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第7話
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◇――第1火曜日 PM12時45分――◇
昼休みも15分が経ち。未来は机に座って、本を読んでいた。
食事はもう済ませた。といっても、売店で買ってきたパンを食べただけ。弁当は持ってきていたのだが、いつも通りゴミ箱に捨てられて、箱だけを回収した。
この時間になるまで、ジッとしていたわけではない。何かあればすぐに証拠を集めよう、そう、考えていた。だが、嫌がらせ程度の物では集めようにも集まらない。足を引っかけられるとかなんて、どうやれば証明できるのか。憂うつな雰囲気が、未来の体を漂っていた。
ふと、未来の中にむずむずした感覚が沸き起こった。ちょっとだけ恥ずかしい想いを抱きながら、未来は立ち上がってトイレへ向かう。
トントントンと歩いて、女子トイレへ。個室の中に入り、座り込んでふぅ、とため息をつくと。
突然、バシャ、と大量の水が降ってきた。
全身が水浸しになる。滴り落ちる水滴が、ビシャビシャと音を立てる。未来はすぐに何があったかを理解した。
美和たちだ。あいつらが、こんなことをした。すると、未来はスカートのポケットに手を突っ込んで、仕込んだ携帯録音機のスイッチをオンにした。
クスクスクス、笑い声が聞こえてくる。あいつらの、聞いているだけで、頭が壊れそうな声。未来は途端、ドアを開けて個室から飛び出した。
そしてやはり、いた。例の4人。バケツをロッカーの中に片付けている最中。アレで水をかぶせたのだろう、未来はそのまま美和を睨みつけた。
「こんなことして、ただで済むと思ってるの?」
怒りを含ませ、相手を煽る。美和はそれを聞いて「ッチ」と舌打ちをしたと思ったら、こちらへと近寄ってきた。
「あんたが悪いんでしょ、未来ちゃん。私の彼氏寝取ろうとしたんだから」
「私はそんなことしてない!」
「またまたウソついてさ。――それで? こんなことしてたら、あんたは何するの?」
未来は黙り込んでしまった。「証拠を集めている」なんて口に出せば全て崩れる。だから、答えられなかった。
すると、美和が未来の肩を掴み、グイッと彼女の耳を、自分の口元に引き寄せた。
未来が声を聴く。小さくて、空気に響かない声。未来はその声を聞いて、身がすくみ上がってしまった。
乱暴に体を振り払われ、そのままバランスを崩して尻もちをつく。と、美和は「行くわよ」と仲間たちに言って、そのままトイレを去ってしまった。
未来は、ボイスレコーダーの録音を止め、また会話を聞き直す。美和や自分の声が響く中、ただ1つ。決定的なその声は入っていなくて、未来はそれにまた恐怖を感じてしまった。
◇――第1火曜日 PM12時49分――◇
生徒玄関の近くにある、武館の前。
「んでよ、怜斗。お前、とりあえず今からどうすんの?」
隣にいる体の大きな男が怜斗に語り掛けた。彼の名前は、秋元(あきもと)誠治(せいじ)。柔道部に所属している、怜斗の幼馴染で大親友だ。熊のような見てくれの誠治に、怜斗は弁当からミートボールを取り出しながら答えた。
「うーん、マジでどうすればいいんだろうな。情報集めに手っ取り早い手段、なんかねーのかなー……」
「その、白雪って子のクラスの奴に協力頼むとかできねーの?」
「でもなー。それで巻き込んじまうのも、悪いしよ」
「うーん、それもそうだよな。……でも怜斗、覚えておけよ。少なくとも俺は、お前に協力するからな」
誠治はそう言ってまっすぐに怜斗を見る。怜斗はふっ、と笑い返した。
「あんがとよ。お前が友達で良かったわ」
