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曇天
しおりを挟む朝の眩しいくらいの日差しを受けて、私は目を覚ました。
朝の爽やかな空気と少し冷たい風が、家の中を抜けて五感を刺激し、意識の完全な覚醒を促す。
夜が明けてまだあまり経っていないのだろう。遠くに見える太陽はまだ地平線から完全に出ていなく、少しだけ隠れていた。
母はもうすでに起きており、朝食の準備をしていた。勝手場からトントントンと小気味よいリズムを刻む音が聞こえてくる。
この音が聞こえるということは、朝食までの時間がまだ少しあるということだ。いつもならこのタイミングで二度寝をしてしまうのだが、眠気が完全に覚めてしまったので、起きることにした。
母は1本1本は白いが、束ねると金に映る長い髪を後ろで結び、薄緑色の少し色褪せたエプロンを着けながら朝食の準備をしていた。
「お母さん、おはよ」
母は私の声に気付いたのか、横に少し伸びた先の尖った耳を少しピクピクと動かしてから、こちらの方に振り返る。日に照らされた木の葉のような明るい緑色の瞳がシャルに向けられた。
「あら、シャル。今日はいつもよりも少し起きるのが早いのね。朝食はまだだけど、少し待てる?」
「今日は風が気持ちよかったから。私にも何か手伝えることある?」
母は今まで忙しなく動かしていた手を止めて、なにかを考えるように斜め上を眺め、あ、そうだ、と何かを思い出したようにこちらに振り返る。
「お水をたーくさん汲みに行ってきてくれる?保管庫に一応、水の貯蔵があるんだけどそれも多分クロたちにあげたらすぐ無くなっちゃうから。シャルの魔法でなら楽に終わるでしょ?」
クロというのは、家で飼っている羽馬のことであり、種牡馬として家に長くいるシャルやテールにとっては家族のような存在である。
羽馬は強靭な脚力と、燃え盛る炎のような真紅の鬣たてがみを携え、鳶のような茶色い、陽に照らされると黄金色に反射する羽を持つ魔獣のことで人々に知られており、主に戦闘において魔導士達の足として、魔獣退治や戦争に駆り出される危険な存在として知られている。
母はこの羽馬を赤子の頃から成体になるまで育て、その成体を商人や国に売ったり、羽馬の調整を行う魔厩務士を生業としている。そのため、家の近くにある厩舎には多くの羽馬がおり、大量の水や食料を必要とするのだ。
「分かった!雲山のとこからとってくればいいんだよね?」
「雲山の方が井戸よりも栄養価が高いからね。気を付けていくのよ?魔獣にあってもまずは逃げなさいね。あ、あと、ターバンは絶対に着けていきなさいよ」
「言われなくても分かってるって」
寝癖を手櫛で直し、鏡で自分の姿を確認した後、動きやすい服に着替え、濃い青色のターバンを頭に巻き、カリガを履き、いってきまーす、と声を張り上げながら外へ出る。
いってらっしゃい、とお母さんの声が家の中から聞こえてくる。
朝日に照らされる美しい山並みと、縁が光っている大きな綿菓子のような雲がいくつも浮かんでいる青い空を見上げ、眺めたあと、水汲み用のタンクを取りに倉庫へ小走りで向かった。
母がたーくさん、と言う時は本当に大量の水が必要な時であり、羽馬達に使う分、自分たちに使う分を考えると、水場まで少し時間はかかるが、大量の水が湧き出ている雲山で水汲みをした方が効率的だ。それに、栄養価も井戸などから汲むよりも高い。
倉庫の中にある保管庫に溜まっている水の量を確認し、タンクをどれくらい持っていくか考える。
(大体十個くらい持っていけば足りるかな?)
