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夏の王
愛に生きる
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「行って来ます、父上、母上、」
ラクは飛竜、ザラームとアブヤドは空を飛んで移動するようだ。
……手を繋ぐ必要はあるのか?
「氷菓子食べ過ぎて、おなか壊さないようにねー」
ハルではあるまいし。
アブヤドはそんなうっかりはしないぞ、イチ。
見えなくなるまで、見送って。
「さて、……では」
イチを抱き上げて、城の中へ向かう。
「本日は、皆も、もう休むがよい」
「ウーさんたら情熱的~」
「熱々~」
ハルとアフダルが口笛を吹いて、アスファルに窘められている。
知らなかったのか?
わたしは、イチを知ってから、愛に生きる男となったのだと。
◆◇◆
「……顎の辺りとか、男らしくなった気がする」
イチはわたしの貌を、確かめるように撫でている。
わたしの貌が好きなのは、相変わらずのようで嬉しい。
「そうか? 自分ではわからぬが、あれより背は伸びたぞ」
あれから、15年経ったのだ。
老けてもいよう。
わたしは、そのままの姿を保とうとは思わなかったが。
細胞を弄れば、若返ることも可能だろう。
「前の方が良かったか?」
「今のも好き」
イチは笑った。
そうか。
……その場で押し倒したくなることを言うものではない。
どうにか耐え、自室にたどり着いた。
寝台に座らせて、口付けを落とす。
「イチ、愛している」
「ん。俺も、愛してるよ。ウルジュワーン」
イチも、同じ様に口付けを返した。
「ここに、戻ってきたかったんだ」
と。自分に言い聞かせるように囁いている。
ああ。イチはわたしの元へ、戻って来たかったのか。
そう望んでくれていたのか。
わたしだけのものではなくなってしまったのは、残念ではあるが。
その言葉だけで、わたしはすべてを赦そうと思う。
元々、イチの罪ではない。
神の意志により、そうせざるを得なかったのだ。
子を成さねば、こうして戻れなかったのだ。
「たくさん子供を授かろうな?」
イチは、わたしを見上げて、そう言った。
もう、子を授かっても他へ跳ばされる心配はないという。
そう神と取引したのだと。
元の世界に戻るより。
イチは、このわたしと共に生きることを選んでくれたのだ。
愛おしき、わたしの伴侶よ。
「余を煽って、後悔はするなよ?」
イチは笑って頷いているが。
15年イチだけを思い続けたわたしの欲望を、甘く見てはいけない。
◆◇◆
香油をたっぷり使い、イチの変わらず慎ましい蕾をほころばせてゆく。
まるでまだ何も知らぬ身体のように、どこもかしこも瑞々しいのはどういうことだ。
黒の印は、弓矢から命を守ったという。
確かに、強い守護の力を感じる。
左手の赤い印は、病気、災厄避けだな。
赤の王の深い愛情を感じる。
青にはあまり感じぬが。白い印からは、何かとてつもない力を感じるのだが。その効果まではわからん。若返りか?
わたしの印は浮気防止であったが。
過去では消えていたので、意味が無かった。
別の効果をつけておくか。何が良いだろう?
「ん、……も、いい、から、」
イチは枕を抱き締め、身悶えている。
蕾はすっかり蕩けている。もう頃合だろう。
「……ウージュ、」
こちらへ手を拡げ、わたしを招く愛しいイチを抱き締め。
ほころんだ蕾を、わたし自身で散らしてやる。
◆◇◆
奥は、まだ狭い。
まるで何も知らぬように固いそこを、ゆっくり押し拡げてゆく。
……わたしを、すっかり忘れてしまったか?
ならば、何度でも教えてやろう。
わたしのものだと。
「あぁ、……ウージュが、入ってくる……おっき、」
浅い息をして。
苦しそうだが、表情は恍惚としていた。
「きついな、」
「ごめ、……でも、ウージュが、おっきいのが、悪い」
口を尖らせて文句を言うその唇を、奪うように口付ける。
「ふぁ、……何で、また、おっきく、」
「余のここが大きくなるのは、そなたを悦ばせるためだ。とくと味わえ」
「あうっ、」
残りを総て、押し込んでやる。
くぷり、と香油が漏れた。
◆◇◆
「ウージュ、」
イチの手が、背に回される。
愛する者より我が名を呼ばれる幸せ。
愛する者と触れ合える幸せ。
互いに愛し合える幸せ。
わたしは15年前、これらのかけがえのない幸せを失い。絶望せずに、よくぞ今まで耐えてきた、と己を褒めてやりたいくらいだ。
もう二度と、離さない。
神がそれを望むのなら、それで奪われずに済むのなら。
わたしはいくらでも愛を注ぎ、子を授かろう。
思うところは多々あるが。
イチをはじめにわたしの元へ寄越したのだから、結果的には感謝すべきか。
イチはこうして、わたしのところへ戻ってくるのを望んでくれたのだ。
だからこそ、今がある。
「すき」
子猫のように、頬を摺り寄せてくる。
あたたかな感触。
心までも、あたたかくなる。
「ふふ、かわいいな、イチは」
「あのな、俺の世界的にはカワイイっていうのは、アブヤドみたいな子のことを言うんだぞ」
イチは、ぷう、と頬を膨らませた。
子リスのようで、愛らしい。
「アブヤドは確かにかわいいが、イチはもっとかわいい」
親にとって子は、かわいいものである。
ましてや愛しいイチの子であるなら、尚更。
ラクは飛竜、ザラームとアブヤドは空を飛んで移動するようだ。
……手を繋ぐ必要はあるのか?