「んまーな。たぶん、加奈(かな)も同じこと言うと思うぜ」
加奈、というのは誠治の彼女で、怜斗と誠治2人の幼馴染だ。誠治と加奈は付き合っていて、怜斗は恋人おらず。この話を聞くと、少し複雑そうな色恋沙汰があったと誰もが想像するが、実際そんなことはなく、怜斗と加奈はお互いを異性として見ていなかった。
怜斗はハハハ、と笑うと「だろうな」と言い返した。と、直後。怜斗の頭に、ひらめきが生まれた。
「……加奈ってよ、確かD組だよな?」
「あ? ああ、そうだな」
――いたぞ、「ツテ」が。怜斗はそこまで思い当たった瞬間、誠治に興奮して話しかけていた。
「加奈と白雪は同じクラスだ。あいつなら、白雪周辺の情報を集められるかもしれねぇ」
「なるほど。白雪さんは、加奈と同じクラスだったのか。……そういえば、地味で目立たない子がいじめられているとか言ってたな。怖くて止めることができなかったとか言ってすごく嫌そうだったけど」
「なるほど。……となると、少し頼んでみる」
怜斗はそう言ってポケットからスマートフォンを取り出し、画面を触る。事情を話し、啓吾から送られてきた「事の経緯」を加奈にもわかるように書き直して、そのまま送る。と、すぐにメッセージが返ってきた。
≪経緯はまだ読んでないけど、大体やって欲しい事はわかったから。とりあえず、クラスの動きとか、なんかそういうのに気を配ればいいんだね。任せて、私も役に立ちたい≫
怜斗はそれを見て、ニッと笑った。と、誠治がなにやらスマートフォンをいじりだしていた。
「なにやってんだよ、誠治」
「お前が送ったメッセージ。俺にも見せてって頼んでるんだよ。言ったろ? 俺も協力するって」
と、誠治が携帯をスリープモードにした直後。ピコン、と音が響いて震えた。誠治が確認すると「よし」とつぶやき口角を上げて、ポケットへ携帯をいれた。
「今は読めねーけどよ。とりあえず、事情は後で把握しとく」
「本当にありがてーよ、誠治」
「全部終わったらバイト代で俺と加奈にカラオケ奢れよ」
「あぁ!? そんなのありかよ!? ……まあいいけど」
「いいのかよ! でも約束したからな? 絶対カラオケだぞ? カラオケだぞ? いいな?」
「はいはい、わかったって」
怜斗はそう言って手をひらひらとさせた。
ふと、視界を生徒玄関へと向けた。直後、怜斗の目に映ったのは。
未来がずぶ濡れで、学校から飛び出す姿だった。
「し、白雪!?」
怜斗は目を大きくして、ダッと走り出す。誠治が後ろで何かを叫ぶが、そんなのは意識に入らない。
未来が校門を抜ける。怜斗はそれをぐんぐん追って、彼女の後姿に迫っていく。そして怜斗は、未来の肩をガシッと掴んだ。
「お前、何してんだよ!? つーかなんでずぶ濡れ……」
怜斗が焦って叫んだ直後。未来の目を見て、思わず固まってしまった。
泣いていた。目から水滴の筋を作って、ぽろぽろ、ぽろぽろと。
「な、なにがあったんだ?」
思わず、声が静かになる。怜斗がそう尋ねると、未来は膝をがくんと落とした。
「……こわく、なったの」
「怖く? どういう……」
「あいつら、ばらまくって言ってた。もし私が騒ぎを大きくしたら、ネットに晒すって……」
「晒す? 晒すってまさか……」
未来が、こくりとうなずいて、声を震わせた。
「私の、裸……」
怜斗は頭に血が上るのを感じた。顎に力が入って、目が見開かれて。息が、荒くなった。
「奴ら……! ックソ!」
怜斗は吐き捨て、地面を蹴る。
怒りの矛先は、もちろん「相手」にも向かっていた。だが、怜斗がそれ以上に。それ以上に感じていた感情は、少し違っていた。
情けない――。約束していた。「守ってやる」と。だが、そのざまがこれだ。わかってる、未来自身が危ない目に合わなきゃならない、そんなこともあると。それでも自分に関わった人間が、目の前にいる嫌いじゃない人が。苦しんでいる姿は、見たくなかった。
