47 / 66
水の王国編
え、私の戦いはこれから?
しおりを挟む
ベンネスに戻った私たちは即日派手な祝いの祭りに参加することになった。ゲームだと翌日執り行われるはずだったパレードだけど、アウラ王子が意識を取り戻したのが早かったからか、トントン拍子に祝いの場が出来上がった。
祭りの場はベンネスの上。水上に数え切れないほど浮かんだ舟で行われている。アウラ王子や私たちが乗る船はひときわ大きな帆船で、周りの舟は現代で言う小型漁船のような大きさのものが多数。
「お姉さまも少しは元気になりましたか?」
船の貴賓席で隣に座るアリスはにこやかにそう言った。目の前では数々の舟から無数の花火が打ち上げられ、夜だと言うのに星も見えないほど明るい。
「まあ、アウラ王子からあそこまで言われたらね」
ありがとう。その一言で私の心は救われた。罪悪感が完全になくなったとは言わないけど、この花火を楽しめるほどには気持ちが持ち直した。
「良かったです。でもまだ本調子ではなさそうですね」
「え、なんで?」
自分で言うのもなんだけど、外から見る分には十分取り繕えているんじゃないかと思う。でもアリスの目から見るとそうではないらしい。
「本来のお姉さまならこの祭りに不満があるはずです」
「不満?」
なんだろう。アリスは何か不満があるのだろうか? なんて思っていたら、次の言葉で全て解決した。
「お祭りなのにほとんどお酒が出回ってませんよ?」
「確かに! 清酒。私はこの国に清酒を飲むために来たんだった!」
「ふふ。それでこそお姉さまです」
少し心外なセリフを聞かされた気もするけど、そんなことはどうでもいい。落ち込んでいたのも後回しだ。
「お酒。今から作るよ!」
「え、今からですか?」
「アウラ王子を呼んで」
「アウラ王子をですか?」
「早く」
「え、あ、はい」
アリスは慌ててアウラ王子を呼びに行った。王子の立場で町の酒場に行くような人間だ。酒蔵の人間とのコネクションくらいあるだろう。
私は酒造りを手伝う。国民も私も酒が飲める。これこそウィンウィンの関係。
戦場で役に立てなかった私がようやくこの国のために役に立てる。
汚名返上名誉挽回だ。
「どうかしたのかいレジーナちゃん」
アリスに連れられて来たアウラ王子はなんだか嬉しそうに見える。いつの間にか酒場であった時の格好になってるあたり、そろそろ職務放棄して抜け出そうとでも思ってたのだろう。ゲームでもアリスと抜け出すイベントがあったし。
「みんなお酒が足りてないでしょ? 今から作るから誰か酒蔵の人を紹介して欲しいの」
「今から? 酒を作る? 流石に無理……って思うけど、レジーナちゃんならなんとかしちゃいそうだね。いいよ。今から国中の酒蔵の人を集めよう」
アウラ王子はそう言うと腰に下げた剣を抜き、水面へ向けて振った。
すると波が周りの舟をグイグイ動かす。まるで巨大なパズルを動かすかのように王宮の船の目の前に何隻かの舟が集まってくる。
「アウラ王子! 病み上がりですのであまり無理をなさらないでください」
アリスがそう言うけど、アウラ王子は笑顔でウインクを返した。
「大丈夫。なぜか調子がいいんだ。さて、レジーナちゃん。今目の前にいる16隻の舟がこの国のどぶろく作りの名家たちだ。あとは任せて良いかな?」
「はい。ありがとうございます」
私が頭を下げると、タイミングよくティードが目の前に降って来た。
「馬鹿王子! 安静にしてろと言ったでしょうが!」
「ティード。お前はレジーナちゃんの世話を頼む。これは勅令だ。よろしくな」
「な、何を馬鹿なことを!」
「じゃ、あとはよろしく。アリスちゃん。行こう」
アウラ王子はそう言って剣を軽く振るとアリスと共にその場から消えた。極めると魔法ってやっぱりすごい。
だから私もすごい魔法で役に立てるかもしれないんだ。
「リラ。手伝ってくれる?」
「うん。特にやることないし」
「はあ……。私もお供します」
快い返事をしてくれたリラと渋々隣に立つティード。鬼の形相をしたクロードはアリスを探して走り去る。メアリーは私の後ろで静かに立っている。
「よし。じゃあこれからが本番よ」
私は目の前に並ぶ舟を見て気合いを入れた。
祭りの場はベンネスの上。水上に数え切れないほど浮かんだ舟で行われている。アウラ王子や私たちが乗る船はひときわ大きな帆船で、周りの舟は現代で言う小型漁船のような大きさのものが多数。
「お姉さまも少しは元気になりましたか?」
船の貴賓席で隣に座るアリスはにこやかにそう言った。目の前では数々の舟から無数の花火が打ち上げられ、夜だと言うのに星も見えないほど明るい。
「まあ、アウラ王子からあそこまで言われたらね」
ありがとう。その一言で私の心は救われた。罪悪感が完全になくなったとは言わないけど、この花火を楽しめるほどには気持ちが持ち直した。
「良かったです。でもまだ本調子ではなさそうですね」
「え、なんで?」
自分で言うのもなんだけど、外から見る分には十分取り繕えているんじゃないかと思う。でもアリスの目から見るとそうではないらしい。
「本来のお姉さまならこの祭りに不満があるはずです」
