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第1話 夫の浮気相手
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「ロレーヌ…」
結婚して三か月が経ったある夜の事、隣で寝ている夫が寝言で女性の名前を呟いた。
けどその名前は、妻である私ではない。
私が誰よりもよく知っている女性の名前だった。
この瞬間、感じた気持ちを何て言えばいいのだろう…
衝撃?
嫉妬?
激昂?
いいえ…そのどれでもない。
「やっぱりお義姉様と関係があったのね…」
ただの絶望だった――――…
◇◇◇◇
私はそっとベッドを抜け、月に照らされた中庭のベンチにいた。
とてもではないが、ジョシュアの隣で寝られそうもない。
私はアーマコット。
エルゴー伯爵家の娘だ。
そんな私がローハイド子爵家の三男であるジョシュアと結婚したのは三か月前。
ジョシュアとは幼馴染であり、初恋の人でもあった。
昔から家に良く遊びに来ており、私とジョシュアの様子を見ていた母が積極的に婚約を取り交わしてくれたのだ。
『ずっと一緒だよ』
婚約式の日、ジョシュアはそう私に約束してくれた。
約束してくれたのに…っ!
「…うぅ…っ…!」
私は声を押し殺しながら、涙した。
夜の静寂の中、私の呻き声だけが聞こえた。
「ど…して…っ どうしてっ! ジョシュア…!!」
私は人気のないベンチで泣き伏した。
ロレーヌは、父が再婚した継母の連れ子だ。
お義姉様とはいつからの関係だったの!?
……今思い返せば…怪しいと思う事はいくつもあった。
あれは…結婚後、ジョシュアと私そして突然遊びに来た義姉の3人でお茶をしていた時の事。
私がご不浄で一旦席を立ち数分後部屋に戻ると、二人は不自然に距離を置いて立っていた。
そして真っ赤に塗られていた義姉の口紅が薄くなり少し乱れていた事に違和感を覚えたわ。
あの時はお茶を飲んだせいだと思っていたけど…
それと…あれはジョシュアの友人が主催した夜会の時。
そこに義姉も出席していて驚いたわ。
ジョシュアの友人と知り合いではないでしょうに。
「ツテがあって」
不敵な笑みを浮かべながらそう私に言った義姉。
その時、ジョシュアが緊張している様子だったけど…
今考えると、ツテとは彼の事だったのね。
それにその夜会でジョシュアの姿が見当たらず探し回っていた時。
とある部屋から出て来た彼に私は声をかけた。
「こんなところで何をしているの?」
「!!わあっっ!!」
ジョシュアはこちらが引くくらいビックリしていた。
「そ、そんなに驚かなくても…」
「と、突然君が現れたから…」
焦る彼の胸元を見ると、着けていたはずのクラヴァットが外されていた。
「クラヴァットはどうしたの?」
不信に思い、私は尋ねた。
「あ、ああ…暑くてね…」
そう言いながらポケットに入れていたクラヴァットを取り出し、慌てて付け直していた。
あの時、中でお義姉様と一緒にいたのね…
結婚する前にも気になる事は多々あった。
ジョシュアに対して不安な気持ちを抱き始めたのは、彼からロレーヌの事で諫められた時。
「ねぇ、アーマコット。もう少しロレーヌに優しくしてあげてもいんじゃないかな?」
「…え?」
「ロレーヌは家族として君と仲良くなりたいと思っているんだ。なのに、彼女が泣くほど拒絶するのはどうかと思うよ」
「きょ、拒絶したことなんてないわっ! わ、私は仲良くなりたいと思っているわっ けれどお義姉様が…っ」
いつも私を邪険にし私の物を奪い、傍若無人に振舞っている義姉。
それでも歩み寄ろうと努力しているのは私の方なのに…!
「君の父上が再婚して、いろいろ複雑な立場だという事は察するよ。けど…もう少し広い心をもって対応してもいいんじゃないかな?」
「!!」
彼は私の言葉を聞こうともせず、ただお義姉様の言った事を真に受けて私に注意したのだ。
数か月前に顔を合わせたばかりなのに…ジョシュアはお義姉様の言葉を優先した。
この時から嫌な予感はしていた。
けれど…彼は優しいから、新しい家に来たばかりの義姉を気遣っていただけ。
そう思うようにした。
でなければ、全てが壊れてしまう気がして…
でも―――
「やっとあの家を出て、愛する人と幸せになれると思っていたのに…結局、全てお義姉様に奪われてしまった…」
私は誰に言うともなく、溜息と共に呟いた。
父が再婚した事で、私の生活は一変した…
結婚して三か月が経ったある夜の事、隣で寝ている夫が寝言で女性の名前を呟いた。
けどその名前は、妻である私ではない。
私が誰よりもよく知っている女性の名前だった。
この瞬間、感じた気持ちを何て言えばいいのだろう…
衝撃?