「すまない、白雪。泣かせちまって……」
「わか、やまくんの、せいじゃない……」
「だとしても、俺はやっぱりこんなの嫌だ。――そうだよな。お前が一番頑張ってるのに、俺は。俺はまだ、何一つできていない……」
怜斗は自分を歯がゆく思った。朝の時間、校舎裏から帰ってきた後。自分は仮眠を取って、時間を無駄にしていた。何の情報もつかんでいない、その事実が。怜斗の胸を、締め付けていた。
と、直後。
「おい、怜斗! お前……」
誠治が、怜斗の後ろを追ってきた。
「怜斗、そいつ……例の、白雪さんか?」
「ああ。こいつが、白雪。――情けねーよな。男が約束守れねーなんてよ」
怜斗が顔をしかめて地面を見つめる。しばらく沈黙が流れたが、突如。誠治が未来を見て、声を出した。
「とりあえず、よ。その、白雪さん……服、どうにかしたほうがいいぞ。ずぶ濡れじゃ、風邪ひくしよ」
そういえば、そうだ。怜斗は未来の服について、気が回っていなかった。そんな簡単な判断もできない自分を、怜斗はさらに嫌悪した。
「白雪。とりあえず、よ。――そう、だな。啓吾の事務所、行こう。ここから大して遠くないしよ」
「でも、がっこうは……」
「んなもん、サボれ。とりあえず、落ち着こう。今日は体育ないし、体操服だって無いだろ? 第一……あんなところ、いたくねーだろうからな」
怜斗がそこまで言った時。未来は、こくりとうなずいた。
そう、だ。白雪は、望んでいない。あのD組という空間にいることを。だから学校から逃げ出す選択をしたんだ。普通じゃやらない選択を、やってしまったんだ。
怜斗がそこまで悟った時。彼は目を鋭くさせて、誠治に語り掛けた。
「誠治」
誠治が「どうした?」と受け答える。と、怜斗はゆっくり息を吐くように。
「暴くぞ。全部」
ひょうひょうとして普段は笑っている怜斗。そんな彼が、今は顔に鬼を浮かばせていた。
昼休みも15分が経ち。未来は机に座って、本を読んでいた。
食事はもう済ませた。といっても、売店で買ってきたパンを食べただけ。弁当は持ってきていたのだが、いつも通りゴミ箱に捨てられて、箱だけを回収した。
この時間になるまで、ジッとしていたわけではない。何かあればすぐに証拠を集めよう、そう、考えていた。だが、嫌がらせ程度の物では集めようにも集まらない。足を引っかけられるとかなんて、どうやれば証明できるのか。憂うつな雰囲気が、未来の体を漂っていた。
ふと、未来の中にむずむずした感覚が沸き起こった。ちょっとだけ恥ずかしい想いを抱きながら、未来は立ち上がってトイレへ向かう。
トントントンと歩いて、女子トイレへ。個室の中に入り、座り込んでふぅ、とため息をつくと。
突然、バシャ、と大量の水が降ってきた。
全身が水浸しになる。滴り落ちる水滴が、ビシャビシャと音を立てる。未来はすぐに何があったかを理解した。
美和たちだ。あいつらが、こんなことをした。すると、未来はスカートのポケットに手を突っ込んで、仕込んだ携帯録音機のスイッチをオンにした。
クスクスクス、笑い声が聞こえてくる。あいつらの、聞いているだけで、頭が壊れそうな声。未来は途端、ドアを開けて個室から飛び出した。
そしてやはり、いた。例の4人。バケツをロッカーの中に片付けている最中。アレで水をかぶせたのだろう、未来はそのまま美和を睨みつけた。
「こんなことして、ただで済むと思ってるの?」
怒りを含ませ、相手を煽る。美和はそれを聞いて「ッチ」と舌打ちをしたと思ったら、こちらへと近寄ってきた。
「あんたが悪いんでしょ、未来ちゃん。私の彼氏寝取ろうとしたんだから」
「私はそんなことしてない!」
