動させる。
エルの後方から極太の炎の矢が現れ、アルゴフィリアに向け射出される。アルゴフィリアはその強力な一撃を、片手を前に出しいとも容易く止めてみせた。
「んふふふふ、強い……! けどまだまだ甘い。それではこの人は救えない!」
アルゴフィリアがラザリアの頭を踏む左足の力を強くする。ラザリアがか細く声を漏らした、エルは直後に文字を書き、それと同時に声高に叫んだ。
「『吹き飛べ』!」
エルの後方に光が集まり、それがアルゴフィリアに向け射出される。アルゴフィリアはどうやらそれを見ているらしい、ニヤリと笑った表情を崩すことなく、迫る光を片手で簡単に弾き、
「どうしたのですか、その程度ですか! そんなちっぽけな魔術で、私を吹き飛ばすことができると――」
同時にエルは文字へと触れ、直後、アルゴフィリアの右足側の地面が勢い良く突き上がった。
「ぬっ!?」
アルゴフィリアは声を出しバランスを崩す。同時に左足がラザリアの頭から離れ、直後にラザリアは勢い良く起き上がってアルゴフィリアから離れた。
「っ、すまない、エル!」
「ラザリアさん、お怪我は!?」
「ああ、これくらいなら大丈夫だ!」
ラザリアはエルに返事をする、直後に迫った黒い触手を剣で斬り飛ばす。
アルゴフィリアはよたよたとバランスを整えると、エルを睨みつけ、楽しそうに笑った。
「いいですね、してやられました。んふふ、私が相手を見誤るとは珍しい。どうやらあなたは状況をよく理解していた、極めて冷静な対処です。もしも私を倒すために迫っていたら一瞬で殺しているところでしたよ」
エルはアルゴフィリアの表情を見て背筋が凍るような感覚を覚えた。
――強い。彼はおそらく、まったく持っての事実を話している。
エルがラザリアのためにアルゴフィリアに迫らなかったのは、『今ここで自分が死ねば、全滅する』からだ。故に彼女を助けるためには『離れた位置からの対処』が必要だった。
しかしもしも、そうしなかったなら。間違いなく自分は、それこそあっと声を出す間もなく、アルゴフィリアに殺されていただろう。エルはそれを理解したからこそ、彼の底知れなさに恐怖したのだ。
自分たちでは、コイツに勝つことはできない。エルは予感さえ覚えることもないままに、それを確信してしまった。
「――それにしても。んふふふ、んふふふふふふ、面白い。面白い、面白い、面白い。やはりあなた、ここで殺すには惜しすぎる」
と。アルゴフィリアは、大きくニヤリと笑うと、指をパチンと鳴らした。
途端、戦闘中の邪教徒たちの後ろに闇が現れた。騎士たちは即座に警戒し邪教徒から離れる。しかし邪教徒たちは何をする訳でもなく、自らの後ろに現れた闇へと姿を消した。
「だから、ここでは殺さないことにしました。次にあなたの前に現れる時は、3度目のテストを用意して差し上げましょう」
と、その時。アルゴフィリアの後ろから、イアンがゆっくりと姿を見せた。
「い、イアン――! なぜっ……!」
「混乱に乗じて既に取り戻していた……ということかっ!」
ラザリアが取り乱す、リガロが状況を理解し焦るように言う。アルゴフィリアはしかしそんな2人の様子など皆目興味無いと言った様子で、
「さて、それでは出直すとしましょう」
アルゴフィリアの目前に闇が現れる。彼はイアンを引き連れ、闇へと入り込もうとした。イアンは抵抗などなく、むしろ望んでその深淵へと足を踏み出していく。
「イアンっ、そこから先はダメだっ!」
ラザリアが叫ぶ、しかしイアンは見下したような目を彼女に向け嘲笑った。
「なに指導者面してんすか?」
呟いた一言はラザリアの足を止めるには十分だった。途端、弾けるようにリガロが駆け、そして叫びをあげる。
「逃がすか、この化け物どもがっ!」
リガロは目にも留まらぬ速さでアルゴフィリアへと疾走する。速度は衝撃を生み、辺りに旋風が巻き起こる。瞬間にリガロは剣を勢いよく振りアルゴフィリアを切りつけた。
