ベタボレプリンス

うさき

文字の大きさ
231 / 251

7


 夕方の便でヒビヤンは帰ってしまうらしく、それまで俺達はアレという名のゲームをして遊んだ。

「目が悪くなっちゃうからね。あまりゲームは長い時間やったらダメだよ」
「えー。今日くらいいいだろ。ヒビヤン来てるし」
「いいだろ高瀬んち来てるし」

 掃除機を掛けながら奏志に言われて、ゲームをとりあげられそうになった子供のごとくヒビヤンとゴネる。
 
「う…じゃあ今日はもう少しだけだよ。でもちゃんと休憩挟んでね」

 完全に母親と子供二人だが、よっしゃと俺達は再び夢中になって遊ぶ。
 ヒビヤンに厳重注意してから奏志は買い物へ向かって、俺達はゲームして時間を潰す。 

「もう真島と一緒に暮らせばよくね。俺も一緒に住みたいくらい快適なんだけど」
「朝起きてボケっとしてると全部身支度終わってることあるぞ」
「どんだけダメ人間製造機なんだ」

 テレビ画面を見つつ、二人でピコピコとコントローラーを弄る。

「…まあでもお前が泣いてなくてよかったよ。卒業式前の高瀬はちょっと見てられなかったからな」

 隣でどこか苦く笑われる。
 こんな話を振ってきたのは、今奏志がいないからだろう。

 確かに自分でも卒業式前は本当に苦しかった記憶しかない。
 ヒビヤンに涙を見られるレベルには俺もいっぱいいっぱいだった。

「つっても社会人と大学生でまた環境変わって、どうなるのか分かんねえけどな」
「お前が何言っても真島がもう離さねーだろ」
「はは…まあアイツはちょっとおかしいんだよ」

 実際これは比喩ではなく本気でおかしいと思う。
 俺への執着心が半端ない。
 一般的に人が人を好きになる度合いを越えているような気がする。

「…正直俺は、今でもアイツは俺じゃなくちゃんと女と付き合ったほうが良いと思うし、男でも俺じゃなくアイツに見合う奴はいっぱいいると思う。俺は結局別れたくなくて、卒業式に奏志を突き放せなかっただけで――」

 奏志にも言えなかった言葉がでてきてしまう。
 もちろんアイツとは一緒にいると決めているし、貞男に言った言葉も噓じゃない。

 奏志は間違いなくこれからも、俺の全てを受け入れてくれるだろう。
 だからこそ奏志には言えない。
 アイツは俺が相談しても、絶対にこの関係性に否定的な言葉を口にしない。

 客観的に見る言葉がほしい。

「…俺の言葉覚えてるか?」

 不意にコントローラーを下げて、ヒビヤンが俺を見る。
 ゲーム画面にはポーズの文字。

 ヒビヤンに言われて思い悩んだ言葉はたくさんある。
 修学旅行に言われた言葉、卒業式間近に言われた言葉。
 俺を迷わせた、たくさんの言葉。

「俺はお前がどんな道を選んでも正解だって言ってやるといっただろ」
「…言われた」

 コントローラーを持つ手元に視線を落として、唇を噛みしめる。
 
「大丈夫。お前は間違ってない。俺はいつだってお前の味方してやるよ」

 普通とは違った道を歩き初めてしまった俺が、その言葉にどれほど救われるか分からない。
感想 117

あなたにおすすめの小説

転生天使は平穏に眠りたい〜社畜を辞めたら美形王子の腕の中でとろとろに甘やかされる日々が始まりました〜

メープル
BL
毎日深夜まで残業、食事はコンビニの冷たいパン。そんな社畜としての人生を使い果たし、過労死した俺が転生したのは――なんと、四枚の美しい羽を持つ本物の天使だった。 ​「今世こそは、働かずに一生寝て過ごしたい!」 ​平穏な隠居生活を夢見るシオンは、正体を隠して王国の第一王子・アリスターの元に居候することに。ところが、この王子、爽やかな笑顔の裏で俺への重すぎる執着を隠し持っていた!?

悠と榎本

暁エネル
BL
中学校の入学式で 衝撃を受けた このドキドキは何なのか そいつの事を 無意識に探してしまう 見ているだけで 良かったものの 2年生になり まさかの同じクラスに 俺は どうしたら・・・

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結。一気読みできます♪】ただのハイスペックなモブだと思ってた

はぴねこ
BL
 神乃遥翔(じんの はると)は自分のことをモブだと思っていた。  少年漫画ではいつだって、平凡に見えて何か一つに秀でている人物が主人公だったから。  その点、遥翔は眉目秀麗文武両道、家も財閥の超お金持ち。  一通りのことがなんでも簡単にできる自分は夢中になれるものもなくて、きっと漫画のモブみたいに輝く主人公を引き立てるモブのように生きるのだと、そう遥翔は思っていた。  けれど、そんな遥翔に勉強を教わりに来ている葛城星 (かつらぎ ほし)は言った。 「BL漫画の中では、神乃くんみたいな人がいつだって主人公なんだよ?」  そう言って、星が貸してくれた一冊のBL漫画が遥翔の人生を一変させた。  自分にも輝ける人生を歩むことができるのかもしれないと希望を持った遥翔は、そのことを教えてくれた星に恋をする。  だけど、恋をした途端、星には思い人がいることに気づいてしまって……  眉目秀麗文武両道で完璧だけど漫画脳な遥翔が、お人好しで気弱な星の心に少しずつ少しずつ近づこうと頑張るお話です。

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。