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双新星編
本編7 紫電一閃 その1
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「・・・・・・・・はっ!」
意識が覚醒する。素早く弓を構え辺りを警戒する。
「・・・・ふぅ・・・」
周りは深い森でうっそうとしていて初めて見る場所だ。どういう状況なのかわからない。
私はルーキーの上に被さるように倒れていたらしく、そのルーキーは突っ伏して動かない。
「新入り!ねぇ!ねぇってば!」
身体を揺するが反応は無い。
まさかと思い呼吸を確かめる。
(呼吸は・・・しているな。)
見たことが無い場所だ。
どの方向に向かうべきなのか・・・
「おい!こっちの方だな。」
敵の声が後方から微かに聞こえる。
私は気を失っているルーキを抱え、歩き出す。
(こんなところで・・・こんなところで・・・死んでたまるもんか!)
敵の声から逃げるように歩いていると、
開けた場所に出た。そこは一面澄んだ水が広がる底の浅い広大な湖、中心には小さな小島があり、光が差し込んで幻想的な光景を映し出していた。
しばらく、見とれていたが、この場所がおかしいことに気づく。
(・・・音がない。静かすぎる。)
そこに、
「いたぞ!ヘッドシューターだ!!」
敵騎兵隊がぞろぞろと現れ、騎兵隊の奥からあの甲殻竜に乗った男、スタンピードがゆっくりとこちらに歩いてくる。私は湖を背にスタンピードの騎兵隊と対峙する形となった。
「よお!鬼ごっこはお終いだな。」
「そう・・・みたいね・・・」
私は力なく答える。
「どうする?最後までやりあうかい?俺はそっちでもいいがな。」
私は首を振り最期を受け入れる。
「終わらせましょう。」
(ああ・・・ごめんね。守ってあげられなくて・・・約束果たせなくてごめん。)
肩に担ぐルーキーを見ながら心の中で謝る。
目を瞑り最後の瞬間を待つが一向に訪れない。
どうしたことだろう?
私は、目を開け眼前の敵兵たちを見ると、
騎獣は震えあがり、スタンピードもその部下も私の背後、湖の方を見ながら脂汗を流している。
私も彼らが見ている後ろを振り向き見る。
そこには丁度、中心の小島付近に、得も言われぬ光を放つ宝珠で出来た角を持ったエルクが水面に立ってこちらを見ていた。
彼らが固まっているのがわかる。エルクにそう言った表情は無いのに『笑っている』そう感じる。
その不気味な威圧感に動悸が止まらなくなっていた。
「い、いやあああああああああ!!!!!!!!!!」
一人のスタンピードの女性の部下が耐えられず、背を向けてがむしゃらに逃走しだす。
「馬鹿!やめろ!!!!」
スタンピードが制止したが部下の彼女は止まらない。
瞬間、彼女の足元が光ったと思ったら、彼女は地面の影となった。
その様子にその場にいる全員が息をのむ。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ・・・・あああああああああああああああ!!!!!!!」
また一人、エルクのプレッシャーで息の上がったスタンピードの女性部下が今度はエルクに向かって突撃する。
エルクはまるで嗤っているかのように鳴くと、刃が届く瞬間、自身の周りにまるで雷のケージを作るかのように魔法を発動させ騎獣ごと灰にしてしまった。
また嗤うように鳴くエルク。
「逃げても殺される、向かって行っても殺される、完全に遊んでやがる。」
スタンピードの声が震える。
「へっ・・・アンタをやって今月は俺がトップを頂けると思たのによ・・・何だよこれ。こうなっちまったらアンタの首どころじゃねぇわ。」
「私は命拾いしたのかしらね?」
「この状況でそのセリフを言うアンタは頭おかしいぜ。」
「アレを見て正常でいる方が難しくないかしら。」
「違いねぇな。」
お互いおかしくなってしまったのか軽口を言い合う。