そう思い、自らに身体強化の魔法をかける。緑色の風が私を中心に巻き起こり、筋力や体幹を強化していく。
身体強化がうまくいったことを手を握ったり離したりして確認し、片手に五個、もう片手に五個のタンクを乗せ、雲山の水場に向かった。
雲山の麓には雲山の雪解け水が溜まっており、そこが雲山の水場となっているのだが、そこまでは家からあまり遠くはない距離である。
時折吹く洗い立てのような爽やかな風が頬を撫でるのを、白色に光っている太陽が肌を照らすのを感じながら水場へ向かった。
獣道を頼りに雲山の薄暗い山林の中に入っていくと、先ほどまで吹いていた風や陽の光は木々に阻まれてしまい、シャルは薄暗く冷たい空気に包まれた。
両手を細かく水平に動かしながらタンクの位置を調整し、できるだけしっかりした地面だけを踏み抜いていく。
蟻が自分たちよりも遥かに大きい虫を運んでいるのを尻目に、山特有の冷たい水のような空気を飲みながら、シャルは頭だけひょっこり出ている石に足をかけた。
薄暗い山林を抜け、水場のある広場にでると、ゆっくりと揺れる水面に陽の光が乱反射してきらきらと輝いていた。その眩しさに思わず瞼を閉じてしまったが、とても綺麗だった。
湖の近くに生えている少し太い木の根元に、十個のタンクを地面に降ろし、水汲みの準備を始める。
タンクに付いているそれぞれの取っ手の穴に縄を通し結んでいく。全部の縄がきちんと結べたことを引っ張って確認すると、それらのタンクを水の中に落としていく。
泡がタンクの中から漏れ出し、タンクの中に水が入ることを確認すると、身体強化を解き、両手で水をすくって口に運び込む。
まろやかで口当たりの優しい雲山の雪解け水が、体を潤していくのを感じる。美味しくて何度も繰り返していたら、少し眩んでしまった。
それぞれのタンクから、泡が出てこなくなったのが確認できると、自分に再び身体強化の魔法を掛ける。体の強化を確認すると、タンクに結んだ縄を引っ張り上げていく。それぞれのタンクが完全に水から出てしまう直前にタンクの蓋を閉め、水が零れないようにする。
それぞれのタンクに結った縄同士を手慣れた手つきでしっかりと結び、五個ずつにタンクをまとめ、厩舎のある方角に向かって、指笛で少し高く、かつ遠くにも聞こえるような音を響かせる。
一分もすると、木々の間に映る雲がかかった空の中に一つの黒い影が見え始め、その影は大きくなっていく。
その影がさらに近づき、雲の間から射した陽がその影を照らすと、その影は黄金色の羽を持ち、立派な真紅の鬣を携えていることがわかる。そう、羽馬である。
雲山に水汲みに来るとき、母の教えから、魔法の練習のため行きは羽馬のクロにタンクを自分で運ぶ。帰りは危険かもしれないこと、騎乗の練習にもなる、という点から、クロに自分と水入りタンクを運んでもらうことにしている。
「クロ!ここだよ~!」
視認可能な距離まで羽馬のクロが近づくと、シャルは手を振って自分の位置を知らせる。
「ありがとうね、今日もよろしく」
クロはそう言われると、少し尻尾を左右に揺らしながら、小さく、唸るような鳴き声を出した。
クロのそんな返事を受け取り、お返しに少しにこっと笑った後、クロの背中に置いている羽馬用の特殊な鞍に、先ほどの五個ずつまとめたタンクを取りつけていく。
お母さんがクロに持たせたのだろう。クロの鞍に乗馬ブーツが固定されている。ブーツを取り、今履いているカリガを脱ぎ、逆にカリガをクロの鞍に固定する。
ブーツに足を通すと、それが合図だったかのように、クロが翼を畳み、頭を下げ、乗馬するようにシャルに促す。
シャルはこれまた慣れたように、クロの翼の前に付いている鐙に足をかけ、クロの背に跨またがる。
鐙を足に固定し、右肩から左の腰の方に帯をかけ、左肩の方にも同じく帯をかけて交差するような命綱を自分に掛けて、首に下げているゴーグルを掛け、準備を完了させる。
「よし、じゃあ飛んで!」
そう言いながら、クロの首の付け根付近を二回叩くと、クロは二、三歩助走し、翼を大きくはためかせ上昇した。
先ほどまで自分の頭の上に葉を巡らせていた木々が、一瞬にして床に広がる緑のカーペットのようになってしまった。
それと同時に、クロがいつも暮らしている厩舎と自分の家が見えた。クロはある一定の高さまで飛翔すると、翼を風の抵抗に任せて、家までゆっくりと滑空していく。
と、そのとき、目の端に黒煙が立ち上っているのが見えた。
(あれは…?)