だが、アルゴフィリアはリガロの剣を2本の指だけでいとも容易く受け止めてしまった。
「……ちなみにこれは1つの余興です。しかと御覧下さい」
そう言ってアルゴフィリアは剣をぽきりと折ってしまう。と、直後、リガロの額に人差し指をとんと当て。
「『さようなら』」
アルゴフィリアのが呟いた瞬間、リガロの体が勢いよく吹き飛び、洞窟の壁に激突した。
あ、と声をあげることもできなかった。エルは壁にめり込み意識を完全に飛ばしてしまっている聖騎士を見て、恐怖で体が動かなくなってしまった。
「――では」
アルゴフィリアが頭を下げ、そして闇へと消えていく。イアンがそれに連れられ、ゆっくりと闇の中へと足を踏み入れていく。
「イアンッッ!」
ラザリアが叫ぶ、しかし彼女は歩き出せなかった。イアンは彼女を嘲笑いながら、そして闇へと呑まれてしまった。
アルゴフィリアの生み出した闇が消える。ラザリアは力なく両膝を地面についた。
ラザリアが放心して動きを止める。エルはしかし、彼女の気持ちを察してなお、大声で叫んだ。
「危ない、ラザリアさん!」
しかしエルが叫んだ瞬間には、ラザリアの体は植物から伸びた黒い触手に絡めとられていた。
ラザリアがようやく気づいたように逃れようとする、しかし触手は強くラザリアを締め、そのまま彼女を飲み込もうとする。
「ッッやめろ!!」
エルは素早く地面に文字を書き、そしてそれに手を触れる。途端に地面が揺れ、ラザリアを捕らえた植物の根元から巨大な石の槍が突き出した。
植物が石の槍に貫かれ、その衝撃でバラバラになる。ラザリアを捕らえた蔓が力なく解けていき、そしてラザリアは拘束を解かれ自由になる。
「ラザリアさん、大丈夫ですか!」
エルはラザリアへ駆け寄り彼女の様子を確認する。ラザリアはしかし依然心ここに在らずと言う様子で、目の焦点が定まっていなかった。
「…………私、は――」
「ラザリアさん、今はそんな場合じゃありません! とにかく敵を倒さないと!」
ラザリアはエルの言葉にハッとし、蔓を伸ばし、自身を捕らえようとする植物たちを一瞥した。
「――どうやら、後悔する暇もないようだな」
ラザリアは笑うことも無く呟き。そしてゆっくりと剣を構えると、全身から殺意を、吹き出し。
「――エル」
「どう、しました?」
「支援を、頼めるか?」
エルはラザリアが見せた表情に思わず固まってしまった。
義憤ではない、もしくは目の前の危機を除こうという意思でもない。そこにあったのは、禍々しいまでの怒りだった。
途端にラザリアが駆け出す。彼女が踏み出した途端に空気が揺れ、エルは一瞬現実を認識できなかった。
風が吹き荒れたのかと錯覚する。しかし次の瞬間には、あの植物の内の一体が、ラザリアの剣に切り刻まれていた。
「ッッッアアアアアアア!!!!!」
全身全霊を何の計算もなくぶつけている。そんな印象だった。
それはあまりに冷静さを欠いた行動だった。エルにはそれがなにより、単なる八つ当たりにしか見えず、故に彼女の状態を思わず案じてしまった。
途端、駆け、植物の蕾を刎ね飛ばすラザリアの元へ別の植物の蔓が伸びる。ラザリアはそれに気づいていない様子だ、エルは彼女がどれほど周りが見えていないのかを理解し、途端に声高に叫んだ。
「ッ『千切れろッ』!!」
エルの言霊は植物の蔓へと当たり、途端にそれが千切れ飛ぶ。しかしラザリアはそれを意に介することなく洞窟の中を駆け続けた。
そうして数分ほどの戦闘――否、殲滅が続き。
場が落ち着いた頃には、ラザリアは全ての植物を刈り尽くしてた。
エルは口から血を吐きながら声を漏らした。後ろで「エル!」とラザリアが叫ぶ、目前ではアルゴフィリアが愉しそうに笑いながら「はっはー!」と叫んだ。