「またまたウソついてさ。――それで? こんなことしてたら、あんたは何するの?」
未来は黙り込んでしまった。「証拠を集めている」なんて口に出せば全て崩れる。だから、答えられなかった。
すると、美和が未来の肩を掴み、グイッと彼女の耳を、自分の口元に引き寄せた。
未来が声を聴く。小さくて、空気に響かない声。未来はその声を聞いて、身がすくみ上がってしまった。
乱暴に体を振り払われ、そのままバランスを崩して尻もちをつく。と、美和は「行くわよ」と仲間たちに言って、そのままトイレを去ってしまった。
未来は、ボイスレコーダーの録音を止め、また会話を聞き直す。美和や自分の声が響く中、ただ1つ。決定的なその声は入っていなくて、未来はそれにまた恐怖を感じてしまった。
◇――第1火曜日 PM12時49分――◇
生徒玄関の近くにある、武館の前。
「んでよ、怜斗。お前、とりあえず今からどうすんの?」
隣にいる体の大きな男が怜斗に語り掛けた。彼の名前は、秋元(あきもと)誠治(せいじ)。柔道部に所属している、怜斗の幼馴染で大親友だ。熊のような見てくれの誠治に、怜斗は弁当からミートボールを取り出しながら答えた。
「うーん、マジでどうすればいいんだろうな。情報集めに手っ取り早い手段、なんかねーのかなー……」
「その、白雪って子のクラスの奴に協力頼むとかできねーの?」
「でもなー。それで巻き込んじまうのも、悪いしよ」
「うーん、それもそうだよな。……でも怜斗、覚えておけよ。少なくとも俺は、お前に協力するからな」
誠治はそう言ってまっすぐに怜斗を見る。怜斗はふっ、と笑い返した。
「あんがとよ。お前が友達で良かったわ」
「んまーな。たぶん、加奈(かな)も同じこと言うと思うぜ」
加奈、というのは誠治の彼女で、怜斗と誠治2人の幼馴染だ。誠治と加奈は付き合っていて、怜斗は恋人おらず。この話を聞くと、少し複雑そうな色恋沙汰があったと誰もが想像するが、実際そんなことはなく、怜斗と加奈はお互いを異性として見ていなかった。
怜斗はハハハ、と笑うと「だろうな」と言い返した。と、直後。怜斗の頭に、ひらめきが生まれた。
「……加奈ってよ、確かD組だよな?」
「あ? ああ、そうだな」
――いたぞ、「ツテ」が。怜斗はそこまで思い当たった瞬間、誠治に興奮して話しかけていた。
「加奈と白雪は同じクラスだ。あいつなら、白雪周辺の情報を集められるかもしれねぇ」
「なるほど。白雪さんは、加奈と同じクラスだったのか。……そういえば、地味で目立たない子がいじめられているとか言ってたな。怖くて止めることができなかったとか言ってすごく嫌そうだったけど」
「なるほど。……となると、少し頼んでみる」
怜斗はそう言ってポケットからスマートフォンを取り出し、画面を触る。事情を話し、啓吾から送られてきた「事の経緯」を加奈にもわかるように書き直して、そのまま送る。と、すぐにメッセージが返ってきた。
≪経緯はまだ読んでないけど、大体やって欲しい事はわかったから。とりあえず、クラスの動きとか、なんかそういうのに気を配ればいいんだね。任せて、私も役に立ちたい≫
怜斗はそれを見て、ニッと笑った。と、誠治がなにやらスマートフォンをいじりだしていた。
「なにやってんだよ、誠治」
「お前が送ったメッセージ。俺にも見せてって頼んでるんだよ。言ったろ? 俺も協力するって」
と、誠治が携帯をスリープモードにした直後。ピコン、と音が響いて震えた。誠治が確認すると「よし」とつぶやき口角を上げて、ポケットへ携帯をいれた。
「今は読めねーけどよ。とりあえず、事情は後で把握しとく」
「本当にありがてーよ、誠治」
「全部終わったらバイト代で俺と加奈にカラオケ奢れよ」
