救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。

篠崎笙

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天才剣士、異世界へ

王様の耳は

「……んん~!?」

ゲオルギオスに抱き寄せられて、キスをされた。
舌を突っ込まれて。

……いや、しなきゃ採取できないわけじゃないだろ!
わざわざ人前でしなくてもいいじゃんか!


オバデアは、目をまんまるくしてる。

『二人は新婚なんだよ。昨日結婚したばっかりなんだ』
とオリオンが言って。

『なるほど。お熱いですね』
と返してる。


いや、確かにそうなんだけど。
新婚には間違いないんだけどさあ!


*****


充分採取できたのか、口を離した。

『では、渡してこよう』
俺の手から、何かを受け取るような振りをしている。


ああ。
他の国の人に、唾液で珠を作るところを見せたくなかったのかな?

神子の体液が薬だってことは、国外秘なのかも。
うかつに言わなくて正解だったか。

そういえば、この森に入ってから、俺の名前も呼んでない。


クリストファーに寄ってって。
このことって、みんな知らないの? と訊いてみたらビンゴだった。


『我々と教皇、賢者だけです。危険ですので内密に。どうかそのつもりで』
わかった、と頷いてみせる。

危険……本当は血肉の方が効果が高いから。文字通りに身の危険だってことか。

も体液が薬だと知られたら、攫われて生かさず殺さずで搾取されるか。
最悪の場合、バラバラにされてにされてしまうかもしれないとか。こわっ。


ゲオルギオスは、へばっている馬耳の人たちのところへ走って行って、珠を渡してくれたようだ。
元気になった人たちは、神子様ありがとうございます、と。大喜びで手を振ってる。

『ああ、神子様お手持ちの回復薬を、わざわざ伝馬フォレアスたちに与えてくださったのですか。ありがとうございます。なんとお優しい……』

オバデアは、その優しさに感動して、ゲオルギオスが思わず愛妻にキスしたんだな、と納得したようだ。
うん、自然な流れだ。バレてない。

頭良いな、ゲオルギオス。俺には絶対思いつかない。
思いついたとしてもやらないけど。


回復薬の正体が唾液だとか、知りたくないだろう。
身の安全とか関係なく、黙っておきたい。


*****


何故だろうか。
今すぐ、穴を深く掘って、その中に向かって叫びたい気持ちでいっぱいである。

王様の耳はロバの耳ーっ!!
と。


いや、堂々と見せてるから、いいんだろうけど。
どうもな。

一瞬、馬耳かと思ったけど、違う。
ロバは馬よりもふさっとして長く、可愛い耳なのである。素人にはわかるまい。

……そう。王様の耳は、ロバだったのであった。


『ようこそ、救世の神子様、伝説の竜騎士の方々。このようなむさくるしい場所でなく、是非とも我が城へとご案内したいところでありますが、またの機会ということで。今宵はささやかながら、お食事とご休憩用の仮宿をご用意しましたので、こちらでお身体をお休めください』
小太りの王は、大きな耳を得意げに動かした。

でっぷりしていて重そうだ。
そりゃ馬の人だって疲れるよ……。


トップはライオンとかじゃないんだ? ってオバデアに聞いたら。
肉食動物系はすぐ肉の誘惑に負けるので、役人向きじゃない、ということだ。なので大臣も草食系らしい。

成程。それでウサギのオバデアも役職が上なのか。
でも、命令ちゃんと聞いてくれるのかね?


そうか、兵士には肉食系が多いのか……。

カタフィギオは教皇も司教も賢者も竜だったけど。
竜は普通の獣人に比べると知能が高いそうだから、特別なのかね。


そう言っても実のところ、馬とかも雑食なんだけどな! その辺を歩いてるヒヨコとかカエルとか、普通に食っちゃうし。鳥なんか普通に共食いするし。

しかし肉欲って。
多分、えっちな意味じゃないほうのアレだよな。


こわっ。
この世界、人の形した肉食獣多くてこわすぎる。

ゲオルギオスたちから離れないでおこう……。


*****


要塞の人達がご馳走を用意してくれて、王様と歓談しながらの食事会になった。

食事は普通に美味しかった。
味付けはシンプルだけど、素材がいいのか美味い。

ここの森は食材が豊富そうだ。


並んでいた肉料理は、竜人用だけに特別に用意した訳ではないようで。
みんな、普通に肉料理を食べていた……。

草食・肉食のカテゴライズは、あくまで人種の違いを指すのだろうか?
その上、猫族とか犬族とかの中でも派閥があるそうだし。

どの世界も大変だなあ。


王様の話を主に聞かされているのはクリストファーだった。

見た目は綺麗でもその人超肉食だから! って見ていてヒヤヒヤする。
王様だから、食べちゃ駄目だよ。

後でクリストファーに聞いたら、脂肪が多そうなのは好みじゃないという。
……そうなんだ……。


湖から引いた、という水でお風呂を使わせてもらって。

ゲオルギオスと俺は一緒の部屋だというので、行ってみると。
それはパオみたいな、木枠で組んだテントっぽい見た目のものだった。

問題は、その内装である。


「なにこれ……」

ど真ん中に据えられたベッドには、何故か色とりどりの花が飾られていた。
布団はピンク色っぽい。

とにかくすごくファンシーだった。
ドン引きだ。


*****


『オリオンが二人は新婚だと言ったので、気を遣ってくれたのだろう』

ゲオルギオスは表情も変えてない。
動じないなあ。

新婚仕様なんだ、これ。


『この花はわりと美味いので、頂いていこう』
ゲオルギオスは美味しいらしい花をピックアップして、球状のカプセルに仕舞った。

花も食べるんだな。
そういやサラダも食べてた。はたして肉食とは。

主食が肉で雑食って意味で良いやもう。


『ほら』
口許に花びらを運ばれて。

齧ってみたら、ほんのり甘くて美味しい。
確かに、おやつにいいかも。

もう一枚、差し出されて。


「ん、」
キスも、甘く感じた。
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