いつもはあんな黒煙はあそこから立たないけど、なにかあったのかもしれない。
クロが家の裏口に降り立つと、母が裏口の戸からもともと白く透き通っているその肌を、さらに白に染め、青みがからせたような顔色で前につんのめるようにして出てきた。
私がどうしたの?と聞くよりも早く、母は焦りと不安を抱えた声で叫んだ。
「説明はあと!クロと一緒に東南の方へ逃げなさい!」
母が発した言葉を一言一句聞き取ることが出来たが、さらに疑問が増えた。東南の方角には、母から決して近づいてはいけないと言われていた死の灰が広がる大地が広がっているはずだった。
「え、でも、あっちは死の灰が…」
「いいから!クロ!行きなさい!」
母が東南を指さしそう言うと、クロは指さされた方角に向け、全力で飛翔した。
「お母さん!!」
私とクロを送り出した直後、母は耳をつんざくような指笛をたてた。
すると、厩舎にいた一頭の羽馬が、彼を繋いでいる紐を引きちぎり、母の元へと駆け出した。さらに、その一頭だけでなく、他の羽馬も一斉に自分たちを繋いでいる縄を噛みちぎり母に向かって突進していくと、母は最初に駆け付けた一頭に飛び乗り、羽馬を飛翔させた。それと同時に他の羽馬も母の乗っている羽馬に続いて、飛翔した。
陽に照らされて黄金色に煌々と輝く無数の羽馬と共に空を駆ける母はまるで、物語のワンシーンを読んでいるかのようだった。
私はその様子をぽかーんと、口を開けながら母を見ていると、母が怒った様子で
「ぽけっとしない!手綱をしっかりと握って前を向きなさいって教えたでしょ!」
母は怒ったような、厳しい顔をしながらそう言った後、私とクロとの距離を一気に詰めた。
「前を向いて、飛ぶことに集中しながら聞きなさい。」
落ち着いた声色で母がそう言うと、その調子のまま言葉を繋いだ。
「どこの軍かはわからないけれど、トッチ村が魔法で攻撃されてて、もう落とされるのも時間の問題なの。幸い、私たちの家は村から少し離れているから、今なら羽馬で急げば逃げれるわ」
私はいつも優しい母が、村の人達を置いて逃げてしまうことに少し驚いた。確かにエルフ族は他の人達から敬遠される種族であり、私たち家族もその例に漏れることはなかったけど、トッチ村はシャル達が所属している村であり、母もある程度は村の民と関係を持っている人はいたはずだからだ。
「…大丈夫なの?村の人達」
母は私のその言葉を聞くと、少し苦い顔をした。
「大丈夫なわけがないわ。皆殺されてしまうでしょうね…」
そう言ったあと、母は苦い顔から優しい顔に変わり、私の目を見て微笑んだ。
「確かに彼らを助けたかったけれど、あなたと村の人々のどっちを救うかと問われたら、私は、迷いなくあなたを選ぶわ」
私は母の優しい瞳の奥に、優しさだけではない、なにかしっかりとした信念のようなものを感じた。
母は微笑んだ後、先ほどの厳しい顔に戻り、クロたちに指示を出した。
「あなたたち、雲の上に出て!この晴れ間で、こんな集団で長いこと飛んでいたらばれてしまうからね」
母がそういうと、クロ達は滑空の態勢から、翼をはためかせて、雲の上を目指し始めた。
雲の縁が白色に光り、雲の輪郭が浮き出る、その縁より少し距離を置いたところから、クロは雲の上の空に出た。
シャルはここまでの高さは初めてで、耳鳴りと、少し頭が痛くなっていたが、母はなんともないようだった。
「頭が痛かったら身体強化の魔法を使いなさい。この高度なら身体強化で防げるとおもうわ」
シャルは耳鳴りで遠くなっている母の声を理解すると、身体強化の魔法を発動させた。
すると、先ほどまで感じていた耳鳴りや、頭痛が治まり、風の流れる音やクロの鼻息が明瞭に聞こえるようになった。
クロたちは雲より上に上昇し終えると、翼を広げ、角度を調整し、高度を保ちながら徐々に滑空していく。
「それで、お母さん、なんで死の灰の方に向かうの?あっちは危険なんでしょう?」
死の灰は小さい頃から聞かされていたものであり、多くの危険があるのだと母に教えてもらっていた場所である。
「それは向こうに着いたら、教えるわ。取り敢えず今は逃げることだけを考えなさい。死の灰の地の近くまで行ったら、流石にあいつらも追っては来ないだろうから」
それから三十分は経っただろうか。陽が地平線からすこし高いところに移動していた。
眼下に広がる、雲の隙間の下には、トッチ村のような茶色の土ではなく、代わりに薄暗い灰色のような色をしたものが広がっていた。
「ここらへんね。ここまで来たら、あの軍も近づいては来ないでしょう。シャル、下降するからちゃんとクロに掴まるのよ」
