過労死社畜は悪役令嬢に転生して経済革命を起こす

色部耀

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土の王国編

え、私襲われた?

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「お気をつけていってらっしゃいませ」

 使用人たちに見送られながら私たちは馬車で出発した。メンバーは当初の予定通り私とアリスとクロードとメアリー。私が異世界転生したということはアリスには秘密にされている。気が付かないアリスもそれで良いのかと心配にはなるけど。

「初めは土の国へ向かうのですよね? 初めてでとても楽しみです!」

 アリスは馬車の中でそう言ってはしゃぐ。御者を務めるクロード以外の馬車の中にいる私たちは旅のしおりのようにした道順マップを見ている。

「一面とうもろこし畑で迫力満点の国よ。私も楽しみ」
「土の王家の家紋ですね! 早く着くと良いですね!」
「クロード。アリスがもっと速度を上げろって言ってるわよー」
「はっ! ただいま!」
「ち、違いますから! クロード、安全運転でお願いします」

 そう言って和やかな雰囲気のままクローバーや菜の花が一面に植えられている草原を走り続ける。予定では途中で昼食をとり、日が高いうちには到着できるはず。
 懐中時計を見ると時刻は午前12時。そろそろ昼食の時間と思ったその時。

「な、なにごとですか?!」

 馬車が突然止まった衝撃に体が流されながらアリスが言う。

「レジーナ様、アリス様。中でそのまま」

 外の御者席からクロードが言う。メアリーはその言葉を聞いて即座に飛び出す。アリスはクロードの言う通りにそのまま席に座り直したが、私は気になって御者席に通じる窓から外を覗いた。
 不自然に硬直した2頭の馬。そしてその先には10人の武器を持った男たちが立ちはだかっている。

「そこの馬車ぁ! 命が惜しけれりゃ金になるもん全部置いてけぇ!」

 先頭に立つ一際体の大きな男が声を張る。典型的な盗賊団だ。ほんの少しテンションが上がる。

「お姉さま、なんだか楽しそうですね」
「だって盗賊よ。初めて本物を見たわ」

 私の言葉にアリスは少し呆れた様子。でも仕方ないじゃない。私は小さい頃から強盗とかテロリストに遭遇したらどうしようなんて妄想をしてたような人なんだから。

「どんな魔法を使って馬を止めたのかは知らないが、フルハイム家の馬車と知った上での狼藉か?」

 クロードは御者席から降りると直剣を抜いて言った。メアリーはそんなクロードの隣に立って同じく直剣を抜く。

「は? 知るかよ。こっちは生活がかかってるんでな。抵抗するなら殺してでも奪うだけよ」

 10人の男たちはリーダー格の男の言葉を皮切りに一斉にこちらへと襲いかかってきたのだった。
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