「あぁ!? そんなのありかよ!? ……まあいいけど」
「いいのかよ! でも約束したからな? 絶対カラオケだぞ? カラオケだぞ? いいな?」
「はいはい、わかったって」
怜斗はそう言って手をひらひらとさせた。
ふと、視界を生徒玄関へと向けた。直後、怜斗の目に映ったのは。
未来がずぶ濡れで、学校から飛び出す姿だった。
「し、白雪!?」
怜斗は目を大きくして、ダッと走り出す。誠治が後ろで何かを叫ぶが、そんなのは意識に入らない。
未来が校門を抜ける。怜斗はそれをぐんぐん追って、彼女の後姿に迫っていく。そして怜斗は、未来の肩をガシッと掴んだ。
「お前、何してんだよ!? つーかなんでずぶ濡れ……」
怜斗が焦って叫んだ直後。未来の目を見て、思わず固まってしまった。
泣いていた。目から水滴の筋を作って、ぽろぽろ、ぽろぽろと。
「な、なにがあったんだ?」
思わず、声が静かになる。怜斗がそう尋ねると、未来は膝をがくんと落とした。
「……こわく、なったの」
「怖く? どういう……」
「あいつら、ばらまくって言ってた。もし私が騒ぎを大きくしたら、ネットに晒すって……」
「晒す? 晒すってまさか……」
未来が、こくりとうなずいて、声を震わせた。
「私の、裸……」
怜斗は頭に血が上るのを感じた。顎に力が入って、目が見開かれて。息が、荒くなった。
「奴ら……! ックソ!」
怜斗は吐き捨て、地面を蹴る。
怒りの矛先は、もちろん「相手」にも向かっていた。だが、怜斗がそれ以上に。それ以上に感じていた感情は、少し違っていた。
情けない――。約束していた。「守ってやる」と。だが、そのざまがこれだ。わかってる、未来自身が危ない目に合わなきゃならない、そんなこともあると。それでも自分に関わった人間が、目の前にいる嫌いじゃない人が。苦しんでいる姿は、見たくなかった。
「すまない、白雪。泣かせちまって……」
「わか、やまくんの、せいじゃない……」
「だとしても、俺はやっぱりこんなの嫌だ。――そうだよな。お前が一番頑張ってるのに、俺は。俺はまだ、何一つできていない……」
怜斗は自分を歯がゆく思った。朝の時間、校舎裏から帰ってきた後。自分は仮眠を取って、時間を無駄にしていた。何の情報もつかんでいない、その事実が。怜斗の胸を、締め付けていた。
と、直後。
「おい、怜斗! お前……」
誠治が、怜斗の後ろを追ってきた。
「怜斗、そいつ……例の、白雪さんか?」
「ああ。こいつが、白雪。――情けねーよな。男が約束守れねーなんてよ」
怜斗が顔をしかめて地面を見つめる。しばらく沈黙が流れたが、突如。誠治が未来を見て、声を出した。
「とりあえず、よ。その、白雪さん……服、どうにかしたほうがいいぞ。ずぶ濡れじゃ、風邪ひくしよ」
そういえば、そうだ。怜斗は未来の服について、気が回っていなかった。そんな簡単な判断もできない自分を、怜斗はさらに嫌悪した。
「白雪。とりあえず、よ。――そう、だな。啓吾の事務所、行こう。ここから大して遠くないしよ」
「でも、がっこうは……」
「んなもん、サボれ。とりあえず、落ち着こう。今日は体育ないし、体操服だって無いだろ? 第一……あんなところ、いたくねーだろうからな」
怜斗がそこまで言った時。未来は、こくりとうなずいた。
そう、だ。白雪は、望んでいない。あのD組という空間にいることを。だから学校から逃げ出す選択をしたんだ。普通じゃやらない選択を、やってしまったんだ。
怜斗がそこまで悟った時。彼は目を鋭くさせて、誠治に語り掛けた。
「誠治」
誠治が「どうした?」と受け答える。と、怜斗はゆっくり息を吐くように。
「暴くぞ。全部」
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