「氷菓子食べ過ぎて、おなか壊さないようにねー」
ハルではあるまいし。
アブヤドはそんなうっかりはしないぞ、イチ。
見えなくなるまで、見送って。
「さて、……では」
イチを抱き上げて、城の中へ向かう。
「本日は、皆も、もう休むがよい」
「ウーさんたら情熱的~」
「熱々~」
ハルとアフダルが口笛を吹いて、アスファルに窘められている。
知らなかったのか?
わたしは、イチを知ってから、愛に生きる男となったのだと。
◆◇◆
「……顎の辺りとか、男らしくなった気がする」
イチはわたしの貌を、確かめるように撫でている。
わたしの貌が好きなのは、相変わらずのようで嬉しい。
「そうか? 自分ではわからぬが、あれより背は伸びたぞ」
あれから、15年経ったのだ。
老けてもいよう。
わたしは、そのままの姿を保とうとは思わなかったが。
細胞を弄れば、若返ることも可能だろう。
「前の方が良かったか?」
「今のも好き」
イチは笑った。
そうか。
……その場で押し倒したくなることを言うものではない。
どうにか耐え、自室にたどり着いた。
寝台に座らせて、口付けを落とす。
「イチ、愛している」
「ん。俺も、愛してるよ。ウルジュワーン」
イチも、同じ様に口付けを返した。
「ここに、戻ってきたかったんだ」
と。自分に言い聞かせるように囁いている。
ああ。イチはわたしの元へ、戻って来たかったのか。
そう望んでくれていたのか。
わたしだけのものではなくなってしまったのは、残念ではあるが。
その言葉だけで、わたしはすべてを赦そうと思う。
元々、イチの罪ではない。
神の意志により、そうせざるを得なかったのだ。
子を成さねば、こうして戻れなかったのだ。
「たくさん子供を授かろうな?」
イチは、わたしを見上げて、そう言った。
もう、子を授かっても他へ跳ばされる心配はないという。
そう神と取引したのだと。
元の世界に戻るより。
イチは、このわたしと共に生きることを選んでくれたのだ。
愛おしき、わたしの伴侶よ。
「余を煽って、後悔はするなよ?」
イチは笑って頷いているが。
15年イチだけを思い続けたわたしの欲望を、甘く見てはいけない。
◆◇◆
香油をたっぷり使い、イチの変わらず慎ましい蕾をほころばせてゆく。
まるでまだ何も知らぬ身体のように、どこもかしこも瑞々しいのはどういうことだ。
黒の印は、弓矢から命を守ったという。
確かに、強い守護の力を感じる。
左手の赤い印は、病気、災厄避けだな。
赤の王の深い愛情を感じる。
青にはあまり感じぬが。白い印からは、何かとてつもない力を感じるのだが。その効果まではわからん。若返りか?
わたしの印は浮気防止であったが。
過去では消えていたので、意味が無かった。
別の効果をつけておくか。何が良いだろう?
「ん、……も、いい、から、」
イチは枕を抱き締め、身悶えている。
蕾はすっかり蕩けている。もう頃合だろう。
「……ウージュ、」
こちらへ手を拡げ、わたしを招く愛しいイチを抱き締め。
ほころんだ蕾を、わたし自身で散らしてやる。
◆◇◆
奥は、まだ狭い。
まるで何も知らぬように固いそこを、ゆっくり押し拡げてゆく。
……わたしを、すっかり忘れてしまったか?
ならば、何度でも教えてやろう。
わたしのものだと。
「あぁ、……ウージュが、入ってくる……おっき、」
浅い息をして。
苦しそうだが、表情は恍惚としていた。
「きついな、」
「ごめ、……でも、ウージュが、おっきいのが、悪い」
口を尖らせて文句を言うその唇を、奪うように口付ける。
「ふぁ、……何で、また、おっきく、」
「余のここが大きくなるのは、そなたを悦ばせるためだ。とくと味わえ」
「あうっ、」
残りを総て、押し込んでやる。
くぷり、と香油が漏れた。
◆◇◆
「ウージュ、」
イチの手が、背に回される。
愛する者より我が名を呼ばれる幸せ。
愛する者と触れ合える幸せ。
互いに愛し合える幸せ。
わたしは15年前、これらのかけがえのない幸せを失い。絶望せずに、よくぞ今まで耐えてきた、と己を褒めてやりたいくらいだ。
もう二度と、離さない。
神がそれを望むのなら、それで奪われずに済むのなら。
わたしはいくらでも愛を注ぎ、子を授かろう。
思うところは多々あるが。
イチをはじめにわたしの元へ寄越したのだから、結果的には感謝すべきか。
イチはこうして、わたしのところへ戻ってくるのを望んでくれたのだ。
だからこそ、今がある。
「すき」
子猫のように、頬を摺り寄せてくる。
あたたかな感触。
心までも、あたたかくなる。
「ふふ、かわいいな、イチは」
「あのな、俺の世界的にはカワイイっていうのは、アブヤドみたいな子のことを言うんだぞ」
イチは、ぷう、と頬を膨らませた。
子リスのようで、愛らしい。
「アブヤドは確かにかわいいが、イチはもっとかわいい」
親にとって子は、かわいいものである。
ましてや愛しいイチの子であるなら、尚更。
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