「なあ。ヘッドシューター。アンタだったらあいつ、撃ちぬけるんじゃねぇのか?」
「無理よ。私は自身の能力の範囲内かどうかわかるのよ、あれは範囲外だわ。」
「じゃあ、範囲内まで進んで撃ってくれ。」
「どうかしら?あのエルクがそれを許してくれるかしらね?」
私は試しに弓を構えてみる。
エルクは目を細め、まるで『そこからじゃ届かないだろう?』と言っているようだった。
「参ったわね。あのエルク、私たちの射程を理解しているわ。その上で『何時でも殺せるぞ』って遊んでる。」
「全員で突撃して死ぬか?それとも全員で逃げて死ぬか?どっちがいいだろうな・・・」
スタンピードが憔悴して自棄になる。
「以外ね。アンタなら部下を囮にしてでも自分だけ逃げそうだけど。」
私がそうスタンピードを煽ると、
スタンピードは情けない顔をして、ぽつりぽつりと語りだす。
「ここにいる女達は俺が異世界で買った奴隷たちだ。それまで女とは人生で一度もまともな会話なんてしたことなかったぜ。絶対的優位な立場じゃないと会話出来ねぇんだからどうしようもない奴だろ?」
そう言って自嘲気味に笑う。
「ここに居る女たちは俺のクッソ情けない自信であり、俺の情けない代えがたい財産なんだよ。
それ捨ててこれからどう生きろっていうんだ・・・。生きていけねぇよ・・・。異世界での味を占めたら、もう元居た世界に居た頃の様な、うつむいて下見てばかりの生活なんて戻れねぇよ・・・」
スタンピードの急な人間くさい吐露に私は思わず笑みがこぼれる。
「わ、笑うなよ。」
「ごめんなさい。でもあなたそっちの素直な方がいいわよ。それに・・・あんた、女の子とまともに会話できないって言うけど、奴隷でも仲間でもない私とは普通にしゃべってるじゃない。」
私は笑いながらスタンピードを見る。
「アンタ・・・良い奴だな。あまり良い奴にならないでくれ。敵なんだからよ。殺しづらくなる。」
「この状況でまだ私を殺そうと思ってるなんて、あなたも大概じゃない?」
「ぷっ・・・だな。」
私は一度目を瞑り、
「それじゃ・・・全員で華々しく散りますか。」
目を開きそう言った。
全員が臨戦態勢を取る。
そのとき担いでいたルーキーが目を覚ました。
「・・・・・・待って・・・・下さい・・・・」
意識が覚醒する。素早く弓を構え辺りを警戒する。
「・・・・ふぅ・・・」
周りは深い森でうっそうとしていて初めて見る場所だ。どういう状況なのかわからない。
私はルーキーの上に被さるように倒れていたらしく、そのルーキーは突っ伏して動かない。
「新入り!ねぇ!ねぇってば!」
身体を揺するが反応は無い。
まさかと思い呼吸を確かめる。
(呼吸は・・・しているな。)
見たことが無い場所だ。
どの方向に向かうべきなのか・・・
「おい!こっちの方だな。」
敵の声が後方から微かに聞こえる。
私は気を失っているルーキを抱え、歩き出す。
(こんなところで・・・こんなところで・・・死んでたまるもんか!)
敵の声から逃げるように歩いていると、
開けた場所に出た。そこは一面澄んだ水が広がる底の浅い広大な湖、中心には小さな小島があり、光が差し込んで幻想的な光景を映し出していた。
しばらく、見とれていたが、この場所がおかしいことに気づく。
(・・・音がない。静かすぎる。)
そこに、
「いたぞ!ヘッドシューターだ!!」
敵騎兵隊がぞろぞろと現れ、騎兵隊の奥からあの甲殻竜に乗った男、スタンピードがゆっくりとこちらに歩いてくる。私は湖を背にスタンピードの騎兵隊と対峙する形となった。
「よお!鬼ごっこはお終いだな。」
「そう・・・みたいね・・・」
私は力なく答える。
「どうする?最後までやりあうかい?俺はそっちでもいいがな。」
私は首を振り最期を受け入れる。
「終わらせましょう。」
(ああ・・・ごめんね。守ってあげられなくて・・・約束果たせなくてごめん。)
肩に担ぐルーキーを見ながら心の中で謝る。
目を瞑り最後の瞬間を待つが一向に訪れない。
どうしたことだろう?
