48 / 157
双新星編
サブストーリー11 徐々に色褪せていく・・・
しおりを挟む
目が醒める。
部屋には暖かい木漏れ日が差し込み、うららかな陽気を感じさせる。
ここは私の部屋。
十数年寝起きした良く見知った部屋だ。
「おはようございます、姫様~。今日はいい天気ですよ~。」
のんびりとした声で寝ぼけた私に声を掛けるのは、幼少からずっと私に仕えてくれたメイドだ。
「お~い、姫様~。寝ぼけてるんですか~。眠気覚ましにあつ~いお茶でも入れましょうか?」
私の顔を覗き込み、目の前で手を振ると、そう言ってお茶の準備をしに行くメイド。
ここは私の部屋。
私がここに居て何も不思議ではない。不思議ではないのに・・・
「違う・・・」
ボソッと独り言が漏れる。
夢を見ていた・・・気がする。
いや・・・夢だったのかどうか・・・。ここではないどこかの・・・。
ただ、私は夢の中が本当の居場所で、今いる自分の部屋が”ニセモノ”なんだという、そんな感覚に囚われていた。
夢の内容を思い出そうにも、上手く思い出せない。
まるで両手で掬った水が、指の間からどんどん零れる様に、無くなっていくのだ。
「姫様ー。今、あつ~いお茶を淹れますので。」
そう言って茶器を扱い、お茶を淹れるメイド。
「さ、入りましたy・・・熱っ!!」
メイドは熱く入れすぎたのかカップを持ち上げた手を咄嗟に放してしまい、割ってしまった。
「ご、ごめんなさい・・・」
「いいのよ。」
この子とは長い付き合い。昔からこの子はドジなのだ。
「すぐ片づけますので・・・痛っ!」
予想通りというか、割れたカップを片づけようとして指を切るメイド。
「見せてください。」
そう言ってメイドの子の手を取る。
私は怪我をした指に手をかざし・・・かざし?
「???」
メイドの子が不思議な顔で私を見る。
私は何をしようとしたのだろう?
どうして怪我の部分を見せろだなんて言ったのかしら・・・
どうして怪我の部分に手をかざしたのかしら・・・
「えーと・・・痛いの痛いの飛んでけー♪」
笑いながら誤魔化すようにそう言ったが、
「えー、姫様。なんですそれ?初めて聞きましたよ~。何だか可愛いですね!」
メイドに言われておかしいことに気づいた。
(何・・・今の?・・・私、なんで・・・どうしてあんなことを・・・)
私は呆然としてしまった。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
様々な感情が私の中で渦巻いていた。焦り、後悔、悲しみ・・・
動悸がして、得も言われぬ胸の苦しみが襲ってくる。
私は胸に手を当て何とか落ち着こうとした。
「姫様!大丈夫ですか!?お顔が真っ青です!・・・あれ?姫様?そんなの持ってましたっけ?」
メイドに言われて視線を胸に手を当ててる手に移す。
そこにはピンク色のイミテーション石が使われたネックレス。
私は目を見開く。
何か・・・何か・・・とても大事な・・・
思い出そうと、探ろうとすると頭が割れそうに痛い。
でもやめられない!
何を!何を!忘れているの!私は!!!
「姫様!ああ・・・大変!!すぐお医者様を呼んできます!!」
気が付けば私は泣いていた。静かに涙していた。
私は何を失ってしまったの?分からない、分からない・・・
誰か・・・誰か教えてください!