「不満?」
なんだろう。アリスは何か不満があるのだろうか? なんて思っていたら、次の言葉で全て解決した。
「お祭りなのにほとんどお酒が出回ってませんよ?」
「確かに! 清酒。私はこの国に清酒を飲むために来たんだった!」
「ふふ。それでこそお姉さまです」
少し心外なセリフを聞かされた気もするけど、そんなことはどうでもいい。落ち込んでいたのも後回しだ。
「お酒。今から作るよ!」
「え、今からですか?」
「アウラ王子を呼んで」
「アウラ王子をですか?」
「早く」
「え、あ、はい」
アリスは慌ててアウラ王子を呼びに行った。王子の立場で町の酒場に行くような人間だ。酒蔵の人間とのコネクションくらいあるだろう。
私は酒造りを手伝う。国民も私も酒が飲める。これこそウィンウィンの関係。
戦場で役に立てなかった私がようやくこの国のために役に立てる。
汚名返上名誉挽回だ。
「どうかしたのかいレジーナちゃん」
アリスに連れられて来たアウラ王子はなんだか嬉しそうに見える。いつの間にか酒場であった時の格好になってるあたり、そろそろ職務放棄して抜け出そうとでも思ってたのだろう。ゲームでもアリスと抜け出すイベントがあったし。
「みんなお酒が足りてないでしょ? 今から作るから誰か酒蔵の人を紹介して欲しいの」
「今から? 酒を作る? 流石に無理……って思うけど、レジーナちゃんならなんとかしちゃいそうだね。いいよ。今から国中の酒蔵の人を集めよう」
アウラ王子はそう言うと腰に下げた剣を抜き、水面へ向けて振った。
すると波が周りの舟をグイグイ動かす。まるで巨大なパズルを動かすかのように王宮の船の目の前に何隻かの舟が集まってくる。
「アウラ王子! 病み上がりですのであまり無理をなさらないでください」
アリスがそう言うけど、アウラ王子は笑顔でウインクを返した。
「大丈夫。なぜか調子がいいんだ。さて、レジーナちゃん。今目の前にいる16隻の舟がこの国のどぶろく作りの名家たちだ。あとは任せて良いかな?」
「はい。ありがとうございます」
私が頭を下げると、タイミングよくティードが目の前に降って来た。
「馬鹿王子! 安静にしてろと言ったでしょうが!」
「ティード。お前はレジーナちゃんの世話を頼む。これは勅令だ。よろしくな」
「な、何を馬鹿なことを!」
「じゃ、あとはよろしく。アリスちゃん。行こう」
アウラ王子はそう言って剣を軽く振るとアリスと共にその場から消えた。極めると魔法ってやっぱりすごい。
だから私もすごい魔法で役に立てるかもしれないんだ。
「リラ。手伝ってくれる?」
「うん。特にやることないし」
「はあ……。私もお供します」
快い返事をしてくれたリラと渋々隣に立つティード。鬼の形相をしたクロードはアリスを探して走り去る。メアリーは私の後ろで静かに立っている。
「よし。じゃあこれからが本番よ」
私は目の前に並ぶ舟を見て気合いを入れた。
1
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした
まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。
大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。
おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。
ワシの怒りに火がついた。
ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。
乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!!
※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学4巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革!気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リセラは、夫である王子ルドルフから突然の離婚を宣告される。理由は、異世界から現れた聖女セリーナへの愛。前世が農業大学の学生だった記憶を持つリセラは、ゲームのシナリオ通り悪役令嬢として処刑される運命を回避し、慰謝料として手に入れた辺境の荒れ地で第二の人生をスタートさせる!
前世の知識を活かした農業改革で、貧しい村はみるみる豊かに。美味しい作物と加工品は評判を呼び、やがて隣国の知的な王子アレクサンダーの目にも留まる。
「君の作る未来を、そばで見ていたい」――穏やかで誠実な彼に惹かれていくリセラ。
一方、リセラを捨てた元夫は彼女の成功を耳にし、後悔の念に駆られ始めるが……?
これは、捨てられた悪役令嬢が、農業で華麗に成り上がり、真実の愛と幸せを掴む、痛快サクセス・ラブストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる