救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。

篠崎笙

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天才剣士、異世界へ

伝説の勇者ではなかった

『いえ、悪神を斃すことができるのは貴方ではなく、あくまでも竜騎士のみ。ただ、今のままでは彼らは力を出せないので。貴方はただ、その御力を彼らに貸していただければ。それでよろしいのです』


ガクっとした。
俺じゃないのかよ! ちょっと期待しちゃったじゃないか。

悪神を倒すのは。じゃなくて、だって?

よくわからないが。
その”力”っていうのは、そんなホイホイ渡せるもんなのか?


「……力を貸してやらなきゃ、元の世界に帰してくれなかったりする?」

俺の問いに、ネストルはにっこり笑った。
嫌な笑い方で。

なんかこの人、慇懃無礼というか。微妙に当たりが悪いような気がするけど。気のせいじゃないよな……? 下賎な人間風情が、とか思ってそうな雰囲気だ。


『さすがは神子様。お察しがよく、助かります。詳しくは、このゲオルギオスらから聞くとよろしい』
ネストルが示したのは。

さっき俺が投げ飛ばしたセクハラ野郎、……じゃなかった。言葉がわかるようになる術をかけてくれた人だった。


*****


ゲオルギオス、と呼ばれた美貌の男は、マントの埃を払いながらこっちに来た。

一応、謝っといたほうがいいか。
勘違いで投げ飛ばしちゃったわけだし。

「ええと、その。投げちゃってごめん、」

見上げると。特に怒ってはいないようだ。苦笑してる。


『いや、途中から目的を忘れ、味わってしまった俺が悪い』
……味わう?

『どうやらあんたの体液は、俺達にとって極上のキャリィテラご馳走・ギオチィらしい』
「……はい?」


ゲオルギオスはマントを脱ぎ、その逞しい体躯をあらわにした。
何で全裸? と驚く間もなく。

肌が真っ黒な鱗に覆われて。風船が膨らむように体積を増していく。

大勢いたマントの人達は、危険だ、と。
慌てて建物から避難しだした。

誰もいなくなってしまった……。


「……う、そだろ……、」
さっきまで、普通の人間だったのに。


ゲオルギオスは、高い天井に届きそうなほど大きな黒いドラゴンになっていた。

『少々で、ここまでの効果があるとは! 素晴らしいぞ!』
建物内に、声が轟いた。


『マジかよ、すげえ!』
さっき俺の肩に乗ってきた、赤いトカゲみたいな生き物が叫んだ。

なんだこれ? ちょっと可愛いかも。と喉元をくすぐっていたら。

気付けば俺の隣りに、男が二人立っていた。
俺が二人の気配に気づかなかったのは、ドラゴンに驚いたせいだろうか?

不機嫌そうな顔をして、無言で黒竜を見上げている、青いマントを纏った明るい金髪の、まるで王子様みたいな男と。

『まさしく救世主、ですね』
白いマントを纏ったプラチナブロンドに紫の目の美青年。

彼は俺を見て、にっこりと微笑んだ。おお、眩いばかりの美形……。


どうでもいいけど。
もしかしてみんな、マントの下は全裸なのか?


*****


『俺は見ての通りの黒竜、ゲオルギオス=ライサンダーという。黒魔術が得意だ』

人間の姿に戻ったゲオルギオスは、改めて自己紹介した。
はたして黒魔術が得意、というのは。自慢できるようなことなのだろうか……?


『俺は火竜のオリオン=ハーモン。火と風の魔法を少々、使える。こう見えても半分人間なんだぜ』
赤いトカゲが名乗る。

人間部分が見当たらないんだが。ドラゴンなのに言葉を話せるって部分だろうか?


『私は白竜のクリストファー=ナイルズです。白魔法を得意とします。医療魔法も使えますよ』
プラチナブロンドに紫の目の美青年は、おっとり微笑んでいる。

白魔法か。確かに、白衣の天使っぽい……。


『……水竜、ユージン=ニコラウス』
『こいつは水と土魔法が得意なんだ』

むすっとした金髪碧眼の男のフォローを、オリオンがした。
小さいのに、保護者みたいだな。


彼らは竜騎士だという。
竜に乗った騎士のことではなく。自らが竜に変身して、戦う騎士。

ここは異世界アトランティーダの中の、竜族が多く住む国、カタフィギオ。
その中心地にある、ゼノビア神殿という場所らしい。


俺が乗っていたのは、召喚用の祭壇だという。


*****


”悪神に施された封印が一万年の時を経て、解ける。悪神はこの世に甦り、再び暴虐の限りを尽くすだろう。アトランティーダは滅びる運命にある。それを阻止し、悪神を斃すことができるのは選ばれし四人の竜騎士と、救世の神子のみである”
という預言があったそうで。

いよいよ預言で告げられた”破滅の日”が近付いてきたので。
ゼノビア神殿の教皇は、悪神を斃すべく、竜騎士を探し、集めた。

しかし、封印される前に先手を打っていた悪神の呪いによって、騎士達は思うように竜に変身することが出来ず、困っていた。
悪神はかなりの強敵なので、完全体でなければ勝機は無い。


そこで偉大なる賢者ネストルが、異世界より救世の神子を呼び寄せ。
彼らの呪いを解いてもらうべく、この世界の魔術師全ての呪力を借り、召喚の儀式を行った。

で。
現れたのが俺、という話だった。


実際に、黒竜の封印が一時的にとはいえ解けたので。
みんなこれで悪神を斃せると大喜びです、とクリストファーは言っているが。

「ええと、俺は剣崎勝利。ただの高校生で、魔法とかは使えない、です。……結局俺、何すればいいの?」


『……体液を寄越せ。それだけでいい。身柄は我等が護る』
ユージンは、そっぽを向きながら言った。

「え、体液って。まさか、血液とか? 痛いのは嫌だぞ……」

『あ、血液はダメダメ。獣性が高まりすぎて、そのまま食い殺しちゃう可能性が高いから』
あっさり言ったのはオリオンだ。


こええよ!
文字通り、頭からバリバリ食われるのかよ!
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