母は指笛で最初は高い音に、それから徐々に低く音程を下げるような少し長い音をたてると、クロと母の羽馬が最初に下降し、後ろの羽馬がクロたちの尾を目がけるように、下降していく。
下降していくと、体が楽になる感じがした。
「よし。シャル、負担がかからないように、徐々に身体強化を解きなさい。」
身体強化をゆっくり解きながらクロ達と一緒に下降していく。
母を先頭に、灰色の大地へ降りようと近づいていく、その時だった。先ほどまで私たちがいたトチ村の方角から、幾条もの光が発せられ、シャルの後ろの羽馬と母を貫いた。
一瞬の出来事だった。母は腕と太腿を穿たれ、騎乗している羽馬の羽と胴体をも貫いてしまった。
直後、眼下の羽馬たちは力が抜けたように、急速に地面に向かって落ち始めた。それにつられるように、私達の上空にいた羽馬たちも落下していく。
母が地面に落ち、その上や周りに羽馬が雨のように降り注ぎ終わるまで、世界の時間が遅くなったように感じた。ただその世界を俯瞰しているような感覚に陥っていた。
しかし、クロが嘶くことで、世界は元の速度を取り戻した。
母が落ちていくことを確認し、クロに母の元へ早く向かうよう命令しようとするが、それよりも早くクロが母の元へと急接近した。
無数の瀕死状態の羽馬で積み上げられた山の隣に降り立ったクロは、私に降りろと催促するように体を揺らしながら鳴いていた。
焦って金具を外そうとしたために、指を少し切ってしまったがシャルは気にも留めなかった。鐙に固定されているブーツを取り外すこともせずに、ブーツだけを脱いで前につんのめるように母の元へ駆け寄った。
母の上に覆いかぶさっている何頭もの羽馬たちを押しのけながら必死に叫んだ。
「お母さん!お母さん!」
羽馬たちはとても重く、身体強化をしてようやく二頭の羽馬をどかすと、呻く母がいた。へその横あたりを貫かれたらしく、血で赤黒く縁どられた穴のような傷口が母のお腹にできていたが、傷は出血面を光によって焼かれたようで、出血はしていなかった。
「お母さん!!」
痛みに耐えているのだろう。母は額から脂汗をかいており、苦悶の表情を浮かべていた。母の体に触れると、とても熱くなっており、高熱を発症していることがシャルにでも分かった。
クロに縄で固定しているタンクを取り外すと、蓋を開けて横に倒し、手の中に水を注いで母の口元へ運ぶ。
母の口まで水を運び、水を飲ませる。それを何回か繰り返す。しかし、母は血の混じった液体を口から外に吐き出すだけに留まり、水を飲みこんではくれなかった。
私が再び水を飲ませようとすると、母はそれを震える腕と指でそれを止め、か細い声で言った。
「シャル。ここから更に東南の方へ向かいなさい。しばらくしたら村があるはずだから、そこまで歩くのよ。」
その消え入るような声を聞いた瞬間、母がもう直に死んでしまうのではないかと思い、思わず涙が溢れ出してしまった。
嫌だった。父が家を出ていくときのような、心の底がすっぽりと抜け落ちたような、あの感覚を再び感じるのは。そしてなにより、大好きな母が、いつも朝シャルより早く起きて、エプロン姿でおはようと言ってくれる母がいなくなってしまうのがシャルはとても怖かった。
「ごめんね。あなたにはまだ何も話せていないのに…」
母はその優しい緑色の瞳をシャルの瞳に映し、優しく笑みを浮かべながら、白く小さい手の平で私の頭を撫でながら掠れた声でそう言った。
撫でられている間、私はただ自分の頭を撫でている母を見ていることしかできなかった。
数回私の頭を撫でた後、母は手を徐々に降ろし、眠るように目を閉じた。
母が死んでしまった。その現実が受け止めきれずにただ茫然と寝ているような姿の母を無言のまま眺めた後、ふと周りを見渡した。
ただそこには酷い惨状が広がっていた。羽馬たちは腹や羽、足など様々な箇所を貫かれ、臓物があふれ出してしまっている羽馬もいた。なにより灰色の大地を赤く染め上げている鮮血と血の匂いが嫌でもこの状況をシャルに理解させる。
あまりの悲惨さに目を覆った。目を覆うことで現実から目を背けたかった。こんなのはただの夢だと、悪い夢なんだと自分に言い聞かせ、涙を流しながら必死に身を守るように四つん這いになり、頭を抱えた。
空はいつしか分厚い灰色の雲で覆われ、遠くでは遠雷が鳴っていた。
その真下では、羽馬たちの茶色い羽が、彼らの鮮血によって紅く彩られながら灰色の大地に散り、枯落ちた紅葉のように広がっていた。
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