「どおおおおおでしょおおおおお!!!! このピンチ、この難局!!!! 早く傷を手当てせねばあなたは死んでしまいます!!!! しかし諦めてはなりません、あなたはこの絶望を足掻かなければなりませんっっ!!!!! 私はあなたが立ち上がることを期待している! そして何度でも何度でも、永久に苦悶の表情を浮かべるのですっっ!!!」
直後にラザリアが「離れろ化け物!」と叫び握った剣に炎を灯しながらアルゴフィリアに切りつけた。アルゴフィリアは「おっとお」と言いながら避け、かと思えば直後に邪教徒たちの元へと舞い戻っていた。
「さてさてさてさて皆さん、今です!!! もう一度、『あの水晶でここにいる全てを蹂躙してしまいましょう!!!!』」
エルはアルゴフィリアの言葉を聞き顔を上げた。
口から、腹わたから血が流れる。無数の黒い牙はいつのまにか消えていたが、しかし邪教徒たちの手にある水晶が光り、再度黒い牙たちが襲いかかろうとする。
まずいっ――! エルは焦り地面に文字を書いた。手が震え些か歪な文字になったが、今はそんな細かいことを気にしていられない。エルは途端に地面に書いた文字へ手を触れ。
直後、複数の水晶から、一斉に黒い牙が飛び出した。
幾重にも重なる甲高い金属音、そして吹き飛ばされそうになるほどの衝撃。この場にいる騎士たちは例外なく困惑しているが、エルの目には、複数の黒い牙が、彼らの目前にある結界に何度もぶつかる様が映っていた。
エルはさらに文字を書き、そしてその文章に手を触れ光を放つ。直後に吹き飛ばされた腹わたが塞がっていき、あれほど熱を持っていた傷がなにもなかったかのように治った。
「エル、大丈夫か?」
ラザリアが駆け寄る、エルは「は、はい、大丈夫です」と言いながら立ち上がる。
「いいですねえ。第1テスト合格です。それにしても、周りに結界を張り人々を守りつつ、さらには自らの傷を治すとは。いくらその魔術でもそこまで扱いこなすことは難しい。いやはや恐れ入る才能だ。その魔術を見つけ出すことができたのも実に納得できる」
アルゴフィリアはエルを品定めするかのように言う。エルは彼の言葉を無視し、ペンを握り空中に文字を書いた。
「ラザリアさん、皆さん――僕の話を聞いてください」
エルはアルゴフィリアを見つめながらスラスラと複数の文章を空中に書いていく。騎士たちはこちらを見つめることはなかったが、しかし自分の言葉に耳をすましていることだけは感じ取られた。
「奴らが使っている攻撃は、ハッキリと言えば『僕にしか見えません』。故に避けることは困難です。
だからこそ、僕が守ります。この魔術を使えば、奴らの牙からあなたたちを守り切ることができます」
「――エル・ウィグリー。奴らは、俺たちに何をしてきているのだ?」
「全員に伸びる黒い牙を、複数人で放出しています。この狭い空間内では極めて恐ろしい攻撃です。逃げようにも、逃げるための場所がないのですから」
エルはそして、文章の一つへと手を触れた。
「しかし、恐ろしいのはあの水晶と、そしてアルゴフィリアと名乗ったあの男だけです。あとは全員、大したことはない。
そして一度水晶から牙を放てば、どうやら再装填にタイムラグがあるみたいです。だからこそ現に今、奴らは何もしてこない」
エルは邪教徒たちを睨んだ。
前回の戦いでは、人攫い――イアンが短時間で何度もあの牙を放出していた。しかし今回は、それが起きていない。加えて、水晶から発生した黒い牙たちが徐々に崩壊している。
よくよく見ると、牙の大きさも以前より細い。さらに言えば、一つ一つ大きさが細かに違っている。おそらく、自分たちの魔術にもある種の『適性』があるように、あの水晶を扱うレベルにも個人差があるのだ。
イアンはおそらく、特に適性が高かった者なのだろう。エルはそこまで推測すると、一度大きく息を吸い。