いったい誰に対してなのか・・・
誰かも分からない、
そもそも居るのかも分からない相手に私は縋る。
私はネックレスを両手で包むように握り、祈る。
助けてください・・・
教えてください・・・
返してください・・・と。
だって・・・
もう、私にはきっと祈ることしか出来ないのだから・・・
これから先ずっと・・・ずっと私は祈り続けるだろう・・・
失ったものに焦がれて・・・
徐々に色褪せていく・・・
でも、燃え尽きることだけは許されない。
それだけは絶対にしてはならないと私の心がそう言うのだ。
部屋には暖かい木漏れ日が差し込み、うららかな陽気を感じさせる。
ここは私の部屋。
十数年寝起きした良く見知った部屋だ。
「おはようございます、姫様~。今日はいい天気ですよ~。」
のんびりとした声で寝ぼけた私に声を掛けるのは、幼少からずっと私に仕えてくれたメイドだ。
「お~い、姫様~。寝ぼけてるんですか~。眠気覚ましにあつ~いお茶でも入れましょうか?」
私の顔を覗き込み、目の前で手を振ると、そう言ってお茶の準備をしに行くメイド。
ここは私の部屋。
私がここに居て何も不思議ではない。不思議ではないのに・・・
「違う・・・」
ボソッと独り言が漏れる。
夢を見ていた・・・気がする。
いや・・・夢だったのかどうか・・・。ここではないどこかの・・・。
ただ、私は夢の中が本当の居場所で、今いる自分の部屋が”ニセモノ”なんだという、そんな感覚に囚われていた。
夢の内容を思い出そうにも、上手く思い出せない。
まるで両手で掬った水が、指の間からどんどん零れる様に、無くなっていくのだ。
「姫様ー。今、あつ~いお茶を淹れますので。」
そう言って茶器を扱い、お茶を淹れるメイド。
「さ、入りましたy・・・熱っ!!」
メイドは熱く入れすぎたのかカップを持ち上げた手を咄嗟に放してしまい、割ってしまった。
「ご、ごめんなさい・・・」
「いいのよ。」
この子とは長い付き合い。昔からこの子はドジなのだ。
「すぐ片づけますので・・・痛っ!」
予想通りというか、割れたカップを片づけようとして指を切るメイド。
「見せてください。」
そう言ってメイドの子の手を取る。
私は怪我をした指に手をかざし・・・かざし?
「???」
メイドの子が不思議な顔で私を見る。
私は何をしようとしたのだろう?
どうして怪我の部分を見せろだなんて言ったのかしら・・・
どうして怪我の部分に手をかざしたのかしら・・・
「えーと・・・痛いの痛いの飛んでけー♪」
笑いながら誤魔化すようにそう言ったが、
「えー、姫様。なんですそれ?初めて聞きましたよ~。何だか可愛いですね!」
メイドに言われておかしいことに気づいた。
(何・・・今の?・・・私、なんで・・・どうしてあんなことを・・・)
私は呆然としてしまった。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
様々な感情が私の中で渦巻いていた。焦り、後悔、悲しみ・・・
動悸がして、得も言われぬ胸の苦しみが襲ってくる。
私は胸に手を当て何とか落ち着こうとした。
「姫様!大丈夫ですか!?お顔が真っ青です!・・・あれ?姫様?そんなの持ってましたっけ?」
メイドに言われて視線を胸に手を当ててる手に移す。
そこにはピンク色のイミテーション石が使われたネックレス。
私は目を見開く。
何か・・・何か・・・とても大事な・・・
思い出そうと、探ろうとすると頭が割れそうに痛い。
でもやめられない!
何を!何を!忘れているの!私は!!!
「姫様!ああ・・・大変!!すぐお医者様を呼んできます!!」
気が付けば私は泣いていた。静かに涙していた。
私は何を失ってしまったの?分からない、分からない・・・
誰か・・・誰か教えてください!
いったい誰に対してなのか・・・
誰かも分からない、
そもそも居るのかも分からない相手に私は縋る。
私はネックレスを両手で包むように握り、祈る。
助けてください・・・
教えてください・・・
返してください・・・と。
だって・・・
もう、私にはきっと祈ることしか出来ないのだから・・・
これから先ずっと・・・ずっと私は祈り続けるだろう・・・
失ったものに焦がれて・・・
徐々に色褪せていく・・・
でも、燃え尽きることだけは許されない。
それだけは絶対にしてはならないと私の心がそう言うのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
〈完結〉βの兎獣人はαの王子に食べられる
ごろごろみかん。
恋愛
α、Ω、βの第二性別が存在する獣人の国、フワロー。
「運命の番が現れたから」
その一言で二年付き合ったαの恋人に手酷く振られたβの兎獣人、ティナディア。
傷心から酒を飲み、酔っ払ったティナはその夜、美しいαの狐獣人の青年と一夜の関係を持ってしまう。
夜の記憶は一切ないが、とにかくαの男性はもうこりごり!と彼女は文字どおり脱兎のごとく、彼から逃げ出した。
しかし、彼はそんなティナに向かってにっこり笑って言ったのだ。
「可愛い兎の娘さんが、ヤリ捨てなんて、しないよね?」
*狡猾な狐(α)と大切な記憶を失っている兎(β)の、過去の約束を巡るお話
*オメガバース設定ですが、独自の解釈があります
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる