異世界で二人の王子に愛されて、俺は女王になる。

エピローグ

演じる者

ネイディーンの永い歴史の中、初の女王となった、カイル。

試行錯誤を繰り返し、政策を考え。
民のために、常に心を配る。誰もが愛した女王だった。


病に倒れ、その命が尽きるまで。
海瑠は”皆から愛される女王”の役を見事に演じた。演じきった。

女王が、本当は男性であったことを知るものは、ごく少数であった。

ニ人の伴侶と、四人の騎士。……これは彼だけとの秘密であったが、美の奴隷。
その七名のみであったのだ。


よく頑張った、よく演じた。と、彼らは心から思い、労った。


◆◇◆


その時にはすでに女王を退陣していたのだが。
訃報を聴いた、その誰もが前女王の死を嘆き、涙を流した。

カイル前女王を送る式の際も。
まるで女神がその死を悼むように、花びらは降り注いだという。


クリシュナとオーランド。
ニ人の伴侶はカイル前女王の死を看取り、葬儀など諸々の後始末を終えると、しばらくのち、息を引き取った。

共に享年60歳。
平和な世となり、平均寿命が120を越えるこの国では、あまりに早い死であった。

寂しい思いは決してさせない、と誓ったニ人の、カイル前女王への深い想いを表すようでもあった。


『最期まで、仲が良かったなあ』

『天界で、また３人仲良くやってるでしょ』
『違いない』

ニ人の側近であった老騎士、リッターとナイジェルは。
ようやく長かったその役から身を引いて。

息子や孫たちとともに、穏やかな老後を過ごしたという。


◆◇◆


ソフィとメリル、ニ人の王女は長じて、ソフィは女王となり、賢王と呼ばれるほどの善政を布いたという。
メリルは他国へと嫁ぎ、たくさんの王女を産んだ。

ニ人の王女の後に生まれた王女たちも、それぞれ幸せに暮らしたのだった。


王女たちの誕生ののち。
ネイディーンだけではなく、世界のあちこちで女性の誕生を迎えることとなった。

その際、カイル女王の作った法律は彼女たちの精神や肉体を守り、その生活を支えたのだった。


ネイディーンの麗しき花の女王カイル。
世界のため、数々の偉業を成したといい、歴史にその名を残したという。


彼・が立派な役者であったことを知るものは、もういない。




おわり