私は、目を開け眼前の敵兵たちを見ると、
騎獣は震えあがり、スタンピードもその部下も私の背後、湖の方を見ながら脂汗を流している。
私も彼らが見ている後ろを振り向き見る。
そこには丁度、中心の小島付近に、得も言われぬ光を放つ宝珠で出来た角を持ったエルクが水面に立ってこちらを見ていた。
彼らが固まっているのがわかる。エルクにそう言った表情は無いのに『笑っている』そう感じる。
その不気味な威圧感に動悸が止まらなくなっていた。
「い、いやあああああああああ!!!!!!!!!!」
一人のスタンピードの女性の部下が耐えられず、背を向けてがむしゃらに逃走しだす。
「馬鹿!やめろ!!!!」
スタンピードが制止したが部下の彼女は止まらない。
瞬間、彼女の足元が光ったと思ったら、彼女は地面の影となった。
その様子にその場にいる全員が息をのむ。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ・・・・あああああああああああああああ!!!!!!!」
また一人、エルクのプレッシャーで息の上がったスタンピードの女性部下が今度はエルクに向かって突撃する。
エルクはまるで嗤っているかのように鳴くと、刃が届く瞬間、自身の周りにまるで雷のケージを作るかのように魔法を発動させ騎獣ごと灰にしてしまった。
また嗤うように鳴くエルク。
「逃げても殺される、向かって行っても殺される、完全に遊んでやがる。」
スタンピードの声が震える。
「へっ・・・アンタをやって今月は俺がトップを頂けると思たのによ・・・何だよこれ。こうなっちまったらアンタの首どころじゃねぇわ。」
「私は命拾いしたのかしらね?」
「この状況でそのセリフを言うアンタは頭おかしいぜ。」
「アレを見て正常でいる方が難しくないかしら。」
「違いねぇな。」
お互いおかしくなってしまったのか軽口を言い合う。
「なあ。ヘッドシューター。アンタだったらあいつ、撃ちぬけるんじゃねぇのか?」
「無理よ。私は自身の能力の範囲内かどうかわかるのよ、あれは範囲外だわ。」
「じゃあ、範囲内まで進んで撃ってくれ。」
「どうかしら?あのエルクがそれを許してくれるかしらね?」
私は試しに弓を構えてみる。
エルクは目を細め、まるで『そこからじゃ届かないだろう?』と言っているようだった。
「参ったわね。あのエルク、私たちの射程を理解しているわ。その上で『何時でも殺せるぞ』って遊んでる。」
「全員で突撃して死ぬか?それとも全員で逃げて死ぬか?どっちがいいだろうな・・・」
スタンピードが憔悴して自棄になる。
「以外ね。アンタなら部下を囮にしてでも自分だけ逃げそうだけど。」
私がそうスタンピードを煽ると、
スタンピードは情けない顔をして、ぽつりぽつりと語りだす。
「ここにいる女達は俺が異世界で買った奴隷たちだ。それまで女とは人生で一度もまともな会話なんてしたことなかったぜ。絶対的優位な立場じゃないと会話出来ねぇんだからどうしようもない奴だろ?」
そう言って自嘲気味に笑う。
「ここに居る女たちは俺のクッソ情けない自信であり、俺の情けない代えがたい財産なんだよ。
それ捨ててこれからどう生きろっていうんだ・・・。生きていけねぇよ・・・。異世界での味を占めたら、もう元居た世界に居た頃の様な、うつむいて下見てばかりの生活なんて戻れねぇよ・・・」
スタンピードの急な人間くさい吐露に私は思わず笑みがこぼれる。
「わ、笑うなよ。」
「ごめんなさい。でもあなたそっちの素直な方がいいわよ。それに・・・あんた、女の子とまともに会話できないって言うけど、奴隷でも仲間でもない私とは普通にしゃべってるじゃない。」
私は笑いながらスタンピードを見る。
「アンタ・・・良い奴だな。あまり良い奴にならないでくれ。敵なんだからよ。殺しづらくなる。」
「この状況でまだ私を殺そうと思ってるなんて、あなたも大概じゃない?」
「ぷっ・・・だな。」
私は一度目を瞑り、
「それじゃ・・・全員で華々しく散りますか。」
目を開きそう言った。
全員が臨戦態勢を取る。
そのとき担いでいたルーキーが目を覚ました。
「・・・・・・待って・・・・下さい・・・・」
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