花鳥風月少女譚

都川レナ

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2 侍従たちの話

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(...生徒会役員の発表を聞いていた人間が、もう2人いた...)

周波数を清蘭女学院の講堂に仕掛けた集音器に合わせ、イヤホンに耳をすます。
順々に役員が発表され、終わると2人は長いため息をついた。
2人は『花』一族の侍従だ。今は主に貴子に仕えている。

「貴子様が会長なのは濃厚だったけど、やっぱり緊張したわーー、あーよかった」
と、桃園杏(ももぞのあんず)。
「かなり実力主義で選んでたな、例年に比べて上流貴族の出が少ない」
と、胡桃沢雫(くるみさわしずく)。
「確かに。貴子様と烏丸ぐらいでしょうね。まああの2人は実力もあるし…。
…って!!!」
「ん?」
「こんなこと話してる場合じゃない!ずっと前から聞きたいことがーー、雫!!」
「なんだ?」
「あんた貴子様のこと好きでしょ。付き合ってんの?」
「は?ちげーよ!!てかデカイ声出すなこのバカ!!」
「バカじゃないし…。誤魔化すな!ねえ、私見たんだよ?2人がキスしてるとこ」
思いがけない畳み掛けに、雫は動揺する。
(なぜだ、どうやって見られた?)
そんな雫の様子に、杏は「まだまだね」と呆れた笑みを浮かべた。
(いつもバカな癖に調子乗ってやがる…)
「あんた貴子様の口紅と香水ぐらい把握しときなさいよ。バレバレよ」
(そこかーーーー!)
「どういうつもりなの?貴子様は花籠柳星様の婚約者なのよ!」

そう。貴子はその美貌と英知から次期花籠家の家長、すなわち『花』のトップ、花籠柳星の婚約者に内定したのだ。

王家とほぼ同時期に発生した王家の四大分家、花籠(かごもり)、風凪(かざなぎ)、千鳥(ちどり)、三日月(みかづき)【通称:花鳥風月】が、実質的に日本を支配しているといっても過言ではない。

それなのに侍従の男と恋仲だなんて婚約破棄されても仕方ない、逆に梅林家の地位が上がるどころか下がる!と杏は怒り狂っていた。
「ねえ、私たちは貴子様の幸せを一番に考えてきたよね?したらさ、貴子様は柳星様と結婚されるのが一番の幸せでしょう?
…わかったら身を引きなさい『花』の幹部会には報告しないであげるから」

杏の忠告が正しいことが痛いほど分かる。

でも…

「わかった」

口ではそう言っても、雫は貴子との関係を切るつもりはなかった。杏が満足気に微笑み、仕事は果たしたと言わんばかりに立ち去る。

「雫」

気がつくと、後ろに貴子が立っていた。
甘い百合の香りが辺りに漂う。
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