嫉妬?
激昂?
いいえ…そのどれでもない。
「やっぱりお義姉様と関係があったのね…」
ただの絶望だった――――…
◇◇◇◇
私はそっとベッドを抜け、月に照らされた中庭のベンチにいた。
とてもではないが、ジョシュアの隣で寝られそうもない。
私はアーマコット。
エルゴー伯爵家の娘だ。
そんな私がローハイド子爵家の三男であるジョシュアと結婚したのは三か月前。
ジョシュアとは幼馴染であり、初恋の人でもあった。
昔から家に良く遊びに来ており、私とジョシュアの様子を見ていた母が積極的に婚約を取り交わしてくれたのだ。
『ずっと一緒だよ』
婚約式の日、ジョシュアはそう私に約束してくれた。
約束してくれたのに…っ!
「…うぅ…っ…!」
私は声を押し殺しながら、涙した。
夜の静寂の中、私の呻き声だけが聞こえた。
「ど…して…っ どうしてっ! ジョシュア…!!」
私は人気のないベンチで泣き伏した。
ロレーヌは、父が再婚した継母の連れ子だ。
お義姉様とはいつからの関係だったの!?
……今思い返せば…怪しいと思う事はいくつもあった。
あれは…結婚後、ジョシュアと私そして突然遊びに来た義姉の3人でお茶をしていた時の事。
私がご不浄で一旦席を立ち数分後部屋に戻ると、二人は不自然に距離を置いて立っていた。
そして真っ赤に塗られていた義姉の口紅が薄くなり少し乱れていた事に違和感を覚えたわ。
あの時はお茶を飲んだせいだと思っていたけど…
それと…あれはジョシュアの友人が主催した夜会の時。
そこに義姉も出席していて驚いたわ。
ジョシュアの友人と知り合いではないでしょうに。
「ツテがあって」
不敵な笑みを浮かべながらそう私に言った義姉。
その時、ジョシュアが緊張している様子だったけど…
今考えると、ツテとは彼の事だったのね。
それにその夜会でジョシュアの姿が見当たらず探し回っていた時。
とある部屋から出て来た彼に私は声をかけた。
「こんなところで何をしているの?」
「!!わあっっ!!」
ジョシュアはこちらが引くくらいビックリしていた。
「そ、そんなに驚かなくても…」
「と、突然君が現れたから…」
焦る彼の胸元を見ると、着けていたはずのクラヴァットが外されていた。
「クラヴァットはどうしたの?」
不信に思い、私は尋ねた。
「あ、ああ…暑くてね…」
そう言いながらポケットに入れていたクラヴァットを取り出し、慌てて付け直していた。
あの時、中でお義姉様と一緒にいたのね…
結婚する前にも気になる事は多々あった。
ジョシュアに対して不安な気持ちを抱き始めたのは、彼からロレーヌの事で諫められた時。
「ねぇ、アーマコット。もう少しロレーヌに優しくしてあげてもいんじゃないかな?」
「…え?」
「ロレーヌは家族として君と仲良くなりたいと思っているんだ。なのに、彼女が泣くほど拒絶するのはどうかと思うよ」
「きょ、拒絶したことなんてないわっ! わ、私は仲良くなりたいと思っているわっ けれどお義姉様が…っ」
いつも私を邪険にし私の物を奪い、傍若無人に振舞っている義姉。
それでも歩み寄ろうと努力しているのは私の方なのに…!
「君の父上が再婚して、いろいろ複雑な立場だという事は察するよ。けど…もう少し広い心をもって対応してもいいんじゃないかな?」
「!!」
彼は私の言葉を聞こうともせず、ただお義姉様の言った事を真に受けて私に注意したのだ。
数か月前に顔を合わせたばかりなのに…ジョシュアはお義姉様の言葉を優先した。
この時から嫌な予感はしていた。
けれど…彼は優しいから、新しい家に来たばかりの義姉を気遣っていただけ。
そう思うようにした。
でなければ、全てが壊れてしまう気がして…
でも―――
「やっとあの家を出て、愛する人と幸せになれると思っていたのに…結局、全てお義姉様に奪われてしまった…」
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父が再婚した事で、私の生活は一変した…
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