「――僕が全力で支援します。皆さんは、恐れずに攻撃を続けてください!」
エルが叫んだ途端、リガロが「ああ、わかった!」と返答し、そして邪教徒たちへと駆けた。
「いくぞっ! 砲撃《ホーミング》部隊は後方でエル・ウィグリーを守れ! 他は俺と共に邪教徒たちを叩け!」
リガロの指示に騎士たちは剣を取り、彼と同じく邪教徒たちへ迫る。何名かの騎士はエルの前に立ち、手の平から炎や氷柱を放ち接近した騎士たちの支援をする。
「ラザリアさん、あなたは下がっていてください! もしもあの植物に捕まったら……」
「バカを言うなエル! その程度のこと覚悟の上だ!」
ラザリアはエルに言うと剣を構え邪教徒たちへと走り出した。エルが「あっ!」と叫ぶと同時、黒い植物の蔓がラザリアへと伸びた。
「ラザリアさんっ!」
「邪魔だ!」
エルが叫び思わず文字を書き魔術を発動させると同時、ラザリアは炎を灯した剣を振る。ザン、という音がした瞬間、彼女に伸びた2つの蔓が切れ落ちていた。
「すまない、エル!」
ラザリアはエルに声をかけ、止まらず疾走する。やがて邪教徒が目の前に立ち塞がる、黒いローブを身に纏った男が咄嗟に剣を取る。ラザリアは彼の動きを見極めると、「はああっ!」と叫びながら男の体を切りつけた。
炎の残滓が空気を焼く、邪教徒の服や皮膚が黒く焦げる。ラザリアは瞬間に後ろを振り向き、剣に雷をまとわせそれを大きく横薙ぎに振った。
横一直線の雷が剣から飛び、複数の邪教徒が感電する。バチバチと音がした後、邪教徒たちは体から煙と焼け焦げた匂いを醸しながら倒れ込んだ。
「エルの言う通りだな、こいつら、警戒するほど怖くは――」
「危ないっ!」
エルが叫ぶ、同時にラザリアは後ろを振り向き、そこに立つ邪教徒を視界に入れた。
邪教徒が黒い水晶を持ち、ラザリアはとっさに身構える。同時にエルが空中に浮かばせたインクに手を触れ、障壁の魔術を発動させた。
「さて……『やってしまいなさい』」
アルゴフィリアが笑う、黒い牙が水晶から飛び出す。ラザリアは警戒を解けぬまま立ち尽くすが、直後にエルが作り出した障壁に牙が激突し、歪な金属音を立てて牙が食い止まる。
「大丈夫ですか、皆さん!」
エルが全員に声をかける、それを聞きリガロやラザリアは「ああ、大丈夫だ!」と言い攻撃を再開する。
と、直後。ラザリアの目の前に、アルゴフィリアが現れた。
「あなた、やけにあの男から気にかけられてますねえ……!」
アルゴフィリアは言いながら、ラザリアの顔を掴み、そしてそのまま首を引っこ抜くかのような勢いで彼女を持ち上げた。
「んがっ……あっ――!」
「さて。第2テストです。あなたの大切なお仲間さんが、今こうして圧倒的なピンチを前にしています。あなたはこの状況、どのように対処するのでしょうか……!」
「き……さま、なに、を……!」
「ええいうるさい!」
アルゴフィリアはそしてラザリアを地面に叩きつけた。ラザリアが「あがっ……!」と声を漏らす、アルゴフィリアはラザリアの頭部を左足で踏みつけ、顔が歪むのではないかと見紛うほどの力で地面に押し付ける。
「あなた、先程の様子を見ていると『自分』よりも『他人』を優先する性格と見える。となると、自分の痛みには冷静になれるが、一方で他人の痛みとなると途端に取り乱すのではないでしょうか……!」
「ラザリアさんっっ!!」
エルは直後に地面に文字を書き、そして魔術を発動させる。
エルの後方から極太の炎の矢が現れ、アルゴフィリアに向け射出される。アルゴフィリアはその強力な一撃を、片手を前に出しいとも容易く止めてみせた。
「んふふふふ、強い……! けどまだまだ甘い。それではこの人は救えない!」
アルゴフィリアがラザリアの頭を踏む左足の力を強くする。ラザリアがか細く声を漏らした、エルは直後に文字を書き、それと同時に声高に叫んだ。
「『吹き飛べ』!」
エルの後方に光が集まり、それがアルゴフィリアに向け射出される。アルゴフィリアはどうやらそれを見ているらしい、ニヤリと笑った表情を崩すことなく、迫る光を片手で簡単に弾き、
「どうしたのですか、その程度ですか! そんなちっぽけな魔術で、私を吹き飛ばすことができると――」
同時にエルは文字へと触れ、直後、アルゴフィリアの右足側の地面が勢い良く突き上がった。
「ぬっ!?」
アルゴフィリアは声を出しバランスを崩す。同時に左足がラザリアの頭から離れ、直後にラザリアは勢い良く起き上がってアルゴフィリアから離れた。
「っ、すまない、エル!」
「ラザリアさん、お怪我は!?」
「ああ、これくらいなら大丈夫だ!」
ラザリアはエルに返事をする、直後に迫った黒い触手を剣で斬り飛ばす。
アルゴフィリアはよたよたとバランスを整えると、エルを睨みつけ、楽しそうに笑った。
「いいですね、してやられました。んふふ、私が相手を見誤るとは珍しい。どうやらあなたは状況をよく理解していた、極めて冷静な対処です。もしも私を倒すために迫っていたら一瞬で殺しているところでしたよ」
エルはアルゴフィリアの表情を見て背筋が凍るような感覚を覚えた。
――強い。彼はおそらく、まったく持っての事実を話している。
エルがラザリアのためにアルゴフィリアに迫らなかったのは、『今ここで自分が死ねば、全滅する』からだ。故に彼女を助けるためには『離れた位置からの対処』が必要だった。
しかしもしも、そうしなかったなら。間違いなく自分は、それこそあっと声を出す間もなく、アルゴフィリアに殺されていただろう。エルはそれを理解したからこそ、彼の底知れなさに恐怖したのだ。
自分たちでは、コイツに勝つことはできない。エルは予感さえ覚えることもないままに、それを確信してしまった。
「――それにしても。んふふふ、んふふふふふふ、面白い。面白い、面白い、面白い。やはりあなた、ここで殺すには惜しすぎる」
と。アルゴフィリアは、大きくニヤリと笑うと、指をパチンと鳴らした。
途端、戦闘中の邪教徒たちの後ろに闇が現れた。騎士たちは即座に警戒し邪教徒から離れる。しかし邪教徒たちは何をする訳でもなく、自らの後ろに現れた闇へと姿を消した。
「だから、ここでは殺さないことにしました。次にあなたの前に現れる時は、3度目のテストを用意して差し上げましょう」
と、その時。アルゴフィリアの後ろから、イアンがゆっくりと姿を見せた。
「い、イアン――! なぜっ……!」
「混乱に乗じて既に取り戻していた……ということかっ!」
ラザリアが取り乱す、リガロが状況を理解し焦るように言う。アルゴフィリアはしかしそんな2人の様子など皆目興味無いと言った様子で、
「さて、それでは出直すとしましょう」
アルゴフィリアの目前に闇が現れる。彼はイアンを引き連れ、闇へと入り込もうとした。イアンは抵抗などなく、むしろ望んでその深淵へと足を踏み出していく。
「イアンっ、そこから先はダメだっ!」
ラザリアが叫ぶ、しかしイアンは見下したような目を彼女に向け嘲笑った。
「なに指導者面してんすか?」
呟いた一言はラザリアの足を止めるには十分だった。途端、弾けるようにリガロが駆け、そして叫びをあげる。
「逃がすか、この化け物どもがっ!」
リガロは目にも留まらぬ速さでアルゴフィリアへと疾走する。速度は衝撃を生み、辺りに旋風が巻き起こる。瞬間にリガロは剣を勢いよく振りアルゴフィリアを切りつけた。
だが、アルゴフィリアはリガロの剣を2本の指だけでいとも容易く受け止めてしまった。
「……ちなみにこれは1つの余興です。しかと御覧下さい」
そう言ってアルゴフィリアは剣をぽきりと折ってしまう。と、直後、リガロの額に人差し指をとんと当て。
「『さようなら』」
アルゴフィリアのが呟いた瞬間、リガロの体が勢いよく吹き飛び、洞窟の壁に激突した。
あ、と声をあげることもできなかった。エルは壁にめり込み意識を完全に飛ばしてしまっている聖騎士を見て、恐怖で体が動かなくなってしまった。
「――では」
アルゴフィリアが頭を下げ、そして闇へと消えていく。イアンがそれに連れられ、ゆっくりと闇の中へと足を踏み入れていく。
「イアンッッ!」
ラザリアが叫ぶ、しかし彼女は歩き出せなかった。イアンは彼女を嘲笑いながら、そして闇へと呑まれてしまった。
アルゴフィリアの生み出した闇が消える。ラザリアは力なく両膝を地面についた。
ラザリアが放心して動きを止める。エルはしかし、彼女の気持ちを察してなお、大声で叫んだ。
「危ない、ラザリアさん!」
しかしエルが叫んだ瞬間には、ラザリアの体は植物から伸びた黒い触手に絡めとられていた。
ラザリアがようやく気づいたように逃れようとする、しかし触手は強くラザリアを締め、そのまま彼女を飲み込もうとする。
「ッッやめろ!!」
エルは素早く地面に文字を書き、そしてそれに手を触れる。途端に地面が揺れ、ラザリアを捕らえた植物の根元から巨大な石の槍が突き出した。
植物が石の槍に貫かれ、その衝撃でバラバラになる。ラザリアを捕らえた蔓が力なく解けていき、そしてラザリアは拘束を解かれ自由になる。
「ラザリアさん、大丈夫ですか!」
エルはラザリアへ駆け寄り彼女の様子を確認する。ラザリアはしかし依然心ここに在らずと言う様子で、目の焦点が定まっていなかった。
「…………私、は――」
「ラザリアさん、今はそんな場合じゃありません! とにかく敵を倒さないと!」
ラザリアはエルの言葉にハッとし、蔓を伸ばし、自身を捕らえようとする植物たちを一瞥した。
「――どうやら、後悔する暇もないようだな」
ラザリアは笑うことも無く呟き。そしてゆっくりと剣を構えると、全身から殺意を、吹き出し。
「――エル」
「どう、しました?」
「支援を、頼めるか?」
エルはラザリアが見せた表情に思わず固まってしまった。
義憤ではない、もしくは目の前の危機を除こうという意思でもない。そこにあったのは、禍々しいまでの怒りだった。
途端にラザリアが駆け出す。彼女が踏み出した途端に空気が揺れ、エルは一瞬現実を認識できなかった。
風が吹き荒れたのかと錯覚する。しかし次の瞬間には、あの植物の内の一体が、ラザリアの剣に切り刻まれていた。
「ッッッアアアアアアア!!!!!」
全身全霊を何の計算もなくぶつけている。そんな印象だった。
それはあまりに冷静さを欠いた行動だった。エルにはそれがなにより、単なる八つ当たりにしか見えず、故に彼女の状態を思わず案じてしまった。
途端、駆け、植物の蕾を刎ね飛ばすラザリアの元へ別の植物の蔓が伸びる。ラザリアはそれに気づいていない様子だ、エルは彼女がどれほど周りが見えていないのかを理解し、途端に声高に叫んだ。
「ッ『千切れろッ』!!」
エルの言霊は植物の蔓へと当たり、途端にそれが千切れ飛ぶ。しかしラザリアはそれを意に介することなく洞窟の中を駆け続けた。
そうして数分ほどの戦闘――否、殲滅が続き。
場が落ち着いた頃には、ラザリアは全ての植物を刈り尽くしてた。
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若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
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精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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